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廊下のむし探検 ヒメカゲロウ、ハエ

廊下のむし探検 第801弾

こんな大晦日の夜に虫の話題を出す人などはいないだろうな、ましてや紅白もやっているのに・・・。と思いながら昨日見た虫を出すことにしました。



今日の最初はこんなヒメカゲロウからです。床の帯状の出っ張りの幅が3mmなので、それで大きさを推定してみてください。いつものチャバネヒメカゲロウとはだいぶ違っています。この写真から翅の部分だけを拡大してみました。



翅脈の名称は以前採用した次の古い本の図から取りました。

J. H. Comstock, "The Wings of Insects", The Comstock Publishing Company (1918). (ここからダウンロードできます)

翅脈に名称を入れていたら、今年の10月末と12月初めに見た種と同じであることに気が付きました。この時は、中原和郎氏の古い論文に載っていた検索表を用いて調べました。

W. Nakahara, "On the Hemerobiinae of Japan", 日本動物学彙報 9, 11 (1915).

この検索表は古いのですが、主要な属が載っているので、十分に役に立ちそうです。今回も同じ検索表で調べてみました。原文は英語なのですが、私の拙い語学力で全体を訳してみました。



まず、最初に前翅基部にあるrecurrent veinというのが出てきますが、いつもいるチャバネにはこれがありません。ところが、この種は上の写真で示したようにrecurrent veinがあります。さらに3本の径分脈があり、2系列の段横脈があることからHemerobius属になります。

S. Kim and S. Cho, "Taxonomic Notes on the Species of Hemerobiidae (Neuroptera) of Korea", Kor. J. Appl. Entomol. 50, 65 (2011). (ここからダウンロードできます)

ここからは手がかりがないのですが、上の論文を見ていたら、翅の外縁や翅脈に点々と模様が付いている種が載っていました。この種の翅も詳しく見てみると、まさに同じ点々模様です。学名でHemerobius harmandinus、千葉大のサイトを見ると、キバネヒメカゲロウという和名がついていました。これかもしれません。

ところで、もう少し新しい検索表はないかと探していたら、被引用数が100件を越えた論文が見つかりました。

J. D. Oswald, "Revision and cladistic analysis of the world genera of the family Hemerobiidae (Insecta: Neuroptera), J. New York Entomol. Soc. 101, 143 (1993).

何とかして読めないかなとネットで探していたら、JSTORに登録すれば読めることが分かりました。幸い、以前登録していたので、読めることは読めたのですが、どういうわけかpdfがダウンロードできません。それで、1ページずつ表示して画像保存で取り込み、後でくっつけてpdfにしました。全部で百数十ページ。かなりの作業でした。でも、これで新しい翅脈の名称と属への検索表が得られました。翅脈の名称はほとんど以前のものと変更がありませんでした。検索表はなかなか難解でまだ理解できないところが多いのですが、多分、同じ結論になるのではと期待しています。まずはチャバネあたりで試してみます。

後はハエばかりです。





この日はノミバエを2種見ました。最近、見ていなかったので、ちょっと懐かしい感じがしました。でも、ノミバエを見て懐かしく感じる人は全世界にどのくらいいるだろうな、なんて考えるとちょっとおかしく思いました。上は昨年調べた種と同じで、多分Megaselia属だと思います。下もそうかなと思ったのですが、脚の色が違っているのでちょっと分かりません。





ハエは撮ってもどうせ名前が分からないからと思っていたのですが、あまりに虫がいないのでつい撮ってしまいました。A1脈の曲がり方大きいのでヒメイエバエかなと思ったのですが、採集しなかったのでよく分かりません。





これは昨年採集してクロバエ科になった種だと思います。



これはツマグロキンバエでしょうね。





それにヌカカ。最近、よく見ますね。(追記2018/02/15:コメントをいただき、Forcipomyia属らしいことは分かりました。まだ、調べていないのですが、一応、そのように記録しておきます



最後はユスリカ。これは小さいので、もう少し大きいのが出てきたら、一度、検索してみたいなと思っています。
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廊下のむし探検 ハエ、ハエ、ハエ

廊下のむし探検 第800弾

昨日は天気が良かったので、午前中に散歩に行ったついでに廊下を歩いてみました。本当に何もいませんね。蛾がこんなにいないのはほとんど信じられません。目立った虫がいないと、ついハエばかり撮ってしまいます。



こんな感じのハエがいました。何を探したらよいのかさっぱり分からないのですが、先日紹介した自分用の手作り図鑑ができているので、ざっと見て探すことができます。この図鑑の中には、ハエ目は名前のわからないものを含めて180種ほど載っているので、結構、役に立ちます。それでざっと見てみると、フンバエ科、フンコバエ科、トゲハネバエ科、ヤスデヤドリバエ科あたりに似た種が載っていました。このうち、フンコバエは後脚跗節第1節が球状に肥大するので除くことができます。また、トゲハネバエ科は前翅前縁に刺の列が並び、Sc切れ目があり、後単眼刺毛が交差することが特徴です。そこで、まず翅をちょっと拡大してみました。



それにしても変わった翅脈をしています。前縁に刺のような毛が並んでいますが、いずれにしてもSc切れ目はありません。



次は頭部ですが、後単眼刺毛はほぼ平行になっています。こんなところから、トゲハネバエは除外できそうです。ヤスデヤドリバエはヤチバエから分かれた科でたぶん違うかなと思って、残るのはフンバエで、この科の特徴は前額は広く、額内刺毛を欠くというのでこれはよく合っていそうです。あまり自信はないのですが、フンバエ科かなと思いました。(追記2016/02/10:採集していた個体を検索してみました。ちょっと途中で躓いたのですが、最終的にはヤチバエ科になりました。後は、岐阜大のサイトやいくつかの論文の記述から、ブチマルヒゲヤチバエ Pherbellia ditoma だろうと思われます。特徴はM脈にある2つの突起です



これはまた別のハエです。これもさっぱり分からなかったのですが、



拡大してみると、後単眼刺毛が交差している感じです。それでシマバエ科かなと思いました。







次はこれです。今までのハエとは触角が違います。長角亜目ですね。脚に白い部分があるのでかなり変わった感じです。翅脈がだいぶ変わっています。この手がかりだけで、ブユ科であることが分かりました。後は、ネットで調べてみるとオオイタツメトゲブユという名前で似た種が出ていました。それで、それを手がかりに「日本昆虫目録」で調べてみると、この種はブユ科ブユ亜科ブユ族Simulium属に属していて、全部で23種。このうち、本州産は15種。なかなか大変です。「原色昆虫大図鑑III」には綺麗なイラストがでているので、比べてみると、前脚腿節が基部を除き黒色で、脛節が先端を除き白いのは、ニッポンヤマ、アオモリヤマ、アシマダラ、ヒメアシマダラあたりが似ています。今回は採集したので、後でもう少し調べてみます。(追記2016/02/11:後で検索をしてみました。その結果、アシマダラブユの可能性が高いことが分かりました





これはクロバエ科のツマグロキンバエかな。



これは名前の分からないクロバエ?



ハエ以外ではこんなチャタテがいました。長い触角です。



チャタテがいれば、必ず翅脈を写そうと思っていたので、今回は写して見ました。



ついでの名前をつけていました。後小室があり、その上辺がM脈と脈を共有していて、M脈が3つに分かれていて、M脈とRs脈とがほぼ一点で交わっているところなどから、以前から見ているクロミャクチャタテだと思われます。

ということで、ハエが多いと、なかなか大変になります。採集しておけば検索表を使って検索ができるのですが、ハエばかり貯まっていくのもどうも・・・。

虫を調べる トガリヒメバチ亜科?

昨日に引き続いてヒメバチを詳しく調べてみました。



対象としたのはこんなハチです。長い産卵管があるので♀ですね。これはヒメバチ科だと思うのですが、せめて亜科だけでも分からないかなと思って検索をしてみました。用いた検索表は、渡辺恭平氏のImformation station of Parasitoid waspsというホームページ(HP)にあるヒメバチ科の亜科への検索表です。ただ、この検索表は全部で81項目もあるので見ただけで嫌になってしまうのですが、今回はじっくりと調べてみました。検索の結果はトガリヒメバチ亜科になったのですが、その過程をちょっとまとめてみました。

追記2015/12/28:上記HPでは検索表を含めて、いくつかのページは引用不可となっていることに気が付きました。そこで、この際、この検索表のもとになった以下の本の検索表とトガリヒメバチ亜科の説明を自分で翻訳することにしました。

Henri Goulet and John T. Huber (Editors), "Hymenoptera of the world, an identification guide to families", Research Branch, Agriculture Canada (1993). (ここからpdfをダウンロードできます)

専門家と違って怪しい翻訳になってしまうのですが、上記HPの訳を参考にしながら頑張って訳してみました。以後の検索表や写真の中の説明はこの私の訳にすべて置き換えました)

      
                            


検索表を見ていくと、いくつかの亜科を分ける項目と、亜科一つだけを調べていく項目があります。前者を四角で、後者を菱型で表してみました。上に紹介した本では一つの項目が3つから4つの小項目から成り立っています。これらすべてを書きあげていくのは大変なので、上の模式図では、亜科一つだけを調べる項目では代表的な特徴だけを書いてあります。こうやってまとめてみると何となく検索の流れが見えてきます。

これらの検索項目を1つずつ写真でお見せしていけばよいのですが、かなり大変な作業になるので、四角で囲んだ部分と、各論でトガリヒメバチ亜科の特徴を書いたものと、検索表でトガリヒメバチ亜科を決定する項目(上の模式図の⑧~⑩)についてだけ写真でお見せすることにします(実際にはすべてを調べていくのですが・・・)。いつものように写真に項目の内容を書き込んでいったので、写真だけを見ていけばよいようになっています。



さらに、これは上記の本に載っているトガリヒメバチ亜科の特徴を、私の拙い語学力で訳したものです。これらを写真を見ながら簡単に説明していきたいと思います。



まずこれは横から見たもので、体長は約10mm。腹が上下に押されたようなヒメバチ・トガリヒメバチ型の体形です。⑦に書いてある♀の尾節はどれのことを指すのかよく分かりませんでした。(追記2015/12/29:♀の尾節(female hypopygium)は上の本に図が出ていました。産卵管が出てくる腹節のことを意味しているようです。よく腹部腹側で三角形に飛び出した部分から産卵管が出ている種がいますが、こういうのを「目立つ(conspicuous)」と言い、今回の個体ようにどこから出ているのか分からないようなものを目立たない(inconspicuous)と言っているみたいです。ここでは後者を不明瞭と訳してしまいました




