FC2ブログ

家の近くのむし探検 ミバエ、クチブトゾウムシ、ハナバチなど

家の近くのむし探検 第9弾

このところトビムシをずっと調べていてくたびれたので、昨日の午前中、ちょっと近くの公園に行ってみました。天気がよくて暖かくなったので、虫探しにはちょうどよい気候になってきました。私は最近公園に行ったら、木の幹を探し回り、それが終わると枯葉の下を探しています。といっても、木の幹にいるのはハエやらアリやらばかりなのですが・・・。





こんなハエが2匹いました。上は立派な産卵管があるので♀でしょうね。とすると、下は♂の方かな。あまりに変わった姿なので、一匹捕まえてきました。例によって、ハエの科の検索をしてみました。



かなり変わった翅脈をしています。なお、翅脈の名称は適当につけています。間違っているかもしれません。翅の前縁側を拡大してみました。



翅の前縁にはSc切目sc切目とh切目肩切目の2か所の切目があります。それにSc脈がほぼ直角に曲がっています。また、CuA脈が途中で折れ曲がっています。「絵解きで調べる昆虫」の中の検索表を使って調べてみると、実にミバエ科になりました。ミバエだと分かって思い出してみると、実は昨年の11月27日のブログにも出していました。このときはSc脈が折れ曲がっているところからミバエ科を疑い、後は画像検索をしてムラクモハマダラミバエにたどり着いていました。たぶん、それでしょうね。それにしても大きなミバエですね。(追記2016/03/31:Sc切目、h切目という言い方が合っているのか心配になって調べてみました。MNDによると、それぞれ、subcostal break、humeral breakといって、略すときはsubcostal brk、humeral brkとしていました。「原色昆虫大図鑑III」によると、「基部の切目をc切目(costagial break)、肩横脈のやや先方のものを肩切目(humeral break)、Sc脈端のものをsc切目(subcostal break)と呼ぶ。」とあります。「大図鑑」に合わせておく方がよいでしょうね。図と文を直しておきました



イエバエもいたのですが、この間検索で苦しんだので、今回はパスです。



こちらはオドリバエかな。





アリは2種いました。上はこの間調べたルリアリだと思うのですが、下はよく分かりません。一応、捕まえてきました。(追記2016/03/31:「日本産アリ類図鑑」に載っている検索表で下のアリを検索してみました。フタフシアリ亜科シリアゲアリ属のハリブトシリアゲアリ Crematogaster matsumurai Forel, 1901になりました。合っているかどうかは分かりませんが・・・。図鑑によると樹上営巣性のアリで枯れ枝等に巣が見られ、全国に分布するそうです



それにヒメバチの仲間でしょうね。



クチブトゾウムシもいました。翅の上の毛が目立ちます。ヒレルクチブトソウムシかなと思ったのですが、よくは分かりません。



それから小さなクモです。木の幹での虫探しはだいたいこんな感じでした。





枯葉の下は例によってトビムシがピョンピョン飛び跳ねていました。その中にこんな変わった模様のトビムシもいました。よく見ると鱗があるみたいですね。触角も結構長いみたいです。トゲトビムシ科かなぁ。



この間、キオビコハナバチと同定したハチのいた崖に行ってみました。しばらく待っていると、ハチがやってきました。



なんだかしきりに穴に入りたがっているようです。



でも、すぐに出てきましたが・・・。



マンションに渡る橋の上で見つけました。白い頭盾がちらっと見えるので、♂のハナバチです。それで採集してきました。



触角下溝が2本見えるので、ヒメハナバチです。やはり頭盾が白かったですね。



翅脈が変わっていました。亜縁室が2つしかないこと、それに縁室の先端が裁断状になっています。この間調べたヒメハナバチは亜縁室は3つありました。それに縁室の先端はスムーズに前縁に接続していました。この⑤の特徴は重要で、これからチビヒメハナバチ属になります。さらに、この属には日本産は1種しかいないので、自動的にチビヒメハナバチ♂ということになります。トビムシでは散々苦労したのですが、やはりハナバチの検索はやっていて楽しいですね。



残りはマンションの壁にいた虫です。これはニセケバエか。



それにヒラタカゲロウ科♀の亜成虫かな。



最後はホソバキリガでした。
スポンサーサイト



トビムシの検索でぼやき

マンションの「廊下のむし探検」ができなくなってから、近くの公園や河原に行くのですが、いつも見つけるのは同じ虫ばかり。必然的に、その虫を調べることが多くなり、毎日が苦しみに変わってきました。虫を調べるのに、ああでもない、こうでもないと苦労しながら検索し、今度はそれを写真に撮らなければなりません。一匹の虫でも2,3日はかかってしまいます。その間、ずっともやもやしぱなっしだし・・・。

昨日は、先日捕まえてきたトビムシの検索をしてみました。



調べてみたのはこんなトビムシです。よく見るトビムシなのですが、ずっと名前がわからなかったので、ちょうどよいかなと思ったのですが・・・。詳細はまた今度にします。今日はぼやきなのでそのつもりで見てください。

トビムシの検索には、いくつもの絵解き検索が最近の論文に出されているので、一見、簡単そうに見えるのですが、実際はかなり小さい個体が多いので、どうもうまくいきません。大きそうに見えるこの個体でも体長2mm程度です。たぶん、まだ慣れていないせいだとは思うのですが・・・。

顕微鏡を見ながらざっと検索してみると、ツチトビムシ科はまず間違いないところです。体に鱗がありません、前肢に対応する背板が隠れてしまい、第3腹節と第4腹節はほぼ同長です。次の亜科の検索は、この写真では写っていませんが、跳躍器があって、茎節が長く、腹部第4節と第5節が分離し、眼とPAOがあり、さらに、柄節前面の毛が多いことから、ツチトビムシ亜科もほぼ間違いない感じです。次からがやや怪しくなります。初めに、あまり先入観を持たずに検索していったら、カザリゲツチトビムシ(Isotomurus)属になりました。日本産のIsotomurus属は5種なので調べていくと、クロホシツチトビムシ(Isotomurus punctiferus)に近い感じなのですが、細かなところで合いません。ここから迷いが生じました。

こういう迷いが生じたときに写真を撮ってもどうもうまく撮れません。昨日だけで、実に、600枚も撮ったのですが、ほとんど失敗作です。まず、迷いの出発点は眼の数でした。Isotomurus属は8+8だと論文には書かれています。つまり、単眼が左右に8個ずつです。



そこで撮ったのがこの写真です。眼の部分を20xの対物で拡大してみます。



大きな眼はどう見ても6個(白矢印)にしか見えません。しいて言えば、赤矢印のところに退化したような眼が見えなくはないです。ツチトビムシ科は基本としては8+8で、退化している種もあるとのとこですが、カザリゲツチトビムシ属ではそのような種はないとのこと。悩みますねぇ。また、写真もどうもいまいちですねぇ。

その代わり、PAOというのが初めて分かりました。PAOはpostantennal organの略で、日本語では触角後器というようですが、論文にはPAOとそのまま書かれていることが多いです。これはヒメ、シロ、ツチの3つの科だけにある器官で、上の写真では長細く中央がややくびれた穴がそれだと思います。この形と位置から種が調べられます。この穴の中には1つの感覚細胞が入っていて、化学刺激に対する受容体になっているようです。ツチトビムシ亜科でこのようなくびれた長楕円形なのは、先ほどのクロホシツチトビムシとサヤツメトビムシ属のコサヤツメトビムシあたりです。これも悩みますねぇ。(追記2016/04/01:PAOは眼と触角の間にあるようです。上の写真のものは違うかもしれません。もう一度、観察しないといけないですね。うーむ



これは跳躍器の一部で、右側が柄節、二股に分かれているのが茎節、この写真では見えませんが、先端にある歯のついた部分を端節といいます。検索表には茎節後面とか柄節前面という言葉が出てきます。この写真はたぶん後面に当たるのかなと思いますが、これもはっきりしません。



これはこの間も出てきた保体です。さきほどの跳躍器の茎節の分かれた部分の隙間にこの保体が入り、腹の部分で跳躍器を固定する役目を持っているみたいです。先端の外側がぎざぎざしているのは固定しやすいようにということでしょうね。この形と毛についてはクロホシツチトビムシのものとよく似ています。でも、写真がいまいちです。

このほかにも、脚の爪、跳躍器の端節、腹管などの写真を撮ったのですが、どれもはっきりしなくて今日はプレパラートを作って撮り直しです。検索もうまくいかないし、写真もうまくいかないし・・・。どうも気分が暗くなります。というぼやきでした。

虫を調べる カグヤマメヒメハナバチ?

先日捕まえたハナバチを調べてみました。まだ、確信が持てないのですが、とりあえず、ヒメハナバチ科のカグヤマメヒメハナバチではないかというところまで達したので、一度、まとめてみました。



調べたのはこんなハチです。よく見るような、そうでもないような。ハナバチの仲間は皆よく似ているのでなかなかぱっと見だけでは分かりません。それで、ハナバチの勉強のつもりで調べてみました。

検索に用いたのは、次の本の検索表です。

多田内修、村尾竜起著、「日本産ハナバチ図鑑」(文一総合出版、2014)

この本は写真も鮮明で、検索表も分かりやすくよくまとまっていて、たいへん使いやすい本です。一度、この本を使ってきちんと検索をしてみようと思って、先日、キオビコハナバチ(?)を調べてみました。今度は別の科のハチなので、検索がちょっと楽しみでした。検索の結果、ヒメハナバチ科ヒメハナバチ属Micrandrena亜属まで達しました。この後は検索表がないので、図鑑の説明からカグヤマメヒメハナバチ Andrena (Micrandrena) kaguyaではないかと思っています。まだ、はっきりしていないのですが、とりあえずその検索の過程を示したいと思います。



これは、上記の本に載っている検索表のうち、必要な部分だけを抜き出したものです。全部で13項目を調べてすべて合致すればヒメハナバチ科ヒメハナバチ属Micrandrena亜属になります。ただ、まだこの結果に不安があったので、次の論文に載っているMicrandrena亜属の一般的特徴についてもついでに調べてみました。

XU Huan-li and O. Tadauchi, "A Revision of the Subgenus Micrandrena of the Genus Andrena of Eastern Asia (Hymenoptera: Apoidea: Andrenidae)", J. Fac. Agr., Kyushu Univ. 56, 279 (2011). (ここからダウンロードできます)

載っていた特徴をまとめると次の表のようになります。



これらをまた部位別に見ていきたいと思います。



これが全体写真です。体長は6.7mm。これから小型のハチであること、腹部第2、3節後縁に縁毛帯があることが分かります。



次は顔面です。顔の幅の方が長さより長いことが何となく分かります。また、顔面全体が白い毛で覆われていて分かりにくいのですが、頭盾は黒く、突出してないことも分かります。触角の下に各々2本ずつ縦筋(触角下溝)があるのですが、この写真ではよく分かりません。複眼の脇で薄茶色に見えるところは顔孔といって少し凹んでいる部分です。♀にはこの顔孔があります。他の種類に比べると幅が狭いのかもしれません。この部分の毛の色は照明の当て方でだいぶ変化します。



右は前からの照明、左は後ろからの照明です。白矢印で示した部分を見ると、後ろから光を当てると毛が白くなっていますが、前から当てるとほとんど真っ黒になっています。一番上の写真でも白っぽい顔孔の毛が写っています。



頭盾の下に上唇があるのですが、その突起を写しました。この形が種類によって違います。この個体では三角形で先端が丸くなっています。ここが四角い種もあるようです。



次は頭部を横から写したものです。複眼と大顎の間をマーラースペースというのですが、この写真の個体では細くてほとんど線状になっています。これが長くないとか、直線的という表現に該当しているのだと思います。また、頬領域は複眼より広く感じます。



次のsubgenal coronetというのがよく分かりませんでした。genalは頬の、sub-は下、coronetは宝冠です。頬の下の宝冠という意味になりますが、ネットで見ても画像検索ではまったく引っ掛かりません。やっと論文を見つけました。

A. Dubitzky, J. Plant, and K. Schönityer, "Phylogeny of the bee genus Andrena FABRICIUS based on morphology (Hymenoptera: Andrenidae)", Mitt. Münch. Ent. Ges. 100, 137 (2010). (ここからpdfがダウンロードできます)

この中に電顕写真が載っていました。それによると、大顎の下側にある剛毛列のことのようです。上の写真は頭部の下側から撮影したものですが、大顎の根元の辺りに黄色い剛毛のようなものが見えます。もう少し拡大してみます。



これのことかなぁと思うのですが、よく分かりません。



次は胸部の写真です。中胸盾板や小盾板には細かな模様と点刻があることが分かります。また、前伸腹節には皺のような模様が見えます。



これは前伸腹節を拡大したものです。前伸腹節に逆三角形に見える部分が三角域です。前半部分は皺がありますが、横隆起線のようなものは見えません。また、前伸腹節が下に折れた後の逆三角形の先端部分には細かな模様があります。前伸腹節の側面の毛のことを花粉籠と呼ぶようです。この部分が発達しているかどうかは比較の問題なので、何ともいえません。



