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虫を調べる ハバチ科マルハバチ亜科

まだ、「虫を調べる」という段階まで行っていないのですが、とりあえず、ハチの勉強ということで出してみます。今日の対象はこのハチです。



今頃、よくマンションの廊下に止まっています。



これは背側からと腹側から写した写真です。普通よく見るハチは胴体が切れそうに細くなっているのですが、これはそんなことはありません。ハチは胴体が細くなっている細腰亜目と寸胴になっている広腰亜目に分かれますが、これはそのうちの広腰亜目の方になります。

さて、このハチは何科になるのか検索してみました。検索には、日本環境動物昆虫学会編、「絵解きで調べる昆虫」(文教出版、2013)を用いました。この本は題名の通り、絵解きになっているので素人の私が使うには大変便利な本です。この本に載っているハチ目の検索表を用いました。検索の結果、ハバチ科になったのですが、その検索の過程を抜書きしてみます。




上の1から9までの項目が満たされれば、ハバチ科ということになります。それを写真で確かめていきたいと思います。まず、項目1はすでに上の写真で分かりますね。項目2は次の翅の写真を見てください。



翅脈や翅室の名前は「原色昆虫大図鑑III」を参考にして付けましたが、それについては後ほど触れます。まず、翅には翅脈が複雑に入り組んでいますので、項目2はOKです。これで広腰亜目になりました。項目1だけで広腰亜目になりそうなのですが、「翅脈が発達する」を入れないと細腰亜目に属するコバチ上科が除外できないようです。この辺りはまだよく分かりません。

翅脈が出たついでにその話もします。今までハエの翅脈ばかりを扱っていたのですが、それと異なり聞いたことのない名前が続々と出てきました。これが今までのハエの翅脈とどう関係するのかと知りたくて、ちょっと文献を探してみました。でも、意外に見つかりません。やっと次の本を見つけました。

H. Goulet, "The genera and subgenera of the sawflies of Canada and Alaska: Hymenoptera: Symphyta", Insects and Arachnids of Canada Handbook Series 20. (1992). (ここからダウンロードできます)

ここで、sawflyはハバチを意味します。この中の翅脈の図を参考に名前を付けてみました。



これで今まで使っていた翅脈の名前と対応がつくようになりました。これを見ると、Rsの翅脈の道が何となく不自然な感じがするのと、Cu1aとCu1bが逆のような感じがするのと、さらに、aと2Aとの関係がよく分からないですね。これは、Canadaの本がRoss(1937)のハチの仮想的な翅脈の命名法に従っているからだと思います。

H. H. Ross, "A GENERIC CLASSIFICATION OF THE NEARCTIC SAWFLIES (HYMENOPTERA, SYMPHYTA)", Univ. Illinois, (1937). (ここからpdfがダウンロードできます)

この本のp. 147 Fig. 170に仮想的な翅脈、それ以下の図に実際の翅脈とその名称が載っています。Canadaの本のものと比べてみると、Rsは同じですね。Cu1bとCu1aの名前の付け方は逆です。これはCanadaの方が間違ったのかな。上の写真の2Aとaの付け方は私が勝手に書いたものですが、もともと2Aは基部から長く続いていたものが、後半だけが残ったと考えるとよいみたいです。従って、aと書いた部分は1Aと2Aを結ぶ横脈と解釈するのですね。これで何となく納得がいきました。

それでは次の項目3に進みます。



中胸背板には横溝はありません。そこで、次の項目4にいきます。



触角は複眼の間から出ています。従って、これもOKです。項目5については次の写真を見て下さい。



第1鞭節は上の写真の第3節に当たります。むちゃくちゃ長いということはありません。それでこれもOKとします。次の項目6の前脚の距はFig. 5に偶然見えていました。距が2本見えていますね。従って、これもOK。次の項目7は前胸背板に関するものです。Fig. 4を見ると分かりますが、前胸背板は幅が狭くて後縁の中央が大きくえぐられています。これでハバチ上科になりました。後の項目8と9は触角と翅脈に関するものです。Fig. 6を見ると分かりますが、触角の先端は棍棒状ではなく、さらに、素直な糸状です。さらに、前翅の2r脈はFig. 3に示すようにあります。これで無事にハバチ科になりました。

次は亜科の検索ですが、実際にやってみるとマルハバチ亜科になりました。そこで、それに至る過程を抜き書きしてみます。



これらは翅脈と触角に関するもので、Fig. 2と6を見るとだいたい理解できると思います。項目5で、基脈は実際には少し曲がっていますが、第1反上脈とほぼ平行なのでOKとしました。また、項目6については、通常、2A脈が基部側に伸びているので、ここには本来2つの肛室ができるわけですが、この個体では前半部分がないために、1A脈だけが柄のような格好で残っていることを示していると思われます。ということで、これも無事にマルハバチ亜科になりました。これから先は、先ほどの「絵解きで調べる昆虫」にも、「大阪府のハバチ・キバチ類」(西日本ハチ研究会、2006)にも属の検索表が載っていませんでした。それで、ちょっと「おあずけ」です。

ついでに撮った写真も載せておきます。



これは腹部末端を横から写したものです。「大阪府のハバチ・キバチ類」に載っている科の検索表を用いるときには必要だったのですが、今回の検索表では要らなかったので、載せておくだけにしておきます。

ハバチの検索をしてみた感想としては、翅脈の名前の付け方が独特で、それに戸惑って初めはまったく進みませんでした。でも、ハエと同じような名づけ方をしてみたら、ちょっと馴染みができてきて、それからはトントン拍子に進みました。せめて属、できたら種まで調べてみたいなと思いました。
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廊下のむし探検 蛾、チャタテ、ハエなど

廊下のむし探検 第519弾

一昨日の結果の続きで、甲虫以外の「むし」についてです。まずは蛾からです。





地下駐車場にこんな蛾が3匹いました。似た種がいろいろいるのですが、おそらくフタトビスジナミシャクだと思います。よくいそうな蛾なのですが、調べてみると、一昨年の4/26に見たきりで、これで2回めでした。



カバナミシャクは結構たくさんいるのですが、どうせ写しても名前が分からないだろうと思って、天井に止まっているときは無視し、壁に止まっていて接写ができるときだけ写すことにしました。これはちょっと高いところだったのですが、手を伸ばしてフラッシュをたいた途端に飛び立ちました。あまり特徴がないので、名前はよく分かりません。





マユミトガリバは何度も出てきているのですが、どうも模様がいいからか、形がいいからかすぐに写したくなります。早春の蛾ですね。

蛾は、このほかには、モンキキナミシャクが少々、キリガが少々、それからカバナミシャクが10匹ほどという感じでした。去年の春は大物のエゾヨツメ、オオシモフリスズメが久々に見られました。今年はどうでしょう。できたら、昔、時々見たイボタガもみたいですね。



小さい黒い虫がいるなと思ったらチャタテでした。カメラを近づけると、それから遠ざかるように移動するので、どちらから撮ってもこんな後ろ姿しか写りません。翅の模様を撮りたいので、横から横から近寄るのですが、どうも駄目です。



とうとう壁を登り始めました。そして、やっと撮るには撮ったのですが、狭いところでうまく写りませんでした。名前までは分かりそうにありません。チャタテも一度ちゃんと調べてみたいですね。



翅を広げてくれたので格好良く撮れました。翅の脈がよく見えますね。鏡胞という小さな部屋があるので、たぶんヒメバチ科ですね。ヒメバチ科の検索もしてみたいと思って、Information Station of Parasitoid Waspという神奈川県立生命の星・地球博物館の渡辺氏らの暫定検索表を時々見るのですが、亜科の検索だけで全部で81項目もあるので、恐れをなしてまだ試していません。一度は試さないといけませんね。



それに比べて、広腰亜目のハバチの仲間はこんなに花粉(?)まみれになっていても、この写真で見える翅脈や触角から亜科にまで行けそうです。このハチは先日見たマルハバチ亜科(?)と比べると、肛室という翅脈に囲まれた部屋が完全なので、たぶんハグロハバチ亜科ではないかと思いました。



先日見たヤスデヤドリバエ科(?)がまたいました。先日調べたのが♀だったので、♂♀揃ったらもう一度調べてみようと思ったのですが、今回もやはり♀でした。(追記2018/02/13:「日本昆虫目録第8巻」には、ヤスデヤドリバエ科 Phaeomyiidaeはヤチバエ科のヤドリヤチバエ亜科 Phaeomyiinaeになっているので記録にはそのようにしておきます



このオドリバエはRhamphomyia属でしょうね。複眼の間隔が離れているので♀のようですが、Rhamphomyia属の中には♂でも離眼的なものがいるというので要注意です。先日、Rhamphomyiaの亜属の特徴をまとめたのですが、決め手がなくてまだ使えません。でも、日本にいるという11亜属をいくつかのグループに分けたらよさそうな感じがつかめてきました。早く使えるようになって、種まで到達したいなと思っています。



何となくクロバネキノコバエのような気がするのですが、採集して左右の複眼がつながっているかどうか見ないと分からないので、いつも?です。(追記2015/05/12:翅脈から見るとタマバエ科のようです



これはセスジユスリカかその周辺のユスリカですね。



何となく小さくていつものトビケラと違うような気がして採集してきたのですが、調べてみるとやはり、ヒラタコエグリトビケラ♂でした。



このクモ、触肢と呼ばれる前の方にある短い脚のようなものの先が大きくなっています。♂の成体ですね。何とかそれを拡大して撮ろうと思って追いかけたのですが、小さいわりにはすばしっこくて、とうとうこんな写真しか撮れませんでした。触肢の形から種が分かるというので期待していたのですが・・・。今のところ、何となくサラグモ科かなというところです。



これはコカニグモです。これも触肢の先端が大きいですね。



こちらはササグモです。触肢の先は大きくないので♀でしょうね。



最後はオニグモの仲間だと思うのですが、名前までは分かりませんでした。

廊下のむし探検 甲虫が多い

廊下のむし探検 第518弾

やっと昨日見た虫の名前調べが一部終わりました。ちょっとずつ追い付いてきてますね。まずは甲虫からです。この日は甲虫がやけに多かったです。



まず最初はこの甲虫です。これは昨年の4/23、4/24のブログに出していました。ダンダラカッコウムシではないかと思った種です。この時はカッコウムシの語源を探そうと中国のサイトまで探し回りました。中国語で「郭公虫」だということは分かったのですが、その語源までは分かりませんでした。今年は忙しくて、そこまで手が回りません。



次はこれです。これはアオグロカミキリモドキという種だと思うのですが、やはり昨年の4/2と4/15に見ていました。この時は通りすがりさんに名前を教えていただきました。だいたい毎年同じ種が見れますね。でも、ちょっとずつ早くですが・・・。



次はこのコメツキです。コメツキにしては珍しく模様があるので、喜んで図鑑を探したら、クロスジヒメコメツキに似ていることが分かりました。ただ、説明を読むと、ホソナカグロ、ナカグロ、チュウゴクナカグロの近縁種があり、♂交尾器を見ないと分からないとのことでした。でも、とりあえずクロスジヒメコメツキ(?)にしておきます。





イタドリハムシが2匹いました。昨年は4/28と5/1のブログに出していました。これも今年の方がだいぶ早いですね。



これは昨年も見て、5/30のブログに出していました。その時はクチブトチョッキリとしていたのですが、もう一度、「原色日本甲虫図鑑」を見てみると似た種がぞろぞろいます。どうしようかと思って、図鑑に載っているチョッキリ族の属の検索表で検索してみることにしました。クチブトならばLasiorhynchites属で、その他だったらInvolvulus属だったので。でも、最初でつまづきました。上翅に会合部小溝があればLasiorhynchites属に至るし、なければInvolvulus属に至るのですが、肝心の会合部小溝が分かりません。ネットにも載っていません。上の写真で上翅会合部の横に溝のように見える部分がそうならば、クチブトチョッキリかなと思っていますが・・・。いつもはっきりしませんね。(追記:通りすがりさんから、会合部小溝について、「ゴミムシだと小盾板付近にあるんですが、チョッキリはどうでしょうね。」というコメントをいただきました。チョッキリについて少し調べてみると、

Y. Sawada, "A systematic study of the family Rhynchitidae of Japan (Coleoptera, Curculionoidea)", 人と自然 No. 2, 1-93 (1993). (ここからダウンロードできます)

という論文を見つけました。この中で、私の見た検索表で会合部小溝のある属ではすべて、"scutellar strioles"があり、そうでないのはないとなっていました。"scutellar strioles"は小盾板小溝と訳すべきかなと思うので、通りすがりさんのコメント通り、小盾板小溝があるかないかという風に考えればよいと思われます。なお、小盾板小溝については、「原色日本昆虫図鑑(I)」のp. 60 第16図Aに図が載っています。さて、肝心の上の写真なのですが、その部分が不鮮明でよく分かりません。なぜ、採集しなかったのかと悔やんで悔やんで・・・




次はこのハネカクシです。胴体がかなり太い感じです。床の模様から見積もった体長は9.3mmでした。この形からナカアカヒゲブトハネカクシかもと思ったのですが、どうでしょうね。



次はこのハネカクシです。こちらは体長5.2mmでだいぶ小さいです。何となく先ほどの種と体型が似ているので、同属かなと思ったのですが、触角が長くて細いのでやはり違うでしょうね。



こちらはだいぶ小さなハネカクシで、この間から何回か見ています。その時はアロウヨツメハネカクシかもとしたのですが、よくは分かりません。この写真では後翅を伸ばしているのですが、胴体よりかなり長いですね。ちょっと驚きました。



後はいつも見ている種です。これはオオヒラタケシキスイとしている種です。



ナミテントウですが、カメラを向けたら立ち上がってきました。



しばらくすると元に戻り、初めて紋が4つであることが分かりました。



それにいつもいるマツトビゾウムシ



それにクロオビマグソコガネです。

冬の間はハエの名前調べに終始したのですが、春になると甲虫も調べなけりゃ、ハチも調べなけりゃとかなり大変になりました。6月がもっとも虫の多くなる月なのですが、3月末で早くも限界かな。

廊下のむし探検 ハエ、蛾、甲虫ほか

廊下のむし探検 第517弾

朝の続きで、一昨日の「廊下のむし探検」の結果です。



最初はこのオドリバエ科です。脚に鳥の翅のような毛がいっぱい生えていますね。顕微鏡写真を撮りはじめた頃、試しに撮影したことがあったのですが、いかにも拡大して撮りたくなるような構造ですね。さて、このオドリバエ、矢印のところに分岐した脈が見えますね。これはR4脈といって、これまで見てきたRamphomyia属にはありません。従って、別の属になります。そこで、例によって、三枝氏の「双翅目(ハエ目)昆虫の検索システムに関する研究」という科研費報告書(この名前で検索するとpdfがダウンロードできます)で検索してみました。すると、Empis属になりました。この個体は♀で、ここから先は♂に対する検索表しか載っていないので、ここまでになります。





