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廊下のむし探検 蛾が続々

廊下のむし探検 第492弾

テレビを見ていると今年は梅が遅いとのこと。これに対して、私のマンションでは2月だというのに蛾がどんどんでてきて、もう春まっさかりのようになってきました。どうしたのでしょうね。



今日の最初はこの木切れそっくりの蛾です。でも、いつものキバラモクメキリガに比べると、色が黒っぽくて長細い感じです。これは近縁のヒロバモクメキリガか、ハネナガモクメキリガです。採集して調べてみると♀の方でした。「標準図鑑」で調べると、この2種のどちらかは外見上では難しいとのことです。越冬組で、昨年も1月初めと3月1日に見ていました。







上の2匹はホソバキリガで間違いないですね。一番下は腎状紋、環状紋がはっきりしていていますが、亜外縁線が前縁近くで折れ曲がってるのでやはりホソバキリガでしょうか。



これは亜外縁線がほぼ連続的なので、ブナキリガでしょうね。



スモモキリガも2匹いました。



ちょっと潰れてしまっていますが、これはクロテンキリガでしょうね。

フユシャクもいました。今日はシロフフユエダシャクは10匹くらい。写真は省略しました。




これはクロテンフユシャクですね。私のマンションではどうもクロテンフユシャクが少ないですね。



こちらはギフウスキナミシャクだろうと思います。この日は2匹いました。



そして、カバナミシャクも出ていました。カバナミシャクの仲間は皆よく似ているので名前調べが難しいのですが、これはマエナミカバナミシャクではないかと思います。

それでは蛾以外の「むし」たちです。




最初はこの甲虫です。図鑑を見ると、ツマベニマグソコガネというのに似ていますが、実は、分布が北海道、本州東北部に限られています。もともと本州北部に入った外来種とのことです。床の模様から推測した体長は4.5mmで、一応、サイズは合っているのですが、おそらく違うでしょうね。
追記:通りすがりさんから、「ミゾムネマグソコガネみたいですね。」というコメントをいただきました。写真を見ると「ミゾムネ」という名前がよく分かりますね。どうも有難うございました



天井に止まっていました。後で、捕虫網を持って採集してきました。「絵解きで調べる昆虫」の検索表で調べてみると、カバエ科のようです。また、Manual of Nearctic Diptera Vol. 1に載っている属の検索表で調べると、Sylvicola属になりました。さらに、「一寸のハエにも五分の大和魂・改」を調べてみると、Sylvicola属の種の検索が載っていました。明日でも調べてみたいと思います。(追記:検索をしてみると、一か所疑問点があったのですが、最終的にマダラカバエSylvicola japonicus (Matsumura, 1915)になりました追記:疑問点というのは、「後腿節が一様に黄褐色」というところです。写真を見ても、腿節の末端は黒くなっているので、一様にというところにひっかかっていました。通りすがりさんから、「マダラカバエの後腿節も先端部分は黒くなる様ですね。」というコメントをいただきました。「後腿節は先端部を除き一様に黄褐色」ということであれば、理解しやすくなるのですが・・・)



これはおそらくキノコバエ科の仲間でしょうね。



これは以前から名前がよく分からなかったカスミカメです。クヌギカスミカメのようでもありますが、今日、「日本原色カメムシ図鑑第2巻」を見直したら、近縁のシイノキクロカスミカメの方ではないかと思うようになりました。



いかにもオニグモという姿で止まっています。たぶん、オガタオニグモではないかと思います。



最後はワラジムシでした。以前はダンゴムシばかりだと思っていたのが、気をつけて見てみると、結構、ワラジムシもいそうです。
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20倍対物で顕微鏡写真

今日は天気も悪いし、「廊下のむし探検」でもなかろうと、家でゴロゴロ。でも、午後から気を取り直して顕微鏡写真の練習をしてみました。



上の写真のように対物レンズの周りをトレーシングペーパーで囲い、周りからLEDランプを三方から照らして照明しています。試料をスライドグラスの上に直接置いて、通常は背景光がない状態で撮りますが、コントラストが強すぎるときは、透過照明用のライトを少しだけ入れて背景光として使っています。

今日は、先日手に入れた長作動の20倍の対物レンズを使って練習をしてみました。長作動なので、試料と対物鏡との間が5mmほど開いていて、照明には十分です。試しに先日捕獲したニセケバエを撮ってみました。このハエにはダニがいっぱいついていたのですが、そのダニも撮影対象にしました。



ニセケバエというのはこんなハエです。体長3.5mmほどの小さいハエですが、もっと小さなハエばかり調べていた私にとっては中型のハエになります。対物鏡20倍を使うので、部分しか写りませんが、ともかく写してみました。



これは頭の部分を後ろから写したものです。広い複眼と、大きな単眼が見えます。黒い部分はこのように結構うまく撮影できました。背景が暗いので、あまりコントラストがつかないのがよかったのかもしれません。



こちらは触角です。もしゃもしゃと毛がいっぱい生えていますね。



ニセケバエの体にはこんなダニがいっぱいついていました。ちょっと気持ち悪いですね。でも、もう死んでいるので大丈夫です。



これは別の部分についていたダニです。黒い部分に比べるとちょっとシャープさが足りない感じです。



これはダニ1匹を直接スライドグラスに載せて撮ったものです。もう少しシャープに撮れるとよいのですが、まぁ、最初だから仕方ないかな。

廊下のむし探検 フユシャク♂ほか

廊下のむし探検 第491弾

2、3日前は虫が山盛り出てきたのですが、昨日は少し少なめでした。気温が少し低かったせいかな。それでも今シーズン初めてのフユシャクが見られました。



チャオビフユエダシャクです。例年は3月中旬ごろに見られるのですが、今年はやけに早いですね。ちなみに、初見日は一昨年は3月10日、昨年は3月9日でした。2週間ほど早いことになりますね。ただ、過去の記録を見てみると、2月中旬頃から見られたこともあるので、それほど早いということでもなさそうです。



シロトゲエダシャクは先日♀が見られたのですが、♂は今シーズン初めてです。初見日は昨年が3月12日でした。これも昨年よりだいぶ早いですね。過去のデータでも、こちらは例年3月中旬ころからの発生なので、やはり早いと言えそうです。





ホソバキリガも2匹いました。でも、ちょっと寒そうですね。



マエアカスカシノメイガもいました。暖かくなってくると、蛾が主体になってきますね。



後翅の翅脈からセイヨウミツバチだと思われますが、寒いのか体を震わすだけで動けない状態です。



オドリバエ科Rhamphomyia属ですね。この間からたくさん出ているので、今日はもう撮らないつもりだったのですが、つい撮ってしまいました。



それにクロバエ科♀かな。





ユスリカの連結がいました。こんな格好でじっとして近づいても動きません。





小さいゾウムシでユアサハナゾウムシとしている種類です。この日は2匹いました。



それにツノブトホタルモドキとしている種です。これもこのところずっと見ることができます。



最後はこのクモです。小さなクモは名前調べをしないでおこうと思っていたのですが、頭胸部が丸いので調べてみると、チリグモ科チリグモのようです。「日本のクモ」によると、「屋内の天井、壁や窓枠、障子の桟などの隅、屋外の塀の隅、石灯籠の継ぎ目などに住居を作る」とのことです。網はボロ網だそうです。ボロ網って何だろうと思って解説を読んでみると、「篩板類のクモが張る棚網で、一見すると古い網のように見える」とのことでした。チリグモがボロ網とはちょっとひどい表現になりますね。

廊下のむし探検 虫がいろいろ

廊下のむし探検 第490弾

昨日の「廊下のむし探検」の結果です。この日も蛾やカメムシなどいろいろな「むし」が見られました。



まずはこの蛾です。これはプライヤキリバという越冬組です。「大図鑑」によると、この蛾は秋冬と洞窟で過ごし、春に出て産卵します。その後、幼虫は6月に羽化し、また、夏に洞窟で越夏するという変わった生活をする蛾です。もっとも、私は洞窟にいるところを見たことがないのですが・・・。



これは春キリガのスモモキリガです。春キリガも次々と出てきましたね。



これも春の蛾ですね。ホソバトガリエダシャクです。



そして、シロフフユエダシャクです。この日は4匹いました。



これはスズキクサカゲロウで、やはり越冬組ですね。



相変わらずムラサキナガカメムシはいっぱいいます。



そして、この日はこんなカメムシもいました。ケブカカスミカメです。ときどき見るカメムシです。



このオドリバエ科Rhamphomyia属は今頃たくさんいます。小さなハエだと思うとたいていこのハエです。



これはガガンボダマシですね。



こういう小さなユスリカはたくさんいるのですが、



こちらはかなり大きなユスリカです。把握器もはっきり見えているし、この写真から何とか検索ができないかなと思って、「日本産水生昆虫」を見てみたのですが、ユスリカ亜科ユスリカ族あたりで止まってしまいました。やはり採集をしないと無理なようです。



こちらは小さなハエですが、この間覚えたばかりのタマバエ科でした。写真からでも、翅脈が翅の全周に走っていることが分かりますね。今回は採集してきました。頑張って顕微鏡写真も撮ってみたのですが、体長がわずか2mmほどしかないので、大変でした。もう少し大きいと楽なのですけど・・・。



甲虫はこの日は少なかったです。これはキクイムシの仲間です。「原色日本甲虫図鑑」に触角の図が出ていて、その形からマツノキクイムシかなと思いました。



ナミテントウも久しぶりに見ました。

後はクモばかりです。







クモはいろいろといるのですが、いずれも小さいので名前調べはしていません。

虫を調べる トガリキジラミ

先日、マンションの廊下でセミのような虫を見つけました。といっても、体長はわずか3.5mm程しかない小さな虫ですが・・・。調べてみると、カメムシ目腹吻亜目キジラミ上科トガリキジラミ科の虫だと分かりました。広辞苑によると、キジラミは後脚が発達していてよく跳躍し、植物の汁を吸うので害虫として知られ、虫えいをつくるものが多いそうです。せっかくこんな虫がいるので、一つ調べてみようと思って、採集して顕微鏡で見てみました。



見つけたのはこんな虫です。本当にセミに似ているでしょう。でも、小さいんですよ。



これは表側と裏側を写した写真です。死んでしまうと、後脚を前に伸ばして、こんな格好になってしまいました。跳躍をするからだろうと思いますが、後脚の基節がやけに大きくなっています。これに対して、前脚と中脚は普通のようです。腹部の先端が尖っていて♀だと分かります。

ネットで探して見ると、キジラミなどのカメムシ目のいくつかの亜目については、やけに詳しいデータベースがありました。Hemiptera Databases in MNHN-Parisというページです。この中に、世界的な種のリストや分布などあらゆるデータが載っています。さらに、昔からの論文リストもあって、古い論文はたいていここからダウンロードできます。そのページによると、トガリキジラミ科には69属、1亜属、970種、3亜種が記録されているそうです。一方、九大の日本産昆虫目録データベースでは、トガリキジラミ科はキジラミ科の亜科Triozinaeとなっていて、9属31種が載せられていました。

私自身はこの中のオオキジラミ属 Epitriozaサトオオトガリキジラミ Epitrioza yasumatsuiではないかと思っているのですが、それは最初に見た論文がたまたまオオキジラミ属を扱っている論文だったからかもしれません。

