虫を調べる ハバチ科マルハバチ亜科
まだ、「虫を調べる」という段階まで行っていないのですが、とりあえず、ハチの勉強ということで出してみます。今日の対象はこのハチです。
今頃、よくマンションの廊下に止まっています。
これは背側からと腹側から写した写真です。普通よく見るハチは胴体が切れそうに細くなっているのですが、これはそんなことはありません。ハチは胴体が細くなっている細腰亜目と寸胴になっている広腰亜目に分かれますが、これはそのうちの広腰亜目の方になります。
さて、このハチは何科になるのか検索してみました。検索には、日本環境動物昆虫学会編、「絵解きで調べる昆虫」(文教出版、2013)を用いました。この本は題名の通り、絵解きになっているので素人の私が使うには大変便利な本です。この本に載っているハチ目の検索表を用いました。検索の結果、ハバチ科になったのですが、その検索の過程を抜書きしてみます。
上の1から9までの項目が満たされれば、ハバチ科ということになります。それを写真で確かめていきたいと思います。まず、項目1はすでに上の写真で分かりますね。項目2は次の翅の写真を見てください。
翅脈や翅室の名前は「原色昆虫大図鑑III」を参考にして付けましたが、それについては後ほど触れます。まず、翅には翅脈が複雑に入り組んでいますので、項目2はOKです。これで広腰亜目になりました。項目1だけで広腰亜目になりそうなのですが、「翅脈が発達する」を入れないと細腰亜目に属するコバチ上科が除外できないようです。この辺りはまだよく分かりません。
翅脈が出たついでにその話もします。今までハエの翅脈ばかりを扱っていたのですが、それと異なり聞いたことのない名前が続々と出てきました。これが今までのハエの翅脈とどう関係するのかと知りたくて、ちょっと文献を探してみました。でも、意外に見つかりません。やっと次の本を見つけました。
H. Goulet, "The genera and subgenera of the sawflies of Canada and Alaska: Hymenoptera: Symphyta", Insects and Arachnids of Canada Handbook Series 20. (1992). (ここからダウンロードできます)
ここで、sawflyはハバチを意味します。この中の翅脈の図を参考に名前を付けてみました。
これで今まで使っていた翅脈の名前と対応がつくようになりました。これを見ると、Rsの翅脈の道が何となく不自然な感じがするのと、Cu1aとCu1bが逆のような感じがするのと、さらに、aと2Aとの関係がよく分からないですね。これは、Canadaの本がRoss(1937)のハチの仮想的な翅脈の命名法に従っているからだと思います。
H. H. Ross, "A GENERIC CLASSIFICATION OF THE NEARCTIC SAWFLIES (HYMENOPTERA, SYMPHYTA)", Univ. Illinois, (1937). (ここからpdfがダウンロードできます)
この本のp. 147 Fig. 170に仮想的な翅脈、それ以下の図に実際の翅脈とその名称が載っています。Canadaの本のものと比べてみると、Rsは同じですね。Cu1bとCu1aの名前の付け方は逆です。これはCanadaの方が間違ったのかな。上の写真の2Aとaの付け方は私が勝手に書いたものですが、もともと2Aは基部から長く続いていたものが、後半だけが残ったと考えるとよいみたいです。従って、aと書いた部分は1Aと2Aを結ぶ横脈と解釈するのですね。これで何となく納得がいきました。
それでは次の項目3に進みます。
中胸背板には横溝はありません。そこで、次の項目4にいきます。
触角は複眼の間から出ています。従って、これもOKです。項目5については次の写真を見て下さい。
第1鞭節は上の写真の第3節に当たります。むちゃくちゃ長いということはありません。それでこれもOKとします。次の項目6の前脚の距はFig. 5に偶然見えていました。距が2本見えていますね。従って、これもOK。次の項目7は前胸背板に関するものです。Fig. 4を見ると分かりますが、前胸背板は幅が狭くて後縁の中央が大きくえぐられています。これでハバチ上科になりました。後の項目8と9は触角と翅脈に関するものです。Fig. 6を見ると分かりますが、触角の先端は棍棒状ではなく、さらに、素直な糸状です。さらに、前翅の2r脈はFig. 3に示すようにあります。これで無事にハバチ科になりました。
次は亜科の検索ですが、実際にやってみるとマルハバチ亜科になりました。そこで、それに至る過程を抜き書きしてみます。
これらは翅脈と触角に関するもので、Fig. 2と6を見るとだいたい理解できると思います。項目5で、基脈は実際には少し曲がっていますが、第1反上脈とほぼ平行なのでOKとしました。また、項目6については、通常、2A脈が基部側に伸びているので、ここには本来2つの肛室ができるわけですが、この個体では前半部分がないために、1A脈だけが柄のような格好で残っていることを示していると思われます。ということで、これも無事にマルハバチ亜科になりました。これから先は、先ほどの「絵解きで調べる昆虫」にも、「大阪府のハバチ・キバチ類」(西日本ハチ研究会、2006)にも属の検索表が載っていませんでした。それで、ちょっと「おあずけ」です。
ついでに撮った写真も載せておきます。
これは腹部末端を横から写したものです。「大阪府のハバチ・キバチ類」に載っている科の検索表を用いるときには必要だったのですが、今回の検索表では要らなかったので、載せておくだけにしておきます。
ハバチの検索をしてみた感想としては、翅脈の名前の付け方が独特で、それに戸惑って初めはまったく進みませんでした。でも、ハエと同じような名づけ方をしてみたら、ちょっと馴染みができてきて、それからはトントン拍子に進みました。せめて属、できたら種まで調べてみたいなと思いました。