その他にもオドリバエはいたのですが、これらはたぶんRamphomyia属じゃないかと思います。共に♀ですね。



クロメマトイらしいハエがまたいました。このハエは小さいのですが、ぴょんぴょんとその場跳びをするので、遠くから見てもすぐに分かります。(追記2018/02/13:「日本昆虫目録第8巻」に従って、クロメマトイをヒゲブトコバエとして記録しておきます



これはちょっとごつい感じなのですが、採集してきて調べたら、タマバエ科になりました。



これはキノコバエかなと思ったのですが、クロバネキノコバエかもしれません。採集してきませんでした。(追記2015/05/12:翅脈から見ると、タマバエ科のようです



これは前日もいたシマバエ科Homoneura mayrhoferiですね。ハエらしいハエを除いても、結構、いろいろといますね。次は甲虫です。





最初はハネカクシです。今日は名前調べをしなかったのですが、これらは別の種ですね。マンションにこんなにたくさんハネカクシがいるなんてちっとも知りませんでした。廊下でいったい何をしているのでしょうね。





これは先日もいたクロオビマグソコガネです。捕まえてきて、マグソコガネを詳しく調べてみてもよかったなとちょっと後悔です。





蛾で目立ったのはこの2匹でした。ずいぶん減ってしまいましたね。上はマユミトガリバで、模様が見事なので、ついつい写してしまいます。下はカバキリガですが、私の方に向かってバタバタしながらやってきたので、蛾の苦手な私にとってはちょっと気になりました。





先日ウンカがいたと思ったら、この日はこんな虫も。この手の虫はどうも苦手なので、一応採集してきて、「絵解きで調べる昆虫」の検索表を用いて検索してみました。検索の結果、ヨコバイ科になったのですが、実は以前あったミミズク科やシダヨコバイ科など多くの科がヨコバイ科の亜科になってしまいました。それで、ヨコバイ科といってもとても広いのです。そこで、亜科の検索もしてみました。結果はヒメヨコバイ亜科になりました。でも交尾器の図を見ると、ヨコバイ亜科かホシヨコバイ亜科かもしれず、ちょっと不安な要素もあります。このヨコバイにもウンカのような変わった構造がないかと思って調べてみたのですが、特に不思議な構造はありませんでした。(追記:tosakaさんから、「ズキンヨコバイ亜科ヤノズキンヨコバイです。」というコメントをいただきました。初めてのヨコバイ科の検索だったのですが、失敗でしたね。おそらく単眼の位置を間違ったのかなぁ。もう一度、確かめてみます



ザトウムシの幼体がまたいました。



それにマダラヒメグモですね。

廊下のむし探検 トビケラ、カゲロウ、ハチなど

廊下のむし探検 第516弾

徐々に虫の名前調べが大変になり、記事が遅れがちになってきました。今日は一昨日の「廊下のむし探検」の結果のうち、トビケラ、カゲロウ、カワゲラ、それにハチについてです。どれも名前の分かりそうにないものばかりですね。



まず最初はこのトビケラです。この間までいたトビケラとは違います。触角を前に突きだし、その根元に毛がいっぱい生えているので、きっとカクツツトビケラの仲間でしょうね。何の気なしに、「フライフィッシャーのための水生昆虫小宇宙 Part I」をめくっていたら、そっくりなものを見つけました。コカクツツトビケラです。そのものずばりかどうかは分かりませんが、少なくともそれに近いところだと思います。採集しようと思って近づいたら逃げてしまいました。もっとも廊下での採集は網を持たずに、小さな瓶だけで追い掛け回しているので・・・。



こちらはこの間からいるヒラタコエグリトビケラではないかと思います。翅脈、小顎肢、脚の距などで見分けるとなると、こんな写真からだけでは難しいですね。これは白い模様があるのでそうかなぁと思っただけです。





まったく同じ写真かと思われるかもしれませんが、これは別個体です。カゲロウの成虫ですね。目が小さいので♀ですね。さらに尾が2本なので、ヒラタカゲロウの仲間かなと思われます。翅脈でも科は分かりそうですね。そう思って、先ほどのフライフィッシャーの本を見てみたのですが、結局、よく分かりませんでした。残念!



床でじっとしていたのでつい撮ってしまったのですが、例によって名前の分からないカワゲラです。早春の今頃、毎年出てくるのですが、ずっと分からずじまいです。一昨日、外出した時に似たような個体を捕まえてきたので、もう一度検索に挑戦したみたいと思います。前回は脚の付け根にある鰓の痕跡がよく分からなかったのが敗因でした。今回は分かるかな。





ユスリカはハエ目なのですが、水生昆虫が出たついでに出しておきます。この日は2匹いました。翅にこんな模様があるのに、名前が分かりませんねぇ。(追記2018/02/15:「図説日本のユスリカ」の図版を見ると、翅の模様、脚の黒色部などはモンユスリカ亜科のウスギヌヒメユスリカ Rheopelopia toyomazeaに似ています

次はハチです。



最初はこのハチです。ハチについて少し勉強しようと思って、これは採集してきました。ハチには腰が細くなる細腰亜目(ハチ亜目)と細くならない広腰亜目(ハバチ亜目)がありますが、これは後者の方です。そこで、例によって「絵解きで調べる昆虫」の広腰亜目の検索表を用いて検索してみました。詳細はまたのちほど載せたいと思いますが、とりあえず翅脈だけ載せておきます。



おそらく詳しい方ならこの翅脈を見ただけでかなりのところまで分かるのだろうなと思いますが、私は検索表で一歩一歩確かめていきました。その結果、ハバチ科になりました。この本には亜科の検索も載っているのでやってみると、マルハバチ亜科になりました。更にその先を、吉田浩史著、「大阪府のハバチ・キバチ類」(西日本ハチ研究会、2006)で探そうと思ったのですが、残念ながらマルハバチ亜科の属の検索だけが載っていませんでした。これもここでストップです。



後は分からないものだらけです。頭がやけに大きな感じがします。でも腰が細いですね。ハチ亜目であることは確かですね。









残りはヒメバチかなと思うだけで、一向に名前が分かりません。この時期、ハエは多いのですが、ハチも結構いますね。

廊下のむし探検 ハチとハエ

廊下のむし探検 第515弾

先ほどの続きで、昨日の「廊下のむし探検」の結果です。この日はハエもハチもたくさんいました。特にハエが多かったですね。だいたい1mに1匹の割で、廊下に止まってじっとしています。でも、いわゆるハエ型のハエなので、今回は無視しました。





この日は、まいった~という様子のミツバチが2匹いました。おそらく寒さにやられたのでしょうね。後翅の翅脈が見えるので調べてみると、共に、セイヨウミツバチでした。翅脈による見分け方については以前のブログに載せましたので、そちらを参照して下さい。



ハチはいろいろいるのですが、まだ、科も分からない状態です。今年はせめて科、できたら属までが分かるようになればよいなというのが目標です。これはおそらくヒメバチ科かなと思います。一応、採集してきたので、これから調べてみます。ただ、ヒメバチ科の亜科の検索がおそろしく複雑で・・・。





これは何となくヒメハナバチ科かなぁと思うのですが、よく分かりません。



これも同じ種なのかなぁ。



これは何でしょうね。・・・という具合にハチはまだほとんど分かりません。でも、焦らず少しずつ勉強していきたいと思います。よろしくお願いします。(追記2015/03/29:類似の種を翌日採集してきて検索をすると、ハバチ科マルハバチ亜科になりました。もう少し検索を進めてみます











これに対して、ハエは昨年12月ごろから何度も検索をしてきたので、最近はやっと科ぐらいは分かるようになってきました。この5枚はおそらくオドリバエ科だと思います。最後の2匹については採集してきました。その結果、以前から見ているホソオドリバエ(Rhamphomyia)属だと思われます。最後の個体は跗節第1小節がだいぶ膨らんでいます。こんなところを手がかりにもうちょっと進めないかと思って、Rhamphomyia属の亜属の特徴をまとめてみようと思いました。幸い、「原色昆虫大図鑑III」には亜属の特徴が書かれているので、部位別にまとめてみたのが次の表です。



字が小さくてこのままでは見えないので、拡大して見ていただくとよいと思います。「大図鑑」にはいろいろと書かれていたのですが、こうやってまとめてみると網羅的ではないですね。この表を見てもなかなか亜属まで辿り着けそうにありません。もう少し頑張ってみようかなと思っていますが・・・。(追記2015/03/29:表を追加修正しました



これは以前調べたシマバエ科のHomoneura mayrhoferiでしょうね。名前が分かってくると何となく親しみが湧いてきますね。



これはタマバエ科かな。



これはキノコバエかな。(追記2018/02/21:翅脈のR1脈が翅の中央部程度までしか伸びていないので、クロバネキノコバエではないかと思います



それにユスリカです。前脚どうしたのでしょうね。



ぱっと見でオニグモかなと思ったのですが、よく調べてみると、ヒメグモ科のようです。たぶん、マダラヒメグモという外来種ではないかと思います。



最後はザトウムシの仲間です。まだ小さいので、幼体でしょうね。

廊下のむし探検 蛾、甲虫など

廊下のむし探検 第514弾

昨日の「廊下のむし探検」の結果です。一時期、蛾ばかり出ていたのですが、このところぐっと少なくなってしまいました。甲虫も減っています。その代わりといっては何ですが、ハエやハチが多くなりました。

歩いていても冬に比べるとやはり虫の数が多いですね。すべてを撮るわけにもいかないので、いつも見ている蛾やカメムシはパスしています。それにハエらしいハエもパスです。あまりに小さいハエ目もパス。カワゲラも基本的にパスしよう、なーんて考えながら歩いています。



今日の最初はこの小さな蛾です。翅に焦げ茶に白のまだら模様があるので、初めスイコバネ科かなと思いました。「標準図鑑」を見ていると、ハモグリガも可能性があるかなと思い、結局、チビミノガではないかと思いました。でも、これから先が進みません。何となくTaleporia属あたりかなと思ったのですけど・・・。



次はこの蛾です。翅に筋などの模様が見えにくいのですが、たぶんカシワオビキリガかなと思っています。越冬組ですね。蛾はこれだけです。





次は甲虫です。この写真の虫を2匹見ました。体長は3.9mmくらい。鞘翅が途中までしかないので、やはりハネカクシの仲間かなと思って、図鑑を見てみました。ヨツメハネカクシ辺りかなと思ったのですが、それ以上はよく分かりません。何となくアロウヨツメハネカクシに似ているような・・・。



後はいつもの連中です。これはユアサハナゾウムシかなと思われる虫です。



そしてこれはツノブトホタルモドキと思われる個体です。



次はこのカゲロウです。ちょっと顔をアップします。



いつもの「フライフィッシャーのための水生昆虫小宇宙 Part I」を見ると初めの方に出ていました。翅の模様からマエグロヒメフタオカゲロウの亜成虫みたいです。ところで、フライフィッシャーは亜成虫をダン、成虫をスピナーと言うのですね。ネットで調べると外国でもそうで、フライフィッシャーは亜成虫をdun、成虫をspinnerといい、生物学者は亜成虫をsubimago、成虫をimagoと呼ぶようです。ちょっと面白いですね。





クサカゲロウがいました。顔をアップすると、こんな顔色ですが、どうやらスズキクサカゲロウのようです。(追記:通りすがりさんから、「クサカゲロウはヤマト、スズキと同属のアカスジクサカゲロウの赤色型です。赤色型だと、特徴的なXが見えづらいんですよね。」というコメントをいただきました。スズキだと思って、あまり注目しませんでした。ちょっと後悔しています。どうも有難うございました





カワゲラの仲間とオナシカワゲラの仲間です。一応、写してみました。オナシカワゲラはやや大型で翅に模様があるので採集してきました。大型のカワゲラの方は、今日外出した時に1匹捕まえました。名前が分かるとよいのですけどねぇ・・・。(追記:下の個体はオナシカワゲラ科フサオナシカワゲラ属のようです。頸部腹面に鰓の痕跡が見られました)(追記2018/05/03:「原色川虫図鑑成虫編」によると、翅に紋があるのはモンオナシカワゲラ種群で、本州産はサトモンオナシカワゲラ Amphinemura zonata、モンオナシカワゲラ A. megalobaとヤマモンオナシカワゲラ A. dentiferaの3種です

虫を調べる ウンカ

先日、小さなウンカのような虫を見つけました。採集して顕微鏡で覗いてみると、びっくりするような構造が見えました。そこで、少し調べてみることにしました。



見つけたのはこんな虫です。



実体顕微鏡下でちょっと翅を広げて写してみました。体長は5.8mm、前翅長は6.4mmです。セミのような感じの虫ですね。セミもウンカも共にカメムシ目に入っています。この中で、前翅がこの写真のように一様な膜質でできているものを同翅亜目、翅の途中までが革質でできていて、先端が膜質でできているのを異翅亜目と呼んでいます。前者にはセミ、ウンカ、ハゴロモ、カイガラムシ、キジラミなどが入っていて、後者にはカメムシの仲間が入っています。従って、これは同翅亜目ですね。

同翅亜目の科の検索は「原色昆虫大図鑑III」に載っています。この写真の個体は、たぶんウンカ科だと思いますが、それに関係する検索表の部分を抜き出してみると次のようになります。



いつもと同じようにこの検索表に沿って特徴を調べていけば良いのですが、まだ、部位の名前で分からないところがいくつかあるので、今回はこの検索表に載っている部位を見つけることを中心にし、さらに、面白そうな構造を見つけて写真に撮ることにしました。



まず、カメムシ目はセミのような長い口吻を持っていて、そこから植物の汁や動物の体液を吸うようになっています。その部分を載せます。これも細長い口吻を持っていますね。



次は横から撮ってみました。翅の点線で囲んだ部分を爪状部と呼びます。爪状部の中に含まれる翅脈を爪状部脈と呼ぶようです。翅の付け根には肩板があります。



翅を調べてみます。翅脈の名称を書いた文献がまったく見つからなくて困っていたのですが、根気よく探していたらようやく見つかりました。この写真の中の翅脈の名称は、次のプロシーディングスの中の論文に従ってつけています。

S. Nasu, "Rice Leafhoppers", in "The Major Insect Pests of the Rice Plants" - Proceedings of a Symposium at The International Rice Research Institute (1960), pp. 493-523. (ここから本文を読むことができます)

ただし、その後の論文を見ても、名前の付け方はまちまちで、現在はどれが一般的なのかはよく分かりません。今回の検索表では、爪状部脈が合流してY字型になること、爪状部脈に顆粒がないこと、爪状部脈が爪状部の先端に達せず、内縁に終わること、それに、前縁部がないか、横脈のない小さな前縁部を持つ、ということが関係しています。爪状部脈は前翅の1A脈と1B脈、及び、その合流部分を指していますが、それについてはその通りかなと思うのですが、前縁部というのがよく分かりませんでした。