次は頭部です。頭盾は⑫にあるように盛り上がっています。また、顔面と頭盾は溝で分けられていることになっているのですが、この写真では中央部分の境目がはっきりしません。ここがちょっと気になるところです。



次は頭部を横から見たところで、頭盾が隆起していることが分かります。



これは胸部側面の写真です。まず⑬の前胸側板下方後角というのは白矢印で示した部分だと思うのですが、強く突出してはいません。中胸側線は浅い溝なのですが、広がりながら中胸基節近く(赤矢印)まで伸びています。また、epicnemial carinaという溝が中胸側板の前縁部に走り、その先端(黄矢印)は前胸背板後縁の中点(黄矢印)より高いところまで達しています。ということで、書いてあることと一致しています。



これは頭部と胸部を背側からみたところです。複眼の内側に白い模様がありますね。これだけでも種が分かるのかもしれません。



次は翅脈です。前翅に鏡胞があり、それが五角形であることが分かります。この五角形には柄がありません。さらに、後翅M+Cu脈が緩やかに湾曲しています。この「湾曲」という表現がもっと強く曲がるべきなのかどうかは判断できません。②の前翅2m-cu横脈は完全です。これが「管状(tubular)」というのは、翅脈が体液の通る管として明瞭に走っていることを示している表現だと思います。これに対応する表現で星雲状(nebular)翅脈というのがありました。訳が正しいかどうか分かりませんが・・・。後翅2/Cu脈(これはCuの2番めの脈という意味のようです。翅脈の名称を必要な部分のみこの表現に基づいて直してみました)が明瞭だということ、それに、1/Rs脈と1r-m脈の長さを比べると1/Rs脈の方が長いことがすぐに分かります。

追記2016/01/03:翅脈の表現については次の論文に詳細が載っていました。

W. R. M. Mason, "Standard drawing conventions and definitions for venational and other features of wings of Hymenoptera", Proc. Entomol. Soc. Wash. 88, 1 (1986). (ここからpdfがダウンロードできます)

この中で、Masonは翅脈の状態の呼び方が統一されていないので、その定義をしたいという意図で、翅脈が退化していく過程として次の3つの状態を規定しました。液体が流れる完全な翅脈をtubular vein、液体は流れないが翅の膜がその部分だけ厚くなったnebulous vein、それに単に折れ目になってしまったものをspectral veinと呼ぶようにしたのです。spectralは幽霊のようなという意味で、透明で時々見えたり見えなかったりするからだということです




これは前伸腹節を上から見たところです。複雑な隆起線が上部にだけついています。さらに、この写真では見難いのですが、突出部が左右に1つずつあります。また、長細い気門も左右に1つずつ見えています。



次は後体節第1節の写真です。第1節の前の方が狭く、後の方が幅広いことはすぐに分かります。また、気門は後ろの方にあります。腹板は黄矢印あたりまで伸びているので、気門よりは後ろ側まで伸びていることになります。





産卵管は真っ直ぐに伸びていき、先端は次第に細くなっています。上側に小さな窪みがあるのですが、繰り返し出てくる「切れ込みを持たない」と書いてあるのがかなり気になります。ひょっとしたら間違っているのかも。下側にはわずかな鋸歯があります。産卵管を包む鞘が柔らかいことはFig.9の根元に見える曲がったものが鞘なので、柔らかいのだと思います。



最後は後脚脛節末端の刺ですが、2本あることはすぐに分かります。

ということで、トガリヒメバチ亜科の特徴はほぼ備えていると思うのですが、頭盾と顔面との境の溝と産卵管の上の切れ込みがかなり気になります。合ってるのかなぁ。ちょっと不安ですね。ただ、たとえ、トガリヒメバチ亜科で合っていたとしても、上のHPによるとこの亜科には229種もいるというので、種まではまだまだ先の長い話です。(追記2015/12/29:こうして原文を読んで検索をし直してみると、英語のニュアンスが何となく日本語のそれとは異なり、合っているのかどうかだんだん自信がなくなってきました。もう一度、手元の標本を使ってヒメバチ検索の練習をしてみたいと思っています

ヒメバチの勉強

先日、次の写真のようなハチを捕まえました。たぶん、ヒメバチの仲間だと思います。



先ほど、ざっとした検索をしてみました。検索に用いたのは、渡辺恭平氏のImformation station of Parasitoid waspsというホームページ(HP)にあるヒメバチ科亜科への検索表です。このHPは分かりやすい解説がなされているので、私のような初心者には大変重宝するページです。ただ、亜科への検索表は全部で81項目もあって、見ただけでやる気がなくなってしまいそうです。でも、今日はじっくりと調べてみました。その結果、トガリヒメバチ亜科になったのですが、あまり自信がないので、今日はとりあえず写真だけ撮って、各部の名称をまず調べていこうと思いました。



上記HPに載っているトガリヒメバチ亜科の特徴を転載させていただくと、上のようになります。これを参考にしながら、各部を見ていこうと思います。(追記2015/12/28:上記HPでは検索表を含めて、いくつかのページは引用不可となっていることに気が付きました。そこで、この際、以下の本の説明を自分で翻訳することにしました。

Henri Goulet and John T. Huber (Editors), "Hymenoptera of the world, an identification guide to families", Research Branch, Agriculture Canada (1993). (ここからpdfをダウンロードできます)

専門家と違って怪しい翻訳になってしまうのですが、上記HPの訳を参照しながら頑張ってみたので、それに置き換えたいと思います)



まずは頭部です。上の特徴の②が該当するのですが、頭盾の中央が盛り上がっています。頭盾と顔面が溝で分けられという特徴があるのですが、ここがちょっと怪しいところです。溝は途中まではあるのですが、中心部分にはないみたいです。



次は頭部と胸部です。



次は胸部側面です。上の特徴で言えば、⑬から⑮あたりが関係します。中胸側線というのは初めて知ったのですが、中胸側板に浅い溝のようなものがあります。これがより浅くなりながら中脚基節まで伸びているみたいです。前伸腹節には突起があります。前伸腹節の気門は長細いですね。



後体節第1節を写したものです。細長くなっており、気門は後ろの方にあります。これは⑱が関係しています。



次は翅脈です。⑯と⑰が関係していますが、五角形の鏡胞があり、後翅M+Cu脈は曲がるというところはよく合っています。翅脈の名称はいろいろな流儀があるみたいですが、ここではThe American Entomological Instituteに書かれているものを用いました。前翅の中央部分の湾曲した脈は、上からRs脈が、下からM脈が向かって2つは合流して「消えてなくなった脈」を通り、向かい側の脈にぶつかり、Rs+M脈となって流れるということになっています。



最後は産卵管の先端の拡大です。上に小さい切れ込みがあり、下側にはギザギザした鋸歯があります。ちょっと「銛(もり)」みたいな格好ですね。その部分を趣味的に拡大してみました。



見事な造形美です。ちゃんとした検索はまた今度にします。

廊下のむし探検 3種目のフユシャク

廊下のむし探検 第799弾

昨日の「廊下のむし探検」の結果です。この日は今シーズン3種目になるフユシャクが登場しました。



ナミスジフユナミシャクです。それにしても今年は蛾が少ない!昨年や一昨年のブログを見ても、毎日、いろいろと出てきて楽しそうでした。この日はこの個体だけ・・・。





この日はこのマルガタゴミムシの仲間が2匹いました。相変わらず何を調べたら良いのか分からず、名前は分かりません。



後はいつもいるムラサキナガカメムシ



それにミナミトゲヘリカメムシ



クサカゲロウはこの1匹だけ。いつものスズキクサカゲロウですね。



ヒゲナガカワトビケラは1年中いるみたいなので、普段は撮らないのですが、この日は近づいたらバタバタと逃げたので、思わず追いかけてパチリ。



それにこのハチ。たぶん、ヒメバチの仲間でしょうね。今回は採集してきたのですが、あの鬼のような亜科の検索を一度試してみようかなと思っています。

虫を調べる ウスイロチャタテ科(失敗の巻)

今日は先日捕まえたチャタテを調べてみました。実は、あまりに小さいので検索は諦めていたのですが・・・。



対象とするのはこのチャタテです。大きさは1mmちょっとしかありません。こんなに小さくて検索なんてできるかなと思っていたのですが、今日、思い直してやってみました。



まずは全体像です。もう私の実体顕微鏡では限界に近いですね。細部まではっきりとは写っていません。体長と前翅長は別の写真で測り、それぞれ1.6mm、1.7mmでした。



これは腹部の写真です。実は腹部の写真が後で必要になったのですが、こんな写真しか撮れていませんでした。

例によって次の論文の検索表を使ってみました。

富田康弘、芳賀和夫、「日本産チャタテムシ目の目録と検索表」、菅平研報12、35 (1991). (こちらからダウンロードできます)

検索の結果はウスイロチャタテ科になったのですが、その検索の経過を見ていきます。



①は翅があるのでもちろんOKです。②は上の写真でもちらっと見えていますが、跗節は2節です。次の爪の先端の歯はなかなか分かりませんでした。生物顕微鏡を使って調べたのですが、とりあえず歯はなさそうだというところがやっとでした。

④と⑤は翅脈に関することなので翅を拡大してみます。





上が前翅、下が後翅です。翅脈の名称は次の論文によっています。

田中和夫、「屋内害虫の同定法 : (5) 噛虫(チャタテムシ)目」、家屋害虫 25, 123 (2003). (ここからダウンロードできます)

④は前翅先端で翅脈が消えてはいないかという項目で、そんなことはないので次に進みます。⑤は重要な項目で後小室といわれる小さな翅室があるかどうかですが、CuAの末端にあるはずの後小室はありません。それでとにかく、ウスイロチャタテ科になりました。

前翅の写真を見ると、縁紋の左側が黒くなってちょっと変な感じです。これは裏側に突起があるためなのですが、生物顕微鏡で翅の裏側を撮ってみました。



こんな突起がありました。

この突起について調べてみました。次の論文と本に少しだけ載っていました。

K. Yoshizawa, "MORPHOLOGY OF PSOCOMORPHA (PSOCODEA: 'PSOCOPTERA')", Insecta Matsumurana New Series 62, 1 (2005). (ここからダウンロードできます)
T. R. New, "Psocoptera" in "HANDBOOKS FOR THE IDENTIFICATION OF BRITISH INSECTS", Vol. I. Part 7, Royal Entomological Society of London (1974). (ここからダウンロードできます)