次は前翅翅脈です。いつものように翅脈に名前を付けてみました。ハチでは翅脈は独特の名前で呼ばれます。その名前で必要な部分のみを書いたものが次の写真です。



翅脈に関しては重要な性質がいくつもあります。まず、③の中脈が直線的というので、コハナバチ科と分かれます。次は⑤の矢印で示した部分が裁断状だとチビヒメハナバチ属になるのですが、写真のような場合はヒメハナバチ属になります。また、⑦の矢印で示した部分と第2逆走脈が近いとHabromelissa亜属になります。この個体では離れています。さらに、Ⓚでは径分脈が縁紋に極めて近いことを示しています。これはMicrandrena亜属の重要な性質です。



次は後脚脛節ですが、毛がふさふさです。これは刷毛(はけ)というようです。



それから腹部です。腹部第1背板には点刻がありません。それでも、あまり光沢があるようには見えません。その秘密は後でお見せします。これで一部の項目を除いて、ヒメハナバチ科ヒメハナバチ属Micrandrena亜属の検索表の項目と論文に載っていたMicrandrena亜属の特徴を調べたことになります。写真で示さなかったのは、①、②、⑧、⑪、Ⓝ、Ⓗの各項目と触角下溝です。①と②は大顎を開けないと写せないので、今回は省略しました。⑧、⑪、Ⓝはすぐに確認できるので、これも省略です。最後のⒽは意味が分かりませんでした。触角下溝は今度写真を撮ってみます。

これから種を調べていくのですが、上でお見せした上唇突起の形がヒントになります。これについては次の論文に載っていました。

O. Tadauchi, "Synopsis of Andrena (Micrandrena) of Japan (Hymenoptera, Andrenidae) Part II", J. Fac. Agr., Kyushu Univ. 30, 77 (1985). (ここからダウンロードできます)

この論文にはMicrandrena亜属に属するいろいろな種の上唇突起の図が載っていました。上唇突起が四角ではなく三角形状で、しかも、近畿地方に分布していそうな種をまとめてみると次の表のようになります。



種名は○○マメヒメハナバチの○○だけを書いたものです。ここで、アブラナは上記論文に上唇突起の図が載っていなかったのでこの表に書き加えておきました。右の欄は図鑑に載っていた他種との区別点です。これらと今回の個体とを見比べて、何となく違和感を感じた部分を赤字で書きました。この表から判断すると、カグヤマメヒメハナバチがもっとも妥当な感じがします。

カグヤの説明を読むと、中胸盾板に強い市松模様があると書かれています。また、図鑑の説明を読むと、腹部背板も市松模様で無点刻と書かれています。「市松模様」は本来、二色の四角形を交互に並べた格子模様なので、この表現が何を意味しているのかは分かりませんが、とりあえずそれぞれの部分を拡大してみます。



これは中胸背板です。網目のような構造のところどころに穴が空いています。これを「市松模様とやや密な点刻」と表現しているのかもしれません。



次は腹部第1背板と第2背板の境目辺りを写してみました。中胸背板よりやや大きめの網目模様がはっきり見えています。もしこの個体がカグヤだとすると、この網目模様のことを市松模様と言っているのでしょうね。第1と第2を見比べると、第2背板の方がやや網目が荒いようです。この写真の左端は網目模様を斜めから見た感じになっていますが、メロンの網目模様ののように網目部分が少し盛り上がっていることが分かります。メロンとは違って厚みのほとんどない網目ですが・・・。ともかく、表面にこんな構造があるために光沢がなくなっているのでしょう。

最後は前伸腹節三角域の拡大写真です。



逆三角形の先端部分にはやはり網目模様があります。これがカグヤの特徴とされる、「前伸腹節三角域は前面に皺があり、後部は市松模様が特徴」に該当しているのではと思いました。

ということで、あまり自信はないのですが、最終的にはカグヤマメヒメハナバチではないかという結論になりました。ヒメハナバチは図鑑といい論文といい、とにかく情報が多くてそれもそれぞれがしっかりした情報なので、検索をしてみたくなる、そんなハチの仲間です。これからも見つけたらまた試してみたいと思っています。

廊下のむし探検 ハチ、カゲロウなど

廊下のむし探検 第824弾

一昨日の「廊下のむし探検」の続きです。やはりマンションの廊下はいいですね。いろいろな虫が次から次から出てくるから・・。今日はまずハチからです。




先日もこんなハナバチの仲間を見つけたのですが、その時はコハナバチ科でした。今回は廊下にいたのですが、大きさもだいたい同じ程度の数ミリです。それで初め同じ種なのかなと思ったのですが、一応、採集してきました。この写真からは翅脈が見難いのですが、よくよく見るとこの間の種とは違うことが分かります。



これは翅の部分の拡大ですが、赤矢印で示した中脈がこの個体の場合はほぼ直線的です。この間の個体は強く湾曲していました。このことから今回の個体はコハナバチ科ではないことが分かります。「日本産ハナバチ図鑑」の検索表で検索してみたところ、ヒメハナバチ科ヒメハナバチ属Micrandrena亜属になりました。まだ怪しいので、もう少し調べてみます。(追記2016/03/25:亜属も怪しいのですが、とりあえずそのまま突き進んで調べてみました。上唇突起の形が逆三角形から台形、中胸背板に市松模様、前胸腹節三角域は皺、後半は市松模様、頭盾も市松模様から、カグヤマメヒメハナバチ Andrena (Micrandrena) kaguya が現在の第一候補になっています。市松模様がどの模様を指しているのかよく分からないのですけど・・・





床の帯状の出っ張りの幅が3mmなので、大きさは推定してください。このハチも今日検索してみました。まず、「絵解きで調べる昆虫」の検索表ではヒメバチ科になりました。さらに、その先はInformation Station of Parasitoid Waspsというサイトの検索表を使って調べてみました。以前にも、ヒメバチ科はチビアメバチ亜科トガリヒメバチ亜科メンガタヒメバチ亜科アメバチ亜科の検索をしてきましたが、ヒメバチはいつ試みても難しいですね。今回はとりあえず、トガリヒメバチ亜科になったのですが、まだ怪しい感じです。私は一枚ずつ各部の写真を撮って一つ一つ確かめていかないとどうも確信が持てないタイプの人間のようです。今度また写真を撮ってみます。写真を撮らないといけない虫がどんどん溜まっていく・・・。(追記2016/03/26:上記のサイトによると、日本産トガリヒメバチ亜科には97属229種。種まではまだまだ遠い道のりです。文献を調べたのですが、日本の文献はほとんど見つかりません。これに対して、上のヒメハナバチ科ヒメハナバチ属の各亜属に関しては実に丹念にまとめられています。感心しました。ひとえに九大チームの努力ですね



これはいつものヒメハラナガツチバチでしょうね。



カメムシはクサギカメムシのほかはこのムラサキナガカメムシ



ナガメでした。



こんな大型のカゲロウもいました。眼が小さいので♀ですね。♂でないのではっきりとは分からないのですが、多分、オオマダラカゲロウではないかと思います。



これはオナシカゲロウだと思うのですが、いつも見る個体よりかなり大きな感じがしました。捕まえておけばよかったですね。



後はナミテントウ



ヒメアカホシテントウ





クモは2匹いたのですが、共によく分かりません。



最後はちっちゃなザトウムシでした。昨日のハエと合わせて、こんなに多くの虫がたった20分ほど歩いただけで見れるなんてなんていいところなのでしょう。マンションの周りの覆いがだんだん広がってきました。もうじき駄目になりますね。

廊下のむし探検 ハエがいろいろ

廊下のむし探検 第823弾

実は昨日、公園に虫探しに行く前にマンションの廊下も歩いてみました。公園で苦労して虫を探すのに対して、マンションではいとも簡単に見つけることができます。今は改修工事で、あちこちでペンキを塗っているのですが、その間を縫って歩いてみました。虫はいろいろいたのですが、とりあえずハエだけ調べてみたので、出すことにしました。






この手のハエがいっぱいいました。一匹だけ捕まえて調べてみました。小盾板の下に土手状の出っ張りがあるので、間違いなくヤドリバエですね。



これもヤドリバエだと思うのですが、顔がえらく出っ張っている感じがします。別種かも。





これはつやつやして一見綺麗なハエです。といってもハエですけどね。一匹捕まえて調べてみたら、クロバエ科みたいです。



こちらは採集しなかったのですが、これもクロバエ科かなぁ。



これはオドリバエですね。三枝豊平氏の「日本産双翅目の図解検索システム(Family Empididae)」を使って調べてみました。



ポイントは、1)R4があり、R5から角度をもって分離していること、2)中室があること、3)M脈が3本になることで、Empis属だと思われます。(追記2016/03/24:脚に生えている黒いものは変形した毛で♀に生えています。これについては一昨年に顕微鏡写真を撮っていました(こちらを御覧ください)。このときと同じ種かもしれません。ブログを読むとPolyblepharis亜属かもというところで止まっていました)(追記2016/03/24:Empis属の亜属への検索表は「原色昆虫大図鑑III」に載っているのですが、残念ながら♂用でした。Polyblepharis亜属というのは「一寸のハエにも五分の大和魂・改」で画像を見ていてそう思っただけで根拠はありません。でも、これを信じると同じ掲示板に種への検索表が載っていました。残念ながら未発表で引用しないでという投稿者の希望で引用しませんが、その検索表は♂でも♀でも使えます。ざっと検索してみると、Empis (Polyblepharis) compsogynneになりました。この種は「大図鑑」にも載っていて、キアシセスジオドリバエという和名が新称としてつけられていました。図版の方は残念ながら♂でしたが・・・



錆止め塗料の上のオドリバエです。こちらは何だか分かりません。(追記2015/03/24:こちらも翅脈を見てみました。



上のEmpis属とはR4+5が分岐していない点が違います。中室(dc)があるところ、M脈が3分岐している点は同じです。また、cua室の後縁側の角が鈍角になっていることが見えます。さらに、別の写真では口吻が長いことと後脚が捕獲脚になっていないことが確認されました。最後にSc脈が前縁に達するかどうかで判断が分かれます。達しなければRamphomyia属、達していればAnthepiscopus属なのですが、この写真ではよく分かりません。他の写真も見ると、どうやら達してはいないようです。従って、Ramphomyia属の可能性が高いです




それにいつものノミバエもいました。



それにユスリカもいました。これは♂でしょうね。

とりあえずハエだけです。このほか、ハチもいたのですが、ヒメバチとハナバチなので、私にとっては手強い相手です。明日にでも出すことにします。

虫を調べる キオビコハナバチ?

先日捕まえたハチを2、3日前から調べているのですが、なかなか難しくて四苦八苦しています。タイトルにキオビコハナバチと書いたのですが、だいぶ怪しいので、そのつもりで見てください。



調べたのはこんなハチです。



体を曲げてしまっているので、体長がよく分からないのですが、黄色の点線に沿って測ってみると7.7mmになりました。後脚は後で検索にも出てくる刷毛でふさふさしています。



これは背側から撮った写真です。こういうハナバチは最近図鑑ができて詳しく調べられるようになりました。

多田内修、村尾竜起、「日本産ハナバチ図鑑」、文一総合出版 (2014).