次は頭部の拡大です。複眼の下に単眼が見えます。単眼の位置も検索項目になっています。また、検索項目にある肩板が今回はっきり見えますね。検索項目にはないのですが、触角が変わっているので、更に拡大してみました。



こんな感じになりました。黒い突起はsensoria(感覚子)だそうです。面白い構造をしていますね。鞭節の根元が膨らんでいますが、節がないことも検索項目の一つになっています。



次は脚です。跗節は3節からできているようですね。変わっているのは後脚の脛節末端についている奇妙な構造です。これは検索表で可動性の距と書かれているものだと思います。たぶんウンカ科に特有の構造ですね。ちょっと拡大してみましょう。



各節の末端には奇妙な棘が何本も出ていますが、脛節末端の可動性の距は特に変わっています。さらに、拡大してみます。



こんな形です。跗節は地面にべったりつくので、脛節の末端にあるこの距で地面を支えてジャンプするのでしょうね。ジャンプの途中で角度が変わっても、それに対応するようになっているのかな。

さて、ウンカについては以前、幼虫がジャンプするときに、左右の後脚の動きを同期させるための歯車があるという論文を紹介しました。

M. Burrows and G. Sutton, "Interacting Gears Synchronize Propulsive Leg Movements in a Jumping Insect", Science 341, 1254 (2013). (ここからpdfがダウンロードできます;また、「ウンカ 歯車」で検索すると記事がいろいろ出てきます)

この論文をさらに読むと、歯車は次第に摩耗して、成虫になると歯車はなくなり、単なる半円形の突起になり、左右の突起が互いに摩擦することによって同期がかかると書かれていました。ちょっと興味が湧いたので、それに関連した論文も読んでみました。

M. Burrows, "Energy storage and synchronisation of hind leg movements during jumping in planthopper insects (Hemiptera, Issidae)", J. Exp. Biol. 213, 469 (2010). (論文はこちらから読むことができます)

それによると、ジャンプには神経の働きと機械的な仕組みが協調して起きますが、左右の脚の動きを同期させることと、ジャンプの直前までエネルギーを貯めておくことが重要だそうです。バッタなどでは、左右を同期させる機械的な仕組みはないのですが、それでも両者は同期して飛ぶことができます。バッタでは片脚だけになってもうまく飛ぶことができますね。ウンカの場合には、同期させるための機械的な仕組みが備わっています。その部分を写真で見てみましょう。(追記:「歯車は次第に摩耗して」と書いたのは私の勘違いでした。"The gear teeth are lost"という文の読み間違いでした。ちょっとお恥ずかしい。実際に書いてあるのは、幼虫の時にあった歯車は成虫ではなくなります。これはおそらくホルモンの変化であると考えられます。にも関わらず、成虫の方が幼虫よりよく跳ねます。成虫は歯車の代わりに摩擦という方法を使っています。歯車は歯がこぼれると性能が落ちますが、幼虫時代は何回か行う脱皮の時に修復できます。でも、成虫になるとそれができなくなるので、より実効的な方法を用いているのでしょうとのことでした



後脚の転節の矢印で示した部分が接しているところがその機構になります。もうちょっと拡大してみます。



半円形の部分がよく分かるようになりました。趣味的にもう少し拡大して見ます。



この部分が接しているので、片方が動くと、摩擦により、もう片方も同じ方向に動き、それがきっかけになり筋肉の伸縮が起きてジャンプするという仕組みのようです。幼虫ではこの部分に規則的な突起ができていて、それがまるで歯車のように見えたのでした。

この部分にはゴムのようなタンパク質レシリンがあるとされていて、論文ではUV光を当ててレシリンからの青い蛍光を観察していました。そこで、私もUV-LEDの光を当てて観察してみました。



すると、先ほどの半月形の突起の縁の部分が蛍光でよく光ることが分かりました。この部分にレシリンが入っているのかもしれませんね。この撮影をするのには、顕微鏡全体を黒い布で覆い、その中に入ってUV-LEDをウンカに当てながら露出1秒で撮影しました。得られた写真は露出が足りなかったので、デジタルで増感しました。

これまでハエばかり観察していたのですが、別の昆虫にはまた別の面白い構造がありました。まったく昆虫には飽きることがありませんね。

追記:ネットを見ていたら、エゾナガウンカというのに似ているような・・・

廊下のむし探検 寒い日はハエが多いですね

廊下のむし探検 第513弾

昨日の午後、マンションの廊下を歩いてみました。本当に寒かったですね。虫もほとんどいません。こういう寒い時には、ハエばかり目につくようになります。撮らなきゃよかったのですが、ついついそんなハエを撮ってしまいました。



これはオドリバエですね。早春にたくさんいた種とは違って、翅が着色しています。何だろうなと思って、採集してきました。属の検索は、「双翅目(ハエ目)昆虫の検索システムに関する研究」という三枝豊平氏の科研費の報告書(この題目で検索するとpdfがダウンロードできます)に載っている検索表を用いました。この検索表には図が載っているので大変使いやすくできています。それによると、オドリバエ科ホソオドリバエ(Rhamphomyia)属の♀なりました。これは早春に見た種と同じですね。ただ、この報告書によれば、Rhamphomyia属については亜属の分類体系が十分に確立してないというので、亜属の検索表が載っていません。各亜属の種への検索表は、「原色昆虫大図鑑III」に載っているのに、大変残念です。というわけで、ここでストップです。







こういうハエっぽいハエはあまり採集したくないので、結局、写真だけになってしまいます。よくは分かりませんが、一番上と下はヤドリバエ科かなぁ、真ん中がイエバエ科かなぁ。



これはまだちょっとかわいい感じなので、採集してきました。検索してみると、ヒメイエバエ科になりました。そこからはどうにも進めませんが・・・。



これは多分、ヒメガガンボ科だと思います。



その決め手は矢印で示した場所で、Sc脈(亜外縁脈)が上下に分かれているところです。属の検索にはまず最初に触角の節数が必要なのですが、上の写真では分かりませんね。



これはガガンボ科かなと思いました。Sc脈(亜外縁脈)が見えないので・・・。



次はケバエ科です。この写真でも分かりますが、後脚第1跗小節(矢印)がかなり太くなっています。この間調べたニセアシブトケバエでしょうね。



ハエはこの辺でやめといて、蛾に移ります。でも、目立った蛾はこれだけ。これはクロスジキリガですね。一昨年と昨年の初見日はそれぞれ3/24と4/5でした。昨年よりはだいぶ早く、一昨年なみという感じですね。





カワゲラとオナシカワゲラが最近ウロウロしています。調べるなら調べてみろっと、私にとってはちょっと挑戦的に見えますが・・・。

虫を調べる ヒラタコエグリトビケラの♂♀

先日、「虫を調べる」シリーズでコエグリトビケラを取り上げました。この時は、検索の結果、コエグリトビケラ科コエグリトビケラ属であることが分かり、さらに、交尾器を文献と比較して、ヒラタコエグリトビケラの可能性が高いと書きました。ただ、この時の個体は♀だったのですが、その後、♂も採集したので比較してみました。今回はその比較を中心にお見せしたいと思います。



ヒラタコエグリトビケラというのはこんな地味な虫です。左側が♂、右側が♀ですが、一見するとまったく違いが分かりません。

この違いは次のトビケラ目の科の検索表を見るとすぐに分かります。



初めに単眼のあるなしで分岐した後の検索の流れを示しています。左の道をたどればコエグリトビケラ科の♂、右の道をたどれば♀になります。その分岐点は小顎肢が3節か、それ以上かにかかっています。結局、♂の小顎肢は3節、♀の小顎肢は5-6節ということなのです。実際に見てみましょう。



左は♂、右は♀ですが、写真の通り、小顎肢は♂では3節、♀では5節になっています。

それではその他の部分も較べてみましょう。ついでに、勉強のために、各部の名称も付けてみました。



これは頭と胸の部分を背側から見たものです。基本的に同じ構造です。♂の方が少し細長い感じですね。トビケラの頭部や胸部背には背板隆起と呼ばれる毛の生えた隆起が分布しています。その配置が種によって異なっています。



これは背板隆起の名称を次の博士論文を参考にして付けたものです。

S. Chuluunbat, REVISION OF EAST PALEARCTIC APATANIA (TRICHOPTERA: APATANIIDAE), Thesis, Clemson University (2008). (ここからダウンロードできます)

日本語でどう訳して良いのか分からないので、英語のままにしています。しかし、♂と♀の違いはないようです。



これは頭部の隆起の比較です。これもほぼ同じでした。単眼が♀の方が大きな感じがしましたが、どうでしょうね。



翅は♀しか写真を撮らなかったので、それだけ載せておきます。I、II、III、Vは翅脈の分岐を意味しています。M3+4脈だけが分岐していなので、前翅、後翅ともI、II、III、V叉があるということになります。

♂と♀の最大の違いは交尾器の違いです。そこで、その部分を拡大してみました。





これは♂の腹部末端を、腹側、背側、側面から見たものです。複雑な形をしていますが、勉強のために、先ほどの博士論文を参考にして名前を付けてみました。日本語が分からなかったのでそのまま載せています。





これは♀の腹端で、腹側と側面から撮った写真です。♂と♀の違いは腹端で見るとすぐに分かりそうですね。

だいぶ前に撮った顕微鏡写真だったのですが、だんだんこんな写真が溜まってきたので、勉強と整理のためにまとめてみました。別の種が見つかったら、比較の意味でまた調べてみたいと思っています。

廊下のむし探検 蛾、カメムシ、ハエなど

廊下のむし探検 第512弾

朝の続きで、昨日の「廊下のむし探検」の結果のうち、甲虫以外の虫です。この日も多かったですね。蛾は新しく見たもの、ちょっと気になるものなどに限って写しました。それでもいろいろといました。



まずはキリガです。これはマツキリガですね。名前の通り松の害虫で、「大図鑑」によれば、アカマツの天然分布域とマツキリガの分布域が一致するそうです。昨年は3月13日に見ていました。ちょっと遅い出現ですね。





いつもはっきりしない模様で困ってしまうのですが、これは両方ともクロテンキリガではないかと思いましたが、どうでしょうね。



複雑な模様ですが、これはミカヅキナミシャクです。以前にも見たと思っていたのですが、「廊下のむし探検」では初登場ですね。昔のデータを見てみると、すべて4月になってから見ていました。



これもナミシャクですが、翅が擦れていてかなり迷いました。マダラコバネナミシャクかなと思うのですが、ちょっと自信がありません。もしそうなら初登場です。(追記:通りすがりさんから、「未見の蛾ですが、マダラコバネナミシャクでいいと思います。頭部から胸部にかけての背面が白っぽいのは見分けに役立ちそうな感じですね。」というコメントをいただきました



オカモトトゲエダシャクが、また、いました。変わった恰好なので、ついつい写してしまいます。

次はカメムシです。





マツヘリカメムシはこの日2匹。徐々に増えてきている感じです。大量に越冬しているのでしょうね。それにしても、「マツ」という名のつく虫は多いですね。この日だけでも、マツトビゾウムシ、マツキリガ、マツキボシゾウムシ、マツヘリカメムシです。



ちょっと並べてみたくなりました。皆、似かよった色合いですね。茶色に白い点が入って・・・。何となくアカマツの幹の色と似ている気がしますね。



後はアカヒメヘリカメムシ



シロヘリナガカメムシ



それに、前日もいたヒメトゲヘリカメムシです。



次はハチです。ミカドトックリバチのよう体型ですが、だいぶ小さな個体です。今年はハチを調べようと思って、一応、採集してきました。まだ、科の検索がやっとこさなのですが、とりあえずドロバチ科には達しました。種まではまだなかなかですね。

追記:MSWiさんから、「一瞬チビドロバチの仲間かとも思いましたが、そうではなくてハムシドロバチ類(Symmorphus属)の♂みたいですね。春に出現してハムシやノミゾウムシ類の幼虫を狩り、自分の子供の餌とするのだそうで。確証がある訳ではないですが、サイジョウハムシドロバチかな。」というコメントをいただきました。種の候補までいただき、どうも有難うございました

追記2015/10/21:MSWiさんから、さらに、「日本産Symmorphus全部で11種、本州に分布しない奴を除いて9種、分布域の広さから見て普通種っぽい奴3種、そこから特徴の合わなさそうな奴(ハラナガ)を除いて2種…。サイジョウの他にクチビロという有力候補が残ってしまいました。9種から3種への絞り方が相当適当ですし、この2種以外という事も考えられそうです。サイジョウは他のハムシドロバチに比べて小型らしいですが、うーん…。」というコメントをいただきました。ハムシドロバチ属Symmorphusであることは確かそうですが、それから先はなかなかむずかしそうです



これも小さなハチです。一応採集してきました。調べたところ、以前調べたマルハラコバチ科のようです。それにしても綺麗ですね。以前、通りすがりさんにも教えていただきましたが、この仲間は蛾の幼虫に寄生するのですが、本当の寄主はこの幼虫に寄生しているヤドリバエなどの幼虫だそうです。複雑な寄生の形態を取りますね。こういうのを二次寄生というようです。(追記2015/05/12:日本産マルハラコバチ科はルリマルハラコバチ1種だけが記録されているので、それかもしれません



次はこのハエです。触角第3節が長く伸びて、前に突きだしています。床の太い筋の幅が3mmなので、ずいぶん小さいことは分かりますね。頭は金属的に光って結構綺麗です。これも採集してきて検索してみました。すると、ヒゲブトコバエ科になりました。実はこのハエ、私たちにはお馴染みのハエのようです。よく山道を歩いていると、目の周りをうるさくつきまとう小バエがいますね。それがこれで、クロメマトイです。「知られざる双翅目のために」のヒゲブトコバエ科の欄によると、日本のヒゲブトコバエ科にはCryptochetum属2種が記録されているだけのようで、そのうちの一種がクロメマトイCryptochetum nipponenseです。たぶんこれでしょう。このハエはオオワラジカイガラムシの寄生者のようです。オオワラジカイガラムシの♂♀も、以前、マンションの廊下で観察されました。これで寄主と寄生者が揃ったことになりますね。(追記:通りすがりさんから、「クロメマトイ(多分)は本当に鬱陶しく、多量にまとわりつくので不快です。作業中に手が放せないと必ず目に入られますが、サングラスや伊達眼鏡で簡単に対処できます。カメラのレンズなどにも向かってくるそうなので、水分が光って見えると勘違いしているんでしょうね。」というコメントをいただきました。私も一度は目に入ったこともあり、いつも困っていました。どうも有難うございました