これはnodulus(小結節)、あるいは、stigmasacと呼ばれています。この構造は翅を畳んだときに、後翅が
ちょうどこの突起に引っかかってうまく納まるようにした仕組みのようです。上の写真ではうまい具合に翅を畳んだ時の様子が見えますが、後翅の前縁に段差があり、その段差の部分がちょうど突起にはまるような構造になっていることが分かります。

実は、同じようなnodulusがCuPとAの合流点である前翅後縁にもあるそうです。これは飛ぶときに先ほどの後翅前縁の段差がその突起にはまり、前翅と後翅が一体となって飛ぶことができるようにした仕組みのようです。チャタテの種類によっては、このnodulusが鈎状の構造をしたり、あったりなかったりして、分類の手がかりに使われています


次は種への検索です。



これは検索表の最初の方だけを書いたものですが、最初の⑥が生殖器についての項目です。実は翅の写真を撮ろうと、実体顕微鏡下で、一本の針で体を押さえ、もう一本の針で翅を開こうとしていたら、ひょっとしたはずみで、腹部をふっ飛ばしてしまいました。大失敗です・・・。前翅の写真を見ると腹部がなくなっているのが分かりますね。今のところ、唯一の手がかりは上から3枚目の腹部の写真だけなのですが、生殖器をどうみるかは私にはまったく分かりません。仕方なく、この項目を飛ばすことにして、次の⑦ではbを選び、しかも前翅には縁毛はないので、⑧aを選ぶと、Ectopsocus ornatoideになり、飛ばしたEctopsocopsis cryptomeriaeを加えて、これらのどちらかということになります。

さて、MSWiさんは一番上の写真を見られて、クリイロチャタテという予想を立てられていました。九大の目録を見ると、実は、クリイロチャタテというのが後者のEctopsocopsis cryptomeriaeだったのです。実際に、この名で検索すると、似たような種がぞろぞろ出てきます。やはりこれかもしれません。MSWiさん、すごいですね。

最終的に真偽を確かめるには生殖器を見て、⑥を調べなければいけません。そのために、もう少し大きな種で、生殖器の見方を勉強してみようと思っています。ということで、今回は失敗の巻だったのですが、それでもクリイロチャタテ Ectopsocopsis cryptomeriaeの可能性が高いというところまで達しました。

廊下のむし探検 やはりハエくらい

廊下のむし探検 第798弾

昨日の「廊下のむし探検」の結果です。昨日は晴れていたので、午後から歩いてみたのですが、やはり虫はあまりいません。今年はどうしてか、秋キリガは全然見かけず、フユシャクもほとんどいません。そうなると、やはり寂しい晩秋、あるいは、初冬になりますね。



あの奇妙な格好のハエがまたいました。シマバエ科のSteganopsis sp.2と呼ばれている種ですね。こんな格好をしているとカスミカメを思い出すのですが、どうしてこんな格好になるのでしょう。



これはクロバエ科かなと思うのですが、よくは分かりません。



これはたぶんイエバエ科かなと思うのですが、これもよく分かりません。ハエもこうやって撮るとちょっと綺麗に見えますね。(追記2016/01/29:MSWiさんから、「多分、Pygophoraです。そしてもしかすると、リュウキュウシリボソ…かもしれません。でも種までは勇気要るなぁ、やめておきましょう(笑)」というコメントをいただきました。ハエは属や種をどうやって調べていったらよいのか分からなくって、今のところお手上げです。「日本のイエバエ科」を手に入れればよいのかなぁ。そう思って「一寸のハエにも・・・」を見てみたら、似た種がでてきました。でも、「中国蝿類」も必要みたいですね。交尾器も見なければいけないみたいだし・・・



これはこの間からいたヤマトクサカゲロウかもしれません。こんな色だとどうしても撮ってしまいますね。



トビケラもいたのですが、どうせ名前は分からないだろうなと思って採集しませんでした。



ムラサキナガカメムシもいました。



それにアオモンツノカメムシ



それから天井にはクロウリハムシがいました。



蛾はこのソトシロオビナミシャクだけ・・・。



最後はズグロオニグモ。いろいろ探しても虫はこのくらいでした。今日は雨で、「廊下のむし探検」はお休み。そろそろ冬眠モードに入っていくかも・・・。

虫を調べる ケブカチャタテ科?

先日、小さなチャタテを捕まえました。



こんなチャタテです。今回は採集してきたので、頑張って検索をしてみました。採集した個体は冷凍庫に入れておいたのですが、露がつかないように温めてから蓋を開くとまったく濡れないので調子良かったです。観察が終わったら小さな密閉容器に入れて、また、冷凍庫にしまっています。

さて、検索表にはいつものように次の論文を用いました。

富田康弘、芳賀和夫、「日本産チャタテムシ目の目録と検索表」、菅平研報12、35 (1991). (こちらからダウンロードできます)

いつもはチャタテ科あたりにたどり着くのですが、今回はホソチャタテ科にたどり着きました。この論文には日本産95種の種への検索表も載っています。それを使って検索をしてみると、Kodamaius brevicornisという種になりました。その過程をまた写真で示していきたいと思います。



例によって、検索項目を写真に書き込んでいったので、番号を追いかけるだけで検索の過程を見ることができます。まず、初めに全体の写真です。



体長は3.4mm、前翅長は4.2mm。チャタテムシとしてはまあまあの大きさですね。まず、①の長翅型というのはすぐに分かります。②は脚の跗節についてなので、次の写真を見てください。



脚の跗節はこの写真のように2節です。ウロコチャタテ、コナチャタテなどは3節みたいです。次の③は脚の先についている爪に歯があるかどうかなのですが、実はこれが一番見難くて大変です。



今度の個体も脚先がゴミだらけでほとんど爪が出ていませんでした。辛うじて出ているところを見ると、歯はないようです。(追記2015/12/22:爪の歯については以前リンゴチャタテで写したものが今年の6月9日付けのブログに出してあります)次の④から⑥までは翅脈に関することなので翅の写真を出します。



翅脈の名称は次の論文によっています。

田中和夫、「屋内害虫の同定法 : (5) 噛虫(チャタテムシ)目」、家屋害虫 25, 123 (2003). (ここからダウンロードできます)

写真にいっぱい書き込みがあるのは、それだけ翅脈が検索に使われているということです。まず、④はOKなのはすぐに分かります。⑤は後小室を持っていることで上の写真で分かります。小室の左側がないように見えるのは翅脈が透明で見えないからです。⑥は重要な項目で、この後小室とM脈が横脈で結びついている点です。同じ内容が⑧でも⑫でも出てきます。とりあえずこれでホソチャタテ科になりました。

次は種への検索です。⑦は縁紋とRsが横脈で結合していないことで、これもこの写真ですぐに分かります。⑧も重要な項目で、Rs脈とM脈が短い横脈Rs-Mで結合することですが、それもこの写真で分かります。これで、Kodamaius brevicornisになるのですが、前翅長が約3.0mmというところがだいぶ違いました。これは後で解決できます。

さて、種まで到達したのですが、実は、ここからがややこしくなります。この種は岡本半次郎氏が1907年に記載した種で、本当は台湾に分布する種でした。岡本氏は、同じ時に明石、京都で採集された種をもとに、K. pilosusという種も記載していました。(追記2015/12/22:岡本氏の1907年の論文は次の通りです。

H. Okamoto、"Die Psociden Japans", Transactions of the Sapporo Natural History Society Vol. II, 113 (1907). (ここからダウンロードできます)

この論文の中で、K. brevicornisとK. pilosusについてホソヒゲチャタテとオオホソヒゲチャタテという和名が付されていました。この名前が現在も使われているかどうかは分かりませんが・・・


この2種の関係については次の吉澤氏の論文に詳しく載っています。

K. Yoshizawa, "SYSTEMATIC STUDY OF AMPHIPSOCIDAE IN JAPAN (PSOCODEA : 'PSOCOPTERA' : CAECILIUSETAE), WITH COMMENTS ON HIGHER CLASSIFICATION WITHIN THE FAMILY", Insecta matsumurana. Series entomology. New series 58, 1 (2001). (ここからダウンロードできます)

この中で、pilosusは一旦、brevicornisのシノニムとされたのですが、吉澤氏は北大総合博物館保管されている岡本氏の標本を再調査して、両者は大きさが異なり、また、翅の模様や翅脈にも違いがあることから別種とすべきだという提案をしました。その結果、K. brevicornisは台湾に分布する種、本州にいる種はK. pilosusということになりました。さらに、この種はその特徴から、ケブカチャタテ科に入れられ、Kodamaiinaeという亜科が新しく作られました。この論文には科、属の特徴についても書かれていました。



これは論文に載っていた、ケブカチャタテ科の派生形質とKodamaius属の特徴をまとめたものです。これらも調べていきたいと思います。(追記:論文中の"more than one row of setae"を「1列以上の毛列」と訳してしまいました。「2列以上の毛列」とすべきだったですね。文章と写真を訂正しておきます

まず、⑨の頭頂の浅い1対の凹みですが、次の写真を見てください。



たぶん、この写真に見られる凹みのことを指すのではないかと思います。これがケブカチャタテ科の特徴の一つというわけです。ついでにもう少し拡大してみます。



かえってはっきりしなくなったみたいですけど・・・。次の⑨は前翅の翅脈上の毛列についてです。



この写真は前翅を拡大したところですが、翅脈上にはこのような毛列があります。上の翅脈は1列ですが、下の翅脈は2列かそれ以上の毛列がありそうです。そこで、前翅の毛列を生物顕微鏡で詳しく調べてみました。



その結果がこの写真です。橙色の太い線は2列かそれ以上の毛列がありそうなところ、緑色の線は1列の毛列、橙色の点線は1列から2列程度ありそうなところです。ざっと調べただけであまり確かではないので、そのつもりで見てくださいね(本当は毛の根元ないしは毛穴を調べていかないといけないのですが、いい加減に毛を見て判断しました)。いずれにしてもこの結果から、翅の基部側半分だけ毛列が1列以上になっているという⑩は合っていそうです。

Kodamaius属の特徴のうち、⑪~⑬は今まで確かめたことと同じで、⑭は縁紋が長いことを示しています。K. pilosusの特徴についても上の論文に載っていますが、前翅長は4.3mmと書いてありました。今回の個体の4.2mmともよく一致しています。ということで、多分、この個体はケブカチャタテ科Kodamaius pilosusではないかなと思います。合っているといいのですけど・・・。