Y. Miyatake, 「日本産オオトガリキジラミ属について(英文)」, 大阪市立自然史博物館研究報告 31, 93 (1978). (ここからダウンロードできます)

この論文の中で、サトオオトガリキジラミ Epitrioza yasumatsuiは日本固有属Epitriozaの一種として初めて記載されました。この属は過去に桑山茂氏が新属として記載したのですが、その後、Crawford氏が翅脈の位置だけを基にした新属の記載は明確ではないというコメントを発表しています。これらの論文は以下の通りです。

桑山茂、「日本産木虱類(其二)」、Trans. Sapporo Nat. Hist. Soc. 3, 53 (1910). (ここからpdfをダウンロードできます)
D. L. Crawford, Phil. J. Sci. 15, 139 (1919). (ここからダウンロードできます)

宮武氏はEpitriozaは一つの独立した属として、その特徴を以下のように挙げています。

頭頂と胸部は無毛
触角は極端に短い(頭部の幅より少し長い)
前翅の翅端は中室に入っていない
後翅の翅脈はtriozineでない
後脚脛節の基部に棘はなく、先端の外側に1つ、内側に2つの棘がある

今日はこれらの特徴にも注目しながら調べていきたいと思います。この中で、triozineという単語はたぶん造語で、triozinaeらしいという意味でtrioz-ineとしたものだと思います。おそらく、初めて使ったのはCrawford氏で、1925年の論文(D. L. Crawford, Phil. J. Sci. 28, 39 (1925))には、"triozine (that is, basal vein branching at one point into three veins, cubitus, media, and radius)"と書かれていました。つまり、Cu, M, Rの3つの脈が一つの点から分岐するということのようです。

初めての虫なので、頭部と胸部の各部に名称を付けてみました。







各部の名称は「原色昆虫大図鑑III」とイギリスの王立昆虫学会が出している"Handbooks for the Identification of British Insects"のシリーズの中のVol. II, Part 5(a) "Homoptera Psylloidea"の中の図を参照しました(ここからダウンロードできます)。

さすがにハエと違って変わった体をしていますね。まだ名前の良く分からない部位が多いのですが、とりあえず分かった部位だけ名前を付けてみました。間違っているかもしれませんので、そのつもりで見て下さいね。単眼が複眼のすぐ脇にありますね。ハエばかり見ていると非常に変わった印象を受けます。それに、頭頂も変わっていますね。とりあえず、頭部も胸部も無毛という
Epitrioza属の特徴を満たしているようですね。





次は翅です。前翅では、Cu、M、Rという3つの系統の脈が矢印で示した部分の一点から分かれています。これがtriozineです。これに対して、後翅では2つの矢印で示すように分かれる位置が異なっています。だから、not triozineということになります。前翅がtriozineなのはトガリキジラミ科の特徴で、「大図鑑」の検索表ではこれでもってトガリキジラミ科としています。

翅の一番先端を翅端といいます。前翅のこの部分がM脈で囲まれた中室に入っていないというのもEpitrioza属の特徴でした。なお、後翅の翅脈の写真を撮るのは大変でした。完全に透明だったからです。仕方なしに、背景に黒い紙を入れて、また、光が斜めから当たってちょっとだけ光るようにしました。いろいろ配置を変えているうちに、翅は破れてしまうし・・・。なお、翅脈の名称は「大図鑑」に従っています。また、後翅については前翅にならってつけてみましたが、合っているかどうか。



次は触角です。触角が短いというのがEpitrioza属の特徴で、複眼を含めた頭部の幅より少し長いというのはその通りでした。数えてみると、全部で10節のようでした。先端に剛毛が2本生えています。そこだけ拡大してみました。



20xの対物鏡を用いて拡大はできたのですが、ちょっとゴミが気になりますね。深度合成をするときに焦点が合っている場所以外はボケていまうのですが、その部分がゴミのように周りに残ってしまいます。これは仕方ないでしょうね。いずれにしても、長い剛毛と短い剛毛があります。



次は複眼の周辺です。単眼がだいだい色なのが気になりますね。その部分も拡大してみます。



こんな感じになりました。2つの目でじっとこちらを見ているようでちょっと気味が悪いですね。





次は脚です。跗節は2つの小節からできていて、ピンク色をしています。後脚脛節の末端に黒い棘のようなものが見られます。どちらが外側か内側か分からないのですが、全部で3つあります。これもEpitrioza属の特徴でしたね。この棘で地面をしっかり押さえてジャンプするのでしょうね。

最後は腹端です。



これは腹側からです。



そして、これは横からです。各部の名称は英国王立昆虫学会の本を手がかりに見よう見まねでつけてみました。まだ、日本語に訳していません。こんな形が♀のようです。

ということで、宮武氏の書いたオオトガリキジラミ属Epitriozaの条件はすべて満たしているので、この属かなと思うのですが、属の検索表がないので今のところ何とも言えません。でも、久しぶりにハエ以外の虫を見たので、ちょっと楽しかったです。

廊下のむし探検 フユシャク♀、ハエ、カメムシなど

廊下のむし探検 第489弾

昨日の「廊下のむし探検」で見つけた「むし」のうち、甲虫以外の「むし」です。この日はフユシャクの♀も見られました。



節の隙間が黄緑色になっています。こんな色のフユシャク♀は見たことがないなと思っていたら、



もう1匹いました。色はだいぶ白っぽいのですが、やはり節の隙間は黄緑色になっています。



これはちょっと横から写したものです。体長は14mm。ちょっと大き目の♀です。小さい翅が出ているのでエダシャク亜科でしょうね。時期からいって、シロトゲエダシャクかなと思うのですが、どうでしょうね。

春キリガもいました。









今日は4匹いたのですが、亜外縁線が前縁近くで段をなし、後縁近くで内側に小さく曲がるというのがホソバキリガなので、上から3つはホソバキリガ、一番下がクロテンキリガかなと思うのですが・・・。



今頃いっぱいいるハエはこの写真の種です。嘴のような口器が見えていますね。以前捕まえて調べた時には、オドリバエ科Rhamphomyia属になりました。この日は、小さなハエがいるなと思ってカメラを向けると、いつもこのハエでした。



その他にはこんなハエもいました。ミバエの仲間で、たぶん、クロホソスジハマダラミバエだと思われます。



あぁ、いつものノミバエもいました。カメラで追いかけていると、ちょこちょこと素早く歩いた後、ぴょんと近くの場所に飛び移ります。その姿がノミに見えたのでしょうね。トゲナシアシノミバエ亜科のMegaselia属と思われる種です。





こちらはもう少し大型のノミバエです。この日は採集してきました。後脚脛節基部から2/3までに剛毛がないし、また、小さな刺毛列も見られないので、田中氏の「屋内害虫の同定法 : (3) 双翅目の主な屋内害虫」の検索表で検索した結果、トゲナシアシノミバエ亜科のWoodiphora属になりました。この属は初めて見ました。



ちょっとピントがずれてしまったのですが、これも採集してきました。一応、検索をしてみると、ニセケバエ科になりました。実体顕微鏡で拡大してみて、びっくり。ダニがいっぱいついていました。



カメムシもいろいろと出てきました。この日多かったのはこのムラサキナガカメムシです。昨年、3月7日の記事にいっぱい出てきたと書いてありました。それから見ると、やはり10日前後早く出てきているみたいです。



もちろん、クサギカメムシもいました。







クモはどれも小さくて、名前調べはなかなか進みません。

例年だと、ハエの写真を撮るのは冬だけで、春になるとハエは無視していたのですが、今年はハエも少し分かってきたので、写真も撮りたいし・・・。でも、このままやっていたら、本当にパンクしそうです。

廊下のむし探検 甲虫がいっぱい

廊下のむし探検 第488弾

昨日、関東では5月の陽気だとか。ここ関西はそれほどではなかったのですが、それでも暖かい日になりました。その影響か、私の住むマンションは一気に春満開になってしまいました。あまりにたくさんいたので、まず甲虫から報告します。といっても、甲虫はほとんど分からないので、名前が付けられないのですけど・・・。



まず初めはこのハネカクシです。でも、このハネカクシ、上翅が腹部の半分ほどあります。こんなに翅の長い種類があったのかなと思って図鑑を見てみると、ヨツメハネカクシという仲間がそうみたいです。名前までは分かりませんが・・・。



次はこれです。昨年も見ていて、その時はオオキノコムシ科のアカハバビロオオキノコにしていました。



小さな甲虫です。触角が面白いですね。種までは分からないのですが、おそらく、タマキノコムシ科ではないかと思います。





ケシキスイ科の仲間でしょうね。図鑑を見ると似た種が多くて、どれかどれだか分かりません。この2匹、色もちょっと違うのですが、同じ種かどうかも分かりません。



やっと名前の分かる種が出てきました。ナナホシテントウですね。



これはこの間から出ているツノブトホタルモドキでしょうね。



体長が2.9mmの小さなハムシです。おそらく、○○ノミハムシというのではないかと思います。



外来種のアルファルファタコゾウムシです。侵略的外来種になっています。



このゾウムシはユアサハナゾウムシかなと思いますが、自信はありません。



これはキクイムシの仲間でしょうね。小さな虫なのですが、カメラを向けるとちょこちょこ動いて隠れてしまいました。



最後はこの甲虫です。もうだいぶ前に死んでしまっているようですが、眼が大きいので、写してみました。図鑑で調べてみると、メダカチビカワゴミムシという種に似ています。ゴミムシの仲間なのですね。

久しぶりに甲虫の嵐に襲われました。この冬は主にハエを調べていて、やっと科の検索ができるようになったところだったのですが、甲虫は今のところまったくお手上げです。少し検索を勉強して、科ぐらいは分かるようになりたいものですね。

虫を調べる ショウジョウバエ科?