追記:このハエについて書かれている論文を読んでみました。

R. H. Foote and P. H. Arnaud, Jr., Proc. Entomol. Soc. Washington 60, 241 (1958). (ここから本、または、記事だけがダウンロードできます)

この中にはこの種の特徴が記されているのですが、なぜこんな文を書いたかというくだりが面白くてちょっと紹介します。著者は今から60年ほど前の1955年5月に、若い方と京都の嵐山周辺の山を歩いていました。そうしたら、その若者の顔の周りにうるさくつきまとうハエがいることに気が付きました。見ると周りを歩く人の顔にもまとわりついています。場所は川から60mほど離れた日陰で、天気は晴れたり曇ったりという状態でした。ちょうどハエを集めていたので、若者の周りを飛ぶハエを採集したら、12:30-13:30の1時間に282匹も捕まえたそうです。その後も採集し、全部で536匹にもなりました。このハエは以前に記録されたC. nipponenseということが分かったのですが、その習性について書かれたものが見当たらなかったので、若者と連名で書いたとのことです
)(追記2018/02/13:「日本昆虫目録第8巻」に従って、クロメマトイをヒゲブトコバエとして記録しておきます





ケバエの♂がちょこちょこいますね。後脚の跗節第1小節が膨らんでいるので、先日調べたニセアシブトケバエでしょうね。



翅の黒いオドリバエですね。この日は採集しなかったのですが、今日は採集してきたので、後で属の検索をしてみます。



ヤスデヤドリバエ科らしいハエがまたいました。これもたぶん♀でしょうね。(追記2018/02/13:「日本昆虫目録第8巻」には、ヤスデヤドリバエ科 Phaeomyiidaeはヤチバエ科のヤドリヤチバエ亜科 Phaeomyiinaeになっているので記録にはそのようにしておきます



たぶん先日も見たオオユスリカですね。結構目立ちますね。



これはキノコバエ科かなぁ。(追記2018/02/21:翅脈のR1脈が翅の中央部程度までしか伸びていないので、クロバネキノコバエではないかと思います



最近、こういう連結した虫をよく見ますね。たぶん、ニセケバエ科だと思いますが、今頃が恋の季節なのでしょうね。



最近、カゲロウもよく見ます。これは大型なので、オオマダラカゲロウだと思いますが、♀なのではっきりとは分かりません。



こちらは亜成虫ですね。多分、ヒラタカゲロウの仲間だと思いますが、これも♀です。



最後はこのクモです。これは多分、サラグモの仲間だと思います。目は上に4つ、下に4つでした。こういう配置のクモは多いので、目の配置だけでは難しそうです。後ろにある突起は糸をだすためのものでしょうか。(追記2015/10/21:MSWiさんから、「この赤い蜘蛛はサラグモではなく、クサグモの若い幼体です。成体とは模様も色もまるで違いますね。コクサグモの幼体も似たようなものですが、腹端背面にピンクの紋がないのと、何より3月下旬という時期を考えるとクサグモで間違いないでしょう。後ろの突起は出糸突起(糸疣)ですね。ワシグモとかでも良く目立ちます。」というコメントをいただきました。これがクサグモの幼体だとは驚きました。クモは本当に難しいですね

あぁ、たくさんいましたね。やっと昨日の分が終わりました。

廊下のむし探検 甲虫がいっぱい

廊下のむし探検 第511弾

昨日の「廊下のむし探検」の結果のうち、甲虫だけを出します。ということは、甲虫だけでもそれだけいたということですね。





今日の最初はこの甲虫です。翅に黒い模様があるし、頭部の格好が独特なので、わりとすぐに候補が見つかりました。クロオビマグソコガネです。図鑑を見ると、春から夏に出現し、名前の通り、やや日陰の野生獣糞や人糞に来集、猛獣のペリットにもくるとのことです。



綺麗な甲虫ですね。これも翅に橙の帯があり、触角の形も独特なので、比較的早くたどり着きました。たぶん、オオキノコムシ科のニホンホソオオキノコです。図鑑によると、椎茸に大きな害を与えるそうです。



名前調べに時間がかかったのはこの甲虫でした。一見、フジハムシとよく似ているのですが、触角が違い、全体の形もやや細長い感じがします。図鑑を見ると、オオキノコムシ科のチビオオキノコの仲間のようです。検索表が出ていたので、調べてみると、ベニバネチビオオキノコとチャバネチビオオキノコのどっちかというところになったのですが、これ以降は頭盾の形が必要でよく分かりません。



横にスケールが写っていますが、小さなハムシです。色鮮やかなので、すぐに分かるかなと思ったのですが、それでも時間がかかりました。結局、アカイロマルノミハムシかなというところになりました。







ハネカクシはいつも写真だけを撮って、名前調べは諦めていたのですが、この細長いハネカクシは独特の形をしているので、何とかなるかなと思って探してみました。形からはツマキツヤナガハネカクシになったのですが、ツマキでもないし・・・と思って、よく見たら翅の後縁が橙色になっていました。ツマキツヤナガハネカクシでよさそうです。ハネカクシはいつもパスだったので、名前が分かってちょっと嬉しくなりました。







テントウムシは今日も3種揃い踏みでした。上と下の写真に見られる床の細長い模様の幅が3mmなので、大きさの違いが分かると思います。上からナミテントウヒメアカホシテントウ、それにフタホシテントウです。



久々にコメツキを見ました。今日もパスしようかなぁと思ったのですが、一応、調べてみました。前胸背はツヤがなくて両端が直線的、後角は尖っていない、触角の形と、頭部の前縁が直線状なのから、何となくカネコメツキの仲間かなと思って図鑑を見たのですが、形の上からではクロツヤハダコメツキに似ています。ただ、この写真の個体はツヤがないので、その近辺かなぁという感じです。



次はゾウムシです。これは模様からナカスジカレキゾウムシかなと思うのですが、どうでしょうね。





後はいつものマツキボシゾウムシマツトビゾウムシです。マツトビゾウムシはこの日は3匹いました。

追記:1匹出すのを忘れていました。



この間も見たヘリアカヒラタケシキスイと似ていますが、ちょっと違うようです。図鑑で調べてみると、同じケシキスイムシ科のオオヒラタケシキスイではないかと思うのですが、どうでしょうね


まだハエとハチの名前調べが残っていて大変です。フーゥ。

廊下のむし探検 甲虫、ハエなど

廊下のむし探検 第510弾

二日前の「廊下のむし探検」の結果で、甲虫とその他についてです。





今日の最初はこの甲虫です。たぶん、エンマコガネの仲間だろうと思うのですが、図鑑を見ていたら、ダイコクコガネ、マグソコガネなどとの区別がつかなくなってしまいました。どうも甲虫は苦手ですね。





後はいつもの甲虫ですね。上がマツキボシゾウムシ、下がマツトビゾウムシ



それからナミテントウ



それにヒメアカホシテントウでしたね。

問題は次のハエでした。



何でもないハエのように見えますが、何匹かいたので、1匹だけ採集してきました。「絵解きで調べる昆虫」の検索表で調べてみると、ヤチバエ科になりました。確認のために、「原色昆虫大図鑑III」の検索表でも調べてみると、最終的にヤチバエ科とヤスデヤドリバエ科のどちらかになりました。♂の方だったらいろいろと書いてあるのですが、これは♀で、その場合の決め手は、「中・後脛節は中ほどに前背剛毛を持つ」という項目だけです。持てばヤスデヤドリバエ科、なければヤチバエ科になります。

手がかりになる翅脈と後脛節の写真を載せます。





翅脈はヤチバエ科と同じようです。でも、上の写真のように脛節の背側の中程に剛毛があります。従って、ヤスデヤドリバエ科ということになるのですが、この科は「大図鑑」発行の時に新しく命名されたもので、従来はヤチバエ科の亜科になっていたようです。その影響か、ネットでもほとんど情報が見つかりません。果たしてあっているのかどうか・・・。(追記2018/02/13:「日本昆虫目録第8巻」には、ヤスデヤドリバエ科 Phaeomyiidaeはヤチバエ科のヤドリヤチバエ亜科 Phaeomyiinaeになっているので記録にはそのようにしておきます



これは何の気なしに撮ってしまったのですが、毛がもしゃもしゃ生えているので、ヤドリバエ科でしょうか。





これはニセケバエ科だと思うのですが、最近、よく見かけますね。



特にこういう連結した姿をよく見ます。





これはSc脈が前縁に達しているので、たぶんヒメガガンボ科ですね。「絵解きで調べる昆虫」にはヒメガガンボ科ヒメガガンボ亜科の検索表が出ているのですが、どうもうまくいかなくて属まで辿り着きません。



こちらはSc脈が見えないので、ガガンボ科かなと思います。



これはセスジユスリカかもしれませんが、ユスリカの検索はなんとなくうまくいっていません。



ヒゲナガカワトビケラが出始めました。これから増えてくるでしょう。



天井にカゲロウの脱皮殻と脱皮直後の個体がいました。種類までは分かりませんが・・・。



最後はナメクジです。ナメクジにもいろいろな種類があるのかなぁ。

廊下のむし探検 カメムシ、クモ

廊下のむし探検 第509弾

一昨日の「廊下のむし探検」の結果です。最近、虫がたくさん出ているので、名前調べに時間がかかって報告がだんだん遅れてきました。今回はカメムシとクモについてです。



今日の最初はこのカメムシです。前胸背の両側にとげとげがあって、触角も太いし、見るからに奇妙な感じのするカメムシです。「原色日本カメムシ図鑑第1巻」を何度見ても見つかりません。それで、第3巻も見てみたらやっと似た種が見つかりました。ヘリカメムシ科のヒメトゲヘリカメムシです。たぶん、これですね。珍しいのかなと思って説明を見ると、そうでもなく、各地に普通にいそうです。「乾燥した環境を好むようで、やや開けた草原の草の根際が見つかることが多い。」とのことです。ネットでもたくさん引っかかりました。

後はいつもいる連中です。



これはブチヒゲヘリカメムシ、(追記:ブチヒメヘリカメムシのミスタイプでした



それにキベリヒョウタンナガカメムシ



それからナガメです。今年はこのナガメが多いですね。廊下にいると色が鮮やかなので、よく目立ちます。でも、図鑑によると、ダイコン、カブ、キャベツなどアブラナ科作物を吸収加害する害虫のようです。



最後はアオモンツノカメムシです。これもよくいますね。

次はクモです。最近、クモの8つある目の配置から何科だか調べようと考えています。それで、いつも目の辺りを写しています。



今日の最初はこのカニグモです。カニグモは前の2対の脚が長いので、その格好からすぐに分かりますね。これはガザミグモというクモです。「日本のクモ」によると、和名はカザミグモ(風見)と名付けられていたのですが、カニグモ科なので、ガザミグモに変更されたとあります。ガザミはワタリガニのことですね。それでは、ちょっと目の辺りを拡大してみます。



こんな風に上の列と下の列に並んでいます。下の4つはすぐに分かるのですが、上の列は真ん中の2つと両端に斜め後ろ側を向いた目が1対あります。向かって右側の方の目がちらっと見えていますね。



これはヤミイロカニグモといって、同じカニグモの仲間です。



先ほどと同じように上下2列に目が並んでいます。上側の目は先ほど同じで、中心に2個、それに両端に斜め後ろを向いた目が2個あります。下側の両端の目がかなり大きいですね。






小さなクモで名前が分からなかったのですが、やはりカニグモのようです。動き回っていて、なかなか止まってくれなかったのですが、とりあえず目の辺りを拡大してみました。



ちょっとはっきりしませんが、先ほどのヤミイロカニグモと同じような感じです。



最後はこの綺麗なクモです。たぶん、ウロコアシナガグモ辺りのクモだと思います。明るい色なので、拡大しないのでも目が分かりますが、一応、拡大してみます。



やはり上下2列に並んでいます。先ほどのカニグモとよく似ていますが、下の両端の目はむしろ小さ目のようです。目の配置だけでなく、その向きや大きさにも注目すると良いみたいです。普段、クモは体の模様ばかり写していたのですが、こうして焦点を絞って撮影すると、結構、面白いですね。

廊下のむし探検 蛾いろいろ

廊下のむし探検 第508弾

冬の間はハエとフユシャクくらいしかいなかったのですが、3月中旬を過ぎると急激に蛾の数が増えてきました。昨日の「廊下のむし探検」では20種ほど見られました。全部載せると大変なので、主だったものだけ載せることにします。







変わったところではこんな蛾がいました。上2枚は同じ個体、下の写真は別個体です。今頃よく見るのはルリイロスカシクロバなのですが、ちょっと雰囲気が違います。「標準図鑑」で発生時期と場所を限ると、可能性があるのは、ブドウ、ルリイロ、オオヤマの3種です。この中では、翅の後縁が黒っぽいので、たぶん、ブドウスカシクロバではないかと思います。さらに、触角が鋸歯状なので、両方共♀のようです。





これは同じ個体の写真です。胸の上の盛り上がりがすごいですね。これはカギバガ科のマユミトガリバです。早春に出てきます。昨年は3月18日が初見日でした。ほぼ同じ頃ですね。



同じトガリバガの仲間でもこちらはホシボシトガリバです。翅を屋根型にして止まっていますが、



こんな風に平らにして止まっている個体もいました。今年は多いです。マンション全体で10匹以上いるのではないでしょうか。



こちらのキリガはキリガでも越冬キリガの方です。チャマダラキリガとクロチャマダラキリガがいるのですが、外縁が波状になっているので、チャマダラキリガの方だと思います。



これは昨年秋にさんざん悩まされた越冬キリガです。私はこんな風に翅脈が白くなるのがテンスジキリガだと思っていたのですが、通りすがりさんに詳しく教えていただき、どうやらそうではないことが分かりました。内横線が波状になっていて、環状紋が円形で、亜外縁部がやや淡色で、さらに、腎状紋の下部がやや黒くなっているところから、たぶん、カシワオビキリガかなと思いますが、実は、未だによく理解できていません。



これは春キリガでアカバキリガですね。昨年も3月20日に見ているので、ぴったり同じですね。



ちょっと雰囲気が違うのですが、やはりスモモキリガかなぁ。



これはクロテンキリガでしょうね。



カバナミシャクです。私はこんな感じをソトカバナミシャクかなと思っていたのですが、いろいろと異論がありそうですね。



フユシャクの仲間のホソウスバフユシャです。この日は2-3匹いました。普通の半分くらいの恐ろしく小さな個体もいたのですが、栄養状態が悪かったためでしょうか。

他にもいろいろといたのですが、昨日のはこれくらいにしておきます。実は3日前の蛾の写真を出していなかったので、ついでに出しておきます。



シロトゲエダシャク



オカモトトゲエダシャクです。



モクメクチバですね。



このキリガは何でしょうね。



それにマエアカスカシノメイガでした。

廊下のむし探検 甲虫、クモ

廊下のむし探検 第507弾

昨日の「廊下のむし探検」のうち、甲虫とクモについてです。



まずは甲虫からです。ちょっと変わった形の甲虫ですが、これまで何回か見ています。昨年の2月3日、今年の2月18日です。その時はケシキスイ科のヘリアカヒラタケシキスイかなと思ったのですが、もう一度見直してみても、結局、あっているのかどうかは分かりませんでした。





