シリアゲムシの翅脈
昨日、カゲロウの翅脈を調べてみて、初めて上に凸の翅脈と下に凸の翅脈の意味が分かりました。以前、三枝豊平氏の翅脈の原稿
T. Saigusa, "A new interpretation of the wing venation of the order Diptera and its influence on the theory of the origin of the Diptera (Insecta: Homometabola)", 6th International Congress of Dipterogy, Fukuoka 2006. (ここからpdfがダウンロードできます)
を読んで、concave veinとconvex veinの意味が分からなくて止まっていました。今回、上に凸と下に凸というのがその意味だということが分かったので、もう一度読み直すことにしました。
そもそも、なぜこんなに翅脈にこだわっているかというと、「原色昆虫大図鑑III」のハエ目の翅脈はこの三枝氏の意見を取り入れて書かれています。一方、外国で出された本や論文では従来の解釈に従って書かれています。翅脈の名称は検索をするときに必ず出てくるので、そのためいつも混乱してしまいます。三枝氏の解釈は緻密な議論のもとになされているのですが、国内だけで認められているのなら、「ガラパゴス翅脈」になりかねません。この原稿は国際会議の口頭発表でなされたものですが、論文にされていないのが残念です。しかし、論文でないにも関わらず、36件もの引用があるので、破格の扱いをされていることも事実です。そこで、外国で出された本や論文でこの解釈がどう判断されているのかを調べてみました。
その結果、次の本の原稿を見つけました。
J. M. Cumming and D. M. Wood, "Adult Morphology and Terminology", in "Manual of Afrotropical Diptera", the Publications Unit of the South African National Biodiversity Institute (2015?). (ここからダウンロードできます)
発行年は分からないのですが、とにかく新しい本です(追記2016/01/27:Manual of Afrotropical DipteraのVol. 1は2016年、Vol. 2は2018年発行予定のようです)。この中で、著者は従来までの解釈と三枝氏らの解釈を並記し、この本では三枝氏の方を標準として用いると書いていました。従って、十分に世界的に認められていることも分かりました。このとき三枝氏の原稿と同時に引用されていたのが、次の論文です。
R. J. Wootton and A. R. Ennos, "The implications of function on the origin and homologies of the dipterous wing", Systematic Entomology 14, 507 (1989).
この論文も読んでみたいと思ったのですが、残念ながらネットでは手に入りません。それで、Academia eduに一時的に登録して著者に別刷り請求をしてみました。すると、先ほどpdfが送られてきました。こんなに便利なら、登録しておいてもよいかもしれません。
さて、三枝氏の原稿ではシリアゲムシ目のガガンボモドキ Bittacus sp. とハエ目のガガンボダマシ Trichocera sp.との翅脈の相同性から論議をしています。Woottonらの論文もやはりシリアゲムシ目とハエ目の翅脈の相同性を使って調べていました。そこで、今日はまずシリアゲムシの翅脈を調べて、難解な三枝氏の解釈を少しでも理解できるようにしてみたいなと思いました。
古い標本箱を見てみるとうまい具合にシリアゲムシの標本がありました。
これはヤマトシリアゲの標本です。三枝氏の原稿の図を参考にしながら、翅脈に名称を付けてみました。ガガンボモドキ Bittacus属とシリアゲムシPenorpa属では翅脈が少し違っていたのですが、大体はうまく付けられました。ついでに上に凸、下に凸を+と-で表してみました。Bittacus属では途中でM脈とCuA脈が融合しているのですが、Penorpa属では横脈で結合されています。それを除くとだいたい合っているようです。(追記2016/01/27:後で次の論文、
G. W. Byers, "Homologies in wing venation of primitive Diptera and Mecoptera", Proc. Entomol. Soc. Wash. 91, 497 (1989). (ここからダウンロードできます)
を読んでいたら、どうやら+とーの付け方が違っているようなので、もう一度標本を見直してみました。やはり論文に書いてある通りで、Sc(+)→Sc(-)だったので訂正しました。ついでに後で出てくる翅の折り目であるclaval furrowとjugal furrowを書き加えました。翅の折り目にはあと2つあるようですが、場所は種類によって変化するそうです。一つは径脈と中脈にある縦の折れ目、それにもう一つは翅を横断する横の折り目です。これらは翅を折りたたむときに使われるほか、おそらく飛翔の時にも抵抗を少なくするのに役立っているのではとWhat-When-Howというサイトに書かれていました)
ホソマダラシリアゲだと思われる標本でも調べてみました。翅脈はヤマトシリアゲとほとんど同じです。Cu(-)が途中でCuA(+)に変化したりして、よく見ると面白いですが、まだ、これから何を読み取ればよいのかは分かりません。明日はガガンボの翅脈を調べて、これらと比較してみようかなと思っています。(追記2016/01/27:上にかいた通りで、Sc(+)→Sc(-)、M(+)→M(-)に訂正しました。こちらも翅の折り目であるclaval furrowとjugal furrowを書き加えました)