2月17日のブログに出したハエを詳しく調べてみました。また、ハエかと思われるでしょうね。でも、地道に調べていくとそのうちハエも分かるようになるのではと思って、勉強のために出しておきます。実はこのハエ、科を調べるのに大変苦労しました。その結果がよく知られたショウジョウバエだったとは・・・。



対象とするのはこんなハエです。体長は2.4mmで、小さいといえば小さいのですが、最近は小さいハエを調べることが多いので、私の中では中くらいのハエです。





外観を実体顕微鏡で写した写真を載せておきます。拡大すると、意外にごつい感じのするハエです。



初めに、「絵解きで調べる昆虫」(文教出版、2013)の検索表を使って調べてみましょう。実は、初めに試みた時はこの検索表で行き詰まってしまい、「原色昆虫大図鑑III」の検索表を使って調べたのが、混乱するもとになりました。この話は後で書きます。まずはこの検索表の項目に従って調べていきます。上の図は無弁翅類から始まりショウジョウバエに至る経路だけを抜き出して書いたものです。絵解きを文で表していますので、違っている部分もあるかもしれません。いずれにしても素人がやっていますので、そのつもりで見て下さいね。

まず、無弁翅類というところですが、いつものように翅の付け根を見てみます。



ちょっと端覆弁が隠れて見えなかったのですが、基覆弁に当たる部分が線状になっていて膜構造が見えません。従って、無弁翅類ということになります。次からの5項目は翅脈に関するものなので、翅の写真を載せます。





下は翅の基部の部分を拡大したものです。まず、「R4+5脈とM1+2脈は翅縁で離れていかない」というのはFig. 4ではこの2つの脈はほぼ平行なので、合っていることはすぐに分かります。sc切目や肩切目があることもFig. 4かFig. 5を見ることで分かりますね。さらにSc脈は途中で途切れているので不完全で、もちろん先端付近で直角に屈曲することもありません。後半の部分はミバエ科を除外する項目です。

次からは頭部に関するものなので、その部分の写真を載せます。





上は触角の刺毛をちょっと趣味的に拡大して撮ったものです。刺毛はよく発達していますね。次の項目の鬚剛毛はFig. 7に示した剛毛を指していると思います。なお、大図鑑の図では「剛毛」ではなく、すべて「刺毛」になっていますので、図はそれに習っています。さらに、後単眼剛毛は交差しています。下額眼縁剛毛はFig. 7の額眼縁剛毛列の下にあるもので、「大図鑑」では額刺毛と書かれているものに該当すると思います。初め、Fig. 7の矢印の剛毛を額刺毛にするのかどうか迷ったのですが、次のショウジョウバエ科の項目の説明がおそらくこの剛毛のことを指すのだろうと思って、額眼縁剛毛に入れました。ちょっと自信のないところです。この剛毛を額眼縁剛毛に含めると、ここに書いてある項目の内容はすべて理解できて、このハエはショウジョウバエ科だということになります。

これで、特に問題なくショウジョウバエ科になるのですが、実はFig. 7でfacial carinaと書いた部分を鼻状だと思って苦労した話を後に載せます。facialは「顔の」という意味で、carinaは「竜骨」を意味します。



「大図鑑」の検索表で同じ部分の一部を載せたものがこの図です。無弁翅類から順当に検索は進めることができ、最後にキモグリバエ科を除外して、次の項目にいくと鼻状の突起があるという項目になります。私はすぐにfacial carinaがこれだと思って、ケシショウジョウバエ科だと思いました。でも、赤字で示したところがちょっと合いません。そこで、Manual of Nearctic Diptera Vol. 2を調べてみたのですが、どうも一致しないところが多いようです。さらに、論文を探していると、ケシショウジョウバエ科の顔写真が載っている論文(W. N. Mathis and A. Freidberg, African Invertebrates 53, 231 (2012). (ここからpdfがダウンロードできます))を見つけ、その中の図を見ると、この部分(顔面)が下に伸びて何となく鼻のようになっています。どうやら、「鼻」違いではないかと思って、先に進むことにしました。この過程で2、3日費やしました。



やはり赤字の部分は合わない部分です。左側の道は合致しないと思われます。右の道も合わないところはあるのですが、「通常」と書いてあるので許されると思ってたどっていきます。でも、赤字と赤枠で囲った部分で決定的に拒絶されます。「中脛節の背面に亜末端剛毛があるかどうか」という項目です。ここで完全に行き止まりになりました。中脛節の写真を載せます。



これは中脛節の背面を写したものですが、どこにも剛毛の姿が見えません。末端には腹側の剛毛が見えていますが・・・。亜末端剛毛は末端より少し内側にある剛毛を指しています。しかし、この項目の障壁を何とかすりぬけてしまうと、無事ジョウジョウバエ科に達します。ショウジョウバエ科の仲間で中脛節の背側に亜末端剛毛のない種があるのかどうか分かりませんが、ややもやもやが残る結果になってしまいました。

実はショウジョウバエ科はfacial carinaがあるというのが一つの特徴のようで、その意味では、知っている人がこの顔を見ればすぐにショウジョウバエ科を思い浮かべたかもしれません。私はそれが分からないので、ケシショウジョウバエ科の辺りでだいぶさまよってしまいました。今度、もう少し典型的なショウジョウバエが出てきたら、その時、比較して調べてみたいと思います。ついでに撮影した写真を何枚か載せておきます。








廊下のむし探検 フユシャク♀、キジラミほか

廊下のむし探検 第487弾

昨日は午後から暖かくなりました。それで、午後4時頃、マンションの廊下を歩いてみました。期待通り、「むし」がたくさん見られました。





今日の最初はフユシャクの♀です。小さな翅が見えているので、エダシャク亜科のフユシャクですね。図鑑の写真は皆小さくてあまりはっきりは分かりませんが、おそらく、今たくさん出ているシロフフユエダシャクの♀だと思います。今日は一階の廊下の手すりに2匹いました。シロフフユエダシャクの♀は昨年の2月18日に見ていたので、これで二回目になります。

でも、この日、名前調べで一番大変だったのは次の虫です。



一見、セミのように見えますが、体長はわずか3.5mmの小さな虫です。初めはチャタテムシかなと思っていたのですが、写真を拡大してみると、ちょっと違いました。おそらくカメムシ目ですね。そう思って、「原色昆虫大図鑑III」の図版をぱらぱら見ていたら、キジラミの仲間が似ています。広辞苑によると、キジラミは後脚が発達していてよく跳躍し、植物の汁を吸うので害虫としてしられ、虫癭(ちゅうえい)をつくるものが多いそうです。そこで、キジラミで検索していたら、次のような論文を見つけました。

Y. Miyatake, 「日本産オオトガリキジラミ属について(英文)」, 大阪市立自然史博物館研究報告 31, 93 (1978). (ここからダウンロードできます)

この中のオオトガリキジラミの仲間と翅脈が似ていました。翅脈の写真を載せます。



この論文はキジラミ上科トガリキジラミ科の中のオオトガリキジラミ(
Epitrioza)属に関するものですが、その中の検索表で試しに検索してみると、翅脈からサトオオトガリキジラミ Epitrioza yasumatsuiという種に該当しそうです。サトオオトガリキジラミはこの論文で新種記載されたものです。
 
問題は上の写真の個体がこのEpitrioza属に属するかどうかです。そこで、「大図鑑」の検索表を見てみると、キジラミ上科の検索では、R脈、M脈、Cu脈がほとんど一点で分岐することでトガリキジラミ科であるとしています。この写真を見ると、ほぼ一点(矢印の部分)で分岐しているので、トガリキジラミ科であることは間違いなさそうです。さらに、論文を色々探してみました。だいぶ古い論文になるのですが、日本産のキジラミについて書いてある論文を見つけました。

桑山茂、「日本産木虱類(其一)」、
Transactions of the Sapporo Natural History Society 2, 149 (1908). (ここからpdfをダウンロードできます)
桑山茂、「日本産木虱類(其二)」、Transactions of the Sapporo Natural History Society 3, 53 (1910). (ここからpdfをダウンロードできます)

この中に
Epitrioza属が出ていました。原文はドイツ語ですが、検索表は日本語でも書かれていました。これによると、

前翅の径脈分岐せず
前翅の肘脈は無柄なり

この2つの条件で、Triozinae亜科になります(これは現在のトガリキジラミ科に相当すると思われます)。上の写真の翅脈の名称の付け方とはちょっと違うのですが、おそらく、径脈と書いているのはRs脈が該当し、肘脈というのはM1+2からCu2までの4本の脈を称しているようです。Rs脈は確かに分岐していません。さらに、下の4本の脈に柄がないということは、上の矢印で示したように一点で分岐することを意味していると思われます。

さらに、Triozinae亜科の属への検索を見ると、

触角は細く糸状を呈す
頭頂及び背は平滑なり
肘脈の第四枝脈は翅端若しくは後縁に終わる

この3つの条件で、Epitrioza属に至ります。上の写真を見ると、上の2つの条件は満足しそうです。次の「

肘脈の第四枝脈」が何を意味するかが分かりません。論文に書かれている翅脈の図をつらつら眺めてみると、どうやらM1+2脈のことを言っているようです。翅端は翅の一番尖っている部分を指すと思うので、M1+2脈が翅縁に達した位置が翅端の上(前縁)か下(後縁)かということで、下だったらEpitrioza属だということになります。ということで、一応、Epitrioza属にはなりそうなのですが、古い論文なので、この後、もっと多くの属や種が見つかっていると思われ、この同定がどの程度確かなのか分かりません。(追記:D. L. Crawfordは1919年にキジラミに関する論文(Phil. J. Sci. 15, 139 (1919) (ここからダウンロードできます))を出しているのですが、その中で、桑山氏が記載したEpitrioza属については明確ではないと書いています。その根拠は、最終的に翅脈の位置で属を決めているが、それは個体によって変化するからです。Crawford氏は自身の記載したMegatrioza属に近縁かもと書いていますが、実際に調べていないので何とも言えないとも書いています。宮武氏はこのコメントに対しては反論せずに、Epitrioza属は独立した属であるとして、翅脈以外にも頭頂、胸部、触角、後跗節に見られるいくつかの性質を挙げています。これらを調べてみないといけませんね

それでは、その他に見た虫に移ります。



この間からいるツノブトホタルモドキがまたいました。この日は2匹いました。





それから相変わらず名前の分からないハネカクシの仲間です。これも名前が分かると良いのですが・・・。

次からはハエです。最近は、最低でも科まで書かないと気がすまなくなっているので、ハエの仲間はちょっと大変です。



これは雰囲気的にシマバエかなと思ったのですが、一応、採集してきました。検索の結果、やはりシマバエ科でした。





次はこのハエです。体長はわずか1.5mmしかありません。一応、採集してきました。





実体顕微鏡で撮った写真です。これをもとに、簡単に検索してみたのですが、ミギワバエ科になりました。全く自信はないのですが・・・。あまりに小さいので、実体顕微鏡でも細部が見えにくかったです。もう少し調べてみます。



これはキノコバエ科だと思います。今年の1月初めにも見ていました。



これはフンコバエ科かなと思います。





これはこの間から見ているノミバエ科です。たぶん、Megaselia属でしょうね。





共にユスリカ科でしょうね。



それにこの間初めて認識したタマバエ科です。翅が干渉で綺麗な色になっていますね。写真で撮ると大きく見えるのですが、実は大変小さいハエです。



最後は小さいクモです。おそらく、アサヒエビグモの幼体だと思うのですが、よく分かりません。

昨日は虫が多くて、名前調べが大変でした。こんな調子で春になってもっと増えてきたら、一体どうなるのでしょうね。

廊下のむし探検 春キリガ登場

廊下のむし探検 第486弾

2月も後半になって、矢継ぎ早に早春の蛾が登場してきました。



今日はこの春キリガです。ホソバキリガですね。例年、比較的早くから見ることができるのですが、それにしても今年は早い。昨年は2月26日が初見日だったので、今年は約1週間早く登場です。先日のオカトゲが10日早く出現したことといい、今年はやはり春が早めにやってきているようです。



先日見たハイイロフユハマキがまたいました。

今日は寒かったせいか、ハエはまったくいませんでした。ハエからちょっと離れられるかなと思ったのですが、結局、この間捕まえたハエの科の検索で時間を費やしてしまいました。けれど、結局、よく分かりません。専門家が見るとすぐに分かるのでしょうけど、素人にはハエはなかなか手強いですね。今度、途中経過を出してみます。

虫を調べる キモグリバエ科

最近、ハエの科の検索が少しできるようになって喜んでいたのですが、先日、タマバエ科が分からなくてがっかりしてしまいました。やはり、もう少し地道に科を一つ一つ調べていかないといけないなと思って、今日は家の周りにたくさんいるキモグリバエ科について調べてみました。