これはマツトビゾウムシだと思います。今日は3匹見ました。「マツ」という名前がついていますが、「原色日本甲虫図鑑IV」によると、4月ごろマツの新葉を食害するとのことです。



体長2.7mmの小さい小さいゾウムシです。図鑑を見ると、ヒゲナガホソクチゾウムシというのに似ていますが、どうでしょう。



マルガタゴミムシは相変わらずあちこちで動き回っています。







ハネカクシもいろいろといるのですが、どうせ名前は分からないだろうなと思って調べていません。



ナナホシテントウかなと思ったのですが、ホシが多すぎます。やはりナミテントウでしょうね。



これは小さなテントウです。体長は2.8mmしかありません。図鑑で調べて、フタモンクロテントウかなと思うのですが、自信はありません。(追記:通りすがりさんから、「フタモンクロテントウではなくてフタホシテントウですね。」というコメントをいただきました。実は昨年の4月24日にも教えて頂いていたのに、すっかり忘れていました。毎度毎度有難うございました





こちらはもうちょっと大きいテントウです。体長は3.8mmです。周りにヒレのようのものがついているので、別種だと思われます。たぶんヒメアカホシテントウかなと思うのですが・・・。

次はクモです。



一昨日もいてキンイロエビグモとしたクモです。これの目を拡大してみます。



こんな風に上に4つ、下に4つの目が並んでいます。エビグモ科の特徴ですね。



これはササグモです。これも目の部分も拡大してみました。



先ほどのクモと目の配置が違うでしょう。こういう配置から科が分かるというのですけど・・・。



これは何科なのかさっぱり分からないクモです。目の部分を拡大してみます。



上に4つの大きな目が台形型に並んでいます。その下に小さな目が4つ並んでいるみたいです。この配置とSpider Eye Arrangementというサイトに載っている目の配置とを較べてみます。すると、コモリグモ科に似ているみたいです。本当かどうかは分かりませんが・・・。



最後は目がよく分かりませんが、たぶん、ズグロオニグモです。目の配置から科が分かると、少しはクモも分かるようになるかもしれませんね。

廊下のむし探検 ハエ、カメムシ

廊下のむし探検 第506弾

数日前から始まった虫の大発生が止まりません。昨日も数十種の虫が出てきていました。主だったものの写真は撮ったのですが、その分、名前調べが大変でした。まだ分からないものも多いのですが、とりあえず少しずつ出していきます。今回はハエ目とカメムシ目を紹介します。





この写真は同じ種で共にケバエ科です。しかも目が大きいので♂の方です。ケバエについてはHardy and Takahashi (1960) (ここからpdfがダウンロードできます)に日本産の種が詳しく出ているので助かります。この論文の中の検索表を用いて調べてみました。比較的容易にBibio pseudoclavipesにたどり着きました。この種は九大の「日本産昆虫目録データベース」によると、ニセアシブトケバエという和名を持っているようです。

Hardy and Takahashi (1960)によると、この種は、1) 前脚脛節先端の1対の棘のうち、内側が長いこと、2) ♂の後脚第1跗小節が膨潤していること、3) ♂の交尾器の形状により、他と区別がつくそうです。まだ全部の写真は撮れていないのですが、その結果の一部を載せます。



これは前脚脛節先端の棘です。内側(上)の長さと外側(下)の長さがほとんど等しいことが分かります。他の種では内側がだいぶ短いのが普通です。



これは後脚の写真です。一番右に見えているのが脛節、その左は跗節で小節が全部で5つ、末端に爪が生えています。第1跗小節が膨潤してほとんど脛節の太さと同じくらいになっています。



これは腹側から見た腹部末端です。この論文には交尾器の綺麗な図も載っているのですが、結構、よく似ています。おそらくニセアシブトケバエで間違いないと思います。先日見た♀もひょっとしたらこの種の♀だったかもしれません。もう一度調べてみたいと思います。



これは変わった感じのする虫です。ガガンボのようでもあり、カの仲間のようでもあり・・・。「絵解きで調べる昆虫」の検索表を用いて検索をしてみると、意外に簡単にユスリカにたどり着きました。その先を「日本産水生昆虫」で調べてみました。これも簡単にユスリカ亜科になり、さらに、ユスリカ族になって順調だったのですが、その先でつまづきました。触角鞭節の環節数が11か13かというのですが、どう見ても5節しかありません。諦めてネットで探してみると、どうやらオオユスリカ♀みたいです。「原色昆虫大図鑑III」によると、本邦最大のユスリカで、触角の環節数は5、富栄養化した湖沼で発生するそうです。たくさんの同胞種があるとも書いてありました。これは恐怖ですね。

追記2015/03/20:オオユスリカについて調べてみると、いろいろと面白い記事が見つかりました。まず、Wikipediaによると、オオユスリカを含むユスリカ類は、湖沼の富栄養化が進むと大量に発生し、窓が開けられない、洗濯物が干せないなど、人間生活にも影響が出てきます。さらに、その死体が風化して粉末になり風に舞うと、喘息のアレルゲンにもなるそうです。これはユスリカ喘息と呼ばれています。それで、ユスリカを大量に捕獲する方法はないかと研究が進められています。オオユスリカについては次のような論文が見つかりました。

小川賢一、平林公男、「音響と光に対するオオユスリカの行動と大量捕獲」、屋内害虫 21、25 (1999) (ここからダウンロードできます)

この論文によると、オオユスリカは日没後、薄暗くなると、雄が大量に集まって蚊柱を作ります。それに引き寄せられて雌が中に入っていくと交尾する相手が見つかるというものです。この時、雌が入ってきたことを雄はどうやって知るのかというと、雌の羽音だということです。雌の羽音の周波数は270-300Hzであるのに対し、雄の羽音は490-540Hzで、雄は
270-300Hzの範囲の音に非常に敏感で誘引されるとのことです。しかし、昼間休止中の雄では全く反応せず、音だけでは効果がないことも分かってきました。筆者らは紫外線を出すブラックライトを併用することを考え、試してみると、非常に効果が上がったと報告しています。蚊柱の中に入ってきた雌を雄がどうやって見分けるのか不思議だったのですが、羽音だったのですね



これもユスリカです。♂は普段触角がふさふさなのですが、これは何故か畳んでいるようですね。こんな風に畳めるのですね。



これはミスジミバエでしょうね。綺麗なハエです。



ガガンボの仲間です。写真を使って検索してみました。翅脈のSc脈が見えないので判断しにくいのですが、前縁に達してはいないようなので、おそらくガガンボ科ではないかと思います。

次からはカメムシです。



昨秋、盛んに見たマツヘリカメムシが出てきていました。越冬していたのでしょうね。一昨年初めて見てから、もうすっかり常連になってしまいました。



こちらはマンションの外壁の下にいたヨコヅナサシガメの幼虫です。カメラを向けると必死に逃げようとして動き回っていました。



こちらは前日もいたシロヘリナガカメムシです。



これはキベリヒョウタンナガカメムシだと思います。



ナガメはいつ見ても綺麗ですね。



このミツボシツチカメムシも2匹いました。カメムシも全開ですね。





これもカメムシ目ですね。ウンカの仲間だと思うのですが、ウンカの検索はしたことがないので、まず科の検索からやってみようと思ったら、言葉が分からなくてなかなか進みません。諦めてネットで調べると、セジロウンカに似ています。この仲間かもしれません。でも、後でもう一度科の検索にチャレンジしてみます。

廊下のむし探検 アザミウマ、甲虫、カメムシなど

廊下のむし探検 第505弾

昨日の「廊下のむし探検」の結果です。今日もたくさんいたので、早めに昨日の結果を出してしまわなくてはと思い、急いで整理してみました。

この日はこんな変わった虫がいました。





これはアザミウマという虫です。ヒメジョオンなどの花を覗いてみると、小さな黒い虫がいっぱいついていることがあります。あれがアザミウマです。Syngenta Japanという会社のHPを見ると、「明治時代に大阪周辺で、アザミの花を右手に持ち左手の手のひらにそれを乗せて軽くたたき、『馬でよ!牛でよ!』と言って、アザミの花から出てくる虫の数を競った遊びがあったそうです。『アザミウマ』と名前をつけた松村松年博士が大阪周辺の出身であることから、この遊びが語源のいわれではないかとされています。」と書かれていました。

ところで、昨日見た個体はいつも花についている小さなアザミウマと違って、ずいぶん大きなアザミウマです。



さらに、頭が長くて、腹の途中に棘のようなものが出ています。触角も小さな黒い点がいくつも連なった変わった形をしています。「原色昆虫大図鑑III」の図版を見てすぐに分かりました。ツノオオアザミウマ Bactrothrips brevitubusという種です。寸法を測らなかったのですが、「大図鑑」によると体長♂6.8mm内外とありました。採集しようと思って外へ回って見たらもういませんでした。どこかに飛んでいったのでしょうか。

さて、名前が分かって喜んでいたら、ネットで見るとどうやらそう単純ではないようです。Bactrothrips属の一種と書かれているサイトもありました。いろいろと仲間がいるようです。それで、また文献を探してみました。そうしたら一つ見つかりました。

K. Haga and S. Okada, "A taxonomic study of the genus Bactrothrips Karny(Thysanoptera,Phlaeothripidae) from Japan", 筑波大学菅平高原実験センター研究報告 10, 1-23 (1990). (ここからダウンロードできます)

この論文は、従来までBactrothrips属には3種いるということだったのですが、新たに4種を見つけ、従来までの種と共にまとめてみたという内容です。この中には検索表も載っていました。早速、それを使ってみました。すると、1) 脛節が黄色と暗褐色の二色性→2) 中脚脛節は二色で、少なくとも先端1/3以上は黄色→3) 触角第3,4節の先端は第2節と同色で暗褐色→4) 頭の長さは目のところで測った頭の幅の2.1倍以上という条件で、ツノオオアザミウマ Bactrothrips brevitubusに到達します。1)から3)までは上の写真を見るだけですぐに分かるのですが、最後の頭の長さをどこで測ったらよいのか迷いました。



結局、論文の中の図から、頭の先端の中心がちょっと飛び出している部分までを指していることが分かりました。その両側の飛び出している部分は触角の柄節です。そこで、この写真のように頭長を測ると、頭長/頭幅≒2.1となりツノオオアザミウマになりそうです。ただ、同じ検索項目に触角第3節の長さも書いてあるのですが、これは第3節長さ/頭長≒0.57となり、書いてある0.66-0.74よりはだいぶ小さな値になってしまいました。ツノオオアザミウマの対抗馬はB. quadrituberculatusなのですが、こちらは頭長/頭幅<2.0、第3節長さ/頭長≒0.61-0.67で、後者の値が実測に少し近づきます。いつものように、ちょっと不安な材料もでてきてしまいました。「大図鑑」のツノオオアザミウマの説明を読むと、腹部の突起のあるのは♂の方だそうです。また、シイやカシの枯れ葉に生息するそうです。(追記:上記の論文の中でM. brevitubusに対するコメントを読むと、脛節と腹部の突起の色、触角の節の長さには生息場所による変化が見られるとのことです。やはり頭の長さを重視した方がよいかもしれません



ゾウムシも何種類かいました。これはマツキボシゾウムシですね。





変わった模様のゾウムシです。クロホシタマクモゾウムシといいます。昨年も4月10日に見ています。



それからいつものユアサハナゾウムシです。





小さなハムシです。体長は2.2mmほど。たぶんチビカミナリハムシの仲間ではないかと思いますが、よく分かりません。



マルガタゴミムシは相変わらずたくさんいました。



冬の間によく見かけたハネカクシと同じかなと思います。マンションの廊下ではよく見かけるのですが、いったい何をしているのでしょうね。






カメムシの仲間もたくさんいました。色がだいぶ違いますが、両方ともナガメです。この日は数匹見ました。



「日本原色カメムシ図鑑第3巻」にある検索表にしたがって、「革質部先端に明瞭な白色紋がない」という条件からシロヘリナガカメムシではないかと思います。この日は2匹見ました。



アメンボもカメムシの仲間ですね。廊下でぴょんぴょん跳ねていました。アメンボを調べる時はいつも大阪自然史博物館の松本吏樹郎氏の淀川水系のアメンボ検索表」を使わせて頂いています(公開していただきどうも有難うございます)。検索の結果、いつものコセアカアメンボみたいです。



この日もカワゲラがいました。いったい何という種なのでしょうね。だんだん気になってきました。



小さなアリもいました。一応、採集してきたのですが、翅が抜け落ちた後があるので、♂アリのようです。日本産アリ類画像データベースの中で♂アリの検索も一部載っています。試してみると、ヤマアリ亜科になりましたが、その後の属の検索についてはどうも自信がありません。♂アリはまだ試したことがなかったからだと思います。一度、分かった種で試してからもう一度挑戦してみます。



ハチがいました。ハチは今年の目標にしているのですが、小さいのでこの日はパスしました。



いつものユスリカです。





最後はキノコバエかクロバネキノコバエですね。最近は忙しいので、ハエはパスです。

廊下のむし探検 蛾がいっぱい

廊下のむし探検 第504弾

昨日の「廊下のむし探検」の結果です。私の住むマンションでは一昨日から急に虫が増え始めました。昨日も相変わらず多くて、名前調べが大変でした。蛾だけでもマンション中で30-40匹はいたのではないかと思います。冬の間は見つけた蛾はすべて写していたのですが、昨日はさすがに間引きながらの撮影でした。

まずは今シーズン初めての蛾からです。





これはカギバガ科のホシボシトガリバです。下の写真は前から見たものです。これも木切れのような格好をしていますね。この日は2匹いました。昨年は3月22日が初見日だったので、5日ほど早いお出ましです。



次はこのアトジロエダシャクです。昨年は3月10日だったので、こちらは一週間ほど遅目のお出ましです。





その次はこのカバキリガです。これは春キリガですね。昨年が3月18日だったので、ほぼ同じ頃の出現です。この日は2匹いました。

後はいつもの連中なのですが、キリガの仲間が分かりにくくて名前調べに一苦労です。





全然、模様が違うのですが、両方共クロテンキリガではないかと思っています。上はクロミミキリガも疑ったのですが、結局、クロテンの方にしてしまいました。(追記:MSWiさんから、「クロテンの一つ下はクロチャマダラのようです。下唇鬚が細く伸びてるのが特徴ですね。クロテンとしているのも、もしかしたらクロミミかなと僕も思います。」というコメントをいただきました。下唇鬚にはまったく気が付きませんでした。どうも有難うございました