ついでに検索に用いなかった写真も載せておきます。



腹部です。



腹部末端の写真です。これは♂なのでしょうか、♀なのでしょうか。



そして顔です。

チャタテの検索を何度かやってきたので少しは慣れてきました。爪の歯が見難いことを除くと、後は翅脈を見ればよいので比較的楽な感じです。ただ、富田氏の論文では95種、吉澤氏のチェックリストでは137種と種数がかなり増えていることと、また、分類自体もだいぶ変化しているところから、もう少し新しい検索表が欲しくなりました。

追記2018/02/02:「日本昆虫目録第4巻」(2016)によると、Kodamaius属は現在ケチャタテ科に入っているようで、日本産にはK. pilosusのみが記録されていました。備考によると、2001、2002年にYoshizawaはKodamaius属をケブカチャタテ科に分類したが、その後の分子系統の結果(2014)、現在はケチャタテ科に分類されているとのことです

廊下のむし探検 ハエがいろいろ

廊下のむし探検 第797弾

今日の午後の「廊下のむし探検」の結果です。



今頃になると主だった虫はほとんどいなくて、どうしてもハエばかり撮ってしまいます。といってもハエの名前はほとんど分からないのですが・・・。その中ではミバエの仲間は翅に模様があってよいですね。これは今年の1月1日に見た種を同じみたいです。このときはネットの画像検索との絵合わせでクチジロハススジハマダラミバエかなというところで止まっていたのですが、今回もやっぱりここから進めません。





これはともにクロバエ科かなと思ったのですが、どうせ捕まえても名前まではいかないだろうと思って捕まえませんでした。



これは脚が黄色かったので、一応、捕まえたのですが、たぶん、科までしか分からないでしょうね。



天井に止まっていたので何だろうと思ってフラッシュをたいて写した途端に逃げてしまいました。シマバエかなぁ。残念!



ユスリカももう少し大きな個体が出てきたら、一度、検索してみようと思っているのですが、これは小さいのでパスです。



また、チャタテがいました。今度は別の種みたいです。また、捕まえたのですが、今は冷凍庫の中。



今日は、先日捕まえたチャタテのうち、大きい方の個体の検索をしてみました。こんな個体です。いつものように次の論文で検索をしてみました。

富田康弘、芳賀和夫、「日本産チャタテムシ目の目録と検索表」、菅平研報12、35 (1991). (こちらからダウンロードできます)

まず、科の検索ではホソチャタテ科になりました。さらに、種の検索ではあまり迷うことなく、Kodamaius brevicornisになりました。この種は岡本半次郎氏が1907年にホソヒゲチャタテと記載した種です。実は、ここからが大変でした。この種は台湾で見つかった種で、日本には分布していないのです。この時、岡本氏が同時に記載したオオホソヒゲチャタテ Kodamaius pilosus が日本に分布していたのですが、これは一時期brevicornisのシノニムとされていました。最近、吉澤氏がbrevicornisとpilosusは別種であると報告し、現在では日本産はKodamaius pilosusということになっているようです。この種は現在ではケブカチャタテ科Kodamaius亜科に入れられています。詳細は次回に載せますが、科まで変わっているので、検索表がこのままでよいのかなぁ。ちょっと心配。





クサカゲロウはスズキクサカゲロウ(上)とヤマトクサカゲロウ(下)がいました。でも、この間と同じ個体かもしれません。



蛾はこんな翅だけ。アケビコノハみたいです。



それにワモンノメイガ



それからいつものマエアカスカシノメイガでした。

廊下のむし探検 銀色のクモほか

廊下のむし探検 第796弾

ついでに、昨日見た虫の続きを出しておきます。



廊下の壁に止まっていました。銀色が実に綺麗ですね。ヒメグモ科のシロカネイソウロウグモだと思います。こんな金属のような銀色をどうやって出しているのでしょう。



これは以前見たことがありました。調べてみると、今年の1月に同種のハエを捕まえていろいろと調べていました。その時は、シマバエ科のHomoneura mayrhoferiになりました。今回もたぶんそれでしょう。



これは前日いた個体かもしれませんが、ケブカヒメヘリカメムシです。



それにムラサキナガカメムシ



これはクロオビフユナミシャクでしょうね。今年はどうしてこう鱗粉の取れた個体ばかり見るのでしょう。それにしても、今年はキリガをほとんど見ませんね。いったいどうしたのでしょう。



最後はこのワモンノメイガでした。

廊下のむし探検 ヤマトクサカゲロウを調べてみた

廊下のむし探検 第795弾

昨日の「廊下のむし探検」の結果です。この日は茶色いクサカゲロウがいました。



こんなクサカゲロウです。顔をアップしてみます。



頬から頭盾側辺にかけての模様と口肢の外側が黒いので、たぶん、ヤマトクサカゲロウだと思います。ところで、以前、MSWiさんが、「越冬する時に赤っぽくなるのはヤマトだけなのかな。っと思ったら、そうじゃなさそうですね。」というコメントをされたのが気になってちょっと調べてみました。そして、次の論文を見つけました。

[1] PETER DUELLI, JAMES B. JOHNSON, MARIO WALDBURGER, AND CHARLES S. HENRY, "A New Look at Adaptive Body Coloration and Color Change in "Common Green Lacewings" of the Genus Chrysoperla (Neuroptera: Chrysopidae)", ANNALS OF THE ENTOMOLOGICAL SOCIETY OF AMERICA 107, 382 (2014).

この論文によると、クサカゲロウの中でも Chrysoperla属の一部が茶色ないし赤色に変色するとのことです。色の変わる原因には次の3つがあるそうです。

1) Intraspecific Genetic Variation of Body Color(種内遺伝的な体色変化)
2) Obligatory Ontogenetic Color Change(強制的発生学的体色変化?)
3) Diapause-Associated Color Change(越冬に関係した体色変化)

1)と2)番目はよく分かりませんが、普通に起きるのは3)の越冬に関係した体色変化です。ただし、体色変化するのはすべての種ではなくて、C. carnea, C. pallida, C. nipponensisなど10種で、リストされている種の中の半分から1/3程度でした。なぜ一部の種だけ体色変化をするのでしょう。これについては、たいていのクサカゲロウは腹部に防御性の物質を分泌するところがあるのですが、Chrysoperla属にはないので、その代わりに落ち葉などに似た体色変化をするのだろうと書かれていました。(追記2015/12/20:ついでに防御性物質についても調べてみました。次の論文に分析結果が載っていました。

[10] J. R. Aldrich et al., "Prothoracic gland semiochemicals of green lacewings", J. Chem. Ecol. 35, 1181 (2009).

これによると、主成分は(Z)-4-Tridecene、(Z,Z)-4,7-Tridecadiene、Skatole、(Z)-4-Undeceneなどで、このうち(Z)-4-Trideceneはすべての種で見られましたが、他の物質はかなり種特異性がありました。これらが防御に役立つかのどうかは分かりませんが、Skatoleは哺乳類の糞臭のもとになる物質なのでかなり臭いんでしょうね


ところで、この論文の中で、C. nipponensisという学名の種があることに気が付きました。これに対して、私がいつも見ている本

[2] 塚口茂彦著、"Chrysopidae of Japan (Insecta, Neuroptera)"(1995).

ではC. carneaがヤマトクサカゲロウとなっています。ちょっと不思議に思ったので、調べてみました。塚口氏は次の論文を参考にして学名をつけていました。

[3] S. J. BROOKS & P. C. BARNARD, "The green lacewings of the world: a generic review (Neuroptera: Chrysopidae)", Bull. Br. nat. Hist. (Ent.) 59, 117 (1990).  (ここからダウンロードできます)

この論文の中ではC. nipponensisはC. carneaのシノニムということになっています。ところで、同じ著者の4年後の論文

[4] S.J. BROOKS, "A taxonomic review of the common green lacewing genus Chrysoperla (Neuroptera: Chrysopidae)", Bull. Br. nat. Hist. (Ent.) 63, 137 (1994). (ここからダウンロードできます)

では、C. nipponensisとC. carneaとは、♂交尾器では区別がつかないが、外見では違いが見られるので別種とすべきだという主張に変わっていました。その違いをまとめてみると、次のようになります。

C. nipponensisとC. carneaの違い
1) 前者の段横脈(gradates)は黒色、これに対して、後者は緑色
2) 前者の前縁剛毛(Costal setae)は相対的に長いが、後者は一般的に短い
3) 前者の爪の基部膨脹部(basal dilation of the claw) は爪(claw hook)の約1/2、後者では1/3.
4) 前者の頬と頭盾側部は茶色ないし黒で強く着色するが、後者では淡い
5) 前者の前胸剛毛(prothoracic setae)は淡く、the acumen of the tignumは相対的に長いが、後者では黒く、短い

一番わかり易いのは段横脈の色です。上の写真を見ると、この個体では黒いので、これはC. nipponensisということになります。ところで、日本にいるのはC. nipponensisということになるので、これをヤマトクサカゲロウと呼ぶのが適当ということのようです。

話はまだ続きます。実は、クサカゲロウの幼虫はアブラムシを食します。Chrysoperla属は特に多く食べるので、導入天敵として外国産が日本に導入されていました。その導入された種がドイツ産のC. carneaだったのです(こちらをヒメクサカゲロウと呼んでいるようです)。そうでなくても日本産のヤマトクサカゲロウには2種いるとされ、A型とB型と呼ばれていました。しかし、この近縁の外国種が導入されたことでさらにややこしくなりました。この辺りをミトコンドリアのチトクロームオキシダーゼの遺伝子配列で調べた論文が出ていました。

[5] NAOTO HARUYAMA, HIDESHI NAKA, ATSUSHI MOCHIZUKI, AND MASASHI NOMURA, "Mitochondrial Phylogeny of Cryptic Species of the Lacewing Chrysoperla nipponensis (Neuroptera: Chrysopidae) in Japan", ANNALS OF THE ENTOMOLOGICAL SOCIETY OF AMERICA 101, 972 (2008).

