ヒメセアカケバエを調べる
この間から、勉強のためにいろいろな虫を調べているのですが、今回はヒメセアカケバエというケバエ科についてです。ケバエの仲間ではこれまで、Bibio属、Plecia属を調べたことがありましたが、ヒメセアカケバエの属するPenthetria属は初めてだったので、楽しみにしていました。
まず、ヒメセアカケバエというのはこんな虫です。
上は♂、下は死んでいるのですが、♀です。矢印は前脚の脛節末端を示しているのですが、ここに棘が2本あるのがBibio属です。この個体はないので、それ以外の属に属していることが分かります。ケバエの仲間については次の論文に詳しく載っています。
D. Elmo Hardy and Mitsuo Takahashi, "Revision of the Japanese Bibionidae (Diptrera, Nematocera)", Pacific Insects 2, 383 (1960)(こちらから、pdfをダウンロードできます)
これに従って、上の個体を調べていきたいと思います。まず、その部分の検索表を抜粋して載せると次のようになります。なお、原文は英語なので適当に訳しています。また、素人がやっていますので、そのつもりで見て下さいね。
まず、①aの翅脈について見てみます。
これは♂の翅ですが、Rs脈というのはR1脈に達する脈から途中で分かれている脈です。この脈が末端に行くときに分岐するかどうかという項目です。見るとすぐに分かりますが、Rs脈はR2+3脈とR4+5脈に分岐しています。後で示すように、このR2+3脈の形が分類には重要になってきます。
①bの脚が単純というのは、棘がないことを意味しています。さらに、②の触角と複眼については次の写真を見てください。
触角は全部で12節からなっていますが、そのうち第3節は黒矢印で示しています。これが長くならないというのですが、もともと触角の長い種を除外するための項目なので、この写真では少し長いですが、これは構わないのではと思います。また、この写真も♂ですが、白矢印で示すように左右の複眼は接しています。③については、Fig.1を見ると、先ほどのR2+3脈が長く、その下のR4+5脈とほぼ平行に走っていることが分かります。Plecia属ではこれが短く、R4+5脈にほぼ垂直に走ります。これで、Penthetria属に属することが確かめられたことになります。
次に種への検索です。④に関しては次の写真を見てください。
まず、④aについては、中胸背板の後ろ半分が赤褐色になっています。Fig. 4は♂後脚ですが、④bの基跗節は跗節第1節を示しています。この節が膨潤していていることを言っています。この節の長さと幅の比は実測すると3.9倍になって、書かれていた値3-3.5よりは少し長くなっていました。⑤aについては、Fig. 1を見て、M1脈がr-m横脈に直接結合していることが分かります。
さらに、♂交尾器は特徴的な構造をしています。
これは腹側からと背側から撮影した交尾器の写真です。非常に特徴的な形をしていて、論文に書かれている図ともよく合っています。ということで、この種はPenthetria japonica、すなわち、ヒメセアカケバエということになります。
もう少し特徴を調べるために、「原色昆虫大図鑑III」に書かれている説明を見てみましょう。
検索表と重複している部分もありますが、それ以外の特徴も載っているので、もう少し調べてみました。関連する写真を載せると、
まず、頭部に関してです。Fig. 7は♂ですが、Dについては、触角基部直下のくぼみを白矢印で示しています。写真では分かりにくいのですが、ここに深いくぼみがあります。Fig. 8は♀ですが、額帯中央の広い隆起帯を白矢印で示しています。これも分かりにくいのですが、ゆるく隆起しています。
胸部については次の写真を見て下さい。
これは胸部背板を♂と♀で比較したものですが、♀の方が赤褐色部分がやや広くなっていることが分かります。これがFに該当しているのかなと思っています。
翅についてはすでに述べたので、次は脚についてです。
これは♂後脚ですが、説明 I に書かれているように、腿節より脛節の方が少し太い感じがします。ということで、いろいろな特徴もほぼ確かめることができました。
このように種名がだいたい予想されるときには、その特徴も調べやすいですが、まったく、分からないものについては、検索をしても不安でなかなかその特徴も調べられません。もう少し経験を積まないといけないなと思っています。