これは両方共ブナキリガではないかと思います。下は模様がはっきりしないのですが、かすかに見えている環状紋や腎状紋からもそのような気がしました。







こちらは3匹ともホソバキリガかなと思っています。特に、一番下のは何が何だか分かりませんが、亜外縁線が前縁で屈曲しているように見えることからそうではないかと思いました。



シロヘリキリガはこの日は5-6匹はいたと思います。模様がはっきりしていていいですね。



ヒロバトガリエダシャクもこの日は2匹いました。



あまりに模様が鮮やかなので、はじめ別種かと思いました。でも、模様を見るとやはりホソバトガリエダシャクのようです。



ハスオビキリガではなくて、ハスオビエダシャクでしたね。この日は5匹ほどいました。



モンキキナミシャクは7-8匹はいました。昔、蛾の数を毎日数えていたことがあったのですが、その時は1日に100匹以上もいてびっくりしたことがありました。



フユシャクも一応はいたのですが、最近は何だか影が薄いですね。ホソウスバフユシャクです。



最後はこのカバナミシャクです。Eupithecia属でしたね。カバナミシャクは全部で10匹ほど天井に止まっていたのですが、写したのは壁に止まっていたこの蛾だけです。ずいぶん派手に見えるのですが、桃色の帯が入っているからです。図鑑を見てもこんな桃色の帯のある標本はないのですが、逆にこの帯を外して考えると、何となくウスカバナミシャクに近いかなと思います。よく分かりませんが・・・。

蛾以外の虫は次回に回します。

廊下のむし探検 甲虫、カメムシ、ハエ等

廊下のむし探検 第503弾

昨日、爆発的に発生した虫達のうち、蛾以外の虫の紹介です。一度にたくさん出てきたので、名前調べが大変でした。






まずは甲虫からです。たぶんマルガタゴミムシの仲間だと思いますが、小さいのやらやや大きいのやら、この日は何匹も廊下を歩いていました。おそらく名前は分からないだろうなと思って、名前調べはやっていません。こんな虫の名前が分かると嬉しいだろうなと思うのですが・・・。






これも2匹いました。触角が独特で、脚も太いし、そんなところを手がかりに図鑑を探し回ったのですが、結局見つかりませんでした。触角だけだと、ケシキスイの仲間に似ているなと思ったのですが・・・。(追記:体長を書くのを忘れていました。体長は4.7mmです。通りすがりさんから、タマキノコムシ、ツヤマルケシキスイ、ヒメハナムシ等の名前を挙げていただきました。さらに、鞘翅の点刻列や胸背の点刻から絞れるかもというコメントをいただきました。もう少し調べてみます)(追記:「黒い甲虫」で画像検索したら、ちょっと似た種が出てきました。オオキノコムシ科のクロハバビロオオキノコです。図鑑を見ると、クロハバビロやコクロハバビロの胸背の点刻などが似ている感じです。でも違うかな・・・。もう1枚写真を載せておきます.



カミキリもいました。ヒメスギカミキリですね。いよいよ甲虫が出てきましたね。



小さい甲虫ですが、先日もいたキクイムシの仲間です。図鑑によると、触角を見たら種類が分かるということなので、その部分を拡大してみます。



この形はいつもいるマツノキクイムシですね。





後はナナホシテントウナミテントウでした。



この日はカメムシもいっぱいいました。このクサギカメムシの他、ムラサキナガカメムシは廊下のあちこちをもそもそ歩いています。



その他にもマツヒラタナガカメムシがいました。



これは、後脚腿節が黒いので、ブチヒゲヘリカメムシでしょうね。(追記:ブチヒメヘリカメムシの間違いでした



似た種があるのですが、マンションにはフタモンホシカメムシがたくさんいるので、そちらの方だと思います。



それに綺麗なナガメです。



次はミバエの仲間です。翅が綺麗で、昨年も4月14日に見ていました。ただ、ミバエを調べる手段がなくて、いつもネットに頼るしかないのが残念です。ネットを見ても似たような種は多いのですが、全く同じかなと思うものは少ない感じです。たぶん、Acidiella属かなとは思うのですが・・・。



次はこれ。これも苦労しました。一見、オドリバエかなと思うような様相です。でも、触角を見たり、前脚脛節の先端の1対の棘を見ると、ケバエ科の♀であることが分かります。一応、採集してきました。ケバエについては、Hardy and Takahashi (1960)の論文があって、日本産の種の検索ができるので便利です。でも、Bibio属であることはすぐに分かりますが、それから先は何度やってもそれらしい種にたどり着けません。外見上も毛だらけで、こんなケバエを見たことがありません。ひょっとしたらこの論文には載っていない種かもしれません。とりあえず、ざっとした写真を撮りました。今度、載せます。



マンションの外壁の下で、こんな連結しているハエを見つけました。これはたぶん、ニセケバエ科ですね。



ユスリカの仲間もいたのですが、この間苦労したので今日はパスです。



この時期に出てくるやや大きなカワゲラは何なのでしょう。昨年も名前調べに挑戦したのですが、挫折しました。今年ももう一度挑戦してみたいなと思います。今回はパスです。



そして、オナシカワゲラです。これも昨年調べたのですが、挫折でした。今年はどうするかなぁ。



最後はこの綺麗なクモです。これはキンイロエビグモの幼体かなと思うのですが、どうでしょう。

廊下のむし探検 蛾の巻

廊下のむし探検 第502弾

今日は虫が多かったです。もうすっかり春本番ですね。それで、とりあえず蛾だけを先に紹介します。



まずはキリガからです。これはこの間もいたシロヘリキリガです。模様が複雑ですね。



それに、だいぶ前から出てきているホソバキリガです。



これもたぶんホソバキリガでしょうね。(追記:MSWiさんから、クロテンキリガでしょうか、というコメントをいただきました。「擦れていないにもかかわらず環状紋がほとんど消えかかっているようなキリガはクロテンかクロミミのどちらかだと思います。」ということです。コメント、どうも有難うございました



模様のはっきりしない蛾ばかり見ていると、こんなにはっきりしていて何だか気持ちいいですね。ブナキリガです。この日は2匹いました。



これはクロテンキリガでしょうね。



これもはっきりしないのですが、クロテンキリガかなぁ。



これはキリガではなくてキリバです。越冬してきたプライヤキリバですね。今日は2匹いました。



そしてトビモンアツバです。



次からはシャクガ科です。今年初登場のハスオビキリガです。2匹いました。(追記:これは恥ずかしい間違いでした。キリガの勢いでついやっちゃいました。正しくはハスオビエダシャクです。通りすがりさん、ご指摘有難うございました



ギフウスキナミシャクも2匹いました。



モンキキナミシャクがもう出始めていました。今日は数匹いたようでした。





春になるとカバナミシャクが必ず出てきますね。これの名前調べはほとんど駄目なのですが、この2つはソトカバナミシャクかなと思っています。(追記:MSWiさんから、「1枚目はナカオビ、2枚目はウス?」というコメントをいただきました。私にはちょっと判定がつかないので、サスペンドにしておきます



これもカバナミシャクですが、何だかよく分かりません。マエナミカバナミシャクかなぁ。





もちろんフユシャクの仲間もいました。上はホソウスバフユシャク、下はシロトゲエダシャクです。

今日は蛾が多かったですね。とともに、名前の分かりにくい種もだいぶ増えてきました。これからが大変ですね。とりあえず、今日見た甲虫とハエ、カメムシの名前を調べなくちゃ。

廊下のむし探検 ユスリカやガガンボなど

廊下のむし探検 第501弾

最近は虫があまり多くないですね。虫が少ないので、つい、ハエの仲間を撮影してしまいました。今日はまずユスリカ科からです。







一番上は触角がふさふさなので♂ですね。後の2つは♀のようです。上の♂はやや大きかったので、採集してきました。体長は4.8mm。そこそこの大きさです。でも、毒ビンに入れていたら翅がくちゃくちゃになってしまって、どうにも伸びません。翅脈で検索をするので翅が伸びないとどうしようもありません。

半ば諦めていたのですが、以前、通りすがりさんに教わった展翅法を思い出しました。これは弘前大の中村剛之氏が考案した方法で、剥離紙の裏側を使って液浸標本を展翅する方法です。剥離紙の裏側はくっつかないので乾燥しても剥がすことができるそうです。くっつかないという意味では接着テープの接着面の反対側もそうだろうと思って、スライドグラスに接着テープを貼り付け、その上に消毒用アルコールを一滴落としました。そこに翅がくちゃくちゃになったユスリカを裏返しにして置き、アルコールの中で針を使って翅を伸ばしました。



こんな感じです。



確かに翅は伸びて展翅が出来ました。ただ、アルコールの中に入っているのでコントラストが低くて翅脈は辛うじて見える程度です。でも、これで少しは検索が出来ました。「日本産水生昆虫」の亜科への検索表を用いると、1) m-cuがあり、2) R2+3があり、3) R2+3が分岐せず、4) m-cuはFCu(Cuの分岐点)より翅の先端に近いという条件でヤマユスリカ亜科になります。ここから先の検索表がないので、今日はここまでです。

追記:翅脈の名称を、初め、「日本産水生昆虫」を参考にしてつけていたのですが、どうも納得がいかなかったので、Manual of Nearctic Diptera (MND) Vol. 1の方を参考にしました。前者ではMがM1+2、CuA1がM3+4、CuA2がCu1になっていました。また、FCuはcubital forkの略で、Cu脈の分岐点を指しています

追記:ユスリカ科の翅脈について書かれた論文を見つけました。

B. Lindeberg, "Nomenclature of the wing-venation of the Chironomidae and of some other families of the Nematocerous Diptera", Annal. Zoolog. Fennici 1, 147-152 (1964). (ここから1ページ目だけが読めますが、JSTORに登録すると画面では全部読めるようになります)

M脈とCu脈あたりを読んでみたのですが、分かりにくい論文です。要は翅脈の発達をニセヒメガガンボ科→ブユ科→ヌカカ科→ユスリカ科と進んでいくと考えています。最初のニセヒメガガンボ科では第2基室があって、そこからM脈もCu脈も出ています。ブユ科では極めて狭いながらも
第2基室らしきものがあって、そこからM脈が4本とCu1脈が出ています。これに対して、ヌカカ科、ユスリカ科では第2基室はなくなり、後ろの脈に分岐だけが残っています。従って、これはM4脈とCu1脈が途中まで融合したものだと解釈したようです。さらに、ヌカカ科ではm-cu横脈はなかったのですが、ユスリカ科にはあるので、これは後からできた横脈だということになります。

筋はまがりなりにも通っている感じなのですが、この論文の被引用件数が12、その後、翅脈に関する論文でこの論文を引用している論文がないことからどれだけ信じられているのかどうか分かりません。ただ、その後に出ている論文ではこの分岐をM4とCu1としているものと、CuA1とCuA2としているものの2通りがあるようです。翅脈の名称はともかくややこしいですね。翅脈について論じるときは必ず図を書いておいて、私はこの方式で名前をつけてますよと書いておくべきだと思いますね
)(追記:上の写真ではM脈とCuA1脈の間にも翅縁に届かない脈がありそうなのですが、翅脈なのか、翅の折れ目なのか、擬脈なのか分かりません。翅の後半部分にも似たような感じの脈がありそうです。後半部分については、「日本産水生昆虫」では翅縁に届かないCuP脈とAn脈の2つが書かれています

追記2015/03/20:三枝豊平氏の学会発表原稿や予稿を集めた、"Homology of Wing Venation of Diptera"(2006)という原稿集が見つかりました《ここからpdfがダウンロードできます》。この中で、翅脈の名称についてのコメントが載っていました。それによると、上の図でCuA1と書いた脈はM4、CuA1、M4+CuA1などと過去の論文では様々に書かれています。筆者はTillyard, Linnean Soc. New South Wales 44, 533 (1919) 《ここから本がダウンロードできます》の見解に賛成し、M4という名称が適当であると述べています。Tillyardは"M4"脈とCuA脈は毛に覆われているのに対し、その間をつなぐm-cu横脈には毛がないので、"M4”脈をCuA脈とつないで考えるのは適当でないと書いています。これに対する反論では、1) "M4"脈はCuA脈と同じ凸脈である、2) "M4"脈はしばしばCuA脈とつながって分岐をつくるので同種の脈である、という根拠で前者をCuA1、後者をCuA2とすることを主張しています。これに対して、三枝氏は凸脈、凹脈という概念は翅の末端付近では不明確であること、また、化石昆虫ではCuA脈は単独であることが多く、これに対してM脈は一般に分岐していることなどから、M4脈とすることが妥当としています。タマバエやユスリカなどで、M4脈とCuA脈に途中から分岐しているような形態を取るのは、翅脈の退化(reduction)によるもので、おそらく、飛翔のために強度をかせぐためであろうと述べています。この見解に従えば、上の図でCuA1、CuA2と書いた部分はM4、CuAと書く方がよいのかもしれません

このまま展翅標本もできるかなと思ったのですが、ちょっと甘かったです。アルコールが染み込んだ接着テープが下の接着剤も溶かしてしまったのか、接着テープが剥がれて盛り上がってきました。耐水性がないと駄目みたいです。





次はガガンボの仲間です。上はいつものガガンボダマシ、さて下は何でしょう。そこで、写真を拡大してみました。



これは各部の拡大です。これらの写真から検索ができます。「絵解きで調べる昆虫」の検索表を使えば、1) 中胸背にV字型の溝があり、2) 単眼なし、3) R脈が3-4分岐、4) A脈が2本、5) R1脈の終点が翅縁に届く、6) Sc脈の終点が翅縁に届く、という条件でヒメガガンボ科になります。さらに、7) 触角が14節、8) R2脈が独立という条件から、Elliptera、Limnorimarga、Antocha、Helius属のいずれかになります。この中ではElliptera属が近いかなと思ったのですが、はっきりはしません。でも、写真でも結構検索ができるでしょ。本当は口器を撮影したら、属まで進めたのですが・・・。なお、この場合の翅脈の名称は「絵解きで調べる昆虫」に従っています。



これはキノコバエかなと思うのですが、採集しなかったので分かりません。





次はトビケラです。この2匹は共に採集してきました。調べてみると、この2匹は共に同じ種で、おそらく、ヒラタコエグリトビケラの♂だろうと思います。先日調べたトビケラがこの種の♀でした。今回も顕微鏡写真を撮ったので、また、次回にお見せします。♂と♀では腹端だけでなく、いろいろと違っていました。





蛾ではフユシャクがいました。ホソウスバフユシャクが2匹。





それに、ギフウスキナミシャクも2匹。



カバナミシャクはなかなか分かりませんね。ウスカバナミシャクに似ているような気がしますが・・・。



こうなるともっと分かりませんね。ガラス窓に止まっていました。



キリガはこの1匹だけ。シロヘリキリガです。



最後はこの間もいたクモです。たぶんネコグモだと思います。触肢の先が膨らんでいるので、♂かもしれませんね。さらに亜成体くらいかな。

廊下のむし探検 今日は500回目

廊下のむし探検 第500弾

2年ちょっと続けてきた「廊下のむし探検」が今日で500回になりました。記念すべき500回だったのですが、そのわりに出てきた「むし」は今一歩でしたね。まぁ、仕方がないけど。