家の周りにいるキモグリバエというのはこんなハエです。体長は2.5mmほどの小さなハエですが、これが窓ガラスにビッシリつくとなかなか壮観です。というか、大変です。残念ながら名前は分かりませんが、ハエの勉強のために科の検索をしてみたいと思います。身近なハエなのですが、それなりに難しかったです。



これは「原色昆虫大図鑑III」のハエ目の検索表のうち、キモグリバエ科に至る道筋を書いたものです。出発点は無弁翅類からです。途中の項目で黒枠で囲ったところは一つの科を排除するためだけに用意された項目です。それに対して、赤枠で囲ったところは一般的な性質で、科の性質を知るには重要な項目だと思われるところです。

そこで、まず、無弁翅類だというところから調べていきます。





Fig. 1は実体顕微鏡で撮影した、腹部を除く全体です。また、Fig. 2は翅の付け根を生物顕微鏡(x10)で撮影したものです。翅の根もとには端覆弁という毛の生えた膜状の構造がありますが、その先についているはずの基覆弁は黒矢印で示すように膜状になっていません。無弁翅類というのは基覆弁のないものを指すので、これは無弁翅類ということになります。

黒枠の項目を飛ばして、次は翅脈を見てみましょう。



翅脈の名称は「大図鑑」風につけているつもりです。間違っているかもしれませんが・・・。R1と書いたところの左側の小さな切れ目がsc切目です。そこに向かって走るSc脈がありそうですが、もう少しこの部分を拡大してみます。(追記:R1をR1+Scと書いている論文がありました。その方がよいような気もします。ただし、Manual of Nearctic Diptera Vol. 2によると、R1のままでした)(追記:「Sc切れ目」と書いていたのですが、「大図鑑」には「sc切目」となっていました。今後、そう書くことにします



この写真を見るとSc脈はsc切目付近では見あたりません。Sc脈は根もと部分にはありそうな感じですが、h横脈を過ぎた辺りからR1脈と一緒になっているようです。上の項目の中では、「先がR1脈に融合するか、R1脈との間が一様に骨化するために両脈の境界が判然としない」というのに該当するのではないかと思います。

次の項目は額眼縁剛毛に関するもので、額眼縁剛毛とは複眼の縁にある剛毛を指しています。



これは額の部分を拡大したものですが、複眼の内側に長い剛毛は生えていません。従って、この項目もOKです。それで、いよいよキモグリバエ科になります。少し項目の順番を変えて説明していきます。まず、「CuA脈、cua室を欠き、第2基室と中室は合一する」というのはFig. 4を見ると分かりますが、CuA脈らしいのがどれだか分かりません。従って、cua室もないことになります。第1基室の下にある場所が、第2基室と中室が合体したとされているものです。

次の項目「翅の第2基室+中室の後縁脈は中央付近に微小微弱な彎曲を持つ」はキモグリバエ科を特徴付ける重要な項目です。同じくFig. 4を見ると、黒矢印で示した部分の脈が少し膨らみ、ここから先、脈は少し彎曲しています。このことを指しているのだと思います。ここはおそらく翅が折れる部分に相当するのではないかと思います。また、前縁脈には顕著なsc切目がありますが、その他に切れ目はありません。

次の項目の「単眼瘤は通常大きく拡大した光沢のある三角形の板状になる」は、Fig. 1か5辺りで分かりますが、それほど大きいという印象は受けませんでした。(追記:Fig. 5を見ると、額にある黒い矢印のような形の先端を頂点とする大きな三角形が見えます。これが、「大きく拡大した光沢のある三角形の板状」の単眼瘤かもしれません

最後の項目の「前胸側板の前縁は上下に走る鋭い隆起線を表す」は次の写真を見てください。



隆起線というのはこの写真の黒矢印の部分を指しているのだと思います。以上、一応、検索表に出てきたキモグリバエ科の性質を調べることができました。このハエはやはりキモグリバエ科で合っているようです。

ついでに撮影した写真も載せておきます。



これは顔の部分です。額隆起線や半月瘤などが見えていますが、顔面自体は平らです。Fig. 5で半月状に見えた隆起がこの半月瘤なのでしょうね。



最後は胸部側面の写真です。他のハエに見られるような刺毛がまったく生えていませんね。

これでとりあえずキモグリバエ科の検索は終わりました。ただ、これから先の亜科、属などの検索は文献が手元にないので今のところできません。残念ですが、次の機会にします。

実は、キモグリバエ科を選んだのは、先日採集したハエがケシショウジョウバエかなと思ったからです。キモグリバエ科とケシショウジョウバエ科の検索は全く同じ道をたどり、最後の最後で違うだけなので、ちょっとした練習のつもりでやってみました。それでも、翅脈が「微小微弱に彎曲する」というのがどういうことなのか分かったことは収穫でした。(追記:先日採集したハエは、紆余曲折した挙句、結局、ショウジョウバエ科になりました。ちょっと腑に落ちないところがあるにはあるのですが・・・

廊下のむし探検 早春の蛾登場

廊下のむし探検 第485弾

今日は一日中寒々とした日だったのですが、一応、午後から歩いてみました。でも、歩いてみて良かったです。早春の蛾に出会えました。どんなに寒くても、春はもうすぐそこまで来ているのですね。



オカモトトゲエダシャクです。私はいつも「オカトゲ」と呼んでいます。止まり方が面白いですね。前翅を真横に、後翅を真後ろに伸ばし、しかも、翅を折りたたんで止まっています。



横からもちょっと写してみました。さすがにじっとして動きません。それにしても今年は早いですね。一昨年は2月28日、昨年は2月26日が初見日でした。今年はこれらよりも10日ほど早いです。



次はハイイロフユハマキです。これも早春の蛾です。昨年は2月26日が初見日だったので、やはり10日ほど早いですね。今年は春が早くやってくるのでしょうか。ちょっと楽しみですね。



フユシャクも頑張っていますね。シロフフユエダシャクです。今日は近づいただけで飛び立ってしまいました。それを追いかけ追いかけ撮りました。





甲虫ももそもそ出てきましたね。体長4.3mmの小さな甲虫です。昨年も2月3日に見ていました。その時はケシキスイ科のヘリアカヒラタケシキスイにしていましたが・・・。



このハエ、一応、採集してきました。





翅脈は単純ですが、複眼が頭を覆うように左右と真上についています。その間はつながっているのかどうか分かりませんが、三つ目ですね。これは何とかなるかなと思ったのですが、検索がさっぱりうまくいきません。「絵解きで調べる昆虫」でも、「大図鑑」でもやってみたのですが、共に、ニセケバエ科になり、翅脈やほかの特徴もまったく合いません。ちょっと恥ずかしいのですが、Manual of Nearctic Diptera Vol. 1をぱらぱらめくって翅脈で探すことにしました。それでやっと見つかりました。タマバエ科です。どうして検索で引っかからなかったのかを調べてみました。どうやら、前縁脈が翅を一周するというところで間違っていたようです。上の写真で見て、前縁脈はM1+2脈の少し手前で終わっていると判断したのですが、弱い脈が残りの部分を回っていると判断するようですね。まだまだ、修行が足りませぬ。翅脈の名称はManual of Nearctic Dipteraの図に従ってつけています。(追記:通りすがりさんから、「このタマバエは触角と腹部からメスの様です。」というコメントをいただきました





ノミバエがまたいました。最近は、ノミバエ科が少し分かってきたので、いるとすぐに撮ってしまいます。この2種は以前調べた種と同じみたいです。その時の判断では、上も下もトゲナシアシノミバエ亜科メガセリア属で、上はメガセリア亜属、下はアフィオカエタ亜属だということでした。



最後は、最近良く見るオドリバエ科Rhamphomyia属でしょうね。

少しずつ春が近づいていますね。

廊下のむし探検 甲虫とハエと

廊下のむし探検 第484弾

昨日の「廊下のむし探検」の結果です。昨日は午後から暖かかったので、少し虫が出てきていました。





久しぶりに甲虫を見た感じです。この日は2匹いました。最近はハエやハチばかりやっていて、甲虫をすっかり忘れてしまっていました。仕方がないので、思い出す意味もあって、「原色日本甲虫図鑑」を初めから見ていきましたが、意外に見つかりません。そこで、ブログに出した写真を集めた画像リストをぱらぱら見ていたら、似ている種が見つかりました。キスイモドキ科のツノブトホタルモドキです。以前書いたブログを読むと、いろいろ調べてこれになったようです。





よく考えると、ハネカクシも甲虫ですね。両方共小さなハネカクシですが、よく見ると種類が違うようです。名前は共に分かりませんが・・・。

後はハエです。



この日はノミバエがいろいろといました。これは以前に見た種と似ていますが、額の色が黒っぽいところがちょっと違います。以前は橙色でした。でも、後脚脛節に剛毛がないので、おそらくトゲナシアシノミバエ亜科Megaselia属でしょうね。(追記:ケナシアシノミバエ亜科→トゲナシアシノミバエ亜科に訂正しました。覚え違いをしていたみたいです



こちらは体長1mmちょっとの小さいノミバエです。ノミバエを写すときは後脚を写さないといけないので、後ろ姿ももう一枚。



やはり後脚脛節には長い剛毛がありません。ただ、中脚にはありそうです。田中氏の検索表(田中和夫、「屋内害虫の同定法(3)双翅目の主な屋内害虫」、屋内害虫 24, 67 (2003) (ここからダウンロードできます))によると、最初の項目が、「脛節のすべて又はいずれかは基部2/3に独立した(列をなさない)長い剛刺毛を具える」とあります。従って、これはトゲナシアシノミバエ亜科ではなくて、ノミバエ亜科の方かもしれません。

廊下を歩いていたら、壁をかなりのスピードで登る細長い虫がいました。カメラの「影とり」で床に落とすと、こんな虫でした。



よく見ると、2匹いるのですね。こんな感じで連結するのですね。これがかなり速い速度で歩きます。二人三脚ではなく、二匹十二脚ですね。翅脈や頭の形からやはりノミバエの仲間のようです。これも脚の脛節に長い剛毛が見えるので、ノミバエ亜科のようです。検索表を用いるともう少し先まで進めるのですが、残念ながら属までは達しませんでした。



こんなハエもいました。以前見たオドリバエに似ているなと思って、フラッシュをたいたら、びっくりしたのかこんな格好になりました。



お陰で翅脈がよく見えるようになりました。この間の個体と同じで、オドリバエ科のホソオドリバエ属(Rhamphomyia)かなと思います。



これはこの間から見ているトゲハネバエ科でしょうね。



これは採集してきました。検索してみたら、フンコバエ科になりました。この写真でもよく見ると後脚跗節第1節が太くなっているのが見えますね。Manual of Nearctic Diptera Vol. 2の検索表を用いると、属の検索ができるのですが、とりあえずはLimosininaeという亜科まで分かった状態です。



これはクロバエ科かなと思います。



ユスリカでしょうね。



これはキノコバエかなぁ。(追記:通りすがりさんから、「キノコバエっぽいのはタマバエ科ですかね。」というコメントをいただきました。翌日、タマバエ科らしい個体を捕まえたので比較してみると、確かにかすかに見える翅脈がタマバエと似ています。特に、前縁脈が翅をぐるりと取り囲んでいる感じはそっくりです。さらに、脛節に距刺が見えません。Manual of Nearctic Dipteraで調べてみると、触角もタマバエっぽいようです。まだ、肝心なところを見ていないですね