この本の中には属、亜属、群までの検索表が載っています。この個体は検索してみるとコハナバチ科コハナバチ(Lasioglossum)属Evylaeus亜属carinate-Evylaeus群になるのですが、それから先の種への検索表は次の論文に載っていました。

R. Murao and O. Tadauchi, "A Revision of the Subgenus Evylaeus of the Genus Lasioglossum in Japan (Hymenoptera, Halictidae) Part I", Esakia 47, 169 (2007). (ここからダウンロードできます)

これを使ってさらに検索を進めると、最終的にはキオビコハナバチにたどり着きました。まだ、だいぶ怪しいのですが、一応、その過程を追いかけていきたいと思います。検索表で必要な部分だけ抜き出すと、次の表のようになります。



検索の項目が全部で15項目もあります。そこで、例によって写真に検索表の項目を書き込んだので、それを見ながら説明していこうと思います。実は、この検索表の最初の①についての写真を撮るのが一番大変でした。下唇鬚は通常はすぐに見えるのですが、この個体ではなかなか見つかりませんでした。その辺りの話から書いていきます。



まずは顔の写真です。頭盾に白いマークがあると♂になるのですが、これはないので♀です。また、♀では触角が短いという特徴もあります。口の下に細い毛のようなものが見えていますが、これは下唇鬚ではなくて小腮鬚の方です。



図鑑の説明を読むと、大顎が閉じていると、口器が隠れてしまうので、ピンセットで大顎を開いて舌を伸ばし、口器を見えやすい状態にしておいた方がよいと書かれています。この個体も大顎が閉じていたので、ピンセット2つを使ってちょっと開いてみました。確かに見えやすくなるのですが、ピンセットを放すとまた閉じてしまい、写真が撮れません。それで、大顎を外すつもりで強く両側に開きました。そうしたらうまい具合に、片方の大顎の先端が折れてしまい、中が見えるようになりました。この写真はその折れた方から写した写真です。図の矢印の方から、生物顕微鏡の対物レンズ10xを用いて撮ってみました。



右側が先端が折れた大顎です。小腮鬚の他に確かに下唇鬚が見えています。今度は斜め下から撮ってみました。



小腮鬚の他に下唇鬚も先端から3節ほど見えています。これでやっと検索表の①を確かめることができました。この写真は実体顕微鏡で撮ったものですが、生物顕微鏡を使ってもう少し拡大してみました。



こんな感じです。

次の②は中舌についてです。



これは口の裏側から撮ったものですが、中舌の先端は尖っています。ということで、①と②は確かめられたと思います。

後は検索表の順に追いかけずに、部位別に見ていきたいと思います。



口器が出たついでに、口の部分を斜め上から撮ってみた写真がこれです。口の中央に突起が出ています。これはdistal processと呼ばれているようです。種によっては先端が太くなったりしてその形が変化するみたいですが、これは細い形をしています。なお、右上にある白いものは取り付いていたダニです。



次は胸背を見たところです。ここではいろいろな項目が関係しています。まず、中胸背板が細かく点刻が入っています。種類によっては点刻は一様に入らず、部分的に入っている種もあるようですが、これはほぼ一様に入っています。後胸背板にはっきりした網目模様がある種もあるのですが、これは毛が生えていてよく分かりません。⑫の前伸腹節背面の長さというのは、多分、背面とその後ろ側にある垂直面を足したものだと思うのですが、特に長くはないので、中胸背板とほぼ同じ程度という方を選択しました。



⑩の前胸側面の隆起線は上の論文に図が出ていて、それと比べると、矢印の部分にはっきりした隆起線のある種があるようです。



これは前伸腹節垂直面についてです。稜が周囲を縁取っていることが分かります。これが⑨の項目です。



次は翅脈です。③の中脈がぐにゃっと曲がっています。これによりコハナバチ科になります。後は第3亜縁室が第1より小さくて、第2より少し大きいとか、第2肘間脈や第2逆走脈が径分脈や第1逆走脈に比べると細いというのも見ると何となく分かります。



次は後脚脛節末端にある距です。2本あります。初め、どちらの距のことを言っているの分からなかったのですが、後側の距には細い歯が3本ほど生えています。



趣味的に拡大したものがこの写真です。この性質はvulsum種群というキオビコハナバチが属する種群の特徴でもあります。



最後は腹部背板の話です。第1背板には細かい点刻があります。この点刻の分布は論文にも図が載っているのですが、中心部分に横長に点刻のある様子がキオビコハナバチのものとよく似ています。背板の前側には白い毛帯があります。(追記2016/03/25:ミスプリです。全部→前部に直しました

ということで、一応はキオビコハナバチの特徴は満足されたみたいなのですが、全体的には難しい検索で、その結果にはあまり自信がありません。図鑑によると、キオビコハナバチは♀の体長7~8mm、北海道から九州まで生息し、♀は3月から10月まで見られるようです。合っているといいのですけど・・・。

家の近くのむし探検 カメムシ、アリなど

家の近くのむし探検 第8弾

今日は暖かかったので、午後から近くの公園に行ってみました。パッと見て何もいなかったのですが、今日は木の幹を丹念に何度も見て回りました。すると結構虫が見つかりました。やはりじっくりと探すことですね。



最初に見つかったのはこのヨコヅナサシガメの幼虫でした。これを見つけてから、幹を丹念に見ていったら、別のカメムシも見つかりました。





格好からカスミカメムシだということはすぐに分かります。「日本原色カメムシ図鑑第2巻」を見ると、小盾板の模様などから、セスジクロツヤカスミカメに似ていることが分かりました。ただ、この種は九州と南西諸島にだけ生息している種のようです。ネットで探してみると、ケヤキ、カワヤナギなど他にも似た種が載っていました。小盾板の模様だけで判断すると、どれともちょっと違うような感じがしますが・・・。(追記2016/03/23:おちゃたてむしさんから、「『ツヤカスミカメの未知種』なんだそうです。そよかぜさんのブログで紹介されていました。」というコメントをいただきました。早速紹介されていたブログを見ると、確かに小盾板の白い模様はよく似ています。このツヤカスミカメは2005年に岡山大で行われた日本昆虫学会で、中谷至伸(農環研)氏が「淀川河川敷で発見されたツヤカスミカメの未知種」と題して発表されたものようで、最近関西で発見例が相次いでいるそうです。おちゃたてむしさん、貴重な情報をどうも有難うございました)(追記2018/01/24:正しくは次の通りです。

中谷至伸、「淀川河川敷で発見されたツヤカスミカメ属の未知種(半翅目:カスミカメムシ科)」、日本昆虫学会第65回大会 (2005)




小さな虫が幹を動いていたので撮ろうとしたのですが、なかなかピントが合いません。やっと合った一枚がこれでした。チャタテの幼虫かな。








アリは何種かいました。採集しないと名前は分からないので、今度は採集してこようかな。



これはヒメバチかな。



小さなハエのちょっと前にさらに小さなダニがいました。



ひょっと捕まえました。



捕まえたまま動きました。そして、そのまま飛んでいきました。体液でも吸うのだろうか。

家の近くのむし探検 春本番

家の近くのむし探検 第7弾

今日の「家の近くのむし探検」は近くの河原とその周辺です。気温は10度とそんなに高くはなかったのですが、天気が良かったのでかなり暖かく感じました。それでも、10時頃行った時は虫っ子一匹いなかったのですが、10時半を過ぎるとあちこちで虫が動き始めました。温度がある程度高くないと動かないのでしょうね。



最初に見つけたのはこのヒシバッタです。ヒシバッタにはもいろいろな種類があって、昨年は検索もしたのですが、今日はとりあえず写真だけです。



アリはこの間もいたトビイロシワアリとクロオオアリだけみたいでした。





小さなハエトリグモ、シラホシコゲチャハエトリを何匹か見ました。上が♂、下が♀。



こちらのクモは何かむしを捕まえていますね。トビムシなのかな。



そのトビムシでいたのはこんな種類です。たぶん、ツチトビムシ科ではないかと思うのですが、何匹か捕まえてきたので、今度検索をしてみます。吸虫管を持っていったので、こんな小さな虫でも捕まえるときは大変楽でした。ピュッピュッと吸えて。



後はトビケラの仲間。



それに、この間もいたフタホシメダカハネカクシ。10時半を過ぎると10数匹が一斉に動き出して、なかなか止まってくれないので、写真がどうもうまく撮れません。





変わったところではこんな虫もいました。前後にゆらゆら振動しながら動くので何だろうと思って撮ったら、このアワダチソウグンバイでした。普段はもっと茶色いのですが、「日本原色カメムシ図鑑第3巻」によると、こんな白い個体は羽化直後と書いてありました。





これも変わったクモでした。全身がきらきら光っています。大きさは2、3mmほど。とにかくせわしなく動き回って、穴という穴に入っていきます。動き回るので、やはり写真がなかなかうまく撮れません。「日本のクモ」で調べてみると、ワシグモ科のヒゲナガツヤグモのようです。図鑑によると、平地や市街地で普通に見られるそうです。





後は近くの花に来ていたハナアブです。たぶん、ミナミヒメヒラタアブだと思うのですが、上が♂、下が♀ですね。





最後はビロードツリアブです。これだけ虫がいると、本当に春本番という感じですね。

家の近くのむし探検 コハナバチ

家の近くのむし探検 第6弾

マンションの廊下が平日歩けなくなったので、近くの公園や河原に虫探しに行くことになったのですが、案の定なかなか行く機会がなくて、これが3週間ぶりになってしまいました。最近はかなり暖かくなったので、近くの公園でもいっぱい虫がいるのではと思って、昨日の午前中にちょっと行ってみました。しかし、いませんねぇ。そらさんに虫の探し方を教わったので、葉っぱの裏を片端から見たのですが、一向に見つかりません。

また、トビムシ探しかなぁと思ったのですが、用水路の脇にいったら小さな虫が飛び回っていました。



最初に見つけたのがこんな虫。クロバネキノコバエかなと思ったのですが、ともかく小さいですね。



次はユスリカ。



こちらのユスリカはちょっと大きめだったので採集しました。



そしてガガンボ。相変わらず、地味な虫ばかりですね。でも、こんな小さな虫を写そうと思うと、以前、廊下で用いていたような20-30cmの小さな一脚ではまったく役に立ちませんね。以前の一脚はそれを壁に押し当ててカメラを固定していたのですが、外では壁がないからです。写そうとすると体が揺れて、葉っぱも揺れてなかなかピントが合いません。三脚か、せめて長い一脚くらいは必要みたいです。

たいした虫がいないので諦めてトビムシでも探そうかなと思っていたら、公園の端にある小山の斜面が禿げているところに小さなハチが飛び回っていました。





こんなハチです。体長は6mmちょっと。意外に警戒心が強く、近づこうとするとすぐに逃げてしまうので、何をしているのかよくわからなかったのですが、ウツギヒメハナバチと同じように地面にあいた穴に入っている様子でした。名前を調べようと思って1匹捕まえてきました。

以前、「日本産ハナバチ図鑑」(文一総合出版、2014)を買っておいたので、今日はそれで調べてみました。この本には絵(写真)解きの検索表が載っているので行けるところまで行ってみると、コハナバチ科コハナバチ属Evylaeus亜属carinate-Evylaeus群というところまでは達したのですが、それから先にはまだ何十種もいて名前まではたどり着いていません。でも、顕微鏡で見ると、いろいろと面白い構造が見えるので、また、今度詳しく調べてみようと思っています。

追記2016/03/19:「日本産ハナバチ図鑑」では、Evylaeus亜属がcarinate-Evylaeus群、carinaless-Evylaeus群、green-Evylaeus群の3つの群に分けられることは書かれているのですが、どのハチがそれに属するかは書かれていません。これについては次の論文に載っていました。

R. Murao and O. Tadauchi, "A Revision of the Subgenus Evylaeus of the Genus Lasioglossum in Japan (Hymenoptera, Halictidae) Part I", Esakia 47, 169 (2007). (ここからダウンロードできます)

これによると、「日本産ハナバチ図鑑」のp. 173-190がcarinate-Evylaeus群、p. 191-222がcarinaless-Evylaeus群、p. 223-229がgreen-Evylaeus群のようです。一応、学名の種名がアルファベット順にはなっていました。これで、carinate-Evylaeus群で近畿地方にいそうなのは10種に絞られました。これらはapristum種群、calceatum種群、latilabrum種群、percrassiceps種群、vulsum種群の5つの種群に分けられるようです。論文にはそれぞれの種群の定義が載っているので、もう少し攻めていけると思います。なお、carinateを辞書で引くと「竜骨状の」という意味になるのですが、前伸腹節にある隆起線のことを指すのだと思われます
)(追記2016/03/19:種への検索表も載っていました

追記2016/03/20:Ebmer(1995)(独語)をちらっと読むと、carinateは前伸腹節垂直面の上面と側面が稜で句切られていることを示しているようです。種への検索はなかなか難解です。今のところ、検索の結果、ニジイロコハナバチ L. (E. ) apristumになっているのですが、まだはっきりしていません)(追記2016/03/21:後脛節棘が2本あるのですが、どちらを見るかで間違っていました。inner hind tibial spurのinnerを前側と解釈していました。これは腹側の意味みたいです。もう一度、振り出しに戻ります→今度はキオビコハナバチ L. (E.) sibiriacumにたどり着きました。腹部第1背板T1の点刻はよく似ています。これで終わると良いのだけど・・・



公園にはモクレン?の花がいっぱい咲いていました。

ハエの刺毛の勉強

今日はハエの刺毛(剛毛)の勉強です。というのも、先日、検索したイエバエ科のハエが本当にそうなのかどうか確かめるためにその種の説明を読むと、acとかdcとか訳の分からない記号がいろいろと出てきたからです。これらは刺毛の記号なのですが、これについて勉強してみようと思いました。

いきなり先日のハエを調べようとしても名前自体がはっきりしていないので、これよりはもう少し確かそうな、以前検索したハナレメイエバエについて調べてみました。



刺毛を調べたのはこのハエです。以前、「日本のイエバエ科」に載っている検索表を用いて検索し、イエバエ科ハナレメイエバエ亜科シリボソハナレメイエバエ属リュウキュウシリボソハナレメイエバエ Pygophora maculipennis Stein, 1909という大変長い名前の種にたどり着きました。そのものズバリではないとしても、おそらくその近辺の種だと思われるので、「日本のイエバエ科」に載っているリュウキュウシリボソハナレメイエバエの説明を読んでみました。

1) 2 inclinate ori and 2 reclinate ors present
2) ac 0+0, 2 rows of small setae only; dc 1+3; ia 0+2; h 2; ph 1; prs 1; nt 2; pra absent; sa 1; pa 2; scut 1 preapical, 1 lateral, 1 small discal; st1+2