今日はクモからです。









といってもどれも名前が分からないのですが・・・。先日、眼の配置から科が分かるかもと思ったのですが、これらのクモはどれも小さくて眼の位置がはっきりしません。もっと大きなクモが出てきた時に挑戦してみたいと思います。(追記:一番上のクモは上に4つ、下に4つの目が平行に並んでいるみたいです。Spider Eye Arrangementsを見ると、ナミハグモ科、ネコグモ科あたりが似ている感じだったので、図鑑で調べてみるとどうやらネコグモ科のネコグモのようです



蛾はこのクロテンフユシャクと



クロテンキリガでした。偶然にも両方、クロテンでしたね。



ハエ目も何だか少なくなりましたね。これはたぶんキノコバエ科ですね。





それとユスリカですね。上と下では触角の長さがだいぶ違うみたいですね。下は腹端を見ると、ひょっとしたら♂かもしれません。それにしては触角がいつものふさふさとは違いますね。捕まえてきたらよかったなぁ。



オナシカワゲラがまたいました。昨年は採集してきて検索してみたのですが、手に入る文献が少なくて挫折してしまいました。今年はどうしようかなぁ。



これはユアサハナゾウムシですね。この頃、よく見ますね。



ミツバチがまたいました。この間もいたのですが、やはり動けなくなっていました。寒さにやられたのでしょうか。後翅の翅脈が見えるので調べて見ると、セイヨウミツバチのようです。

虫を調べる タマバエ科

今日は寒かったですね。とても外へ出る元気はなくて、先日から宿題になっていたタマバエ科の顕微鏡写真を撮ってみました。なんせ小さくて、か弱いので扱うのが大変。

Wikipediaによると、タマバエは1-3mmほど大きさの外部寄生性のハエで、植物に虫こぶを作ったり、ハチ目に寄生したりするそうです。英語ではgall midgesとか、gall gnatsとか呼ばれていて、gallは虫こぶ、midgesやgnatsは小さいブヨのような虫を指しています。



私がこの間見たタマバエ科はこのような格好の虫で、体長はわずか2.8mmでした。先日、採集したものが毒瓶に入れっぱなしだったので、実体顕微鏡で写してみました。





拡大してみると、腹部が橙、脚の跗節が黒など、色がはっきりしていて、意外に綺麗です。これがタマバエ科であることは簡単な検索で分かります。



これは「原色昆虫大図鑑III」の検索表のうち、必要な部分を抜粋したものです。触角が糸状の糸角亜目のうち、ガガンボ類でないもので、項目の13、14、15を満足したらタマバエ科のLestremiinae亜科になります。これを写真で確かめてみましょう(なお、ハエについては素人なので、そのつもりで見てください)。まず、翅の写真を見てみます。






上は翅全体の写真、下はその一部を拡大したものです。まず、項目13についてですが、前縁脈は翅の前縁を走る脈のことですが、これが翅を一周することを確かめます。上の写真でも分からないことはないのですが、ちょっと分かりにくいので、透過照明で撮影してみました。



生物顕微鏡の5倍の対物レンズで撮影したら端がはみ出してしまいました。それでも、翅の周囲を黒い脈が走っていることが分かりますね。これが前縁脈です。前縁脈はR4+5脈が翅端に達するところまでは太いのですが、それから先は細くなっています。また、厳密にいうと完全に一周しているわけでなく、一か所切れ目が入っています。(追記:記述が間違っていました。正しくは、「前縁脈はM1脈が翅縁に達するところまでは太いのですが・・・」



太かった前縁脈が細くなる境目の部分に矢印のように切れ目が入っています。(追記:記述が間違っていました。前縁脈が太いのはM1脈付近まででした。従って、ここは、「太い前縁脈がR4+5脈を過ぎたところで矢印のように切れ目が入っています。」というのが正しいです

次の項目14については、Fig. 1に示すように、第2跗小節の方が第1跗小節よりはだいぶ短くなっています。さらに、項目15については次の写真を見てください。



この写真は頭頂部を写したものですが、確かに単眼があります。しかも、2つだけ。さらに、左右の複眼は長く伸びて中央で互いに接しています。手前の薄い橙色のビーズのようなものが重なっているのは触角の柄節と梗節です。ずいぶん変わった形ですね。でも、これでタマバエ科Lestremiinae亜科になりました。

これから先は、Manual of Nearctic Diptera Vol. 1(MND)(ここからダウンロードできます)に載っている検索表を利用しました。



原文は英語で、適当に訳していますので、間違っているかもしれません。最初の項目のうち、単眼と跗節に関してはすでに調べました。次のM1+2脈はFig. 3に書き入れています。3番めの項目は有翅でOK、6番目もFig. 3を見るとすぐに分かります。いい忘れましたが、翅脈の名称はMND Vol. 1によっています。項目8のR5脈はR4+5脈のことだと思いますが、翅の2/3以上の長さはあります。触角については次の写真を見て下さい。



鞭節は第3節以降ですが、6節よりは多くて、各節は幅よりは長そうです。最後の脛節末端の棘は写し忘れたのですが、Fig. 2を見る限りはなさそうです。項目9は微妙ですが、Fig. 4の拡大図を見て下さい。Rs脈とr-m横脈は共に短くて、どちらが圧倒的に長いということはなさそうです。また、M3脈は独立しています。最後の項目9は、M脈についてですが、分岐する前の長さと分岐してからの長さを見ると、分岐してからの方が長いので、これもOKです。さらに、単眼は2つです。ということで、Lestremiini族になりました。これから先は属の検索になるのですが、各属に属する種数が少ないものもあって、どこまで汎用性があるのか分からないので、ここで止めておきます。やはり、日本産の検索表が欲しいですね。

後はついでに撮影した写真です。実はMNDには触角の各節に感覚子という奇妙な形のセンサーがついている絵が載っているのですが、これを写せないかと苦労しました。



これは生物顕微鏡10倍の透過照明で撮影したものです。照明をいろいろと変えてみたり、倍率変えてみたりしたのですが、結局、20倍で透過照明にして深度合成したものが一番良かったようです。



この写真では、触角各節に長い刺毛と共に、短い不規則な形の感覚子らしいものが写っています。これがセンサーなのですね。それにしても、これを撮るのに半日かかってしまいました。(追記:英語のsensoriaを感覚子と訳したのですが、合っているかどうか分かりません。タマバエの属の検索をしていると、digitate sensoria(指状の感覚子)やU字型のsensoriaなどがあるかという項目があって、どういうものか気になっていました)(追記:ネットで調べると、sensoriaの訳として適当かどうか分かりませんが、感覚子という単語は使われているみたいです



最後は交尾器です。これはおそらく♀の方でしょうね。触角に時間を取られてしまって、あまり綺麗に写っていませんが・・・。

タマバエは小さいので、扱うのも写すのも結構大変でした。それでも、特徴はだいたい掴めたのではないかと思っています。

廊下のむし探検 今日は寒かった

廊下のむし探検 第499弾

今日は寒かったですね。マンションの廊下にも冷たい雪混じりの風が吹き込んできて、本当に寒く感じました。あまり虫などはいないだろうなと思ったのですが、運動を兼ねて歩いてみました。



蛾はぽつっぽつっといる程度。これはスモモキリガ



たぶんクロテンキリガだと思うのですが、どうでしょう。(追記:通りすがりさんから、「クロテンキリガでいいと思います。クロテンキリガとクロミミキリガは変異もあって難しいものが居ますから、無理に同定すると危ないんですけどね。」というコメントをいただきました



これはたぶんホソバキリガでしょうね。キリガも次々と見ているとだんだん何だか分からなくなりますね。



それからいつもいるギフウスキナミシャク



これはホソバトガリエダシャクですね。水に濡れてじっとしていました。





白い壁に黒っぽいものがあるなと思うと、必ず、このツノブトホタルモドキでした。



今日は虫が少ないので、このオドリバエ科Rhamphomyia属も撮ってみました。結構、いっぱいいます。



これは何でしょうね。腹端に毛がいっぱい生えているので、ヤドリバエ科かもしれませんね。



これはコカニグモですね。最近、クモの眼を調べていたので、もうちょっと頑張って眼を撮ればよかったのに・・・。すっかり忘れていました。黒くてよく分かりません・・・。



この止まり方はオニグモですね。腹部の模様と頭が黒いところから、たぶん、ズグロオニグモでしょうね。今日の「むし」はこんなところでした。

虫を調べる コエグリトビケラ科(写真中心)

昨日、トビケラがいたので、捕まえて検索をしてみました。その結果、ちょうど1年ほど前に検索してヒラタコエグリトビケラ周辺の♀としていた個体とほぼ同じことが分かりました。そのときの経過は、「トビケラの検索(コエグリトビケラ科)」として昨年の3月11日に出しています。



昨日のトビケラというのはこんな形の虫です。体長は7.8mm、前翅長は9.1mmです。これまで小さなハエばかり調べていたので、相当大きな感じがします。検索は以前と同じなので詳細は省きますが、写真がいくつか撮れたので載せておきます。昨年に比べると、だいぶ見やすい写真が多くなったと思っています。

まず、検索表を載せておきます。



これは以前のものと同じです。上は「原色昆虫大図鑑III」の科の検索表、下は「日本産水生昆虫」の属の検索表で、必要な部分だけを抜粋したものです。この検索に必要な部分の写真を載せておきます。(追記:上のような文字を入れた図をこれまでjpgファイルにしていたのですが、今回はgifファイルにしてみました。こちらの方が赤色が綺麗に見えますね









Fig. 1は頭部と胸部を背側から撮影したもの、Fig. 2は頭部を横から撮影したものです。Fig. 3は前翅と後翅、そして、Fig. 4は前脚の脛節の先端を写したものです。Fig. 3の翅脈の名前は以前と同じ、次の論文を参照にしました。

S. Chuluunbat et al., "A redescription of Apatania mongolica Martynov, 1914 (Trichoptera: Apataniidae), based on materials from Southern Mongolia", Mongolian J. Biol. Sci. 8-1 (2010). (ここでオンラインで読むことができます)

検索表に出てくる項目の内容は、

単眼と中胸小盾板  Fig. 1
小顎肢         Fig. 2
翅脈           Fig. 3
前脚脛節        Fig. 4

をそれぞれ見ていただくと分かると思います。これで、コエグリトビケラ科コエグリトビケラ属であることは間違いなさそうです。

ここからは検索表がないのですが、前回はたまたま次の論文の中に交尾器の似たものを見つけて、ヒラタコエグリトビケラかその周辺の種としました。

H. Nishimoto, "A New Species of Apatania (Trichoptera, Limnephilidae) from Lake Biwa, with Notes on its Morphological Variation within the Lake",Jpn. J. Ent. 62, 775 (1994). (ここからダウンロードできます)

この論文はビワココエグリトビケラの記載論文なのですが、その中に比較のために、もっとも普通に分布すると思われるヒラタコエグリトビケラの♂♀交尾器の図も出ていました(論文中のFig.5のApatania aberransがヒラタコエグリトビケラです)。同じような図は「日本産水生昆虫」にも出ています。今回撮影した交尾器の写真を次に載せます。



これは実体顕微鏡で腹部の先端を腹側から撮影したものです。このような形のものは♀のようです。先端部分を生物顕微鏡を使ってさらに拡大してみます。





上の写真が腹側から、下の写真が横からです。それぞれの部分を何と呼んだらよいのかよく分からないのですが、単純に形だけを比較すると、ヒラタコエグリトビケラ♀の交尾器とよく似ています。まだ、近似種がどれだけいるのか分からないので、一応、ヒラタコエグリトビケラ周辺の♀ということにしておきます。

昨年のブログと比較すると写真がだいぶ鮮明になり、これがこの一年間の進歩かなと思って喜んでいます。

追記:Fig. 3は論文の図に従って翅脈に名前をつけたのですが、何となく前翅のA3の位置が違うような気がします。もう少し他の論文も調べてみます)(追記:トビケラ目の翅脈が載っている論文を見つけました。

R. W. Holzenthal et al., "Order Trichoptera Kirby, 1813 (Insecta), Caddisflies", Zootaxa 1668, 639 (2007). (ここからpdfがダウンロードできます)

この論文のやり方に従って名前を付けた図も載せておきます。


やはり臀脈(A脈)のあたりが少し違いました。まず翅脈の名称がA1ではなく1Aとなっていて、前の方から順番に1A、2A、3Aとなっています。臀脈には分岐点が2つあって、それぞれがY字型をしているので、2つのYがあることがトビケラの特徴だそうです。ただ、私は1Aも2Aももう少し手前に書いて、上で1A、2Aと書いた脈はそれぞれ1A+2A+3A、2A+3Aと書くべきかなと思うのですが・・・

追記:さらに探してみると、米国サウスカロライナ州にあるクレムソン大学のS. Chuluunbat氏が2008年に発表した博士論文(ここからダウンロードできます)に、旧北区東部のコエグリトビケラ科コエグリトビケラ(Apatania)属について詳しく書かれていることが分かりました。ここには、日本産Apatania 15種のうち11種の交尾器が載っていて大変参考になります。この図と比較すると、どうやらヒラタコエグリトビケラ Apatania aberrans♀で間違いなさそうです。さらに、Apataniaの体の構造についても詳しく載っていたので、勉強のつもりで私の写真にも名前を当てはめてみました。翅脈についても上で紹介した論文とは違っていて、これが一番良さそうです。












まだ、英語のままになっていますが、wartというのは瘤を意味し、それぞれの瘤に名前がついているようです。いろいろと分かってくるとなかなか面白いですね

廊下のむし探検 蛾が多い

廊下のむし探検 第498弾

今日は晴れていたのですが、冷たい風が吹いて、体感温度はかなり低い一日でした。それでも、午前中廊下を歩いてみると、結構、蛾はたくさんいました。



風が強かったせいか、こんな風にちょっと翅を開いて止まっている蛾が多かったですね。これはたぶん、ホソバキリガですね。今日は何匹かいました。



これは、前縁付近での亜外縁線があまり曲がっていないのですが、模様は何となくホソバキリガみたいです。



こうなるとブナキリガで間違いないですね。こちらも3匹いました。



こちらはハンノキリガですね。越冬キリガです。



ギフウスキナミシャクも今日は10匹ほどいました。



それにホソバトガリエダシャクですね。



オナシカワゲラが増えてきましたね。この日も2-3匹見かけました。



久しぶりのトビケラです。いつもハエばかり調べているので、今日は採集してきて同定してみました。「原色昆虫大図鑑」の科の検索結果ではコエグリトビケラ科になり、さらに、「日本産水生昆虫」の属の検索表ではコエグリトビケラ属になりました。ここまで来て、ふと、昨年も同じような検索をしたことを思い出しました。そのときの経過はこちらに載せてあります。そのときもコエグリトビケラ属になり、さらに交尾器を調べて、ヒラタコエグリトビケラ周辺の♀という結論を出していました。今回も前回とまったく同じ結果になったのですが、ついでだからいくつか顕微鏡写真を撮っておきました。これはまた別の日に出しますね。昨年調べたのが3月11日、今年とほとんど同じ頃です。やはり今頃出てくるのですね。