問題はこの種です。2-3mmの小さな種です。初めシマバエかなと思ったのですが、Sc切れ目があります。「絵解きで調べる昆虫」の検索表ではうまくいかないので、「大図鑑」の検索表を使ってみました。紆余曲折しながら、ケシショウジョウバエ科に辿り着いたのですが、まだ、確かではありません。でも、顔に鼻のような突起があり、可能性もあります。もう少し調べる必要があります。(追記:紆余曲折した挙句、結局、ショウジョウバエ科になりました。ちょっと腑に落ちないところもあるのですが・・・





フユシャクはこの2匹。下の写真の個体はだいぶ黒いのですが、多分同じ種でシロフフユエダシャクだと思います。



これは小さい小さいクモですが、腹部の模様が似ているので、ズグロオニグモの幼体かなと思っています。よく分かりませんが・・・。

2月といえど、探すといろいろな虫がいますね。最近はハエが少しだけ分かってきたので、以前ならハエと書いておけばよかったのですが、最近は○○科まで書かないと気がすまなくなり、ちょっと大変です。

ハチを調べる 中胸背板の溝

2、3日前にコバチの体の構造を調べてみました。そのとき、parapsidal groovesというのが何なのかよく分からなかったのですが、その後、調べてみて少し分かったので載せておきます。

まず、写真を載せます。



今日は綺麗なイワタセイボウというセイボウの仲間の標本を使ってみました。この黄色の枠の部分を更に拡大してみます。



セイボウは本当に綺麗ですね。きらきらと青や緑に光っています。左側が頭、右側が腹の方向になります。胸の部分は前胸背板、中胸背板、後胸背板と分けられます。このうち、中胸背板の前半部分を中胸盾板と呼びますが、そこに見られる構造を見ていきます。まず、中胸盾板はnotaulus(中胸背縦斜溝)と呼ばれる溝で中葉と側葉に分かれます。さらに、その側葉をよく見ると黒い筋が見えますが、これがおそらくparapsidal groove(parapsidal furrowとかparapsidal lineとか書かれていることもあります)だと思われます。

ネットで調べていると、スミソニアン博物館国立自然史博物館が出しているSphecosという小冊子があったのですが、これに載っていました。

A. Menke, "Notauli and Parapsidal Lines: just what are they?", Sphecos No. 24, 9 (1993). (ここからダウンロードできます)

これによると、notaulusとparapsidal lineはこれまで論文にもよく混同されて用いられてきましたが、Gibson(1985)の論文によって明確に区別されたようです。それによると、parapsidal lineは、蛹の時に背腹筋と呼ばれる背側と腹側を結ぶ間接飛翔筋の背側の取り付け部分になっているそうです。一方、notaulusは体に沿った間接飛翔筋の縦走筋と先ほどの背腹筋を分ける甲の境目(分隔甲)を表しているようです。体の表面に見える溝は、体の内部にある筋肉と関係していたのですね。

追記:notaulusとparapsidal lineを生物顕微鏡で拡大してみました。用いた対物鏡は10倍です。





notaulusは左側にある太い溝、parapsidal lineは右側に見える細い溝です。notaulusには周期的な「橋」のような構造が見えます。parapsidal lineはあまり溝のようには見えませんが、その周辺の泡模様は小さなものが集まっています

ハチを調べる コバチ

このところずっとハエばかり調べてきました。そろそろハエも飽きてきて、今年は一つハチを調べてみようかと思っていたところ、先日、小さなコバチの仲間を採集してきました。で、いざ、検索してみようと思ったら、専門用語が分からず行き詰まってしまいました。そこで、このコバチを題材にして、ハチの勉強をしてみました。



この間見たコバチというのはこんなハチです。体長は3.5mmほど。小さなハチですが、腹部が光って意外に綺麗です。とりあえず検索をしてみたところ、マルハラコバチ科かなというところまできたのですが、今回はとりあえず、検索の前に各部の名称を調べてみることにしました。



横から見るとこんな感じのハチです。胸の部分が盛り上がっている様子が分かります。これからお見せする写真は大部分、先日紹介したトレーシングペーパーとLEDランプを使って、実体顕微鏡で撮影したものです。



これは上から見た写真です。各部の名称を入れておきました。頭のすぐ後ろに見えるのが前胸背板です。その後ろの広い部分が中胸背板、それから小盾板につづきます。さらに、後ろの狭い部分が後胸背板で、その後ろは胸と腹が融合した前伸腹節です。この前伸腹節があるのがハチの特徴です。腹節を数えるときはこの前伸腹節を勘定に入れるか入れないかで違ってきますが、上の写真では見かけ上の腹部の部分だけで番号をつけています。三角板、notaulusというのがあるのも初めて知りました。なお、各部の名称は、「原色昆虫大図鑑III」と"
The Insects and Arachnids of Canada Part 12 The Families and Subfamilies of Canadian Chalcidoid Wasps"(ここからダウンロードできます)を参考にしましたが、間違っているところがあるかもしれません。



これは前伸腹節から腹部にかけての部分の拡大です。ハエは各部にやや生物味があったのですが、ハチはまさにロボットみたいな機械的な構造をしています。



これは胸の部分を横から見たものです。脚の根元の部分が基節ですが、それぞれやや膨らんだ構造をしています。初め、prepectusと肩板がよく分からず苦しんでいましたが、おそらくこの写真で示したものであっているのではと思っています。



これは頭部を前から見たものです。ハエに比べるとだいぶ単純な構造をしています。Malar spaceは複眼と口の間の頬の部分を示しています。このハチは顔面に細かい模様があり、結構、綺麗ですね。



こちらは頭の後ろの部分を撮ったものです。生物顕微鏡を使ってしまったので、大きくなりすぎました。その代わり、単眼がよく見えます。触角から単眼の間が額です。前胸背板(前脚がつながっているところ)が少しだけ見えていますが、この部分は検索の時にたびたび出てきます。



次は触角です。この個体の触角は変わった形状をしています。まず、アリのように長い柄節があり、その先で曲がって梗節があります。さらにその先に環状節というちょっと細くなった節があります。この環状節の有無も検索に出てきます。その先には繋節があって、棍棒状部につながります。節の数を数えてみると全部で13節になっていました。



次は翅です。翅はあまりにも単純です。脈らしい脈は前縁にしかありません。それぞれに名前がついていました。翅の後ろの部分にも筋が見えるのですが、これが脈なのかどうかはよく分かりません。



後翅も簡単な翅脈です。前縁部分には3本の鉤爪がついていました。これは翅鉤(しこう)といって、前翅と後翅を連結させる仕組みです。



最後は腹部を腹側から見た写真です。非常に整った構造なのですが、各部の名前はまだ分かりません。これは針がないので雄なのでしょうか。これすらも分かりません。

検索の前にいろいろな部位の名称を調べてみました。まだ、分からない部分がいろいろあります。例えば、parapsidal groovesです。「原色昆虫大図鑑III」に載っているコバチの検索表にはたびたび出てくるので、これが分からないと先に進まないのですけど・・・。

廊下のむし探検 ハネカクシなど

廊下のむし探検 第483弾

一昨日と昨日の「廊下のむし探検」の結果をまとめて載せます。今日はまずハネカクシからです。





おそらく以前見たものと同じ種だと思いますが、なぜか翅を伸ばしているハネカクシを見かけました。ついでに体長を測ってみたら3.3mmでした。





そしてこれは昨日の写真で、今度は翅を畳んでいます。2枚ずつ載せていますが、それぞれ同じ個体のものです。一昨日と昨日は別のところで見たので、おそらく違う個体だと思います。相変わらず名前は分からないのですが、ハネカクシをネットを調べていたらこんな面白い論文を見つけました。

K. Saito et al., "Asymmetric hindwing foldings in rove beetles", Proc. Natl, Acad. Sci. 111, 16349 (2014).

昨年の11月にオンラインで見られるようになったばかりの新しい論文です。rove beetleというのはハネカクシのことです。ハネカクシがどのようにして翅を畳んでいくのかを、ハイスピードカメラで調べたという内容です。ざっと読んでみたので、ちょっと内容を書いてみます。

一般的に、昆虫の翅のたたみ方にはいろいろなやり方があります。翅を縦に畳むアリやハチ、それから、扇子みたいに畳むバッタやカマキリ、ハサミムシは扇子みたいな畳み方にもう一つ折り目を加えています。さらに、甲虫はもっと複雑な折り方をします。でも、その甲虫でも右の下翅は右の上翅の下、左の下翅は左の上翅の下に入れるので、折り目は左右の翅で対称になります。

ところが、ハネカクシは翅をしまう場所が極端に小さいので、左右の翅を重ねてからしまうのです。従って、左右では折り方が違う左右非対称な折り目になります。なぜ、こんなに小さな翅にしたのかというと、たいていの甲虫が腹部を硬い鞘翅で隠しているのですが、ハネカクシは腹部をあえて出すことで、落ち葉の間や細かい土の隙間を腹部を曲げながら移動することができるようにしたということです。

ハネカクシは翅を畳むのに約1秒、広げるのに約0.1秒かかるそうです。こんなに速く畳むには腹が左右に曲がったり、上に伸びたりして、畳むのを助けているからのようです。畳み方は左右どちらの翅が上に来るかで変わってきます。つまり、上の翅用の畳み方と下の翅用の畳み方があり、左右どちらが上に来てもよいようになっています。ここが面白いところです。折り方は基本的に、上の翅は縦に2回、横に3回の折り目になり、下の翅は縦に3回、横に4回の折り目になります。

一つの翅に上の翅用の折り目と下の翅用の折り目の両方が付いているのは不思議な感じですが、ハネカクシの翅は結構フレキシブルで折り目がきちんとついているわけでなく、折りながら折り目も若干移動していくことができるようです。こんなフレキシブルな性質が関係しているのか、翅が開くときには1種のバネの作用で、一気に開くことができるようです。それで、開く方は0.1秒という短時間でできるのです。

翅の各部の力学的な性質が分かると、こんな折り方をする理由がわかり、その仕組みは何か工業的な応用にも使えるかもしれません。いずれにしても、腹を巧みに動かして畳んでいく姿を一度見てみたいものですね。ということで、ちょっと面白い論文を紹介しました。(追記:NHKのかぶん(科学文化部)ブログで紹介されているようです。また、東大生産研の出している紹介記事がpdfで見られます

追記:論文に出ていた図をもとに翅の折りたたみを試してみました。



これを畳むとこんな感じになります。



論文の図には山折り、谷折りの線がついていて、その通り折っていけば良いので、とりあえず折ることができました。ただ、出来上がったものは、なぜか論文に載っている完成図と少しずつ違っていました

次からはいつもの「廊下のむし探検」です。



フユシャクはこのシロフフユエダシャクが多いです。一昨日は2匹、昨日は3匹見ました。いずれも、廊下の手すりの下の凹みに止まっていました。最近は地下駐車場にいってもちっとも虫の姿を見かけません。