この論文によると、B型は単一種と見られますが、A型はさらに2つに分かれ、一方はC. carneaに近く(A2)、もう一方はB型に近いそうです(A1)。ただし、A型の2つの型の個体は交配するので同一種とみなせるとのことです。ところで、こういう微妙な種の違いをどうやって見分けたら良いのかについては次の論文が参考になります。

[6] Charles S. Henry and Marta M. Wells, "Can What We Don't Know About Lacewing Systematics Hurt Us? A Cautionary Tale About Mass Rearing and Release of 'Chrysoperla carnea' (Neuroptera: Chrysopidae)", American Entomologist 53, 42 (2007). (ここからダウンロードできます)

C. carneaの仲間は世界中に広く分布しています。お互いに外見的な違いは僅かなのですが、実は「鳴き声」はかなり種によって違っています。鳴くといっても口で鳴くわけではなくて、腹を上下させて床を叩いて音を出すみたいです。周波数は数十Hz、これがだいたい1秒間隔で強くなったり弱くなったりします。声というよりは音ですね。♂も♀も音を出し、2匹でデュエットを奏でます。つまり、この鳴き声で互いを見分けているのです。実際、論文[5] でも、鳴き声のタイプ(song type)を調べているのですが、C. carnea、C. nipponensis A、C. nipponensis Bの3つは明らかに異なる鳴き声をしています。ところが、ミトコンドリア遺伝子で分かれたC. nipponensis A1とA2は全く同じ鳴き声だったそうです。

追記2015/12/19:鳴き声の話は面白いですね。こんな論文も見つけました。

[9] C. S. Henry et al., "Courtship Songs of Chrysoperla nipponensis (Neuroptera: Chrysopidae) Delineate Two Distinct Biological Species in Eastern Asia", ANNALS OF THE ENTOMOLOGICAL SOCIETY OF AMERICA 102, 747 (2009).

これは鳴き声の専門家Henry氏とミトコンドリア遺伝子でC. nipponensisを調べた望月氏らの共同研究で、C. nipponensisのA1、A2、BとC. carneaの鳴き声の解析です。結果は論文[6]と同じなのですが、♂と♀のデュエットの様子も記録されていて面白いです。結論的には、C. nipponensis A1とA2は先祖の遺伝的多型によるもので同種だろうということ、AとBは別種でAの方が先にC. nipponensisという名前で記載されたので、厳密な意味でAがC. nipponensis、Bは未記載種とするのがよいということです


追記2015/12/19:こうなるとヤマトか未記載種かの判断が鳴き声でしかできないことになりますね。塚口氏[2]によると、AとBは幼虫では頭部の斑紋などで明らかに区別できるようです。さらに、Aは日本全土に分布しているが、Bは7月と8月に出現し、長野県で得られているだけとのことです。ただ、一度、兵庫県でも得られたというので、どちらかという判断は成虫ではやはり難しそうです。鳴き声ってどう調べるのかなぁ

追記2015/12/20:Henryが初期に行った鳴き声を記録する実験装置が次の論文に載っていました。

C. S. Henry, "Acoustical Communication During Courtship and Mating in the Green Lacewing Chrysopa carnea (Neuroptera: Chrysopidae)", Entmol. Soc. Am. 72, 68 (1979).(ここからpdfがダウンロードできます)

コップにクサカゲロウの♂か♀を入れておき、上にサランラップで蓋をします。このラップの一部に小さな穴をあけて、その穴を通して上から別の個体を入れた網製の入れ物を吊るします。近くに置かれた個体に反応してクサカゲロウがサランラップ上で音をだすと、後はレコードと同じようにその音をピックアップで検出します。つまり、針金をサランランプに取り付け、その振動をセラミックのトランスデューサーで検出し、オシロスコープに出すという仕組みです。上の論文に絵が載っていますので、それを見るとよく分かります


追記2016/03/23:菅井 桃李さんから、「ヤマトクサカゲロウtype Bとされてきたものですが、現在はクロズヤマトクサカゲロウChrysoperla nigrocapitata Henry et al. 2015として独立種になりました。今まで長野県の山地で見られたものもヤマトクサカゲロウと言えたのですが、幼虫はクロズヤマトクサカゲロウの方しか確認できてないので、成虫もそうなのかもしれない状況になってしまいました。クロズは分布が北方系な感じですから、西日本や関東平野では自然分布は無いと思うのですが、外見の差が殆ど無いので山地や北日本で新たな産地が見付からないとも限らないでしょうね。」というコメントを頂きました。早速、調べてみると、次の論文に載っていました。

C. S. Henry, S. J. Brooks, J. B. Johnson, N. Haruyama, P. Duelli and A. Mochizuki, "A new East-Asian species in the Chrysoperla carnea-group of cryptic lacewing species (Neuroptera: Chrysopidae) based on distinct larval morphology and a unique courtship song", Zootaxa 3918, 194-208 (2015). (ここからダウンロードできます)

ざっと読んでみると、成虫ではRs-Psmの第2横脈の色、翅の幅と長さあたりが区別点ですが、何となくはっきりしません。やはり幼虫か鳴き声でということになりそうですね。クロズの分布は日本、韓国となっていますが、採集された個体は北によっている感じです。私の住む近畿では従来通りヤマトで良いのかなぁ


最後はどうして緑色の体が茶色や赤になるのかについてですが、これについて直接的に書かれた論文は見つかりませんでした。ただ、イトトンボ、バッタについては論文が見つかりました。

[7] J.E.N. Veron, A.F. O'Farrell, B. Dixon, "The fine structure of odonata chromatophores", Tissue and Cell 6, 613 (1974).
[8] B. K. FILSHIE, M. F. DAY, and E. H. MERCER, "COLOUR AND COLOUR CHANGE IN THE GRASSHOPPER, KOSCIUSCOLA TRISTIS", J. Insect Physiol. 21, 1763 (1975).

これらはいずれも水色ないし青色の体色が茶色に変わるもので、温度や光により変化するとのことです。従って、越冬とは直接関係はないのですが、体色変化の機構は似通っているかもしれません。いずれも表皮細胞に微小な粒子がたくさん詰まっていていて、それで青色をつくっているのですが、茶色になる時はその中に黒色のメラニン顆粒が入り込んで来るというものです。顆粒や粒子の混じり方で色が変化するので可変であり、また、変化の速度も速いようです。

ということで、クサカゲロウについていろいろと調べてみました。





最後に同じChrysoperla属でも体色変化しないと思われるスズキクサカゲロウもいました。

廊下のむし探検 マルトゲムシ、チャタテなど

廊下のむし探検 第794弾

昨日の「廊下のむし探検」の結果です。





奇妙な虫がいました。でも、今回は何となく見覚えがありました。今年の4月17日付けのブログに書いていました。この時は、通りすがりさんから、マルトゲムシ科Microchaetes属の一種で、外来種だと教えていただきました。今回はネットでも調べてみたのですが、これ以上の情報は得られませんでした。でも、日本各地で見つかっているようです。





チャタテが2種いました。上は少し大きく、下はかなり小さい種です。今回は吸虫管を持っていたので、試してみました。あっという間に吸い込めました。これは便利ですね。吸い込んだ後、どうしようかと思ったのですが、管の部分だけ蓋をして、冷凍庫にそのまま入れています。今度調べてみます。(追記2015/12/27:MSWiさんから、「チャタテ2種は上がケチャタテの何か(Valenzuela?)、下がクリイロと予想しておきます。調べてみてください。」というコメントをいただきました。そこで、富田氏の検索表を用いて検索をしてみたのですが、私の甚だ怪しい検索結果では、上はケブカチャタテ科Kodamaius pilosusになり、下はウスイロチャタテ科クリイロチャタテ Ectopsocopsis cryptomeriaeの可能性が高いという結果になりました。下はMSWiさんの予想と合っていたので、たぶん、大丈夫だと思いますが、上の方は怪しいですね。ただ、下は検索途中で腹部を針で飛ばしてしまったので、最終的な決断はできませんでした。失敗、失敗





次はこの奇妙奇天烈な虫です。たぶん、ヌカカ科♂かなと思うのですが、よくは分かりません。(追記2015/12/27:MSWiさんから、「ヌカカはForcipomyiaか?」というコメントをいただきました。ヌカカは今のところ、調べようがなくて、保留の状態です。ただ、Forcipomyiaで画像検索をすると似たような個体が写った写真がぞろぞろ出てくるので、大いに期待が持てます。どうも有難うございました



ヒメツチハンミョウ♀がまたいました。久しぶりでした。



ナミテントウはマンション中にいっぱいいます。



MSWiさんに教えていただいたデコボコマルハキバガがまたいました。前日の個体かもしれません。でも、翅の後ろがちぎれてしまっています。こんな小さな蛾でも鳥にやられるのかな。(追記2015/12/27:MSWiさんから、「擦れ具合が似てるので、多分先日のと同じ奴なんでしょうね、デコボコは。前の写真にチラっと写っていた左触角も切れてしまったようです。鳥の攻撃を翅に引き付けるための模様らしいものはないし、彼は強運だったのかもしれない…。」というコメントをいただきました



鱗粉がほとんどなくなっているのですが、僅かに残った模様から、たぶん、クロオビフユナミシャクかなと思います。



ガラスの向こう側に止まっていました。口吻があるので、フユシャクではないみたいですね。(追記2015/12/17:MSWiさんから、「蛾はナカオビアキナミシャクでしょうね。」というコメントをいただきました。確かに、今頃だったらそれかもしれません。どうも有難うございました



後脚腿節の内側が黒いので、たぶん、ブチヒメヘリカメムシ



最後はこんな立派な触角をしたユスリカです。来年はユスリカを調べてみようかと思って、「図説 日本のユスリカ」を購入しました。ぱらぱらと見てみたのですが、検索はなかなか手ごわそうです。標本の作り方も載っていたのですが、翅をはずし、頭部、胸部、腹部を切り離し、さらに、触角まで切り離すとは・・・。

廊下のむし探検 クロモンウスチャヒメシャクほか

廊下のむし探検 第793弾

昨日の「廊下のむし探検」の続きです。



今日の最初はこの蛾です。白い紋が目立ちますが、いつか見たことがあったような気がしました。調べてみると、昨年の11月30日にも見ていました。クロモンウスチャヒメシャクです。「大図鑑」によると、分布が九州南部、四国南部、屋久島になっていましたが、「標準図鑑」には本州、四国、九州、対馬、屋久島と広がっていました。ただ、本州での記録は少ないとのことでした。(追記2015/12/27:ささきさんから、「やはりクロモンウスチャヒメシャクがいるんですね。私は北摂で30年以上蛾の採集をしていますが、見たことがありません。この時期にだけ出現するんですか?」というコメントをいただきました。やはり珍しい蛾のようです。私はまだ二回しか見ていないのですが、いずれも晩秋から初冬にかけてでした



次はマダラマルハヒロズコガでしょうね。(追記2015/12/17:MSWiさんから、「2枚目の蛾はデコボコマルハキバガ辺りではないですか?マダラマルハはこの時期いないのではないかな…幼虫越冬ですし。」というコメントをいただきました。図鑑で見てみると確かに似ています。それにしても奇妙な名前を付けられたものです。どうも有難うございました



