廊下のむし探検 チャタテ、甲虫など
廊下のむし探検 第597弾
一昨日の「廊下のむし探検」の結果です。最近は虫を詳しく調べるので、時間がかかって仕方がありません。でも、詳しく調べると知らないことがいろいろと分かってくるので、だんだん楽しみになってきました。今日の最初のターゲットはこれです。
触角が長いので、全体を入れるとこんな風になってしまいます。体の部分をもっと大きくしてみると、
こんな変わった虫です。そう、チャタテムシですね。広辞苑を見ると、障子などに止まって大顎で紙を掻くことがあり、その微音が茶を立てる音に似るので名づけられたと書いてありました。「廊下のむし探検」をするまでは全く知らなかった虫ですが、一度気が付くと、マンションにはいろいろな種類のチャタテがかなりの数来ていることが分かりました。この写真の個体は前翅長が6.5mmくらいのやや大きめの種です。頭部に面白い模様があります。これを手がかりに「原色昆虫大図鑑III」の図版を見てみると、リンゴチャタテ、オオスジチャタテなどが含まれるPsococerastis属あたりが似ています。これで、ちょっとやる気が出てきて、一度検索をしてみようと思い立ちました。
チャタテムシの検索表は次の論文に載っています。
富田康弘、芳賀和夫、「日本産チャタテムシ目の目録と検索表」、菅平研報12、35 (1991) (ここからダウンロードできます)
ざっと検索をしてみると、若干曖昧な点もあるのですが、なんとかかんとかPsococerastis属にたどり着きました。たぶん先入観もあるのでしょうけど・・・。検索表のその部分を抜書きしてみると次のようになります。
まず、亜目の検索では下唇鬚と舌の硬糸がよく分からないのですが、それ以外の触角の節数と跗節の節数からチャタテ亜目になりました。その次の科の検索では、上の写真の中の番号が検索項目に対応しているのでだいたい分かると思います。⑧と⑨の矢印で示した脈が、中脈(M脈)と後小室の一辺が融合した形になっているのが特徴のようで、結局、チャタテ科になりました。最後は属と種への検索です。まず、⑩の小顎髭の端節は実測すると幅の2.1倍に、触角は前翅長の1.8倍になりました。若干違うのですが、別の道を選ぶと翅が褐色の種になってしまうので、このまま進むことにします。⑪については図に番号を書き入れていますが、確かに60度くらいの角度で分岐しています。ということで、とりあえずPsococerastis属になりました。
Psococerastis属の種への検索は基本的に翅の色と模様で行います。まず、この個体では翅はほぼ透明です。その次の縁紋の後縁が尖るというところはよく分からなかったのですが、対応するP. tokyoensisは翅に広く褐色の模様があるので除外できます。さらに、この個体では褐色の模様が小さいので、結局、P. maliという種にたどり着きました。この種はリンゴチャタテという和名を持っていて、最初に目をつけた種と一致していました。合っているかどうかは分かりませんが、「原色昆虫大図鑑III」によると、「本州では山地のみから得られる。7-9月に出現、灯火によく飛来する。」とのことです。私の住んでいるところは平地と山地の中間的なところなので可能性はあるのではと思っています。
次はこの種です。リンゴカミキリの仲間でしたね。ただ、これも似た種が多くて名前調べは大変です。近畿地方に住んでいそうな種は、リンゴ、ソボリンゴ、ヒメリンゴ、ホソキリンゴ、ニセリンゴ、シラハタリンゴなどがあります。それで、一応捕獲して調べてみました。
まず、前翅で黒い部分が肩を覆うかどうかで2つに分かれます。写真右の上の矢印の部分です。この個体は肩を覆っているので、リンゴとヒメリンゴが除かれます。次は腹部の節の色ですが、ホソキリンゴは第1~3節が黒く、シラハタリンゴの♂は第5節中央後方、♀は先端に三角形の黒紋があるというので除けます。ということで、第5節だけが黒くなるソボリンゴとニセリンゴが残ります(写真左の矢印)。後は、ニセリンゴは翅端が尖るのですが、右矢印のようにこれは尖っていません(写真右の下の矢印)。さらに、ソボリンゴの方が全体に細長い形なので、たぶん、ソボリンゴカミキリでよいのではと思います。
その他の甲虫です。
翅の先が尖っているので、エグリトラカミキリでしょうね。
この手のハムシがこの間から出ているのですが、なかなか名前が決められません。今回はアオバネサルハムシに似ているような気がしたのですが、どうでしょう。
虹色に光る綺麗な甲虫ですね。たぶん、
それにクチキムシでしょうね。
キアシカミキリモドキですね。
これはアカハラクロコメツキだったかなぁ。ひっくり返すのを忘れてしまってよく分かりません。(追記:過去の写真と比較してみたのですが、たぶん、アカハラクロコメツキだと思います)
甲虫の最後はこのコクワガタです。こんなに早く出てくるのかなぁと思ったのですが、過去のデータを見ると、初見日は一昨年が5/30、昨年が6/4だったので、ちょうど今頃だったのですね。
その他の虫です。これはホソバヒメカゲロウだと思います。ヒメカゲロウもこれまで文献を調べたことがなかったので、今度一度調べてみます。
マンションのエレベータホールにいました。かなり弱っているのか、飛べません。翌日見てみたら、同じ場所で死んでいました。一応、採集してきていろいろと眺めていたのですが、どこに特徴があるのかよく分かりませんでした。とりあえず、毛の色から、これはコマルハナバチ♂のようです。
クロオオアリの♂ですね。ちょうど翅を広げていたので、写してみました。
最後はクモです。
色のはっきりしているクモがいました。「日本のクモ」で探してみると、ワシグモ科のホシジロトンビグモが似ています。
アオオビハエトリだと思いますが、だいぶ毛が抜けてしまっていますね。
アシナガグモも全体を写そうとすると体の部分が小さくなってしまいます。その部分を拡大すると、
こうなります。この手のクモには、ウロコアシナガグモとエゾアシナガグモという似た種がいるのですが、♀では区別がつかないとのことです。この個体の触肢の先が細いので♀ですね。
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