刺毛に関してはこんな記述がありました。まるで暗号です。それで、まずこの記号の意味を調べてみました。



後で用いる記号も合わせて載せました。大体は「新訂 原色昆虫大図鑑III」に載っていたものです。上が頭部の刺毛、下が胸部の刺毛の名前です。それぞれが何に対応するか写真に書き込んでみました。



まずは頭部です。複眼の脇の細い帯状の部分に刺毛が集まっています。これを額刺毛 frというようです。これは前の部分oriと後ろの部分orsに分かれます。この写真の場合、oriの2本は内側に向いているのでinclinate、orsの2本は後ろ側に向いているのでreclinateということになります。さらに、単眼からはocがでて、後ろにはvti、vte、pocなどの刺毛が生えています。

次は胸部背面です。



これまでも刺毛に名前をつける練習をしていたのですが、今回は、刺毛1本1本に名前をつけていき、本数を数えて説明と合っているかどうか確かめなければならないので、かなり大変な作業でした。というのも、大きな刺毛の他に中途半端な長さの刺毛があって、どの大きさの刺毛までを指しているのかよく分からなかったからです。本の記述と合うように名前をつけていったのが上の写真です。

まず、背中の中心部分には短い毛しかないので、ここにあるべき中刺毛acはないことになります。胸の中央部分には横線(破線)があり、その上に0本、下に0本なので、0+0と書かれているようです。同様に、背中刺毛dcは1+3になります。こんな風に名前をつけていけばよいのですが、一番迷ったのはprsと書いた刺毛です。これをsaと結んでsa 1+1とすべきではないかと悩みました。でも、この辺りは本によってもだいぶ違うようです。ここでは、「日本のイエバエ科」に従って名前を付けてみました。

追記2016/03/21:小盾板について書くの忘れていました。小盾板では3本の刺毛が目立ちます。本には1 preapical, 1 lateral, 1 small discalと書かれていたのですが、preapicalは亜先端、lateralが横、discalは円盤です。これがたぶん写真のas、ls、dsに当たるものだと思われます



最後は胸部側面です。stという刺毛は三角形に並んでいます。やや前よりに歪んだ三角形なのですが、1+2と書かれていました。2+1ではないのかなと思ったのですが・・・。ともかく、これでほぼすべての刺毛の説明がついたので、やはりシリボソハナレメイエバエの仲間であることは間違いなさそうです。

ハナレメイエバエでの練習がうまくいったので、次はこの間のイエバエで試してみました。



今度はこんなイエバエです。検索してみると、イエバエ科イエバエ亜科トリノスイエバエ属のトリノストゲアシイエバエになったのですが、今回はかなり怪しい感じです。そこで、刺毛を調べてみました。「日本のイエバエ科」の説明によると、

1) ori extending almost up to ocellar triangle, upper most pair strong
2) ac 2-3+1; dc 2+4; ia 1+2; h 2; ph 1; nt 2; pra absent; sa 1; pa 2; scut 1 preapical, 1 lateral; st 1+2

となっています。同様の内容が一昨日紹介した論文

M. Iwasa and K. Hori, "A new record of Potamia littoralis Robineau-Desvoidy (Diptera: Muscidae) bred from birds' nests in Japan", Jpn. J. Sanit. Zool. 44, 395 (1993). (ここからダウンロードできます)

にも載っていました。

1) 7-8 fr; 2 proclinate and 2 reclinate or; 1 oc, 1 poc, 1 vti, 1 vte
2) ac 3+1, dc 2+4, ia 1+2, h 2, ph 1, nt 2, sa 1, pa 2, sct 2 (1 apical, 1 basal), st 1+2

後者の説明のうち、1)は♀についての頭部の記述で、2)は♂についての胸部の記述です。胸部は基本的に前者も後者も同じです。これらについて調べていきます。



まず、頭部です。前者の説明で、oriが単眼三角板まで届くという記述は変ですね。orsの間違いではないかと思いました。orsは内側に向いていて確かに単眼まで届いています。後者の説明については、frは全部で7、前の2本は前に向いて、後ろの2本は後ろに向いている感じなので、後者の記述とはよく合っているようです。



次は胸部背面です。実はしょっぱなから違っています。本ではac 2-3+1、論文ではac 3+1と書いてあるのですが、何度見ても後ろの1本だけしか見つかりません。また、本にはPotamia属の特徴として、横線前のacが強いというと書かれているのですが、これも見当たりません。やはり間違っていたのか・・・。さらに、dc 2+3; ia 1+2もちょっと違います。h 2; ph 1; nt 2は合っていますが、さらに、praみたいな刺毛が見られます。ということで、本の記述とかなり違うようです。



最後のst 1+2はこれでよさそうです。ということで刺毛で見る限り、どうやら同定が違うのではと思うようになりました。でも、何度検索を見直してみても、間違っていそうなところが見当たりません。「日本のイエバエ科」を使って検索を始めてから、いつもこんな状態になってしまいます。イエバエとはよほど相性が悪いのかなぁ。

イエバエの同定で苦しむ

「廊下のむし探検」ができなくなって、家で虫を調べることの方が多くなりました。この間、イエバエ科の待望の本を借りることができました。

篠永哲、「日本のイエバエ科」、東海大学出版会 (2003).

折角、借りてきたので、一度、検索をしてみようと思って、先日、捕まえたイエバエを調べてみることにしました。しかし、これが大苦戦の始まりでした。昨日から調べ始めたのですが、何度調べてもそれらしい種に到達できずに、あっちうろうろ、こっちうろうろ、朝から晩までハエばかり顕微鏡で覗くことになってしまいました。その結果、到達先がまだ怪しい気がするのですが、もうどうしようもなくなったので、一度、まとめてみることにしました。



調べたのはこんなハエです。何の変哲もないハエなのですが、2匹捕まえたので早速調べてみました。



体長は6.2mm。♂♀の区別がつかないのですが、たぶん、♀の方ではないかと思っています。



上記の本の亜科の検索、その後の属の検索をしてみたのですが、イエバエ亜科トリノスイエバエ(Potamia)属になってしまいました。この属には、日本ではトリノストゲアシイエバエ Potamia littoralis1種だけが知られているのですが、説明を読むとどうも違うような感じがしています。

検索の過程は上の①から⑧までになります。上記の本は英語の他に検索表は日本語版も載っていて便利なのですが、内容が少し異なっているのが悩ましいところです。比べてみて、より正確だと思われる英語版を訳して使うことにしました。また、各部の名称は出来る限り「改訂 原色昆虫大図鑑III」に従うことにしました。それで、本とはちょっと違っているところがあることをご承知おきください。

例によって、各部の写真で検索の過程を示していこうと思うのですが、検索の順に説明していくとややこしくなるので、各部の写真の中に事項を書き入れて、それを見ていこうと思います。



まずは胸部側面の写真です。各部の名称は本に載っていた英語の略号を載せています。ここでは①上後側板に多数の剛毛がないことを確かめます。次の③の基覆弁が舌状という項目があります。翅を広げて写そうと思ったのですが、うまくいかなくてこんな感じになってしまいました。舌状でないともっと広くて、端が胸部にくっつくような感じなので、たぶん、舌状でよいのだと思います。⑤は後脚基節の後ろ側先端に剛毛がないことを確かめます。最後に⑥の下前側板剛毛が3本でその配列が前に1本、やや後ろに2本あることを1+2と書いているのではないかと思います。

追記2016/03/18:基覆弁を写してみました。



基覆弁の内側は小盾板に接するところまではいっていません。従って、舌状でよいのではと思います




これは後脚脛節です。中心線に対して左が前側、右が後ろ側になります。先端から1/3のところに後ろ向きの背剛毛があるみたいです。この条件でイエバエ亜科になりました。



次は翅脈です。⑥のSc脈の「中間部分で波状」はそのものずばりです。⑧の「M1+2脈は直線状」というのも確かでしょう。



これは触角刺毛です。長い羽毛状であることは確かです。ということで、検索の項目はすべて確かめられたのですが、どうもまだ違っているような気がして仕方ありません。トリノストゲアシイエバエというのは次の論文に発見当時の話が出ていました。

M. Iwasa and K. Hori, "A new record of Potamia littoralis Robineau-Desvoidy (Diptera: Muscidae) bred from birds' nests in Japan", Jpn. J. Sanit. Zool. 44, 395 (1993). (ここからダウンロードできます)

このハエは実はシジュウカラ、コムクドリなどの樹洞性の鳥の巣から見つかったということです。幼虫は鳥の羽、皮膚の剥片、皮脂、糞尿が混じったところから発生するようです。そんな変わったハエが我がマンションにいるというのが信じられないのと、説明を詳しく読んで特徴を比較してみないと何とも言えません。一応、各部の写真を載せておきます。後で確かめてみたいと思います。





頭部と胸部の写真です。この剛毛を調べていかなければいけないのです。

イエバエ科の検索をやってみました。正直言って、大変難しかったです。亜科の検索は他のいくつかの論文にも載っていたのですが、やってみるとそれぞれ違う亜科になってしまいました。この本の検索表を用いても、やるたびに属が違ってしまって、途中で何度も挫折しそうになりました。最後に、Manual of Nearctic Dipteraに載っている検索表を試した結果、同じPotamia属になったので、とりあえずここに出してみることにしました。でも、まだ怪しいです。(追記2016/03/19:「日本のイエバエ科」とIwasa(1993)に載っているトリノストゲアシイエバエの刺毛の記述と比較しました。ac、dc、iaの記述が合いません。とりあえず、保留ということにしておきます。ちょっと嫌になってきた・・・

久々の廊下のむし探検 春キリガ、ハエなど

廊下のむし探検 第822弾

久々の「廊下のむし探検」です。マンションの改修工事が進み、南半分はほぼ幌で覆われました。北側はまだ一部だけなので、虫はそこそこやってきます。ただ、平日と土曜日は工事関係者があちこちでペンキを塗ったり、シートを敷いたりしていて、まるで工事現場のようでちょっと歩く雰囲気ではありません。昨日の日曜日は工事がお休みなので、のんびりと歩くことができました。

久々に歩くと、やはりマンションの廊下は虫が多いですね。公園ではほとんど見つからなかったのに・・・。私はすっかり楽な「むし」観察に慣れてしまっているようです。



春キリガがポツポツ出てきていました。これはブナキリガ



床でもがいている奇妙な蛾、と思ったら、錆止め塗料をかぶったブナキリガだったのですね。



カバキリガもいました。



それにシロヘリキリガ



キリガではないのですが、フユシャクの仲間のシロフフユエダシャクです。



それにマエアカスカシノメイガ



後はハエの仲間が多いのですが、これはビロードツリアブ



以前検索をしてトゲハネバエ科ということになった種ですね。合っているのかなぁ。もう一度捕まえて調べてみればよかった。この日は2匹いました。



いわゆるハエでちょっと気持ち悪いのですが、これはたぶんニクバエですね。見どころは次の2点です。



Aに三本の黒筋が入ることと、Bの折れ曲がり点が翅縁から離れていること。



こちらはイエバエだと思われます。「日本のイエバエ科」を借りてきているので、今度調べてみます。2匹いたので、一応、2匹とも採集してきました。



これも以前調べてクロバエ科になった種だと思います。



これはヒメガガンボ科ではないかと思いました。これのポイントは、



AはSc脈が翅縁に達すること。写真に撮ったとき、これが一番見難いです。BはR脈が3本あること。CはA脈が1本あること。



後は、小さなユスリカ。もう少し大きいのが出てきたら、一度検索をしてみます。



小さなテントウ。



スケールと比較すると分かります。たぶん、ヒメアカホシテントウ



最後はヒメカゲロウ。これのポイントは次の点です。



まず、Aのところに曲がった脈があること。これはrecurrent veinと言って、重要な性質の一つです。チャバネヒメカゲロウなどにはこの脈はありません。BはR脈が3本以上5本以下あること。Cは段横脈(矢印のように脈を横断している脈の列)が2系列あること。これでHemerobius属になります。それで、たぶんヤマトヒメカゲロウではないかと思います。

トゲトビムシの同定 続き

先日、家の近くの公園で捕まえてきたトビムシの検索をしてみました。

須摩 靖彦、「日本産トゲトビムシ科の分類」、Edaphologia 84, 25 (2009). (ここからダウンロードできます)

この論文に載っている検索表に従って調べていくと、トゲトビムシ科トゲトビムシ属トゲトビ亜属まではたどり着きました。この先で、跳躍器の茎節にある棘の二次微棘が先端近くまであればトゲトビムシ、基部を取り巻くように並べばイシバシトゲトビムシというところにまで達して止まっていました。前回のブログを見ていただくと分かるのですが、二次微棘はどちらとも言えない感じだったのです。そこで、この2種を別の特徴から調べてみようと思いました。

最近は「廊下のむし探検」になかなか行けないので、近くの公園に行っているのですが、そらさんから教えてもらった虫の見つけ方でもなかなか虫が見つかりません。結局、トビムシを何匹か捕まえて調べることにしました。