それに、マダラニジュウシトリバ



それと、マエアカスカシノメイガでした。蛾もまだ、探すといろいろといますね。



これは以前、クロバエ科だとした種に似ています。この手のハエはいつも科止まりですね。



小さいユスリカもよく見るのですが、これもなかなか先が進みません。



これはキハダエビグモかなと思います。



たぶん、マダラヒメグモでしょうね。



最後はコカニグモかな。この時期になると、どうしてもクモばかり撮ってしまいますね。

廊下のむし探検 カメムシ

廊下のむし探検 第792弾

今日の「廊下のむし探検」の結果です。今日は少しだけ暖かかったので、午後から歩いてみました。きっと小さなハエやチャタテが多いだろうなと思って。それで、吸虫管を持って行ったのですが、小さな虫はまったくいませんでした。代わりに、カメムシと蛾がいろいろといました。でも、とりあえずカメムシから。



クヌギカメムシの仲間です。クヌギカメムシは普通緑色なのですが、この時期になるとこんな色の個体が現れてきます。以前、バッタの茶色と緑色の体色多型に幼若ホルモンとコラゾニンという2種類のホルモンが関係しているということを調べた研究を紹介したことがありました。これも似たような仕組みで色変化しているのかもしれませんね。(追記2015/12/27:MSWiさんから、「秋冬の赤いクヌギカメムシは良い物です。ちょうど紅葉と似た時期と色変化なので、僕ならコウヨウカメムシとでも名付けていたかも…同じカメムシ目のエンドウヒゲナガアブラムシでは共生細菌の仕業で赤→緑に色が変わるというのが報告されていましたけど、もしかしてクヌギカメムシもそんな感じなのかもしれないですね。」というコメントをいただきました)

追記2015/12/27:エンドウヒゲナガアブラムシの体色変化は、産総研と理研の共同研究でこちらに載っていました。アブラムシの体色は赤色のものと緑色のものがあって、赤は緑に対して遺伝的に優勢です。赤色は黄から赤のカロテノイド系色素で、緑色は緑から青のさまざまな色の多環性キノン系色素で色を出しているのですが、リケッチエラに感染すると、緑系の色素生産が活性化され、赤は緑に、緑はより緑になることを見つけたそうです。緑色になることにより、テントウムシの攻撃を防ぐと共に、緑色のアブラムシを好む寄生蜂に対しては別の共生細菌が卵や幼虫を殺してその攻撃で防いでいるとのことです。ついでにリケッチエラとはレジオネラ目コクシエラ科リケッチエラ属の細菌を指すようです。似た名前のリケッチアはリケッチア目リケッチア科リケッチア属なので、全く別物のようです

追記2015/12/21:クヌギカメムシの体色変化の仕組みは論文が見つからなかったのですが、クサギカメムシについては見つかりました。

C. C. Niva and M. Takeda, "Color changes in Halyomorpha brevis (Heteroptera: Pentatomidae) correlated with distribution of pteridines: regulation by environmental and physiological factors", Com. Biochem. Physiol.B 132, 653 (2002).

クサギカメムシが体色変化したのかどうか知りませんが、象牙色から赤まで変化するそうです。赤や薄い赤のときは体内に赤色の色素エリスロプテリンを蓄積しているそうです。これに対して、象牙色や薄い赤の場合は尿酸が検出されました。この両者の量は負の相関を持っていたとのことです。尿酸は鳥の糞の成分で真っ白ですね。つまり、赤と白の割合で色が変化しているというわけです。論文が手に入らないので、要旨だけ見ました




それにアオモンツノカメムシもいました。



アカヒメヘリカメムシ



ムラサキナガカメムシは今日は何匹かいました。



最後はマツヒラタナガカメムシです。このカメムシはこれまで3月から4月にかけて見ていました。越冬前の個体なのでしょう。この他にクサギカメムシ、マルカメムシは結構いたのですが、これらはパスです。

廊下のむし探検 何もいない

廊下のむし探検 第791弾

今日は午前中ちょっと晴れたのですが、午後からはすっかり曇って風も強く、冬らしい天気になってしまいました。そんな午後歩いたので、虫らしい虫の姿は全く見かけませんでした。



ユスリカがいました。ほかに何もいないので、このユスリカをちょっとだけ調べてみました。「日本産水生昆虫」には亜科への検索表が載っていました。検索をしてみると、ユスリカ亜科ではなくて、エリユスリカ亜科になってしまいました。その流れを書くと、

1b 翅脈MCuはない
5b 後盾板に中央条線がある;普通、R2+3がある
6a 前肢の第1跗節は脛節より短い

という感じです。1bと5bの後半は次の翅脈を見ると分かります。



翅脈の名称は「日本産水生昆虫」によっていますが、M3+4以降はちょっと怪しいです。MCuという横脈がないので、M3+4をCu1、Cu1をCu2にすべきなのかなと迷ったのですが・・・。いずれにしても、MCuという横脈はなく、R2+3という脈はあります。さらに、胸背にある黒い筋が5bの中央条線かなと思いました。最後の前肢の脛節と跗節第1節の長さは明らかに脛節の方が長いので、結局、エリユスリカ亜科になってしまいました。ここから先の属への検索は実に73項目もあり、私の忍耐を遥かに超えるものです。一度、採集してきて、暇な時にでもやってみるとよいかもしれませんが・・・。



後はウスミドリナミシャクと



ワモンノメイガで、これで主だったところは全部でした。もっとも、カメムシ類、ナミテントウ、キモグリバエ、ヒゲナガカワトビケラなどは常連なので、写していませんが・・・。

廊下のむし探検 小さな虫たち

廊下のむし探検 第790弾

一昨日の「廊下のむし探検」の結果です。寒くなって虫が減ってくると、ついつい小さな虫を写してしまいます。そうなると後の名前調べが大変になりますというよりか、ほとんど分からなくなります。この日も小さな虫ばかりを写してしまいました。







まずはこの小さな虫からです。これはチャタテムシの仲間ですが、先日、MSWiさんから、Ectopsocus属に似ているというヒントをいただきました。吉澤和徳氏のチェックリストによれば、ウスイロチャタテ科にはEctopsocus属7種とEctopsocopsis属1種が登録されています。そこでいくつか論文を見てみました。(追記:Ectopsocopsis属を入れるのを忘れていました。追加します

田中和夫、「屋内害虫の同定法 : (5) 噛虫(チャタテムシ)目」、家屋害虫 25, 123 (2003). (ここからダウンロードできます)
富田 康弘、芳賀 和夫、「日本産チャタテムシ目の目録と検索表」、筑波大学菅平高原実験センター研究報告 12, 35 (1992). (ここからダウンロードできます)

最初の論文では、ウスイロチャタテ科のうち、クリイロチャタテ(Ectopsocopsis cryptomeriae)とブリッグスウスイロチャタテ(Ectopsocus briggsi)の2種への検索表が載っていました。2番めの論文では、ウスイロチャタテ科の未記載種を含めた9種への検索表が出ています。ただ、生殖器や生殖突起に関する項目があるので、写真だけでは無理みたいです。上の論文は2種だけなので、あまり当てにはならないかなと思って、まだちゃんとした検索はしていません。とりあえず検索項目の拾い読みをしてみました。

まず、上の写真に翅脈の名称を付けてみました。



翅脈の名称は上の論文によっています。さらに、図の中に書き込んだ、四角い縁紋があるとか、後小室がないとか、跗節は2節とかはいずれもウスイロチャタテ科を示す特徴です。ウスイロチャタテ科であることは間違いなさそうです。でも、種まで行くにはやはり採集する必要がありますが、採集したら何とかなるかな。そんな気がしてきました。(追記:富田氏らと田中氏の論文、それにChecklistの分布、及び、上の写真だけを使うと、Ectopsocopsis属は除くことができ、、Ectopsocus属の中の pumilis, meridionalis, briggsiの3種に絞られることが分かりました。後は、後翅の縁毛、肛側板、後脚第1跗節の櫛歯、卵巣小管など顕微鏡を使わないと分からない項目が残りました



クロミャクチャタテもいたのですが、先ほどの翅脈と比べると、この場合は後小室のあることが分かります。



次はノミバエです。どうも寒くなってくるとノミバエを見るようになりますね。これは以前検索をして、Megaselia属Megaselia亜属だとした種に似ています。



こちらもノミバエで、やはりMegaselia属だとした種に似ています。よく見ると脚が淡色ですね。



これはキノコバエでしょうね。写真を撮っていたら、嫌がって逃げ出そうとしたので、翅脈がよく見えるようになりました。



キモグリバエがいたので、カメラで追いかけていたら、突然、こんな格好でじっとし始めました。擬死なのでしょうね。いきなりひっくり返ったのでびっくりしました。



これは以前も見たガガンボですね。たぶん、ヒメガガンボ科かなと思います。



このハエも以前検索をしたことがありました。その時はイエバエ科だったのですが、合っているかな。(追記2016/01/29:MSWiさんから、「この綺麗なイエバエも、先程のPygophoraを調べていたらついでに見つけました。ヘリグロハナレメのようですね、これは。僕の好みのハエだなぁ。」というコメントをいただきました。ヘリグロハナレメイエバエ、まさにそのものです。昨年の1月にも似た種を見ていたのですが、その時は胸背に2本の黒い筋がありました。でも、同じ種かなぁ。いつもどうも有難うございます



これも検索をしたのではなかったかな。たぶん、クロバエ科。



外ではよく見るキゴシハナアブ





共に小さなハチです。上は体長1.4mm、下は体長1.9mm。何だか分かりませんが・・・。



脚がまだらになっているので、たぶんアシマダラヒメカゲロウではないかと思います。



最後のこの虫は何だろう?