先日、見つけたカバエ科がまたいました。これも前回は詳しく調べたのですが、結論的には、もともとマダラカバエと呼ばれていた種が、基準標本を見なおした結果、マダラカバエとしていたのは別の種類だと分かったため、これまでの種類に対しては突然名前がなくなったという話でした。だから、ここでもカバエ科spということにしておきます。前回は♂だったのですが、今回は♀みたいなので、もう少し調べてみます。



毛虫もいました。何となくヨトウガあたりのようですが、図鑑を見ても名前が分かりません。どうも毛虫は苦手です。(追記:通りすがりさんから、幼虫は旧ヨトウガ亜科でしょうね。秋キリガか越冬キリガかと思ったんですが・・・」というコメントをいただきました。もうちょっと調べてみます

昨日は図書館に行って、松本嘉幸著、「アブラムシ入門図鑑」(全国農村教育協会、2008)という本を借りてきました。先日、有翅型のアブラムシの写真を撮ったので、それを調べてみようと思ったからです。



全体はこんな感じです、頭と腹の先端を拡大してみると、



こうなります。ここで名前をつけた額瘤、角状管、尾片などの形から種類を調べていくそうです。角状管は開口部から粘液を出して天敵の行動を抑制したり、揮発性の警戒フェロモンを発して、付近の仲間に知らせたりするようです。角状管が細長いことからアブラムシ亜科らしいことは分かりましたが、それから先は写真ではよく分かりませんでした。一度捕まえて来ないといけませんね。

追記:上に載せたカバエ科spの顕微鏡写真を撮りましたので載せておきます。



今回のカバエ科はやはり♀のようでした。頭と胸を先日捕まえた♂と比較してみました。右側が今回捕まえた♀です。まず、複眼の大きさがだいぶ違うようです。♂は単眼をギリギリ挟むくらい大きいのですが、♀は単眼と複眼の間にかなり隙間が空いています。また、胸部背の三本線も♂ではかなり太く、♀では細いようです。



翅の模様は今度も同じようでした。この翅の模様から、おそらく今度の種もこの間と同じSylvicola sp. 2 (以前のS. japonicus)だと思われます。



これは後脚腿節です。先端は黒いのですが、後はだいたい黄色のようです。中央付近にわずかに黒っぽい部分がありますが・・・。





最後は腹部末端です。♀はこんな風になっているのですね

廊下のむし探検 常連ばかり

廊下のむし探検 第497弾

2月終わりに虫が大量に出てきたのですが、啓蟄になった今、また虫の数が減ってきました。それで、昨日はいつもの常連たちばかりを写しました。



変わったところとしてはこの虫くらいかな。翅に模様があって、一見、ガガンボみたいなのですが・・・。



矢印の部分にグニャリ曲がったA1脈が見えます。従って、ガガンボダマシ科です。うっかりして、ガガンボモドキ科かなと思って、「原色昆虫大図鑑III」を探してみると、シリアゲムシ目になっているのでびっくり。モドキとダマシの違いでした。紛らわしいですね。ところで、このガガンボダマシ、翅に模様があるのは珍しいなと思って、いつもの掲示板「一寸のハエにも五分の大和魂・改」を探してみました。「ガガンボダマシ」でワード検索すると、似た種が出ているページが見つかりました。これによると、どうやらウスモンガガンボダマシ Trichocera maculipennisのようです。近似種の見分け方も出ていました。この掲示板は本当に助かります。「大図鑑」を見ると、分布は北半球の温帯、晩秋より早春にかけて成虫は出現するとのことです。



ハエ目が出たついでに、いつもよく見るオドリバエ科の写真も載せておきます。先日調べた個体と同じみたいなので、そうだとするとRhamphomyia属でしょうね。属まで言えるようになるとちょっと嬉しいですね。本当かどうかは分かりませんが・・・。




翅脈がよく見えないので、科がはっきりとは分かりません。ヒメイエバエ科かなと思うのですが、イエバエ科かもしれません。



これはタマバエ科です。一応、採集してきたのですが、タマバエ科は小さくて、翅が薄いので、ピンセットで翅を持つと翅がくちゃくちゃになり、脚を持つと脚が潰れてしまって、なかなか「虫を調べる」シリーズに出すような個体が得られません。何とかピンセットで持たないようにして、Manual of Nearctic Diptera Vol. 1で検索を試みました。その結果、Lestreminae亜科Lestremiini族まではたどり着きました。ここから先も進めるのですが、属を探すことになり、属に属する種数が少ないものもあって、どれほど汎用性のある検索になっているのか疑問で、途中で止めてしまいました。やはり日本の検索表で調べたいなと思うのですが、まだ、見つかりません。



次はユスリカです。ユスリカもいろいろな種がいるようなのですが、以前、毒瓶に入れて採集したら、翅が薄いのか水分でくちゃくちゃになってしまい、もう伸びません。普通の瓶に入れたまま冷凍庫に入れてみたら、出すときに水分がついてやはりくちゃくちゃ。それ以来、採集をしていません。ユスリカは属までの検索表が「日本産水生昆虫」に載っているので、一度やってみたいなとは思うのですが・・・。



たくさんいるので、普段は撮らないのですが、この日は虫が少ないので撮ってみました。ムラサキナガカメムシです。「廊下のむし探検」を始めた頃は、この虫が小さくてうまく撮れないので苦労していたのですが、最近、撮影してみると、やけに大きな虫という感じがします。小さなハエを撮り過ぎたので、大きさの感覚が小さい方へシフトしたみたいです。



最後は蛾です。蛾はこのギフウスキナミシャクだけでした。ちょっと寂しいですね。

虫を調べる ノミバエの1種

2月24日の記事に、ノミバエにしてはやや大きめのハエを見つけたと書きました。いままでのノミバエとは少し違うようです。そこで、今回詳しく調べてみました。



対象となるのはこんなハエです。体長は3.5mmで、小さいといえば小さいのですが、以前調べたノミバエが体長2mmほどだったので、それから比べるとだいぶ大きな感じがします。採集して検索したところ、トゲナシアシノミバエ亜科のWoodiphora属になったのですが、その後、いろいろ調べていくと、だんだん分からなくなってしまいました。



まず初めに背側からと側面側から撮った写真を載せます。これがノミバエ科であることは、次の独特の翅脈を見るとすぐに分かります。



翅脈の名称はManual of Nearctic Diptera Vol. 2(ここからダウンロードができます)に従ってつけました。(追記:翅脈の名称が間違っていたので図を修正しました。R→R1。ケアレスミスです

ノミバエについては以前にも詳しく調べました。その時には次の2つの論文が大変役に立ちました。

金子清俊ほか、「日本産ノミバエ科に関する研究 第1報」、衛生動物 12, 238 (1961) (ここからダウンロードできます)
田中和夫、「屋内害虫の同定法(3)双翅目の主な屋内害虫」、屋内害虫 24, 67 (2003) (ここからダウンロードできます)

この中に書かれている検索表に従って、今回もこのハエを調べていきたいと思います。ただし、いつも言うようですが、ハエにはまったくの素人で間違っているところも多いと思いますので、そのつもりで見て下さい。まず、初めの金子氏の検索表で必要なところを抜粋したものを載せます。



赤字で書いた部分は特徴が一致しないところ、黒字が一致するところです。矢印に従って進んでいくと、一か所赤字がありますが、Metopoininae(トゲナシアシノミバエ)亜科のWoodiphora属にたどり着きます。そこで、それらを順番に確かめていきたいと思います。





これは、胸の側面を撮ったもので、下はそれを拡大したものです。中胸下前側板の下の方で白くなっている部分は、黒く平坦で金属光沢を持っているのでこのように見えています。前脚基節が2つあるように見えるのは、反対側の脚の基節が一緒に写っているためです。初めの項目は、前胸気門が胸の横についているか、上についているかという点ですが、写真のように横についています。その位置も中胸上前側板の上端を延長した線上、あるいはちょっと下にあります。従って、この記述はだいたい合っているようです。

2番目の項目は脛節の剛毛の話です。その部分の写真を載せます。



これは後脚の脛節の写真です。独立剛毛がある場合には脛節の根元側1/3のところの背側に2本の剛毛があるのですが、これにはありません。あればノミバエ亜科になり、なければトゲナシアシノミバエ亜科になります。従って、トゲナシアシノミバエ亜科ということになります。さらに、後背部にかなり良く発達した氈毛列というのもありません。



この写真はその部分を拡大したものです。脛節には腹側末端を除いて特別な刺毛列も剛毛も見えません。これに対して跗節には2列に並んだ毛列が見えます。



これは中脚の写真ですが、やはり顕著な剛毛は見えません。ただ、先端近くで背側の毛が少し長くなっています。

次に触角上剛毛を調べてみます。







ノミバエは小さい割に頭には長い剛毛がたくさん生えています。金子氏の論文の図に従って、剛毛に名前を付けてみました(図では「原色昆虫大図鑑III」にならって刺毛と書いています)。写真は顕微鏡下で焦点位置を変えながら数十枚写真を撮り、後で深度合成ソフトで合成したものですが、このソフトの欠点は背景に構造がある場所(手前と後ろで構造が重なる場合)での剛毛がうまく再現できない点です。従って、剛毛がちょっと見にくくなっています。ただ、触角上剛毛には長い第1と短い第2の2種類の剛毛があることは、Fig.9でもよく分かると思います(向こう側の剛毛には焦点を合わせていないので写っていません)。問題はこの毛の向きです。検索表では斜下方となっていますが、この写真からは真上もしくはやや後方になっています。さらに、Fig.8を見ると、互いに離れる方向を向いています(発散的)。このあたりがしっくりとはきません。

最後の中胸側板が2個に区切られるという点はFig. 3あるいはFig. 4を見ると分かると思います。ということで、トゲナシアシノミバエ亜科でだいたいはよさそうです。さらに、次の3番目の項目では後脛節背面には毛の列がないのでWoodiphora属ということになりました。



同じようなことは田中氏の検索表でも確かめられます。この場合はさらに簡単で、脛節に独立剛毛がないこと、それに後脛節背面に刺毛列がないことで、トゲナシアシノミバエ亜科Woodiphora属になります。

検索の上では、これで問題なさそうなのですが、触角上剛毛の向きが気になったので、もう少し調べてみました。Manual of Nearctic Diptera Vol. 2に載っているノミバエ科の亜科、族、属への検索表で、必要な部分だけを抜粋するとこんな感じになります。



原文は英語なのですが、つたない英語力で訳してみました。やはり赤色は特徴が一致しない点、黒色は一致する点を示しています。青色ははっきりわからないところです。最初の方は上の検索表と一緒なのですが、問題は項目20辺りです。20bがWoodiphora属に向かう道なのですが、触角上剛毛は前傾し、強く発散することはないと書かれています。逆に20aのBecherina属の特徴を見ると、今回の個体とかなり一致しているような気もします。ただ、この本で扱うWoodiphora属は1種だけなので、かなり特殊な性質を書いているのかもしれません。

というところで、今回はここで行き止まりになってしまいました。いつも中途半端ですね。ついでに撮った写真も載せておきます。



これは触角刺毛を写したものですが、細かい毛の生えた長い刺毛でした。

今回も検索はもやもやで終わってしまいましたね。顕微鏡で観察していると、ノミバエもだんだん馴染みなってきたのですが、検索表だけではすまない難しさもだんだんと身にしみて分かってきました。(追記:Woodiphora属の一般的特徴を調べようと思ったのですが、文献がどれも手に入らずお手上げでした。金子氏の論文にも少しだけ出ているのですが、著者自身は観察したことがなく、しかも、検索表と説明が矛盾していてあてにならない感じです

廊下のむし探検 虫がそこそこ

廊下のむし探検 第496弾

昨日の「廊下のむし探検」の結果です。虫はそこそこいましたが、あまり中心になるような虫はいませんでした。仕方がないから、まずこれからかな。



これはホソウスバフユシャクですね。今シーズン初めてです。一昨年も、昨年も2月中に見ていたので、今年はだいぶ遅い出現でした。



昨年も迷ったのですが、こんな模様でも春の発生なので、たぶんハイイロフユハマキでしょうね。



それにシロテンエダシャクですね。先日は翅が真っ黒だったのですが、今度ははっきりした模様が見られました。



それにオカモトトゲエダシャクです。2月中に一度見たのですが、それからしばらく見ていませんでした。オカトゲを見ると、何か春を感じますね。



蛾が増えてきたので、何となくハエがいても無視をすることが多くなってきました。でも、これは小さいけれど翅が青く光って綺麗です。前縁脈が翅を一周しているので、タマバエ科でしょうね。また、Manual of Nearctic Diptera Vol. 1を見てみると、よく似た翅脈が見られました。ひょっとしてこの写真からだけでも検索できるかなと思ってやってみました。その結果、Lestremiinae亜科Micromyini族あたりまでは辿りつけました。この族にはCampylomyea、Corinthomyia、Cordylomyiaの3属が載っていて翅脈もよく似ているのですが、残念ながら九大の日本産昆虫目録データベースにはこの3属は載っていませんでした。いいところまで行っているのではないかと思うのですが・・・。(追記:通りすがりさんから、「タマバエはゴールから羽化させれば種類も分かりそうですね。寄生してたコマユバチの方が出てくるかもしれませんが。」というコメントをいただきました。寄生するタマバエにさらに寄生する虫がいるなんてと思っていたら、続いて、「カギバラバチの様に、葉に産卵して、その葉を食べたハバチや鱗翅目の幼虫の体内で孵化して、先に寄生していたヒメバチやヤドリバエの幼虫に寄生したり、卵のうちか孵化したばかりのうちに狩りバチに襲われて、その幼虫に寄生したりといった複雑な二次寄生をするものまで居ますからね。1匹のイモムシから複数種の寄生バチが出てくるなんてこともありますし、昆虫の世界は果てしなくディープです。」というコメントをいただきました。昆虫の寄生というのは本当に複雑ですね。でも、人間世界にも似たようなことがあるなと思ってしまいました



小さいカワゲラだったので、オナシカワゲラかなと思って写真を撮ったのですが、尾がありますね。何だか分かりません。





最後はこのクモです。たぶん両方共アサヒエビグモですね。この間から、クモの眼の配置を調べたいなと思っているのですが、このごろ見るのはこのクモばっかりですね。
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