今回はこんなトビムシですが、調べてみると前回調べた種と同じようです。前回は跳躍器を腹部の下に折り曲げていたのですが、これは伸ばしていました。それで、茎節の棘をもう一度写してみました。



前回と同じで、茎節の基部から4本、次に4本、さらに外側に2本大きな棘があります。これを茎節棘式と言って、4/4, IIと書くみたいです。この棘式からも種が分かることがあるのですが、トゲトビムシもイシバシトゲトビムシも同じ棘式を持っているので、これからは区別ができません。

論文に載っている種の説明を読むと、茎節棘の二次微棘だけでなく、保体の毛の数でも区別ができるそうです。保体というのは腹部腹側にあって跳躍器を留めておくものだそうです。



腹部の溝の中央にあるこの白い突起を保体というようです。生物顕微鏡を用いて拡大してみます。



奇妙な形のものが見えてきました。さらに拡大してみます。



たぶん、跳躍器の2本に分かれた茎節の間に刺さって留めておくのでしょうね。滑らないように滑り止めまでついています。この保体に9本くらいの毛がついています。イシバシトゲトビムシでは約4本、トゲトビムシは15本前後なので、トゲトビムシに近いな思ったのですが、保体の基部に7枚ほど鱗が見えています。これが問題です。実はトゲトビムシもイシバシトゲトビムシも基部に鱗がないと書かれていたのです。鱗を手がかりに近縁の種をいろいろと調べてみたのですが、鱗があって、しかも茎節棘式が同じものが見つかりません。そこで、別の特徴も調べてみることにしました。



これは脚の爪です。上が主爪、下が副爪です。イシバシトゲトビムシでは、「主爪は細く、6個の内歯があり、背側の1対の側片、副爪は槍型で内歯がない」、トゲトビムシでは、「主爪の内歯は4~5個で、そのうち基部の1個は大きい。一対の側片がある。副片は槍型で、内歯が一つあることもある」とのことでした。この写真の個体は、小さな歯も入れると、主爪には4個、そのうち、基部の歯が大きいというところはトゲトビムシに合っています。側片はどれだろう。とにかく、このことから、トゲトビムシで良さそうですが、先ほどの保体の鱗のことを考えると、本当にトゲトビムシでよいのかどうか悩むところです

トビムシもなかなか難しいですね。でも、少しずつ慣れてきました。

ハエの翅脈 その4

先日から三枝豊平氏の次の原稿を読んでいます。

T. Saigusa, "A new interpretation of the wing venation of the order Diptera and its influence on the theory of the origin of the Diptera (Insecta: Homometabola)", 6th International Congress of Dipterogy, Fukuoka 2006. (ここからpdfがダウンロードできます)

素人の私には難解だったのですが、少しずつ調べながら読んでいると、何となく分かってきた感じがします。三枝氏は7つの根拠から、ハエの翅脈に対する従来までの考え方を改めようとしています。このうち6つまではすでに書いてきたので、今回は最後の根拠「翅脈の構造」についてです。



これはガガンボダマシの翅脈なのですが、ポイントとなるのは赤字で書いた部分です。特に、この中の"CuP"と書いた筋の解釈が主要なポイントです。従来まではこれを"CuP"脈として、赤字で書いたようにその下をA1脈、さらにその下をA2脈としていました。三枝氏は7つの根拠から、"CuP"は本当の脈ではなく、A1と書いた脈をCuPとすべきで、従って、A2と書いた脈がA1になると主張しました。

その根拠の一つに翅脈の構造があります。翅は袋のような膜の両側がくっついて一枚の膜状になったものですが、その表側、または裏側、あるいは両方ににクチクラが蓄積すると、内部が中空の翅脈になります。この翅脈が退化してくると、クチクラの蓄積量が減り、内部は中空ではなくなってきます。これが普通の翅脈です。しかし、"CuP"と書かれた脈は普通の脈と性質が異なっています。これについてはRodendorfが1964年に偏光を用いた測定で明らかにしているようです。(追記:原文はロシア語で、しかも、手に入らないので、どんな方法で測り、どんな結果を得たのか分かりません

以前にも偏光板を用いて撮影をしたことがあったのですが、今回はこの"CuP"が擬脈と同じ光学的な性質を持っているかどうか調べてみることにしました。擬脈といえば、ハナアブを思い出します。そこで、手元にあるアシブトハナアブの標本を使って偏光写真を撮ってみました。



これは透過照明で普通に撮った写真です。翅脈の名称は私が勝手に書き入れたので、間違っているかもしれません。赤字のaは擬脈です。また、赤字のbはここで問題にしている"CuP"です。撮影は実体顕微鏡の透過照明を用いました。透過照明は試料の下から照明するのですが、まず、照明の上に直線偏光板を置きます。その上にペフ板を置いて、その一番隅に標本を止めている針を刺します。こうすると、翅に直接透過照明の光を当てることができます。そうして、対物鏡の前に別の直線偏光板を入れます。これは最初に置いた偏光板と直交するようにします。実際には実体顕微鏡を覗きながら真っ暗になるように角度を調整します。そして、この状態で撮影します。



まずは遊びのつもりで小さなプラスチックシャーレを偏光板の間に入れてみました。背景は真っ黒なのですが、シャーレの内部は色がついています。特に左上は色の変化が急です。これはこの部分に歪があるからです。歪があると、方向により光学的性質(屈折率)が変わるので、明るくなると同時に、歪の程度により色もつきます。



これはアシブトハナアブの翅で同じように撮った写真です。直線偏光板の向きを図の矢印のように斜めに向けると、aはほとんど真っ暗に写りますが、bは鮮やかに光ります。



これは拡大したものです。綺麗な黄色の筋が見えます。



今度は偏光方向をaやbの筋にほぼ直角になるように置きます。そうすると、aもbも暗くなってしまいます。このことは何を意味しているかというと、bは筋に沿った方向とそれに直角の方向では光学的性質が違うことを意味しています。たぶん、この筋に沿って(あるいは、筋に直交して)繊維が走り、この筋を作っていると思われます。これに対して、擬脈や普通の翅脈は向きを変えても明るくならないので、光学的には等方的だということを意味します。つまり、これらの脈がもし繊維で作られているとすると、方向が揃わずランダムな向きの繊維によって作られていることになります。このことから、"CuP"はそのでき方も普通の翅脈や擬脈とは違っていることが考えられます。つまり、こんな変な筋をCuP脈とするのは妥当ではないという主張に結びつきます。

面白いのは偏光方向を縦にした時にA1が光っていることと、斜めにしたときに擬脈の基部付近が光っていることです。これらの部分は"CuP"と同じで、方向性を持った作りになっていることを意味しているのでしょうね。

三枝氏の原稿ではこの他にもいくつかの点を論じているのですが、M4脈については以前も書いたので、ここではハエの翅のA領域の減少について原稿の内容を基に考えてみました。



三枝氏の論文ではガガンボダマシとシリアゲムシの翅脈を比較して議論しているのですが、Rsの分岐とA2脈が翅端に達するところを結んだ領域でガガンボダマシとシリアゲムシの翅脈を比較しています。これはシリアゲムシの翅脈ですが、両者を結ぶと翅の基部がほぼ覆われます。



ガガンボダマシのA2脈とA3脈は分かりにくいのですが、原稿の絵を参考にすると、上の写真の部分になるようです。両者とも基部付近に短くあるだけです。従って、Rs脈の分岐点と結ぶと次のようになります。



シリアゲムシと比較すると、A脈の領域が極端に少なくなっていることが分かります。このようにA領域が少なくなっているのは、進化の過程でハエの獲得した形質だと考えられます。



これはこの間調べたハナレメイエバエの翅脈ですが、A脈のみならずCu脈もだいぶ弱くなっています。このように後翅をなくしたばかりでなく、前翅の後半部分も退化させていっているのはハエの飛翔方法と関係していると考えられます。

通常の昆虫は前翅と後翅を連結させ、まるで、一枚の翅のように飛翔します。この場合、面積が大きくなるので打ち下ろすときは大きな浮揚力が得られます。翅を引き上げるときは、翅を縦に折って空気抵抗を小さくしていると考えられます。シリアゲムシは連結機構を持っているのかどうか分かりませんが、前翅の前縁部分には強固なC、Sc、R脈があり、後縁部分には強固なA領域があります。その間には比較的弱いM脈とCu脈の領域があり、翅を引き上げるときには、R脈とM脈の間とclaval furrowの2つの折れ目を使って、翅をZ型にして引き上げているのではないかと考えられます。(追記:シリアゲムシについては次の論文に載っていました。

A. R. Ennos and R. J. Wootton, "Functional Wing Morphology and Aerodynamics of Panorpa germanica (Insecta: Mecoptera)", J. exp. Biol. 143, 267 (1989). (ここからpdfがダウンロードできます)

前後翅は連結しないで、両翅とも翅の中央部分で、
翅を横断する折り目に沿って翅の先端側が折れるようです。意外でした。高速度カメラで撮ると分かるみたいです。カメラが欲しくなった・・・

これに対して、A領域の弱いハエは同じようにして翅を引き上げることができません。それで、別の折り目を使って羽ばたいていると考えられます。上の写真をよく見ると、Sc切目を出発点に何となく折れ目が見えています。



実際にハエの翅を折り曲げながら調べてみると、上の破線の位置で折れ曲がることが分かりました。これならば、翅の基部の前縁部分さえしっかりしていれば、A領域は弱くても大丈夫なのかもしれません。こんな折り方がホバリングしたり、小さく動きまわるハエの動きには都合のよいのかしれません(この辺りの話は私の考えです)。

これでハエの翅脈の勉強を終わりにします。難解だった原稿もじっくり読んでいくことで、少しずつ内容が分かってきた感じです。同時に、飛翔との関係で面白さも分かってきました。(追記2016/03/12:いつもは斜め読みしている論文ですが、たまにじっくり読んでみるのもよいですね。分かるところと分からないところがはっきりしてきます。全体を通して見ると、翅脈と翅底骨の関係の辺りと、最後の飛翔との関係の辺りがもやもやしています。今後、もう少し勉強をしてみたいと思います。今度はEnnosかWoottonの論文でも読んでみるかな。ブログを始めて3年4ヶ月ほどになりますが、その間にダウンロードした論文や本が1300件にもなることが分かりました。これだけ全部ちゃんと読んでいたら今頃は専門家になっていたかもしれませんね。でも、私はいつまでも素人のままでいたい・・・

トゲトビムシの同定

「廊下のむし探検」はマンションの改修工事のために、家の近くの公園や河原に引っ越しました。公園に行ったもののどこを探したら虫がいるのか勝手が分からず、うろうろしていたら、公園の主のような人が現れ、枯れ葉をわっとのけてくれました。見てみると小さな虫がぴょんぴょん跳ねています。これがトビムシなのですね。これは面白いと思って、写真を撮ったり採集したりしました。



何種類かいたのですが、とりあえず触角の長い、たぶん、この種を調べてみました。先日、この個体の科の検索をして、トゲトビムシ科にたどり着いたのですが、今回はその先の種への検索です。前回に出した写真をもう一度出しておきます。



体長は3.2mm、採集したのはこんな個体です。採集後、冷凍庫に入れていました。



腹側を見てみると、腹端で折れ曲がったこんな跳躍器が見えます。この先端部分を端節、中間の部分を茎節、根元の部分を柄節といいます。跳躍器は茎節から先は2つに分かれています。茎節の内側には黒い剛毛が生えています。これを茎節棘というようです。これの生えていることがトゲトビムシ科の特徴のようです。



頭の部分の拡大です。触角の根元には小さな眼が並んでいます。これを小眼というようです。全部で6個見えます。それで小眼数は6+6というような書き方をします。

さて、トゲトビムシ科の種への検索表は次の論文に載っていました。

須摩 靖彦、「日本産トゲトビムシ科の分類」、Edaphologia 84, 25 (2009). (ここからダウンロードできます)

検索表は絵解きでたいへん分かりやすいのですが、跳躍器の茎節棘や端節を詳細に調べていかなくてはならないので、かなりレベルの高いものです。これを何とかかんとかやっていき、最終的にはトゲトビムシ Tomocerus (Tomocerus) ocreatus Denis, 1948あたりにたどり着きました。まだ、怪しいところがあるので、確定はできないのですが、その過程を示していきたいと思います。



途中、迷ったところとか、判断がつきにくいところがあったので、その部分も一緒に書いておきます。これを1つずつ見ていきます。



①と③は跳躍器の茎節の部分なので、生物顕微鏡でその部分を拡大してみました。確かに茎節の外側には剛毛はありません。また、これははっきりしないのですが、内側基部には付属器という特別のものはないようです。②の後肢転節器官の器官が何を意味しているのか分かりませんが、絵によれば転節と腿節が結合している部分の両側に一本ずつ毛が生えています。顕微鏡では分かるのですが、写真ではうまく撮れなかったので、これはパスです。眼はあります。