次はノミバエです。この2匹、よく見ると少し種類が違うようです。頭の形が違うし、脚の色も違います。Ziramさんに言わせれば、どうせMegaseliaなんだろうなというところだと思いますが、下の写真の後脚脛節には確かに氈毛列が見えていますね。





両方共ユスリカの仲間だと思いますが、最近はやや大きめの種と小さな種の2種類をよく見かけるようです。



大きめのキンバエがいました。クロバエ科ですね。こんなハエを捕まえて種の検索すると良いのですけど、どうも大きいと捕まえる気がしません。



これもおそらくクロバエ科だと思います。



そして、よく分からないクモ。



今日はおまけで芝生のところに来ていたシロハラの写真も載せておきます。

追記:ぼやきです。ブラウザーにfirefoxを使っているのですが、いろいろなマークやボタンが次々に見えなくなってきて困っています。最初は、ブログを投稿するときの送信、確認のボタンが見えなくなりました。適当にこのへんかなと思って押しています。次はナイスのマークが消えてしまい、数字だけが見えています。そして、今日は投稿するときの、画像の取り込みやら文字種の選択などの一連のボタンがすべて消えてしまいました。こうなると投稿ができないので、やむを得ずGoogle Chromeを使っています。Google Chromeでは正常なのですが、どうしてfirefoxだけがダメになっていくのでしょう

実体顕微鏡写真が綺麗に撮れた

これまで実体顕微鏡や生物顕微鏡で写真を撮って、虫の同定に利用していたのですが、実体顕微鏡では鮮明な写真が撮れなくて弱っていました。でも、それがひょんなことから猛烈に綺麗に撮れることが分かりました。

一時は、実体顕微鏡の性能なので仕方がないのかなと諦めていたのですが、生物顕微鏡では倍率を変えるたびに対物鏡を変えていかなければいけないのですが、実体顕微鏡にはズームがついているため、連続的に変えられるので大変便利です。何とかならないかなとずっと思っていました。



これは昨日見つけたコバチの仲間です。体長は3.5mmくらいの小さなハチです。この写真は、実体顕微鏡をズーム最大の5.6倍にして、焦点位置を変えて40枚ほど撮影し、深度合成ソフトで合成したものです。照明には実体顕微鏡に付属しているLEDランプを使っています。上の写真の胸の部分を拡大してみると、



こんな感じになります。照明で光ってしまうせいか、コントラストが強すぎるせいなのか、とにかくはっきりしません。体の色が黒くて、光ってしまうときが特にうまくいきません。でも、以前はこんな写真でとりあえず検索に使っていました。それで、もう少し何とかならないかと前からいろいろとやっていました。今日は特に照明方法を変えて写り具合を調べてみました。

とりあえず、光を拡散させた方が良いだろうと思ってこんな風にしてみました。



中心に試料となる虫が置いてあります。その上に、トレーシングペーパーを折って、くるくる巻いたものをかぶせてみました。さらに、100円ショップで買ったLEDランプを3台用意して、3方向から照明してみました。これで拡散光にはなるだろうと思っていたのですが、思った以上に効果抜群でした。



これがその写真です。胸の部分を拡大してみます。



胸に網目のような模様があり、毛の生えている様子など、実に見事に表現出来ています。実体顕微鏡を実際に目で見た時もこんな感じで、遥かに細かいところまで見えるようになりました。単純なことなのですが、ちょっとした工夫でこんなにもよく見えるようになるのですね。

同じようなことを生物顕微鏡でもやってみたのですが、結構、うまくいきそうです。おそらくLEDの色だとは思うのですが、薄い青緑色になってしまうのが若干気になりますが・・・。でも、これからはこうやって撮影していこうかな。

廊下のむし探検 つららができていました

廊下のむし探検 第482弾

今朝はかなり冷え込んだみたいです。お昼近くなっても廊下のつららが消えていませんでした。



3本のつららがいつも出来る場所があります。何となく、格好がよいのでつい撮影してしまいます。



でも、今日はその横にこんな斜めになったつららもできていました。なぜ、こんなに斜めになったのでしょうね。

さて、マンションの廊下は今日も虫が少なかったです。



でも、廊下の壁に久々に大きな虫が止まっていました。マツヘリカメムシという外来種です。一昨年の秋に初めて見つけたのですが、昨年は廊下でも頻繁に見られました。周辺の松林でかなり発生しているようです。



廊下に黒い塊があったので、虫かなゴミかなと思って撮影したらこんな虫でした。大きさは2-3mmの小さな虫です。拡大してみると、変わった翅脈をしています。これは間違いなくハチの方ですね。すぐに、以前教えていただいたトビコバチを思い出したのですが、一度、検索をしてみようと思って採集してきました。「絵解きで調べる昆虫」を使って検索をしてみました。コバチ上科にはすぐにたどり着くのですが、それから先の科の検索がなかなか進みません。コバチ上科にもいろいろなコバチの科があるのですね。ハエの検索はだいぶ慣れたつもりだったのですが、ハチはまた別みたいでかなり難しいです。もう少し頑張ってみたいと思います。(追記:今日は朝から、「絵解きで調べる昆虫」を用いて、何度も検索を試みました。その結果、今のところマルハラコバチ科が有力というところです。合っているかどうか分かりませんが・・・。今度は「原色昆虫大図鑑III」の検索表でもやってみます)(追記2015/05/12:「原色昆虫大図鑑III」によると、日本産マルハラコバチ科はルリマルハラコバチ1種だけだということなので、とりあえずこの和名を使っておきます



これはいつものキモグリバエです。こんな隙間に止まっていました。





フユシャクは今日は1匹ずつでした。上はシロフフユエダシャク、下はシモフリトゲエダシャクです。シモフリトゲはこんな蛍光灯の上の隙間に止まっていました。

虫を調べる クモガタガガンボ

先日、マンションの廊下で小さなクモガタガガンボを見つけました。見つけたクモガタガガンボというのはこんな虫です。



この虫は翅が退化し、天敵のいなくなった冬に、雪の上を歩き回るというので有名です。およそガガンボには似ていないのですが、それでも、ガガンボ科ヒメガガンボ亜科ホシヒメガガンボ族クモガタガガンボ(Chionea)属に属しています。先日のブログに書きましたが、検索表で調べた結果、カネノクモガタガガンボらしいことが分かりました。



折角なので採集してきて、少し調べてみました。向きを変えようと思ってピンセットで腹を押さえていたら、右の部分が少し潰れてしまいました。体長は4.1mm。脚が異様に長くて、確かに翅はありませんが、よく見ると痕跡のようなものがあります。腹の後ろには長い産卵管が見えています。

さて、調べると言ってもどこをどう調べて良いのやらさっぱり分からないので、クモガタガガンボの特徴が書いていないかなと思って、少し文献を探してみました。「原色昆虫大図鑑III」には載っていませんでした。代わりに、「日本産水生昆虫」には載っていましたが、



わずかこれだけでした。脚の基部には基節があるのですが、それが左右に開いているのは上の写真でも分かります。さらに、ネットで調べていると、こんな報告が見つかりました。

K. Tanida, "白山麓で採集されたクモガタガガンボ(ユキガガンボ), Chionea sp.(昆虫;双翅目)の雌成虫について"、石川県白山自然保護センター研究報告 14, 43 (1987).(こちらからダウンロードができます)

ユキガガンボともいうのですね。この中で、谷田氏は真冬の白山の雪の上でクモガタガガンボ♀を1匹捕まえたそうです。体長6mm。いろいろと調べて見ると、カネノクモガタガガンボの♀と非常によく似ていることが分かりました。ただ、断定できないので、Chionea sp. としています。この報告には説明と共に詳細な図も載っていたので、これをもとにして今回の個体も調べてみようと思いました。

原文は英語なのですが、虫の外見的特徴の部分を私の拙い英語力で訳してみました。



特徴は頭部、翅、脚、産卵管に分けて書かれていたので、表にまとめてみました。まずは触角が11節であることと、触角各節の特徴について書かれています。私もその部分を見てみました。



非常に変わった触角です。柄節は円筒形で強い剛毛があります。梗節も円筒形と書かれていますが、写真では先端部分に行くに従いやや膨れています。この写真では、鞭節第1節(触角第3節)が楕円体のように見えますが、これは向きの問題で実際は円錐形に近いです(次の写真を見て下さい)。その他の鞭節は細長くて、長い刺毛が生えています。ということで、だいたいは書かれている内容と合っています。



この写真は頭部を横から見たところです。先ほどの触角で鞭節第1節が円錐形というのが分かるでしょう。口肢が見えていますが、4節で各節がほぼ同じ長さというのも合っています。

次は翅についてでです。上の写真でも前脚と中脚の間に細長くて白いものが見えますが、これが翅の痕跡でしょう。



この写真では翅がもう少しはっきり見えます。さらに拡大してみました。



こんな感じになりました。翅脈のようなものは見えませんが、全体にやけに白く見えます。

次は脚に関するものです。脚は長くて、腿節と脛節はほぼ腹部と同じ長さという記述がありますが、上の写真を見る限り、腹部の長さよりは短く見えます。跗節についてはその部分だけを拡大してみました。



跗節第1節が長いというのはまさにその通りで、第2節のほぼ3倍というのも当たっているようです。ただ、第4節が第3、第5に比べて短いようです。

最後は産卵管についてです。この部分の写真を載せます。





上は横から、下は背側と腹側からの写真です。各部の名称は谷田氏の報告にある図を参考につけてみました。報告にあるように、2対の長い硬化した突起が見えます。こういうのをvalve(弁)というのですね。背側にあって長いものを尾角(cercus)というようで、書いてある通り、先端近くで少し上に曲がっています。あまり、先は尖っていませんが・・・。腹側にあって長さが半分くらいのものをhypogynial valveというようですが、日本語訳が見つかりませんでした。これが刀の形だというのですが、上側を刀の刃だと思うとそう見えなくはありません。刃の方にはやや長い毛が生えています。逆に下側には粗い毛が基部近くに生えているというのも記述通りのようです。

ということで、細かいところで若干異なるところもありますが、大まかには記述とよく合っています。九大の目録にはChionea属は3種ということになっていますが、通りすがりさんによるとその後も増えているようなので、カネノクモガタガガンボというのもまだ怪しい感じですね。それにしても変わった形の虫ですね。

追記:今回は顕微鏡写真を撮るのにずいぶん苦労しました。この間、色々と調べて分かったつもりだったなのに・・・。背景として黒いスポンジを置くと、コントラストが強くなりすぎ、また、スポンジの泡のような模様が背景に写ってしまってどうも変になります。背景が白いとやはり全体に霞がかかったような写真が撮れます。結局、2枚のスライドグラスの間にスペーサを入れて、背景をなくしてしまって撮ったのが、触角の写真でした。生物顕微鏡で5倍の対物鏡を用いています。それでも、ちょっとコントラストが強すぎる感じですが、逆に幻想的な雰囲気が出てきました。うーむ、なかなか難しい

廊下のむし探検 今日は3匹

廊下のむし探検 第481弾

今日は寒かったせいもあって、廊下を歩いていてもほとんど虫の姿を見かけません。こうなると、一人廊下を歩くのは実に寂しいものです。でも、しばらく歩いていて、やっと昨日も見たハエを見つけました。