追記:そらさんから、「ウロコチャタテ科の仲間だと思います。逆三角おむすびの形をした顔が可愛いです。」というコメントをいただきました。実はいつも見ていた種でした。この日はあまりに小さな虫ばかり写していたので、ウロコチャタテがやけに大きく見えて分からなかったようです。ちょっとお恥ずかしい・・・。

ついでに、ウロコチャタテ科を調べてみました。吉澤氏のチェックリストでは、ウロコチャタテ科にはウロコチャタテとオオウロコチャタテの2種が載っています。さらに、富田氏らの検索表では、オオウロコは、1)爪の先端に1個の歯を持ち、2)頭頂に1対の淡黄褐色の円斑を持ち、3)前翅長は約3.6mm、ウロコの方は、1)爪の先端に2個の歯を持ち、2)前翅の鱗片は黄褐色味が強く、3)前翅長は約2.5mmとあります。前翅長を測らなかったので、写真からは頭頂の円斑のあるなしが一番分かりやすい感じです。写真の種には円斑はないので、ウロコチャタテでよさそうです。そらさん、どうも有難うございました

廊下のむし探検 イシガケチョウ、蛾ほか

廊下のむし探検 第789弾

昨日の「廊下のむし探検」の結果です。この日は小さな虫ばかりを撮影してしまったので、まだ整理がついていません。それで、比較的に大きな虫から出すことにします。



地下駐車場にイシガケチョウがまだそのまま止まっていました。でも、このチョウ、近くから見るとその通りなのですが、遠くから見るとどうも蛾が止まっているように見えて仕方がありません。



このくらいの大きさで見た時に、上が頭、下が腹になり、白っぽい蛾が止まっているように見えてしまうのです。その場合、矢印の部分は脚に見えてしまいます。蛾に擬態しているのか、そう見えるのは私だけなのか・・・。



これはフタスジクリイロハマキです。よく見るみたいですが、「廊下のむし探検」初登場でした。(追記:書き忘れていました。「大図鑑」によると、年2化で、第1化は6-7月、第2化は9月で、そのまま成虫越冬するそうです





マンションの廊下にはナミテントウがいっぱいなのですが、あちこちでこんな風に固まっています。



この日はマンション近くの芝生を刈っていたためか、バッタやクモがいっぱいやってきていました。これはツチイナゴ





それにヒシバッタが2匹。採集していないので、種までは分からないだろうと思って調べていません。(追記:いろいろな方向から撮った写真を見ると、上はハラヒシバッタ♂成虫かもしれません。下は分かりません



これは以前キハダエビグモとしたのと同じみたいです。



それからハラクロコモリグモ



それからオチバカニグモの仲間。これは♂の方ですね。



これはサラグモの仲間かなぁといつも言っているのですが、よく分かりません。

虫を調べる コオロギバチ




先日、こんなハチを捕まえて検索をしてみたらギングチバチ科になることが分かりました。そうしたら、MSWiさんから、「ヒメコオロギバチLiris festinance だと思います。格好良い蜂ですねぇ。成虫越冬で、真冬でもちょっと陽が射すとせわしくウロウロしてる様です。」というコメントをいただきました。コオロギバチはコオロギ類を狩って、地中の孔に運び込み、子の餌として貯えるということです。

ギングチバチもコオロギバチも初めて聞く名前です。それで勉強のために種の検索でもしてみようかと思いました。例によって、寺山守氏のハチ検索表から、ケラトリバチ族・ヒメアナバチ族の種検索を使ってみることにしました。この中には属への検索表が入っていないので、まず、コオロギバチ属の特徴と比較してみることにしました。



コオロギバチ属の特徴と他属との区別を列挙してみました。これを一つ一つ確かめていこうと思います。まず、①から。



例によって各項目を写真に書き込んでみました。①は中型から小型の種かどうかですが、体長が10mmなので、多分、そうなのでしょう。②は単眼に関するものなので、次の写真を見て下さい。



後単眼はあることはあるのですが、僅かに見える程度でした。たぶん、こういうのを痕跡的というのでしょう。③は頭部についてなので、次の写真を見て下さい。



複眼の内側にはっきりとした隆起が見られます。何となく、この特徴は大事なような気がします。④は中胸と前伸腹節の大きさ比べですが、この表現はちょっと不明確で、中胸がどの部分を指すのかよく分かりません。多分、Fig. 1に示すように、背側から見たらよいのかなと思うのですが、中胸というのは中胸盾板+小盾板だとすると、前伸腹節よりは少し長いし、中胸盾板だけだとすると、少し短くなります。よく分かりません。同じ項目が⑩にもありました。

⑤の前翅亜縁室は次の写真ですぐに分かります。



次の⑥もやや悩ましい項目です。



この個体は腹端が単純なので、多分、メスだと思うのですが、第6背板は点刻されてはいるようですが、はっきりしません。毛が生えていて光沢はないことは確かです。ということで、ちょっとあやふやなところもありますが、だいたいのところ、コオロギバチ属の特徴は満足されているようです。ついでに他の属との比較についても調べてみます。

⑦の大顎基部の歯状突起はFig. 3でも分かりますが、次の写真も見て下さい。




⑧の前伸腹節側面については次の写真を見て下さい。



前伸腹節側面にはしわが入っていますが、深い点刻はなく、光沢もありません。⑨と⑩はすでに述べたので省略します。ということで、たぶん、コオロギバチ属で大丈夫かなと思っています。

そこで、種への検索も試みてみました。



前半は必要な部分だけ、後半は種への検索項目をすべて書いたので、少しややこしくなっています。⑪はFig. 7を見ると分かります。⑫の脚が黒いことは次の写真を見て下さい。



⑬にある腹部の白帯はないのですが、ヒメコオロギバチでは目立たないと書いてあるので、ここでは良いことにしておきましょう。⑬の他の項目もOKだと思うので、次の⑭に移ります。⑭は中胸背板が規則的な点刻を持つか、鮫肌状かという点です。これにより、ヒメコオロギバチか、ナミコオロギバチかが決まります。そこで、中胸背板を見てみます。



写真のように中胸背板には点刻があるような気がします。鮫肌状というのがどういう状態か分からないのですが、はっきりさせるために、この部分を拡大してみます。



これは生物顕微鏡で撮影したものですが、点刻がはっきり見えます。これが規則的なのかどうかはよく分かりませんが・・・。さらに、分布を本州に限定するとヒメコオロギバチになるのですが、一応、その項目も見てみます。



中胸側板の点刻は明確です。他の特徴もそのようなので、たぶん、MSWiさんが言われるように、ヒメコオロギバチで間違いないのではと思いました。それにしても、最初の写真だけでよくお分かりになりますね。私ももう少し修行を積まなくては・・・。

ついでに検索に使わなかった写真も載せておきます。



これは尾部末端を腹側から写したものです。かなり艶のある感じですね。



そして、これは中胸を背側から撮ったものです。

今回はだいたい名前が分かっていたので、かなり安心して検索ができました。未知のものだと途中から不安になってきて、なかなか進めないのですけど・・・。

廊下のむし探検 イシガケチョウほか

廊下のむし探検 第788弾

昨日の「廊下のむし探検」の結果です。最近は晴れていても虫はほとんどいません。でも、いないこともデータのうちかなと思って歩いてみました。マンションの高階の廊下から歩き始め、最後に地下駐車場を覗いてみるのですが、最後の最後にこんなチョウに出会えました。



イシガケチョウです。南方系のチョウで北上しているので、私の住んでいるところでも時々見かけることがありますが、あまり多くはありません。この日は地下駐車場の柱にこんな格好で止まっていました。翅を開いて壁にペタッとくっついている感じです。こうすると、薄暗い駐車場ではほとんど存在すら分かりませんでした。この日は虫がほとんどいなかったので、このイシガケチョウを見てちょっと嬉しくなりました。



後はいつもの連中たちです。まず、ナカオビアキナミシャク



たぶん、ヘラクヌギカメムシだと思っている種。



キバラヘリカメムシ



クロミャクチャタテ



後はハエ類。これは翅脈から見ると、イエバエの仲間かなぁ。



キモグリバエの仲間。これはたくさんいます。



これは以前からオオユスリカだとしていた種ですが、実のところよく分かりません。ユスリカの本が欲しくなってきました。



最後はクモです。ネコハグモ



それにマダラヒメグモ。イシガケチョウがいなかったら、ありふれた種ばかりになるところでした。

廊下のむし探検 ハエほか

廊下のむし探検 第787弾

3日前の「廊下のむし探検」の結果です。土日が久しぶりの出張で、ブログに出すのが滞ってしまいました。出張から帰ってきてパソコンを見たら、充電池が15%と少なくなっています。電源が抜けたのかなと思って、ケーブルなどを調べてみたのですが、どこにも異常はありません。電源ケーブルの不良かもと思って、ネットで調べてみると、ACコード自主回収プログラムなるものが走っていて、不良品を無償交換しているとのこと。これだなと思ったのですが、交換には2週間ほどかかるというので、しばらくはブログも出せないなと諦めていました。

そうしたら、家族がテーブルタップの一番おおもとのコンセントが抜けかけてたというので、それを入れてようやく動くようになりました。ごたごたしたついでに、今日はWindows10へのアップグレードもやってみました。何となく動作が遅かったり、プリンターが動かなくなったりといろいろとやっていたら、とうとう夕方になってしまいました。

それから、ようやく3日前の虫を調べ始めました。



今日の最初はこのハエです。飛ぶほどの元気はないのですが、フラッシュをたくたびにビクッと動くので、常にこんな格好の写真になってしまいます。後で写真を見てみると、なにやら見覚えがあります。過去の写真を見ると、トゲハネバエ科だと同定したものと似ています。それかもしれませんね。



この時期になるとノミバエに注目がいきますね。主だった虫がいないので、つい小さい虫を見つけるからでしょうね。腹部にダニでもついている感じですね。以前はこれを見て属まで検索していたのですが、もう一度復習しないと何を見たらよいのか忘れてしまいました。



これは以前検索してクロバエ科だとしたハエに似ています。



後はスズキクサカゲロウ



ヒメツチハンミョウも久しぶりに見る感じです。この日はメスが1匹だけでした。



クロスジフユエダシャクもときどき見かけますね。



これは何かなと思って「日本産幼虫図鑑」を見てみたのですが、アトボシハマキという蛾の幼虫に似ています。少なくとも、それに近い種でしょうね。

廊下のむし探検 チャタテとハエ

廊下のむし探検 第786弾

一昨日の「廊下のむし探検」の結果の続きです。このところ、どうしてかチャタテをよく見ますね。小さくてどうせ名前は分からないだろうと思っていたら、MSWiさんにいろいろ教えていただきました。



最初はこのチャタテです。ホソチャタテ科のヨツモンホソチャタテだと教えていただいたものです。小さいのですが、ネットで調べてみると、皆さん綺麗に撮っておられますね。おまけに産卵のシーンや、その卵を糸を絡めている姿まで。つくづく感心しました。



これも小さなチャタテですが、翅に四角い模様があります。これも名前調べを諦めていたら、MSWiさんからウスイロチャタテ科のEctopsocus briggsiに似ていると教えていただきました。吉澤氏のchecklistを見ると、Ectopsocus属には8種、そのうち本州には5種いるようです。ネットで探してもなかなか画像が出てこないのですが、E. briggsiのほか、E. meridionalisなども翅に四角の模様があるみたいなので、今のところEctopsocus sp.というところでしょうか。