次は跳躍器の先端の端節についてです。端節基部に内基歯と外基歯という2つの突起があることはこの写真でも分かります。さらに、端節の内基歯に沿って細かい歯が並んでいます。検索表ではこれらについてさらに詳しく見ていかなければなりません。いろいろとやってみたのですが、どうしてもこの写真以上に細かくは見えません。

意を決して、跳躍器を本体からはずして、プレパラートにしようと思いました。やり方は消毒用アルコールにしばらく浸けて体を柔らかくしてから、昆虫針の00番を右手と左手に一本ずつ持って、実体顕微鏡の下で、一方で腹部を押さえ、もう一方で、跳躍器を起こして腹部末端で切り取りました。そうして、消毒用アルコールに入れてカバーガラスで押さえ、顕微鏡観察しました。



そうして撮れたのがこの写真です。この写真では茎節基部内側に付属器らしいものがないことがよく分かります。また、柄節と茎節、茎節と端節の区切りもよく分かりました。アルコールに浸けておいたら、こんな風に茎節の途中から湾曲しました。筋肉が収縮したせいかもしれません。これと跳躍機構が関係しているかも。



で、倍率を上げて端節を見てみました。端節基部には基歯が見えます。これには2本あるはずなのですが、たぶん内基歯の方にピントが合っているのではと思います。中間付近には中間歯と呼ばれる小さな歯が全部で8本ありました。さらに、末端には端歯と亜端歯があります。やはりプレパラートだとよく見えますね。

⑤はその基歯の外側に歯があるかどうかです。



この写真をみると、内基歯と外基歯が分かれて見えます。これは透過照明での写真なのですが、ピントを変えながら10数枚撮影し、後で深度合成をしています。そこで、その中の写真で外基歯と内基歯にピントが合った部分を取り出すと、



こんな感じになります。内基歯の斜面は滑らかなのですが、外基歯は一部膨らんでいる感じです。これを小歯というのかなと思ったのですが、怪しいのでもう一方の道も進んでみました。こちらはヒメトゲトビ亜属に進むのですが、最終的に中間歯の数、茎節棘の数などが合いません。たぶん、こちらではないのでしょう。ということで、外基歯に小歯があるというトゲトビ亜属の方に進みます。

次は⑥の茎節棘の微細な構造についてです。



まず、その部分を拡大します。後で出てくるのですが、出てきたついでに説明すると、茎節棘は根元側、中間、先端と3つのブロックに分かれます。それぞれの毛の数を数えていきます。まず、根元にには小さな棘が4本、中間にも小さな棘が4本、先端には大きな棘が2本。これを4/4, IIと書いて、茎節棘式と呼ぶようです。これも種を特定するときに必要な情報になります。さて、この棘をさらに拡大してみます。



棘はスラッとした形ではなく、表面が何かぎざぎざした感じです。これが多分⑦の2次的微棘というのだと思います。小さい棘にも大きな棘にもあるので、⑦はOKのようです。次の⑧で迷いました。この2次的微棘が根元だけにあるのか、基部から先端まであるのかというのです。確かに途中までギザギザしているので、先端までというべきなのかもしれません。そうだとすると、トゲトビムシになります。

一方、微棘が根元だけだとすると、いくつかの過程を経て、イシバシトゲトビムシになります。大きさは共に3.5mm。茎節棘式も同じです。その他、説明に書いてある触角/体長を測ってみると、実測では1.0、トゲトビムシは触角が体長より長く1.15、イシバシトゲトビムシは1以下。跳躍器の柄節:茎節:端節の長さの比は、トゲトビムシで30:45:12、イシバシトゲトビムシは36:45:9、実測は31:45:8~10。数字は茎節の長さを一定にしました。また、実測に範囲があるのは、標本そのままで測ったものと、跳躍器を取り外し消毒用アルコール内で測ったものを示しています。端節の長さを見る限り、寸法的にはむしろイシバシトゲトビムシに近いようです。さらに、端節の中間歯の数は、トゲトビムシでは4~6、イシバシ5~8、実測8と、これもイシバシを支持しています。ただ、イシバシトゲトビムシの体色は頭部と触角第1,2節は濃い紫色、残りは薄い黄色というところが違います。これに対して、トゲトビムシの体色は焦げ茶、しばしば胸部の縁に沿って紫色というので、トゲトビムシに近いようです。それで今のところ、茎節棘の2次微棘が中ほど以上にまであるというところを重く見て、トゲトビムシ60%、イシバシトゲトビムシ40%くらいの感じかなと思っています。まだ脛跗節の毛数など他にも見るところがあるので、もう少し検討してみます。





解剖の過程で鱗片が落ちたので、これも写してみました。形や大きさが不揃いです。小さな黒い柄が見えていますが、不思議なことに端にあるわけではなくて少し中に入っているものもあります。鱗翅目の鱗粉とは少し違うようです。ただし、鱗粉と同じように細かい筋が形によらず平行に、しかも直線的に入っています。

ということで、相変わらず結論はもやもやなのですが、トゲトビムシの同定をしてみました。今回初めてプレパラートを作ってみました。試料は今も、消毒用エタノールの入った小さな小瓶に入れてあるので、いつでも見ることができます。これはなかなかいい方法だなと思いました。

ハエの翅脈 その3

三枝豊平氏のハエの翅脈に関する考え方を知りたいと思って、先日から次の原稿を読んでいます。

T. Saigusa, "A new interpretation of the wing venation of the order Diptera and its influence on the theory of the origin of the Diptera (Insecta: Homometabola)", 6th International Congress of Dipterogy, Fukuoka 2006. (ここからpdfがダウンロードできます)

素人の私にとってはなかなか難解で、標本の翅脈を見ながら少しずつ理解に努めています。この原稿では、ハエ目に近縁のシリアゲムシ目の翅脈と比較して、その相同性から、従来までのハエの翅脈の考え方を改めようとしています。その根拠として次の7つの点を挙げています。

1)Bittacus(シリアゲムシ目シリアゲムシ科ガガンボモドキ属)とTrichocera(ハエ目ガガンボダマシ科Trichocera 属)の翅脈の幾何学的(topological; 形態学的)類似
2) Bittacus属とTrichocera属の翅脈の凸脈と凹脈の比較
3)臀脈の位置
4)claval furrowの位置
5)翅脈基部での翅底骨への結合
6)翅脈と気管との関係
7)翅脈の構造

このうち1)から4)まではこれまで調べてきたので、今日は5)と6)を調べてみることにしました。5)は翅脈の基部の話なので難しくて、私には分からないところだらけでした。



これはハエ目に近縁のシリアゲムシ目のホソマダラシリアゲの前翅基部を拡大したものです。翅脈の基部が翅基部のいろいろな構造(翅底骨)とどのように結合しているのかを調べていくのです。とりあえず、三枝氏の原稿の図を見ながら名前をつけてみたのですが、実のところどれがどれだかはっきりしません。

この手がかりは原稿にも引用されていますが、次の本に載っています。

R. E. Snodgrass, "Principles of Insect Morphology", McGraw-Hill (1935).(ここからpdfがダウンロードできます)

この本と三枝氏の原稿によると、Ax1という翅底骨はSc脈の基部と結合します。Ax2はR脈の基部と、Ax3はA脈と結合します。一方、M脈はdistal median plate(DMP)という骨状の構造の前側で、Cu脈はDMPの後ろ側と結合しています。このmedian plateはAxのようなはっきりした構造ではないのですが、重要な役割を果たしています。medial plateはAx2とAx3の間にあり、たぶん、claval furrow(本ではvannal fold)という翅の折れ目と結びついた斜めの溝でPMP(proximal median plate)とDMPに分離されます。PMPはAx3の腕についたような構造で、おそらくAx3の一部だと思われます。これに対して、DMPは常に骨状の構造として存在するとは限らないのですが、M脈とCu脈の一般的な基盤部分として存在していると思われます。これらの詳細については上の本のFig. 122とその周辺の説明を読んでください。(追記2016/03/08:この部分が不明確だったので、Snodgrassの本を読み直して書き換えました

これらの知識から上の写真で名前をつけていくのですが、実のところかなり難しいです。Ax1からAx3は何となくSc、R、A脈と接している骨を選びました。これに対して、DMPとPMPがよく分かりません。この写真ではM脈はR脈のすぐ下側を走っていると思われるのですが、はっきりとは見えません。これが到達しているところがDMPの前部分です。一方、Cu脈の基部は細い透明の脈が見えています。この行き着く先がDMPの後ろの部分です。ということでDMPの場所を決めました。次に、DMPに連なった基部ということでPMPの場所を決めたのですが、Ax3というよりむしろAx2に着いているように見えます。うーむ。



これはガガンボダマシの方の翅の基部です。先ほどの知識をもって見てみると、シリアゲムシと同じように見えなくはない感じです。特に、M脈の基部とCu脈の基部は先ほどと同じみたいです。ここが重要で、もし従来までの解釈を使うと、Cu脈の基部はA1脈(あるいはA1脈とCu脈の合流部)として解釈するので、Ax3との関係が合わなくなります。でも、はっきりとは分かりませんね。この辺りはもう少し詳しい検討が必要です。



これはおまけで、ガガンボダマシの翅基部を生物顕微鏡で撮影してみました。綺麗には写ったのですが、あまりよくは分かりません。

次は、6)の翅脈と気管との関係です。翅脈の中には内部が中空になっている脈と潰れてしまって中空でなくなっている脈があります。中空の脈の中には呼吸に関係する気管、それに神経、それから体液が流れます。このうち、気管と翅脈との関係を調べようというものです。



これはTillyardが1919年に出した論文

R. J. Tillyard, "The panorpoid complex. Part 3: The wing venation", Proc. Lin. Soc. New South Wales 44, 533 (1919). (ここからpdfがダウンロードできます)

の中の図で、ツリアブ Comptosia属の翅基部の翅脈とその中を通る気管を描いたものです。上からは気管が伸びてきて、それが分かれてC脈、Sc脈、R脈にそれぞれ入っています。下の方は別の気管が伸びてきてCu脈に入り、それが2つに分離し、一方はCu1脈に、もう一方はTillyardがCu2+1Aとした脈の中に入っています。手元にビロードツリアブの標本があるので、それと比較してみます。



これはビロードツリアブの翅ですが、三枝氏に従って翅脈に名前をつけてみました。翅基部を見ると、



こんな感じになります。先ほど気管がCu脈に入って2つに分かれた部分は、この写真ではCuAとCuPになっています。つまり、この2つの脈はCu脈の2つの枝として解釈したら、気管を考える上で都合のよいことが分かります。



従来までの解釈による図も載せておきます。黄色の部分が異なるところです。つまり、CuAのすぐ下を走る筋を"CuP"脈に、CuP脈は"A1"脈としたので、Cu脈に入った気管は"CuP"には入らず、代わりに"A1"脈に入ってしまうという変なことになってしまいます。やはり、これを見ても三枝氏の解釈でいいような気がしてきました。(追記2016/03/08:従来までの解釈による図も載せておきました。翅の基部部分の翅脈がどう走っているのかよく分かりません。特にM脈の行方が分かりませんでした。Cu+Aというのもこれでよいのやら・・・)

これで原稿の2/3ほどを読むことができました。あとちょっとです。

廊下のむし探検 マルトゲムシほか

廊下のむし探検 第821弾

マンションの改修工事で、家の周りに足場が組まれました。工事の人がベランダや窓のところを行き来されるので日中はカーテンが閉めっきり状態になりました。お陰で家の中は真っ暗。まるで年中夜みたいです。

虫を観察に外にはときどき行ってみるのですが、なかなか虫は見つかりません。見つかっても同じ場所には同じ種類ばかりいて・・・。今更ながらマンションの廊下というのが如何に虫探しに適していたか実感しました。2月いっぱいで「廊下のむし探検」は終わったのですが、まだマンションの一部に足場が組まれただけで、幌は掛けられてはいません。それで、一昨日、ちょこっと廊下を歩いてみました。



こんな虫がいました。見覚えがありますね。たしかマルトゲムシ科の外来種でした。調べてみると、以前、通りすがりさんから教えていただいていました。Microchaetes属の一種で、各地で見つかっているのですが、オーストラリアからの移入種だという以外には情報がないみたいです。





今頃になるとムラサキナガカメムシが廊下をうろうろしています。



もちろんクサギカメムシも。何だか春を感じますね。カメムシを見て春を感じるのはちょっと変かな。



クサカゲロウもいました。いつものスズキかなと思ったのですが、



顔をアップすると、どうやらカオマダラクサカゲロウのようです。後で気が付きました。もう少し良く見ておけばよかった・・・。



ユスリカの♂ですね。今年はユスリカの検索にチャレンジしたいと思っているのですけど・・・。



久々のフユシャクです。ホソウスバフユシャク。例年2月の終わり頃から出ています。今年の2月終わりはバタバタしていてちゃんと探さなかった・・・。



それからホソバトガリエダシャクです。これは早い時には2月の終わり頃から出ていましたが、だいたいは3月初旬から見ています。



翌日見てみたら、向きを変えただけでそのままいました。

今年の啓蟄は3月5日。廊下を歩いた日がまさにその日でした。これから虫が続々出てくるはずなのですが、公園や河原を歩いても「廊下のむし探検」で見たほどの充実感や感動がありません。廊下を歩けなくなって逆に廊下に魅せられてしまいました。