T. Saigusa, "A new interpretation of the wing venation of the order Diptera and its influence on the theory of the origin of the Diptera (Insecta: Homometabola)", 6th International Congress of Dipterogy, Fukuoka 2006. (ここからpdfがダウンロードできます)
を読んで、concave veinとconvex veinの意味が分からなくて止まっていました。今回、上に凸と下に凸というのがその意味だということが分かったので、もう一度読み直すことにしました。
そもそも、なぜこんなに翅脈にこだわっているかというと、「原色昆虫大図鑑III」のハエ目の翅脈はこの三枝氏の意見を取り入れて書かれています。一方、外国で出された本や論文では従来の解釈に従って書かれています。翅脈の名称は検索をするときに必ず出てくるので、そのためいつも混乱してしまいます。三枝氏の解釈は緻密な議論のもとになされているのですが、国内だけで認められているのなら、「ガラパゴス翅脈」になりかねません。この原稿は国際会議の口頭発表でなされたものですが、論文にされていないのが残念です。しかし、論文でないにも関わらず、36件もの引用があるので、破格の扱いをされていることも事実です。そこで、外国で出された本や論文でこの解釈がどう判断されているのかを調べてみました。
その結果、次の本の原稿を見つけました。
J. M. Cumming and D. M. Wood, "Adult Morphology and Terminology", in "Manual of Afrotropical Diptera", the Publications Unit of the South African National Biodiversity Institute (2015?). (ここからダウンロードできます)
発行年は分からないのですが、とにかく新しい本です(追記2016/01/27:Manual of Afrotropical DipteraのVol. 1は2016年、Vol. 2は2018年発行予定のようです)。この中で、著者は従来までの解釈と三枝氏らの解釈を並記し、この本では三枝氏の方を標準として用いると書いていました。従って、十分に世界的に認められていることも分かりました。このとき三枝氏の原稿と同時に引用されていたのが、次の論文です。
R. J. Wootton and A. R. Ennos, "The implications of function on the origin and homologies of the dipterous wing", Systematic Entomology 14, 507 (1989).
この論文も読んでみたいと思ったのですが、残念ながらネットでは手に入りません。それで、Academia eduに一時的に登録して著者に別刷り請求をしてみました。すると、先ほどpdfが送られてきました。こんなに便利なら、登録しておいてもよいかもしれません。
さて、三枝氏の原稿ではシリアゲムシ目のガガンボモドキ Bittacus sp. とハエ目のガガンボダマシ Trichocera sp.との翅脈の相同性から論議をしています。Woottonらの論文もやはりシリアゲムシ目とハエ目の翅脈の相同性を使って調べていました。そこで、今日はまずシリアゲムシの翅脈を調べて、難解な三枝氏の解釈を少しでも理解できるようにしてみたいなと思いました。
古い標本箱を見てみるとうまい具合にシリアゲムシの標本がありました。
これはヤマトシリアゲの標本です。三枝氏の原稿の図を参考にしながら、翅脈に名称を付けてみました。ガガンボモドキ Bittacus属とシリアゲムシPenorpa属では翅脈が少し違っていたのですが、大体はうまく付けられました。ついでに上に凸、下に凸を+と-で表してみました。Bittacus属では途中でM脈とCuA脈が融合しているのですが、Penorpa属では横脈で結合されています。それを除くとだいたい合っているようです。(追記2016/01/27:後で次の論文、
G. W. Byers, "Homologies in wing venation of primitive Diptera and Mecoptera", Proc. Entomol. Soc. Wash. 91, 497 (1989). (ここからダウンロードできます)
を読んでいたら、どうやら+とーの付け方が違っているようなので、もう一度標本を見直してみました。やはり論文に書いてある通りで、Sc(+)→Sc(-)だったので訂正しました。ついでに後で出てくる翅の折り目であるclaval furrowとjugal furrowを書き加えました。翅の折り目にはあと2つあるようですが、場所は種類によって変化するそうです。一つは径脈と中脈にある縦の折れ目、それにもう一つは翅を横断する横の折り目です。これらは翅を折りたたむときに使われるほか、おそらく飛翔の時にも抵抗を少なくするのに役立っているのではとWhat-When-Howというサイトに書かれていました)
ホソマダラシリアゲだと思われる標本でも調べてみました。翅脈はヤマトシリアゲとほとんど同じです。Cu(-)が途中でCuA(+)に変化したりして、よく見ると面白いですが、まだ、これから何を読み取ればよいのかは分かりません。明日はガガンボの翅脈を調べて、これらと比較してみようかなと思っています。(追記2016/01/27:上にかいた通りで、Sc(+)→Sc(-)、M(+)→M(-)に訂正しました。こちらも翅の折り目であるclaval furrowとjugal furrowを書き加えました)
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