今頃、よくマンションの廊下に止まっています。
これは背側からと腹側から写した写真です。普通よく見るハチは胴体が切れそうに細くなっているのですが、これはそんなことはありません。ハチは胴体が細くなっている細腰亜目と寸胴になっている広腰亜目に分かれますが、これはそのうちの広腰亜目の方になります。
さて、このハチは何科になるのか検索してみました。検索には、日本環境動物昆虫学会編、「絵解きで調べる昆虫」(文教出版、2013)を用いました。この本は題名の通り、絵解きになっているので素人の私が使うには大変便利な本です。この本に載っているハチ目の検索表を用いました。検索の結果、ハバチ科になったのですが、その検索の過程を抜書きしてみます。
上の1から9までの項目が満たされれば、ハバチ科ということになります。それを写真で確かめていきたいと思います。まず、項目1はすでに上の写真で分かりますね。項目2は次の翅の写真を見てください。
翅脈や翅室の名前は「原色昆虫大図鑑III」を参考にして付けましたが、それについては後ほど触れます。まず、翅には翅脈が複雑に入り組んでいますので、項目2はOKです。これで広腰亜目になりました。項目1だけで広腰亜目になりそうなのですが、「翅脈が発達する」を入れないと細腰亜目に属するコバチ上科が除外できないようです。この辺りはまだよく分かりません。
翅脈が出たついでにその話もします。今までハエの翅脈ばかりを扱っていたのですが、それと異なり聞いたことのない名前が続々と出てきました。これが今までのハエの翅脈とどう関係するのかと知りたくて、ちょっと文献を探してみました。でも、意外に見つかりません。やっと次の本を見つけました。
H. Goulet, "The genera and subgenera of the sawflies of Canada and Alaska: Hymenoptera: Symphyta", Insects and Arachnids of Canada Handbook Series 20. (1992). (ここからダウンロードできます)
ここで、sawflyはハバチを意味します。この中の翅脈の図を参考に名前を付けてみました。
これで今まで使っていた翅脈の名前と対応がつくようになりました。これを見ると、Rsの翅脈の道が何となく不自然な感じがするのと、Cu1aとCu1bが逆のような感じがするのと、さらに、aと2Aとの関係がよく分からないですね。これは、Canadaの本がRoss(1937)のハチの仮想的な翅脈の命名法に従っているからだと思います。
H. H. Ross, "A GENERIC CLASSIFICATION OF THE NEARCTIC SAWFLIES (HYMENOPTERA, SYMPHYTA)", Univ. Illinois, (1937). (ここからpdfがダウンロードできます)
この本のp. 147 Fig. 170に仮想的な翅脈、それ以下の図に実際の翅脈とその名称が載っています。Canadaの本のものと比べてみると、Rsは同じですね。Cu1bとCu1aの名前の付け方は逆です。これはCanadaの方が間違ったのかな。上の写真の2Aとaの付け方は私が勝手に書いたものですが、もともと2Aは基部から長く続いていたものが、後半だけが残ったと考えるとよいみたいです。従って、aと書いた部分は1Aと2Aを結ぶ横脈と解釈するのですね。これで何となく納得がいきました。
それでは次の項目3に進みます。
中胸背板には横溝はありません。そこで、次の項目4にいきます。
触角は複眼の間から出ています。従って、これもOKです。項目5については次の写真を見て下さい。
第1鞭節は上の写真の第3節に当たります。むちゃくちゃ長いということはありません。それでこれもOKとします。次の項目6の前脚の距はFig. 5に偶然見えていました。距が2本見えていますね。従って、これもOK。次の項目7は前胸背板に関するものです。Fig. 4を見ると分かりますが、前胸背板は幅が狭くて後縁の中央が大きくえぐられています。これでハバチ上科になりました。後の項目8と9は触角と翅脈に関するものです。Fig. 6を見ると分かりますが、触角の先端は棍棒状ではなく、さらに、素直な糸状です。さらに、前翅の2r脈はFig. 3に示すようにあります。これで無事にハバチ科になりました。
次は亜科の検索ですが、実際にやってみるとマルハバチ亜科になりました。そこで、それに至る過程を抜き書きしてみます。
これらは翅脈と触角に関するもので、Fig. 2と6を見るとだいたい理解できると思います。項目5で、基脈は実際には少し曲がっていますが、第1反上脈とほぼ平行なのでOKとしました。また、項目6については、通常、2A脈が基部側に伸びているので、ここには本来2つの肛室ができるわけですが、この個体では前半部分がないために、1A脈だけが柄のような格好で残っていることを示していると思われます。ということで、これも無事にマルハバチ亜科になりました。これから先は、先ほどの「絵解きで調べる昆虫」にも、「大阪府のハバチ・キバチ類」(西日本ハチ研究会、2006)にも属の検索表が載っていませんでした。それで、ちょっと「おあずけ」です。
ついでに撮った写真も載せておきます。
これは腹部末端を横から写したものです。「大阪府のハバチ・キバチ類」に載っている科の検索表を用いるときには必要だったのですが、今回の検索表では要らなかったので、載せておくだけにしておきます。
ハバチの検索をしてみた感想としては、翅脈の名前の付け方が独特で、それに戸惑って初めはまったく進みませんでした。でも、ハエと同じような名づけ方をしてみたら、ちょっと馴染みができてきて、それからはトントン拍子に進みました。せめて属、できたら種まで調べてみたいなと思いました。
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