2月いっぱいで近くの福祉施設を借りて行っていた写真展が終わりました。私が知り合いに案内を出したせいもあって、結構、いろいろな方が見に来られたようです。施設の方々にも好評だったみたいで、今年の8月にもまたやることになってしまいました。2月は鳥と動物が中心だったので、8月は花と虫にでもしようかなと思っています。

今回初めて写真展をやってみて、いろいろと反省点がありました。7mmのスチロール板(のりパネ)にA3版の写真を貼ったのですが、会場が乾燥していてあっという間に反ってしまいました。それで、裏につけた「ひっつき虫」がほとんど一点だけでくっついている状態になり、ときどき落ちてしまい、係の方にご迷惑をかけることになってしました。一部、2枚組みの写真はA2の両面紙張りのスチロール板にスプレー糊でA3写真を2枚貼ったのですが、こちらは反らなかった代わりにやや重すぎて、「ひっつき虫」では耐えられなかったのか、やはり時々落ちてしまいました。こちらは係の方が裏に紐の輪を貼り付け、天井からぶら下げるような形にしてもらいました。1ヶ月の長丁場なので、この辺りをどうにかしないといけないみたいです。

それから写真と簡単な説明だけだとあっという間に見終わってしまうだろうと思って、最近作った手作り図鑑を6冊ほど並べておいたのですが、これが意外に好評でした。並べていたのは、虫が3冊、鳥と動物1冊、それに、あちこちで撮った鳥の写真集、それと、シダの図鑑です。今年の夏までに残りの手作り図鑑を完成させたいなと思っています。今のところ、写真と名前だけを入れた簡易版はかなりできていて、種類の多い甲虫と蛾などがこれからになります。それとは別に、この簡易版に付け足すような形で、検索方法や各部の拡大写真、虫にまつわる話などを加えた詳細版を作っています(ほとんど私のブログのコピペなのですけど・・・)。こちらもハチ、ハエなどの大票田と甲虫・蛾を除くとだいたい仕上がりました。これもこの夏までに仕上げようかなと思っています。虫の図鑑は簡易版でも全部で600-700ページくらいにはなりそうで、ちょっとした大作になりました。できたらどうしようかな。地域限定で、内容も詳細版はかなりマニアックになるので、あまり欲しいと言われる方もいないだろうし・・・。

ハエの翅脈のつづき

昨日に引き続いて、三枝氏が書かれた原稿の続きです。この原稿はハエの翅脈に対して新しい解釈を与える重要な原稿なのですが、なかなか難解で、私のような素人には読んでいくのが大変です。そこで、地道に実物と対応させながら勉強していくことにしました。

この原稿の中では、ハエの翅脈に対する従来までの解釈をそのまま使うと、近縁のシリアゲムシ目との相同性がうまくいかないことが主張されています。そうして考えられた新しい解釈が昨日の写真のものなのですが、その根拠として次の7つを挙げています。

1)Bittacus(シリアゲムシ目シリアゲムシ科ガガンボモドキ属)とTrichocera(ハエ目ガガンボダマシ科Trichocera 属)の翅脈の幾何学的(topological; 形態学的)類似
2) Bittacus属とTrichocera属の翅脈の凸脈と凹脈の比較
3)臀脈の位置
4)claval furrowの位置
5)翅脈基部での翅底骨への結合
6)翅脈と気管との関係
7)翅脈の構造

昨日はこのうち1)を説明したので、今日はその続きにいきます。2)は凸脈と凹脈の比較です。

翅脈に凸脈と凹脈があるのは、すでにComstock(1918)やTillyard(1919)などの本や論文にも書かれていました。この間買ったChapmanの"The Insects 5th ed."(2013)の中の絵を真似して描くとこんな感じになります。



つまり、翅は平らでなくて、翅脈の部分で膨れたり凹んだりして、細かく折れ曲がっていることを示しています。convex veinsと書いたものが凸脈、concave veinsと書いたものが凹脈です。どの脈が凸脈になって、どの脈が凹脈になるかは種類によってあまり変化せずにほぼ一定です。この性質を使って、シリアゲムシとガガンボダマシが同じような翅脈かどうか確かめようというのです。このような翅脈の凹凸は翅の基部付近では顕著なのですが、末端ではあまりはっきりしません。そこで、基部付近を見ることにします。




これはホソマダラシリアゲの翅の基部です。ここで、+と書いたものが凸脈で、-が凹脈です。Cu脈は基部の部分では凹脈になっているのですが、CuAとCuPに分かれた後、CuAは凸脈になり、CuPは凹脈になっています。また、M脈はR脈と分離した直後は凸脈なのですが、CuA脈との横脈を過ぎた辺りから凹脈に変わっていきます。これに対して、A脈は全て凸脈です。このような性質をガガンボモドキと較べてみます。






上が従来までの解釈、下が三枝氏の提案している解釈です。赤字の部分が異なるところです。まず、下の写真から見ていくと、先ほどのシリアゲムシの場合とほぼ同様です。M脈は初め凸脈なのですが、CuA脈と一時的に癒合した後からは凹脈になります。Cu脈は初め凹脈なのですが、CuAとCuPに分かれた後、CuAは凸脈、CuPは凹脈に変わっていきます。これに対してA1はずっと凸脈です。一方、従来までの解釈だと、MやCuはそのままでよいのですが、"A1"とされた脈が途中から凹脈に変わっていきます。一般にA脈は常に凸だということが知られていますので矛盾が出てきます。このことから新しい解釈の方が妥当だということになります。

次は3)の臀脈(A脈)の位置と4)claval furrowの位置に関してです。この2つは関連しているので、一緒に論じます。A脈は翅の後縁付近にある脈です。C脈、Sc脈、R脈は翅の前縁部分にある脈です。以前、昆虫の翅を凧に例えたことがあったのですが、凧の骨の部分に相当するのが前縁部分と後縁部分の翅脈になり、共にガッチリした翅脈になっています。この2つの骨の間には弱い翅脈あり、また、翅の折り目であるclaval furrow(cl. f.)などがあります。それにより、翅を打ち下ろすときには翅を張り、引き上げるときには翅の一部を折って全体にZ型にして抵抗を減らすという仕組みになっています(こちらも参照)。

したがって、A脈の部分は常に頑丈な一枚板にしておかなければなりません。シリアゲムシではA1からA3脈がその役割を果たしているのですが、ガガンボダマシではA1脈とたぶん、翅の後縁の脈がその役割を担っているものだと思われます。これに対して、従来の解釈では翅の折れ目であるcl. f.がA1脈とA2脈に間に入ってしまっています。

さらに、シリアゲムシの写真を見ていただくと、cl. f.と書いた矢印の先にはcu-a1という横脈あるのですが、ちょうど折れ目の部分は膜質になって折れやすくなっています。これと同じように、ガガンボダマシでは同じcu-a1横脈は膜質でちょっと見えにくくなっています。このように三枝氏の解釈を用いると、シリアゲムシとガガンボダマシとの対応は非常によくなります。

また、長くなってしまったので、脈基部構造については次回に回します。

ハエの翅脈の勉強

この間から、ハエ目の翅脈について勉強しています。今回は三枝豊平氏による次の原稿について勉強してみました。

T. Saigusa, "A new interpretation of the wing venation of the order Diptera and its influence on the theory of the origin of the Diptera (Insecta: Homometabola)", 6th International Congress of Dipterogy, Fukuoka 2006. (ここからpdfがダウンロードできます)

この原稿では、シリアゲムシ目ガガンボモドキ科とハエ目のガガンボダマシ科の翅脈を比較して、ハエ目の翅脈に対して新しい解釈を与えようとしています。できるだけ実物を見ながら勉強した方がよいかなと思ったのですが、手元にはシリアゲムシの標本しかなくて止まっていました。先日、小さいながらガガンボダマシを採集することができたので、今日はそれについてです。

三枝氏の議論の発端は次の翅脈に関してです。



これはガガンボダマシ科の翅脈で、Manual of Nearctic Diptera Vol. 1(MND)(ここからダウンロードできます)などに載っている名称です。問題はこの赤字で書かれた部分です。これに対して、三枝氏は次のような名称を提案しています。



これがその名称です。ポイントはこの写真の中で * で記した薄い色の筋をCuP脈とするか、それとも擬脈にするかという点です。この問題に対して、三枝氏は次の7つの観点から議論しています。

1)Bittacus(シリアゲムシ目シリアゲムシ科ガガンボモドキ属)とTrichocera(ハエ目ガガンボダマシ科Trichocera 属)の翅脈の幾何学的(topological; 形態学的)類似
2) Bittacus属とTrichocera属の翅脈の凸脈と凹脈の比較
3)臀脈の位置
4)claval furrowの位置
5)翅脈基部での翅底骨への結合
6)翅脈と気管との関係
7)翅脈の構造

先日、手元にあったガガンボの標本を使って翅脈を調べてみたのですが、ガガンボの翅脈は単純化されていてシリアゲムシとはかなり違っていました。それで、この間からガガンボダマシを探していました。三枝氏の原稿ではシリアゲムシの中でもガガンボモドキ科ガガンボモドキ属の翅を用いています。これに対して、手元にある標本はシリアゲムシ科Panorpa属のホソマダラシリアゲだったのですが、とりあえず比較してみることにしました。シリアゲムシ目とハエ目は互いに近縁で、ハエ目の中でもガガンボダマシが特にシリアゲムシに似た翅脈を持つことが古くから知られていたようです。

まず、1)の両者の翅脈の幾何学的な類似を調べてみます。





上がガガンボダマシで三枝氏の提案した名称が採用されています。下はシリアゲムシでこれまでに用いられてきた翅脈の名称です。脈の数はシリアゲムシの方がより多くて複雑ですが、基本的な構造はよく似ています。特に問題となるM脈とCu脈、A脈あたりを見てみます。M脈はいずれも4つに分かれ、Cu脈はCuAとCuPに分かれています。A脈は見かけ上、ガガンボダマシではA1だけなのですが、シリアゲムシではA1からA3まで見えています。これに対して従来までの解釈による翅脈は、CuP脈としているものがいかにも変です。また、M4脈あるいはCuA1脈あたりの対応もよくありません。このように今回の解釈を用いると、シリアゲムシとガガンボダマシの翅脈の類似性がかなり良くなることが分かります。

翅の基部を見てみます。



これはガガンボダマシで、従来までの解釈で翅脈の名称を入れたものです。翅の基部には翅脈の起源になる部分が見えます。一番上にはC脈の基部が、その下にはR脈に隠れていますが、Sc脈の基部が、その下にR脈、それからM脈の基部が見えています。この解釈だと、Cu脈の基部がないので、CuA脈とCuP脈が一緒になってA1脈と合流して一つの起源を作っています。そしてその下にはA2脈の基部があります。

一方、ガガンボダマシの翅脈の新しい解釈とシリアゲムシを比較してみます。





シリアゲムシの場合、A脈が基部では発達しているので一見複雑に見えます。しかし、M脈、Cu脈、A脈の基部に着目してみると、M脈は基部ではR脈に極めて接近し、R脈に合流しているように見えます。ところがCu脈はM脈とは離れてA1脈に接近しています。この両者は合流しているようにも見えますが、詳しく見ると接近しているだけです。このようにM脈とCu脈、A脈はそれぞれに起源の異なる脈として存在しています。

この観点でガガンボダマシの翅脈を見てみます。M脈はR脈に接近して合流し、Cu脈とA1脈は基部では接近しますが、別の起源の翅脈になっています。つまり、この三者は別の起源の翅脈として存在しています。この点でシリアゲムシとガガンボダマシは異なる目に属しながら、極めてよく似た翅脈を持っていることになります。これに対して、従来までの解釈では、M脈は確かにR脈に合流するのですが、、Cu脈とA1脈は合流して一つの起源を作り、A2はまた別の起源の脈になり、シリアゲムシとの類似性は大変悪くなります。

これで1)のところが終わって、まだ、2)以降が続くのですが、長くなったので次回に回します。

「廊下のむし探検」集計

「廊下のむし探検」は今から3年ほど前の2012年10月に始めたのですが、それから今までにどれだけの虫を見ているのか集計してみました。ときどきこんな集計をしているのですが、「廊下のむし探検」もこの2月で一応終わったので区切りだと思ってまた出してみました。



これは以前も出したことのある表なのですが、2015年12月までの値に書き換えました。一番左の欄が「廊下のむし探検」で観察した種のうち、名前が分かったものの種類数。たぶん、間違っているのも多いと思いますけど・・・。次の欄は「新訂 原色昆虫大図鑑」に載っている種類数。次は「日本産生物種数調査」に載っている種類数。最後はもっとも新しいと思われる種類数です。「廊下のむし探検」で観察した種をデータの揃っている「日本産生物種数調査」の数で割ったものが%で書いてあります。