体長5mmほどの小さなハエです。昨日は採集してきて検索表を使って検索してみました。その結果、オドリバエ科ホソオドリバエ属(Rhamphomyia)であることが分かりました。種まで調べるには交尾器を調べなければいけないというので、昨日採集した個体で少し撮影をしておきました。何せ、毒瓶にいれておいたら翅がグチャグチャになってしまったので、あまりお見せしたくない写真なのですが・・・。



これは横からで、体長は5.5mmです。脚がかなり長いですね、それに嘴のような口が見えますね。



頭の部分です。大きな複眼ですね。ほとんど頭全体を覆っています。それに変わった触角ですね。



くちゃくちゃになった翅です。これからでも、R4+5脈が先端で2つに分かれていないこと、Sc脈が途中で消えていること、Cu1脈が途中で戻っていることなどが何とか読み取れます。



横から見た腹部の写真です。腹部末端が変わった形ですね。細長い針金のようなものは挿入器というようです。♂の特徴ですね。この部分をもう少し拡大してみます。



これは生物顕微鏡の対物鏡10倍で撮影したものです。交尾器の形が分かると亜属がだいたい分かるそうなのですが、今のところ私には分かりません。ということで、将来、もう少し分かった時のために載せておきます。

ところで、コトバンクによると、オドリバエという名前は交尾のときに多数の個体が集まって群飛する様子を空中舞踊と呼んだことから来ているようです。英文のWikipediaによると、英語ではオドリバエが尖った口を持つことからdagger fly(daggerは短剣)と呼ばれているようで、dance flyという名はHybotidae(セダカオドリバエ科)に当てられているというようなことが書かれていました。

オドリバエの他はいつもの連中でした。



キモグリバエと



それにこの間も見たクモでした。このクモも名前が分かりません。というわけで、今日は3匹見ただけでした。

廊下のむし探検 春が近づいてきたのかな

廊下のむし探検 第480弾

立春が過ぎて春が近づいたせいか、虫がちょっとだけ増えてきたようです。「廊下のむし探検」も少し楽しみになってきました。今日は晴れたり、雨が降ったりと、安定しない天気だったのですが、午後から廊下を歩いてみました。



今日の最初はこの小さな虫ですが、実は名前は分かりません。初めはハエかなと思って写真を撮ったのですが、拡大してみると、どうやらハネカクシのようです。でも、これから先が進みません。それにしても、ハネカクシってこんなに薄くて長い翅があったのかなぁ。



次はこの虫です。マンションの外壁に止まっていました。ヒメカゲロウかなと思ったのですが、分からないので、ネットの画像検索をしてみました。何となくホソバヒメカゲロウという種に似ている感じですが、それ以上は分かりません。

分からないものが2つ続いたところで、次の虫は採集してきて調べてみました。



ちょっと変わった感じのするハエですね。体長は5.5mmです。「図解で調べる昆虫」と「原色昆虫大図鑑III」の両方の検索表で調べてみると、共に、オドリバエ科に落ち着きました。次に、三枝豊平氏の「日本産双翅目の図解検索システムI オドリバエ科」(「日本産双翅目の図解検索システム」で検索するとダウンロードできます)を使って属の検索をしてみました。これは図解なので非常に使いやすく作られています。

合っているかどうかは分かりませんが、結果はホソオドリバエ属(Rhamphomyia)になりました。この属は「原色昆虫大図鑑III」に詳しく出ていて、日本では11亜属77種が記録されているそうです。さらに、各亜属の種への検索表まで出ているのですが、残念ながら亜属への検索表は出ていなくて、ここでストップです。小さいハエで、毒ビンに入れておいたら翅がくちゃくちゃになってしまいました。さらに、翅に細かい毛が生えているのか、やたらピンセットにくっついてしまいます。何かと扱い難いハエです。(追記:以前のブログを見ていたら、昨年の2月27日のブログに同じ種だと思われるハエを出していました。その時は、Manual of Nearctic Dipteraに出ている翅脈を片端から調べて、やはりオドリバエ科のRhamphomyia属に到達していました。今回は検索によってだったので、昨年よりは少し進歩したかなと思いますが、結果は同じでしたね。何とか亜属が分かれば、その先に進めるのですが・・・)



これは大きめのハエです。翅のM1脈が翅縁近くで曲がっているので、おそらくクロバエ科だろうと思います。



これもクロバエ科でツマグロキンバエかなと思います。





キモグリバエはいつもいるのですが、今日は接写の練習に撮ってみました。拡大すると結構かわいい虫ですね。







こういう小さなハエは結構いるのですが、キノコバエの仲間でしょうか。(追記2015/05/04:上2つはタマバエ科?、一番下はキノコバエ科



ユスリカも最近はいつもいますね。



それに常連のガガンボダマシです。



最後はこのクモです。脚を変わった風に伸ばして、じっとしています。この格好からオニグモの仲間かなと思って、「日本のクモ」を何度も探したのですが、見つかりません。おそらく幼体だからだろうと思って、仕方なく、ネットの画像検索を何回かしてみました。ちょっと似ているなと思ったのはオガタオニグモという種です。でも、よく分かりません。

廊下のむし探検ー徒然なるままに

「廊下のむし探検」に関連して最近やっていることを徒然に書いてみました。

最初の話題は「廊下のむし探検」に持ち歩いているカメラについてです。



カメラの本体はNIKON D7100で、レンズはAF Micro Nikkor 60mm/F2.8です。それにご覧のような白い「影とり」(KENKO ストロボディフューザー SDF-26)をつけています。ストロボをたいて接写するときのこれの効果は絶大で、一度つけたらやめられません。その性能についてはすでに書いたので、詳しくはそちらを御覧ください。

また、これも以前、カメラにミニ三脚を取り付けて、これを壁に押し当てながら接写するとブレなくてよいというを書きました。でも、その後、三脚の止めねじが壊れてしまい、仕方なく一脚を取り付けていました。でも、倍率をあげて接写するときにはどうにも不便なので、昨日から上のような構成になりました。



HAKUBAの延長ポールHCS-2と自由雲台BH-1を取り付けてみたのです。普通の一脚だと長さが長すぎて、接写するときに役に立ちません。この延長ポールはもともと三脚に取り付けて首を伸ばすものなのですが、それを一脚代わりに使ってみました。長さは17.7mmから28.7mmまで可変で、普通の一脚としては役に立たないのですが、廊下のむしの撮影には頑丈で長さもぴったりでした(壁のない野外ではあまり使えないとは思いますが・・・)。

さらに、小さいむしを接写するときに、オートフォーカスだと背景の床や壁にフォーカスが合ってしまいピンぼけになることが多いのですが、昔、買ったNIKONのマグニファイヤーDG-2を取り付けて確認して撮るようにしました。今のところ、まあまあという感じです。視野が狭いので、虫が動きまわるとどこにいるかすぐに分からなくなるので困りますが・・・。この構成でしばらく試してみます。

2番めの話題は生物顕微鏡写真についてです。

昔、実習で要らなくなった顕微鏡を何台かいただいたことを思い出して探してみると、思わぬ掘り出し物がありました。



古々しいのですが、長作動距離の20倍の対物鏡を見つけたのです。OLYMPUS LWD C20/0.4 1.0という刻印がされています。LWDはlong working distanceの略、20は倍率、0.4はNA(開口数)、1.0は厚さ1.0mmのカバーグラスに合うようにachromatic correctionがなされているという意味だと思います(Cは何だろう)。これで、対物鏡と試料との距離が数ミリになるので、照明が楽になります。

今使っている照明はひどくいい加減なものです。



100円ショップで買ったLEDランプをこれも100円ショップで買ったペーパークリップに取り付けています。2台用意して、片方にはトレーシングペーパーを取り付けて、少し拡散光にしています。この2台を適当に配置して照明しています。



これは体長5mm程度のクチブトゾウムシの鞘翅を撮ったもので、対物鏡は5倍です。写真は全体を縮小しただけで、特にトリミングはしていません。細かい鱗片とちょっと長めの毛が生えていることが分かります。



次は10倍の対物鏡を使って撮影したものです。鱗片に貝殻のような細かな筋がついていることがかすかに分かります。また、長い毛にも筋がついています。



そして、今回見つけた長作動距離の20倍の対物鏡を使った結果です。鱗片の筋がはっきり見えます。以前、あおやまはるまさんが赤貝と書かれた意味がよく分かりますね。ただ、被写界深度がひどく短くなるので、焦点があっている場所はほんのわずかです。



そして、最後は40倍の対物鏡です。試料と対物鏡の距離が1mmにも満たないので、真横から照明を当てています。そのせいだろうと思いますが、鱗片のところどころに色がついて輝いています。焦点の合う範囲はほんのちょっとです。というので、少なくとも20倍までは照明をそれほど気にしないで簡単に写せるようになりました。

それから、先日、5倍の対物鏡を用いると全体に白っぽくなってコントラストがなくなるということを書きましたが、原因が分かりました。



これが以前の画像です。原因はゾウムシを白いペフ板の上に置いていたので、ペフ板に当たった光が迷光として入ってきていたためでした。



下を黒いスポンジ状のゴム板に変えたらこんな感じになりました。結構、うまく撮れています。ただ、試料が小さい場合、試料の色によっては背景が黒だとかえって見難くなることもあるので、灰色の方がよいかもしれません。いずれにしても、ちょっと前進です。

最後はホームページでの画像の見せ方です。このブログに載せた写真を集めたホームページを作っています。私自身としては、ブログをただその時の様子を知らせる日記ではなしに、データベースとして活用できるのではないかと思っています。このため、昔、出したブログも索引や画像のリストから簡単に探せるようにしています。その代わり、検索で古いブログに直接訪れる方もあるため、誤った記述などは、たとえ昔のものであっても訂正するようにしています。ただ、ブログ自体を書き換えてしまうと、データとしての信頼度がなくなってしまうので、極力「追記」という形で訂正するようにしています。

さて、写真の数が増えてくると、索引を使って写真を見るときに、たくさんのページを参照にしなくてはいけなくなり、いちいちクリックするのが面倒です。そこで、Javascriptという言語を使って何とかならないかと思って試しています。といっても、私はJavascriptの文法を知らないので、ネットで似たようなものを探して、見よう見まねで作っている状態です。


試作品1は写真をクリックすると次に移ります。ブログの日付が下に出ていますので、そこをクリックするとその時のブログに飛びます。試作品2は自動的に写真が変わっていくタイプです。ソースを見ていただければどんな風になっているか分かります。これをどのように使えばよいかはまだ決まっていません。

徒然に最近やっていることをいろいろ書いてみました。

廊下のむし探検 クモガタガガンボやらフユシャク♀やら

廊下のむし探検 第479弾

今日は気温は低かったのですが、何となく外は明るくて、ちょっと虫がいそうな感じがしました。それで、午前と午後の2回も廊下を歩いてみました。予想通り、今日は変わった虫がいろいろ見られました。






変わった形の虫です。もし見るのが初めてだったら、何だかさっぱり分からなかっただろうと思うのですが、1月7日に同じような虫を見ていたので、今度はすぐに分かりました。そう、これは翅が退化し、天敵のいなくなった冬に、雪の上を歩き回るというクモガタガガンボですね。およそガガンボには似ていないのですが、それでも、ガガンボ科ヒメガガンボ亜科ホシヒメガガンボ族クモガタガガンボ(Chionea)属に属しています。でも、以前見た時は1cmくらいの大きさはあったのですが、今度はずいぶん小さい個体でした。測ってみると、体長は4.1mm。