まず、ヒメセアカケバエというのはこんな虫です。
上は♂、下は死んでいるのですが、♀です。矢印は前脚の脛節末端を示しているのですが、ここに棘が2本あるのがBibio属です。この個体はないので、それ以外の属に属していることが分かります。ケバエの仲間については次の論文に詳しく載っています。
D. Elmo Hardy and Mitsuo Takahashi, "Revision of the Japanese Bibionidae (Diptrera, Nematocera)", Pacific Insects 2, 383 (1960)(こちらから、pdfをダウンロードできます)
これに従って、上の個体を調べていきたいと思います。まず、その部分の検索表を抜粋して載せると次のようになります。なお、原文は英語なので適当に訳しています。また、素人がやっていますので、そのつもりで見て下さいね。
まず、①aの翅脈について見てみます。
これは♂の翅ですが、Rs脈というのはR1脈に達する脈から途中で分かれている脈です。この脈が末端に行くときに分岐するかどうかという項目です。見るとすぐに分かりますが、Rs脈はR2+3脈とR4+5脈に分岐しています。後で示すように、このR2+3脈の形が分類には重要になってきます。
①bの脚が単純というのは、棘がないことを意味しています。さらに、②の触角と複眼については次の写真を見てください。
触角は全部で12節からなっていますが、そのうち第3節は黒矢印で示しています。これが長くならないというのですが、もともと触角の長い種を除外するための項目なので、この写真では少し長いですが、これは構わないのではと思います。また、この写真も♂ですが、白矢印で示すように左右の複眼は接しています。③については、Fig.1を見ると、先ほどのR2+3脈が長く、その下のR4+5脈とほぼ平行に走っていることが分かります。Plecia属ではこれが短く、R4+5脈にほぼ垂直に走ります。これで、Penthetria属に属することが確かめられたことになります。
次に種への検索です。④に関しては次の写真を見てください。
まず、④aについては、中胸背板の後ろ半分が赤褐色になっています。Fig. 4は♂後脚ですが、④bの基跗節は跗節第1節を示しています。この節が膨潤していていることを言っています。この節の長さと幅の比は実測すると3.9倍になって、書かれていた値3-3.5よりは少し長くなっていました。⑤aについては、Fig. 1を見て、M1脈がr-m横脈に直接結合していることが分かります。
さらに、♂交尾器は特徴的な構造をしています。
これは腹側からと背側から撮影した交尾器の写真です。非常に特徴的な形をしていて、論文に書かれている図ともよく合っています。ということで、この種はPenthetria japonica、すなわち、ヒメセアカケバエということになります。
もう少し特徴を調べるために、「原色昆虫大図鑑III」に書かれている説明を見てみましょう。
検索表と重複している部分もありますが、それ以外の特徴も載っているので、もう少し調べてみました。関連する写真を載せると、
まず、頭部に関してです。Fig. 7は♂ですが、Dについては、触角基部直下のくぼみを白矢印で示しています。写真では分かりにくいのですが、ここに深いくぼみがあります。Fig. 8は♀ですが、額帯中央の広い隆起帯を白矢印で示しています。これも分かりにくいのですが、ゆるく隆起しています。
胸部については次の写真を見て下さい。
これは胸部背板を♂と♀で比較したものですが、♀の方が赤褐色部分がやや広くなっていることが分かります。これがFに該当しているのかなと思っています。
翅についてはすでに述べたので、次は脚についてです。
これは♂後脚ですが、説明 I に書かれているように、腿節より脛節の方が少し太い感じがします。ということで、いろいろな特徴もほぼ確かめることができました。
このように種名がだいたい予想されるときには、その特徴も調べやすいですが、まったく、分からないものについては、検索をしても不安でなかなかその特徴も調べられません。もう少し経験を積まないといけないなと思っています。
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