これを見ると、蛾、カメムシ、アミメカゲロウ、チャタテムシあたりは日本産の10%を越えているので、この3年間に、しかも、マンションの廊下だけと限定したわりにはずいぶん頑張ったということになります。もっとも頑張ったのはやってきた虫の方かな・・・。チョウやトンボが少ないのは仕方がないですが、甲虫、ハエ、ハチ、トビケラ、カワゲラなどは1%をちょっと越えたぐらいでほとんど進みませんでしたね。これは名前の分からないのがたくさんいたからですが、今後の目標になりますね。

日本産に比較するとどうしても数が少なく見えるので、大阪府の記録と比較したのが次の表です。



大阪府の記録は「大阪府野生生物目録」(2000)に載っている値を使いました。ちょっと古いので、最近のはもっと増えているでしょうけど・・・。この値との比を取ってみると、もう少し大きな割合になって、ちょっと嬉しくなります。特に、蛾44%、カメムシ64%などはかなり満足できる値ですね。チャタテは100%を越えてしまって・・・。あまり調べていないのでしょうね。ハエや甲虫も満更ではないですね。



これも以前お見せしたのですが、蛾は合計880種にもなるので、マンションで観察した種類数が年々どのように増えていったのかグラフにしたものです。赤線はブログに出した蛾の個体数です。当然、年々増えていっています。これに対して種類数は頭打ちになっています。これをもう少し詳しく見たのが次のグラフです。



新しく観察する種類数がぐっと増えるのが4月から10月にかけてで、特に6月が増え方のピークになっています。それでも年々新しい種を見ることが少なくなってきていることが分かります。毎月の増え方を棒グラフで表していますが、2013年の6月には一ヶ月に120種も新しい種が見られたのですが、2015年には27種まで落ち込みました。そろそろ限界に近づいているのですね。それでもまだ一年に120種は増えているので、調べればもう少し増えるかもしれませんね。でもまぁ、3年間というのが蛾ではちょうど良いぐらいだったのかもしれません。

廊下のむし探検 いろいろいますね

廊下のむし探検 第820弾

昨日、近くの川の土手に行ってみたのですが、陽が陰っていたせいか虫が全くいませんでした。30分ほど同じ場所で粘っていたのですが、いたのはこの間検索したトビイロシワアリだけ。それで、マンション改修工事の足場がまだ半分ほどしか組まれていないので、帰りに廊下も歩いてみました。やはり廊下にはいろいろいますね。最終回が終わったのに、また出すことにしました。



これはたぶんヒメハラナガツチバチの♀。



そして、これはシマバエ科のSteganopsis sp. 2と呼ばれている種ですね。



それから、ナミテントウ



ターバン眼が見えていますね。ということは、コカゲロウ科♂。しかも、翅が黒いので亜成虫。コカゲロウにしてはかなり大きいので、今年の1月1日に見て教えていただいたシロハラコカゲロウかもしれません。



このセミみたいな虫はトガリキジラミの仲間。(追記2017/12/04:「絵解きで調べる昆虫2」に載っている絵解き検索表によれば、たぶん、サトオオトガリキジラミだと思われます。詳細はこちら



最後はこの小さなクモです。



ちょっと向きを変えて写してみたら、大きな触肢が写っていました。模様がはっきりしているので分かるかなと思ったのですが、「日本のクモ」にも、「韓国のクモ」にも載っていないようです。大きな触肢から判断すると成体みたいなのですが・・・。

外に比べると、廊下は本当に虫が探しやすいですね。しかも、いっぱい虫が集まって来ています。あまり考えずに始めた「廊下のむし探検」だったのですが、意外に良い選択だったのかもしれません。

ハナレメイエバエの脚刺毛の勉強

昨日、「日本のイエバエ科」という本を借りてきたので、早速、先日行ったイエバエ科ハナレメイエバエ亜科シリボソハナレメイエバエ属の検索を見直しています。この本は基本的に英語で書かれていて、後ろに付録として日本語の検索表が載せられています。昨日、ちょっと見たところ、日本語と英語がきちんと対応していなくて、また、亜科の検索表で脚の剛毛に関する項目がどうも納得いかないところが多いことに気が付きました。そこで、脚の剛毛をもう少しきちんと勉強してみようと思って、先日のハエについて調べてみました。



対象としているのはこんなハエで2月22日に採集したものです。検索の結果、ハナレメイエバエ亜科シリボソハナレメイエバエ(Pygophora)属 になったのですが、この属で本州に生息するのはP. confusa (シリモチハナレメイエバエ)かP. maculipennis (リュウキュウシリボソハナレメイエバエ)の2種だけでした。上の本でこれらの種の脚脛節の刺毛について書かれているところを抜き出して表にすると次のようになります。



p-setaはposterior setaの略で後ろ向きの刺毛を意味します。adはanterodorsalの意味で前背と訳します。前側で背側を向いた刺毛という意味です。pdはposterodorsalで後背です。また、avはanteroventralで前腹になります。右側の赤い部分が今回の個体での観察結果です。

写真でこれを見ていこうと思います。



まずは前脚脛節からです。2列の毛列がありますが、これが脛節の背側の中心線です。脛節の中央付近に左向けに毛が生えていますが、これがp-seta、つまり、後ろ向きの刺毛です。



次は中脚脛節です。脛節の中央部分に2本、右向きでやや上向きの毛が2本見られます。右が後ろ、上が背なので、後背、つまりpdということになります。本ではp-setaと書かれていましたが、検索表では後背となっていたし、この写真でも後背なので、pdでよいような気がします。



最後は後脚です。これは複雑です。脛節中央部分に左右に2本ずつ毛が出ています。これがadとpdです。また、先端近くでほぼ中心線上に上に伸びる毛があります。これが文章中で先端1/5にあるdorsal bristleと書かれている剛毛だと思います。dorsalは背、bristleは剛毛です。それより先端部分にはいろいろな亜末端剛毛が生えていますが、これをまとめてpreapical lobeと言っているのではと思いました。



これは後胸脛節の裏側からの写真です。先ほどのadやdorsal bristleに加えて下側に向かった毛が一本生えています。真下のような気もしないではないのですが、やや前側を向いているので、たぶん、これがavだろうと思います。ということで、書かれている内容はほぼ確認できました。P. confusaではさらに、中脚脛節に小さなadがあるはずなのですが、これは見当たりません。したがって、脛節の毛だけから判断すると、P. maculipennis (リュウキュウシリボソハナレメイエバエ)の方が合っているようです。

S. Yoshizawa et al., "A new species of the genus Pygophora Schiner from Laos (Diptera: Muscidae)", Zootaxa 3920, 586 (2015).

この論文にはPygophora属の共通の特徴が書かれていました。その中で脚の刺毛については、1)前脚脛節の中央部分に1 p-setaがある、2)後脚脛節の中央付近には少なくとも2 adと1 pdがあると書かれていました。とりあえず、この2つの条件は満足しているようです。

「廊下のむし探検」 ちょっと雑談

「廊下のむし探検」が2月いっぱいで終わってしまいました。外に虫を探しにいけばよいのですが、最近は寒くて出かける気がしません。廊下の良い所は、やはり手軽に探しに行けたところですね。場合によっては室内着に上着を羽織っただけで探しに行けたので・・・。それで今日はネタがなくて、ちょっと雑談。

図書館に頼んでおいた篠永哲著、「日本のイエバエ科」が届いたという連絡があったので取りにいってきました。待ちに待った本がやっと手に入りました。早速、先日検索したハナレメイエバエ亜科シリボソハナレメイエバエ属の検索表をもう一度見直してみました。この本、なかなかの力作なのですが、かなりの難解でもあります。先日の検索表と、「日本のイエバエ科」の検索表とをシリボソハナレメイエバエ属について比べてみました。



左側がこの間用いた検索表です。亜科の検索までは、

田中和夫、「屋内害虫の同定法 : (3) 双翅目の主な屋内害虫」、屋内害虫 24, 67 (2003).

後半の属までの検索表は「一寸のハエにも五分の大和魂・改」に載せられていた検索表です。対応を線で結んでみたのですが、後半はまったく同じでした。でも、「一寸のハエにも五分の大和魂・改」の説明は実に丁寧ですね。私のような素人でもよく分かるように書かれています。これに対して、「日本のイエバエ科」のそれは分かる人には分かるというような書き方でした。属の検索表で赤字で書いた部分はミスプリだと思います。

属の部分は対応がはっきりしていて分かりやすいのですが、前半の亜科への検索ではだいぶ混乱してしまいました。「日本のイエバエ科」で青色で書いた部分は左の欄にはない項目を指しています。そして、赤で書いた部分は同じ本の日本語版の検索表にはなくて、英語版にはあった部分です。一方、左欄の取り消し線はヒメイエバエ科に対する項目なので消しました。どうして英語版と日本語版が違うのだろうと不思議に思いながら、これらの項目で検索をしてみたのですが、後脚脛節の剛毛に関する項目がどうもおかしい感じです。前回の検索があっていなかったのかもしれませんが、とにかく合いません。論文と比較するなど、もうちょっと検討が必要です。

虫を調べる トビイロシワアリ(再)

先日、家の近くで虫を探していたら、まだ2月だったのですが、もうアリが活動していました。



こんなアリです。たぶん、トビイロシワアリだろうなと思ったのですが、一度、検索をしてみようと思って2匹ほど採集してきました。でも、過去の記事を見てみると、実は、以前にも検索していることに気が付きました。それでも写真がいまいちな感じです。それで、復習の意味でもう一度検索してみることにしました。



採集してきたのはこんなアリです。下の目盛りの間隔が1mmなので、体長2mmちょっとという感じでしょうか。

アリの検索には、次の図鑑を用いました。

寺山守ほか、「日本産アリ類図鑑」、朝倉書店 (2014).

でも、実際にやってみると、トビイロシワアリにたどり着くのはかなり大変です。





実に20項目を調べなければなりません。一つの項目に3つぐらい項目が含まれているのもあって相当に大変です。本当に、以前はこんな大変な検索をしたのかなぁと訝しながら、それでも地道に検索していきました。その結果、トビイロシワアリで良さそうだということにはなったのですが、この項目全てを写真で示すのが次に大変なことでした。結局、いつものように写真に各項目を書き込んでいき、部位別にお見せすることにしたのですが、ちょっとごちゃごちゃになってしまいました。



まず最初は外観です。ここでは胸と腹をつなぐ腹柄が2節であることが最大の特徴です。この部分には瘤のようなものが2つあって、前を腹柄節、後ろを後腹柄節と呼んでいるようです。その他は頭と胸に毛が生えているとか、胸が隆起しないことからオオズアリ属を除く項目などがあります。



その腹柄節と前伸腹節の部分を写したものがこの写真です。ここでは腹柄節の形が柄部と丘部に分かれることを見ます。これで、丘部が隆起しないカドフシアリ属を除けます。



腹柄節の部分にはたくさんの項目があるので別の写真を使って説明していきます。ここでは前伸腹節にある刺に注目しています。刺が長くて反り返ったりしていないことを確かめます。また、刺の横にあるのが前伸腹節気門です。これが前伸腹節の後面ではなくて側面にあることに着目します。これに対して、シリアゲアリ属では後面にあるので、それを除外する項目になります。一番下に書いてある⑰については「先端から基部」の意味が理解ができませんでした。



次は頭部に関してです。複眼があり、それが大きくはないことはすぐに分かります。また、触角を収める収容溝というのも見当たりません。



これも頭部です。大腮が大きく写っています。これが三角状なので、サーベル状のイバリアリ属を除けます。検索表では、大腮に7歯あるとのことですが、この写真ではよく分かりません。それでも先端の3歯が大きいことは確かです。大腮の上の部分が頭盾ですが、ここは種によって形にバラエティがあるようです。側方に小突起がないことでクビレハリアリ亜科を、前縁に複数の突起がないことでアミメアリ属を、さらに、大腮にかかるほど伸びないことでミゾガシラアリ属を除けます。



これは触角挿入口に関するものですが、触角をわずかだけ覆う額葉というのがあるみたいです。写真ではわずかにそれらしいものが見えます。ただ、③の「額葉はたがいに離れる」というのは意味不明でした。また、触角挿入口と頭盾との間にははっきりした隆起線が見られます。この写真では頭盾前縁中央の1対の剛毛も写っていました。



次は触角です。触角は全部で12節。先端3節は膨れていて、これを棍棒部と呼ぶようです。



最後は跗節末端の爪で、それが単純であることを示しています。ここに歯状突起があるとクシフタフシアリ亜科になります。また、ここには脛節末端の距が櫛型であることも写っています。

ということで、若干抜かした項目もあるのですが、検索表の20項目のほとんどを確かめたことになります。トビイロシワアリはよくいるアリですが、検索により確かめようとすると意外に大変でした。でも、勉強だと思ってこれからも頑張っていきます。最後に検索に使わなかった写真も載せておきます。



以前よりは写真がうまくなったかなぁと思っていますけど・・・。
プロフィール

廊下のむし

Author:廊下のむし

カテゴリ
リンク
最新記事
最新コメント
カウンター
月別アーカイブ