九大の昆虫学データベースによると、日本には、

カネノクモガタガガンボ Chionea kanenoi Sasakawa 北海道、本州
ニッポンクモガタガガンボ Chionea nipponica Alexander 北海道、本州
チビクモガタガガンボ Chionea gracilistyla Alexander 本州

の3種がいることになっています。以前と同じように、カネノとチビの検索は次の韓国の人の論文に載っているので調べてみました。

S. Suh et al., Entomol. Res. 44, 86 (2014).

最初は脛節の先端が膨れているかいないかという項目で、この個体は膨れていないので2種を除外でき、さらに、触角が7節だったらC. crassipes、11節だったらC. kanenoiに到達します。C. crassipesは最近2つの亜種gracilistylaとmagadanensisに分かれ、上に載せたチビクモガタガガンボはC. crassipesの亜種になっています。そこで、触角をちょっと拡大してみます。



あまりはっきりとはしませんが、この写真から11節か12節かというところまでは数えられます。従って、おそらくカネノクモガタガガンボ C. kanenoiかなと思われます。ニッポンクモガタガガンボ C. nipponicaは高山で見つかっているということと、C. kanenoiは近畿地方でも見つかっているようで、さらに、上記の論文によると C. kanenoiの大きさが3mmだとのことからカネノクモガタガガンボの可能性が高いかなと思っています。最終的には♂の交尾器を調べる必要があるのでしょうね。



ちなみにこの個体の腹部先端はこのように尖っていて、♀であることが分かります。先日見たのは遥かに大きな個体だったので、別種かもしれませんね。それにしても、雪の上を歩くというクモガタガガンボが、なぜ、マンションの廊下にいるのでしょうね。(追記:通りすがりさんから、「クモガタガガンボ、複数種の可能性ありそうですね。
九大目録以降に新たな発見もあった様ですし、まだ他に未記載種はあると思います。」というコメントをいただきました


次はフユシャクの♀です。





マンションの外壁に止まっていました。今までに見たフユシャク♀に比べると遥かに小さい個体です。測ってみると、体長は4.8mmでした。クモガタガガンボと同じように、翅は退化して、おまけに口吻まで退化しています。翅の痕跡がほとんど見えないので、これはフユシャク亜科の♀ですね。でも、それから先は図鑑を見ても違いが分かりません。今頃だとクロテンフユシャクが一番多いはずなのですが、ウスバフユシャクかウスモンフユシャクで遅れて発生したものも可能性があるし、ホソウスバフユシャクが早めに出てきたものかもしれません。ちょっと分かりませんね。(追記:通りすがりさんから、「フユシャクのメスは1度産卵したみたいで、お腹も小さくなって腹端の毛束も減ってますが、まだ卵が残ってそうですね。」というコメントをいただきました





今日はいろいろと虫がいました。これはムラサキナガカメムシです。2匹いて、1匹はじっとしていて、もう1匹は動き回っていました。寒いけれど何となく春を感じさせます。



これはこの間から見ているトゲハネバエ科の仲間です。こいつは元気で、近づくとすぐに逃げてしまいました。





これはユスリカ科の仲間でしょうね。小さい小さい虫です。



そして、これはノミバエ科でしたね。だいぶお馴染みになってきました。(追記:Ziramさんから、「やはりまたMetopininaeっぽいですね。(顔盾の辺りは良く見えませんが)どうせMegaseliaなんだろうなぁと…。」というコメントをいただきました



これはいかにもハエらしいハエですが、さて、何でしょうね。(追記:床の模様から判断した体長は9.6mm。M1+2脈は真っ直ぐで、しかも、Cu融合脈が翅縁に達しているように見えます。だとすると、ハナバエ、フンバエあたりになるのですが、雰囲気が違いますね。大きいのでためらったのですが、捕まえたらよかったぁ



そして、いつものガガンボダマシです。







クモもいろいろといたのですが、名前調べをする時間がありませんでした。また、後で調べてみます。

虫を調べる ハナバエ科

この間からハエをいろいろと調べてきたのですが、ついでだからいろいろな科のハエの写真を撮っておこうと思って、捕まえたら顕微鏡で撮影しています。今日は一昨日捕まえたハナバエ科らしいハエについてです。



対象とするのはこんなハエです。いかにもハエらしいハエで、あまり撮影意欲が湧かないのですが、それでもハナバエ科の写真は撮ったことがなかったので撮ってみました。体長は5.5mm、前翅長は5.0mmの小型のハエです。

どの部分の写真を撮ればよいのか分からないので、科の検索表に沿って撮っていくことにしました。検索表は「原色昆虫大図鑑III」にも出ていますが、今日は次の論文を使ってみました。

田中和夫、「屋内害虫の同走法 : (2)双翅目の科の検索表」、家屋害虫 22, 95 (2000).(こちらからダウンロード可能)

この中の検索表は、ポイントになるところにはすべて詳細な図が描かれていて、大変わかりやすく書かれています。ハナバエ科に至る部分を抜き出して書いてみると次のようになります。



これはハナバエ科の中でもハナバエ亜科の部分です。どうやらこれに該当するようです。ちなみに「大図鑑」の検索表では次のようになります。(追記:中胸亜基節のところが間違っていました。訂正しておきました



それではいつものように必要な部分の写真を載せていきます。なお、素人がやっているので、間違っているところも多いと思いますのでそのつもりで見てください。



まず、これは有弁翅類という基覆弁が発達したグループの検索です。この図をみると、端覆弁と基覆弁が重なって見えていますので、確かに有弁翅類です。有弁翅類の特徴は、「大図鑑」の検索表には詳しいのですが、翅下瘤があり、触角梗節の背面に明瞭な縫線が走るという点です。前者は上の図に示してありますが、楕円形の瘤が見えます。なお、田中氏の論文には翅下隆起と書いてありましたが、「大図鑑」には翅下瘤となっていました。その他、「大図鑑」と名称が異なっていたものは( )内に書いてあります。

触角梗節の縫線は後でお見せすることにして、次に進みます。次は中脚の副基節に刺毛がないことですが、図の中副基節がそれに該当しています。ここには確かに刺毛はありません。次の亜小盾板と小盾板裏側の毛については次の写真を見てください。(追記:実は、『中副基節』なのか、『中基副節』なのかよく分からなくなりました。「原色原色大図鑑III」のハエ目第3図には前者が、第4図には後者が使われています。どちらも英語ではmid meronで同じなのですが・・・。本文と検索表では中脚の副基節となっていました。おそらく、中副基節が合っているのでしょうね。とりあえず訂正しておきます



これは非常にうまく写真が撮れたと思って満足しているのですが、小盾板の下に小さい亜小盾板が見えます。また、小盾板の裏側に微毛が生えています。これがハナバエ科の中のハナバエ亜科の特徴です。

次は翅脈に関してです。



いたって普通の翅脈です。この科の特徴はCuA+CuPと書いてあるCu融合脈が翅縁まで達している点です。これでイエバエ科とは区別できます。次の基覆弁については、Fig.1を見ると分かりますが、端覆弁とほぼ同じ大きさです。内額刺毛については後で写真を載せますが、どれを指しているかよく分かりませんでした。これは♀についての項目かもしれません。



次の後肢脛節はこれを見ると分かりますが、脛節の背側中央部に剛毛が何本か生えています。最後の項目、「特徴の少ないハエ」を見て、ちょっとがくっと来ました。そうですよね。

後はついでに撮った写真を載せておきます。



これは額の部分の拡大写真です。鬚剛毛や口器が見えます。両複眼の間が狭いのでこれは♂の方ですね。でも、ハナバエ科の中には、♂でも複眼間の距離が長いものもいるので要注意です。



これは触角を拡大したものです。矢印で触角梗節にある縫線らしいものを示しています。



翅の基部の写真です。ほぼ同じ大きさの端覆弁と基覆弁が見えています。



これは腹部です。毛がいっぱい生えていますね。後腿節の剛毛は途中からですね。脛節の剛毛は結構規則正しく生えているようです。



最後はいつものように、「大図鑑」の図を見ながら刺毛の名称を記入してみました。体が小さいわりには刺毛の多いハエです。ついでに、翅の部分を見ると、前縁脈に切れ目のある部分で翅が折れ曲がっていることが分かります。切れ目は折り目のためについているみたいですね。



これは側面です。やはり毛が多いです。これで一応、ハナバエ科の特徴はおさえられたかなと思いますが、これから先の属の検索はかなり大変です。(追記:図の刺毛の名称が一部間違っていたので訂正しておきました。翅後刺毛→翅背刺毛

M. Suwa, "ANTHOMYIIDAE OF JAPAN (DIPTERA)", Insecta Matsumurana. Series Entomology. New series 4, 1 (1974). (こちらからダウンロード可能)

この論文とその後の1から7までのSupplementに日本産のハナバエ科については詳しく載っていますが、内容の理解できないところが随所にあって、ちょっと行き詰っています。もう少し頑張ってみます。

追記:上の写真は顕微鏡を使って、焦点位置を少しずつ変えていって合計30-70枚ほど撮った写真を、深度合成という方法を用いて合成しています。胸部側面のようにもともと平面的なものはこれでうまく表現できるのですが、顔写真のように大きさが小さくて、しかも、奥行きのあるものは実体顕微鏡写真では顔の周辺が乱れてしまってなかなかうまく表現できません。それで、生物顕微鏡を使っているのですが、対物鏡10倍だと顔をはみ出してしまって、どこを撮っているのか分からなくなり、対物鏡5倍にすると、なぜか全体に白くなってコントラストが極端に悪くなります。迷光が入っているのですね。いろいろと改良しなくてはいけないですね

廊下のむし探検 フユシャク2種ほか

廊下のむし探検 第478弾

寒い日が続いていますね。今日も午後から歩いてみたのですが、風は強く、しかも雪混じりで、とても「むし探検」という季節ではありませんね。それでも、我慢して歩いていたら、フユシャクに出会えました。





今日は2種類いました。上はシロフフユエダシャク、下はシモフリトゲエダシャクです。シロフフユエダシャクは先日も見たのですが、一昨年はは2月3日、昨年は2月11日が初見日でした。一方、シモフリトゲエダシャクは一昨年は見られず、昨年は1月24日が初見日でした。まぁ、今年も例年並みというところでしょうね。でも、こんな寒い日によくいますね。そういえば、越冬していると思ったクサカゲロウは今日は同じ場所にはいませんでした。まだ、あちこち飛び回っているのでしょうか。



これはこの間見たトゲハネバエ科かもしれませんね。こんな寒くても意外に元気で、写真を撮っている間にどこかに飛んでいってしまいました。



小さいハエ目の虫ですが、ユスリカの仲間でしょうか。マンションの壁に止まっていました。今頃は動くものがいないので、小さくてもちょっと動くとすぐに気がつきます。



最後は大きそうですが、やはり小さなクモです。いつもこういうクモがいると、アサヒエビグモかなと書いているのですが、実際のところはよく分かりません。クモもそのうち検索をしてみたいなと思っています。

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