このほか、ちょっと大きなチャタテもいました。クロミャクチャタテです。この日は2匹いました。今頃、どうしてチャタテが多いのでしょうか。



先日見たシマバエ科のもう一種の未記載種がいました。Steganopsis sp. 1の方です。カスミカメみたいな格好ですが、これもハエです。



これはクロバネキノコバエ科かなぁ。



これはキノコバエ科でしょうね。



キモグリバエの仲間は今、マンションに山ほどいます。ナミテントウも山ほどいますが・・・。





こんなハエが外壁にここかしこと止まっているのですが、採集しなかったのでよく分かりません。

ヒメカゲロウの翅脈

昨日、ヒメカゲロウの翅脈について書いていたら、だいぶ間違っていたところがあったので、手元にある標本を使ってもう一度、翅脈を調べてみました。翅脈の名称は翅脈研究の原点ともいうべき次の本を用いました。

J. H. Comstock, "The Wings of Insects", The Comstock Publishing Company (1918). (ここからダウンロードできます)

この本の中にはヒメカゲロウ科とケカゲロウ科の翅脈について出ていたので、標本の翅の写真を撮って名前をつけてみました。



これはチャバネヒメカゲロウです。以前、学名はEumicromus numerosusだったのですが、今はMicromus numerosusとなり、属名が変更になっていました(Catalogue of Lifeの情報です)。R2とR2aとの間の脈に名前がついていないのは、分岐が増えたためにできた脈(アクセサリー脈)として解釈しています。もし名前をつけるなら、R2a、R2b・・・とつけたら良いみたいです。後翅の基部近くに菱型のような脈が見えますが、この部分の翅脈は次のように解釈しています。



なかなか複雑です。



次はアシマダラヒメカゲロウと思われる個体です。これも同様に名前を付けてみました。このヒメカゲロウは以前はSpilomicromus maculatipesと呼ばれていましたが、現在ではMicromus calidusのsynonymということでこちらの名前で呼ばれています。つまり、チャバネと同属です。翅脈を見る限り、チャバネもアシマダラもほとんど同じに見えます。



次はケカゲロウ科のケカゲロウの翅です。さすがにかなりびっしりと毛が生えています。翅脈はヒメカゲロウ科とだいぶ違うのですが、これもComstockの本に載っていたので、比較的簡単に名前をつけることができました。やはり同様のアクセサリー脈があります。

ヒメカゲロウ科もいくつか属への検索表を見つけたのですが、基本的に翅脈を使って検索するので、翅脈の勉強をしておくといいかなと思ってやってみました。Comstockの本は古いのですが、この名称は現在でも使われているようです。(追記:臀脈の表記が原文では1st Aとか2nd Aになっています。どうしてA1やA2にしないのかよく分かりませんが、原文に従って1Aという風に略すことにして、図を訂正しました

廊下のむし探検 ヒメカゲロウほか

廊下のむし探検 第785弾

昨日の「廊下のむし探検」の結果です。この日はいろいろと虫がいました。まず、ヒメカゲロウについて調べてみました。



こんなヒメカゲロウがいました。いつものチャバネヒメカゲロウではなさそうなので何だろうと思って調べてみました。九大の日本産昆虫目録データベースを見ると、ヒメカゲロウ科には42種載っています。そこで、文献も調べてみました。ちょっと古いのですが、こんな論文が見つかりました。

W. Nakahara, "On the Hemerobiinae of Japan", 日本動物学彙報 9, 11 (1915).

この論文の中にHemerobiini族の検索表が載っていました。ただ、これには翅脈の情報が必要です。ヒメカゲロウの翅脈は複雑で何が何だか分かりません。それで、翅脈研究の原点と呼ぶべきComstock(1918)の本を見てみました。

J. H. Comstock, "The Wings of Insects", The Comstock Publishing Company (1918). (ここからダウンロードできます)

すると、偶然にもこのヒメカゲロウと似た翅脈が載っていました。


Reproduced from J. H. Comstock, "The wings of insects; an exposition of the uniform terminology of the wing-veins of insects and a discussion of the more general characteristics of the wings of the several orders of insects", The Comstock Publishing Company (1918).

これを参考にして写真で見える前翅の翅脈に名称を入れてみました。



Comstockの本の絵と実によく似ていて、簡単に名前が入れられました。上の論文の検索表では、まず、Recurrent veinがあるかどうかという項目があります。このRecurrent veinが初め何だか分からなかったのですが、ネットで調べてみると、ハチの翅脈についてはm-cu横脈のことを指すようです。そこで、それに相当する横脈に矢印を入れてみました。多分、これが1本あるということでしょう。次にRadial sectorsが3本以上という項目があります。上の写真で数えてみると3本。確かに合っています。次にRadial sectorsが5本以下という項目があり、これも合っています。最後に、gradate veinletsが3系列以下という項目がありました。この写真では2系列見えます。それで、Hemerobius属になりました。Comstockの絵もこの属なので、たぶん合っているのではと思ったのですが、九大のデータベースではこの属の本州産だけで10種も載っています。残念ながら、ここでストップです。

追記2015/12/04:Recurrent veinが間違っていました。



翅の根元にある湾曲している翅脈だと思います。"Recurrent"は回帰、循環などという意味なのですが、Recurrent veinは循環する翅脈という意味なのでしょう。これは次のネット上の論文を見ている時に見つけました。

Ellis G. MacLeod and Lionel A. Stange, "Brown Lacewings (of Florida) (Insecta: Neuroptera: Hemerobiidae)" (ここで見ることができます)

ややこしくなってきたので、一度、まとめてみないといけませんね


ついでにチャバネヒメカゲロウの翅脈の名称も上の例にならって書いてみました。



この場合はRadial sectorsは7本もあります。残念ながらRecurrent veinがあるのかないのか分からないのですが、検索表の上ではなくて、CuとMが融合していないという条件で、チャバネヒメカゲロウの属するEumicromus属になりました。今度、一度じっくり調べてみたいなと思いました。今日は、ヒメカゲロウの翅脈がちょっと分かったところが収穫でした。(追記:Catalogue of Lifeによると、チャバネヒメカゲロウの属するEumicromus属はMicromus属のsynonymになっているようです。検索表が古いので、もう少し新しいのを探さないといけませんね)(追記:これ、チャバネではないかもしれませんね

追記2015/12/04:Comstockの本を見直すと、次のように翅脈の名称をつけるのが妥当なようです。



先ほどとの違いはR脈の最大をR5として、数が足りなくなった部分をR2のアクセサリー脈としている点です。どうしてこうするのでしょうね

ハエとチャタテは次回に回して、その他の虫です。



ホソヘリカメムシ



キバラヘリカメムシ



ナカオビアキナミシャク



ナミテントウだと思うのですが、こんなに点がありました。



ヒゲナガカワトビケラです。年中いるので、いつもならばパスしているのですが、今日は虫が少ないので撮ってしまいました。



最後はネコハグモです。この日は珍しく糸を張っていたので撮ってみましたが、糸が写らなかったですね。

ハエとチャタテは次回に回します。

廊下のむし探検 虫が少ない

廊下のむし探検 第784弾

昨日の「廊下のむし探検」の結果ですが、この日は虫が本当に少なかったです。



この日はこんな変わったハエがいました。と言っても、昨冬には見たのですが・・・。その時はネットで調べてシマバエ科のSteganopsis sp. 2と言われている未記載種だとしたのですが、そのままになっているのかどうかはよく分かりません。「日本昆虫目録」によると、Steganopsis属には4種載っているのですが、それ以外になるのでしょうね。これまで、12月29日と1月5日にそれぞれ1匹ずつ見ていました。冬に出るのかなぁ。





後はクロミャクチャタテ2匹と、



スズキクサカゲロウ2匹と



マダラヒメグモでした。本当に少なかったですね。

廊下のむし探検 ハエやらハチやらチャタテやら

廊下のむし探検 第783弾

一昨日の「廊下のむし探検」ですが、虫が少なくなればなるだけ、難しい虫が増えてくるような気がします。ハエやらチャタテやらを撮影するからでしょうが・・・。



毎冬の風物詩となっていますが、マンションの壁に小さなハエがびっしりつくようになってきました。それがこの小バエです。キモグリバエ科までは分かるのですが、それから先が一向に進ません。結構、綺麗なハエではあるのですが・・・。



これも小さなハエですが、一応、採集してきたので、先ほど検索をしてみました。まだ、はっきりはしないのですが、たぶん、イエバエ科ではないかと思います。





これはヒラタアブです。これも先ほど、「絵解きで調べる昆虫」に載っているハナアブ科ヒラタアブ亜科の検索表で調べてみました。一応、オオヒメヒラタアブ♂になったのですが、大きさや分布が分からないので、まだはっきりとはしません。



これは最近よく見るウスイロアシブトケバエ♀でしょう。



Sc脈が前縁脈に合流しているようなので、ヒメガガンボ科かなと思ったのですが、これもはっきりしません。今日はどれもはっきりしませんね。



これはヒメバチ科かな。



そしてこれはコツチバチ科?



これはクロミャクチャタテですね。この日は2匹いました。



これは小さなチャタテムシです。一応、目盛り付きテープを横に貼って長さを測ってみると、体長1.9mm、前翅長2.1mmになりました。(追記2015/12/12:MSWiさんから、「"Ectopsocus briggsi"で、良く似たチャタテが出てきますね。ウスイロチャタテ科みたいです。」というコメントをいただきました。調べてみると、翅にある四角の縁紋はEctopsocus属の特徴のようです。MSWiさん、どうも有難うございました



後はナミテントウ。これはたくさんいました。



ヒメツチハンミョウはこの日はこの1♀だけ。



赤っぽいクサカゲロウがいました。



これはヤマトクサカゲロウなのかな。一応、採集してきたので、今度見てみます。(追記2015/12/12:MSWiさんから、「越冬する時に赤っぽくなるのはヤマトだけなのかな。っと思ったら、そうじゃなさそうですね。http://ci.nii.ac.jp/naid/110003497493 Chrysopa cognatellaってなんだ。」というコメントをいただきました。確かにそのようですね。Chrysopa cognatellaはイツホシアカマダラクサカゲロウみたいですが、属名がいろいろと変わってかなりややこしいです。塚本氏の本によると、この種をタイプとして、ニセコガタクサカゲロウ属Pseudomalladaを提案されたのですが、Catalogue of Lifeによると、Dichochrysa cognatellaがaccepted nameになっています。このDichochrysaというのがまた、分からない・・・)
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