カゲロウを調べる
先日、マンションの外壁に1匹のカゲロウが止まっていました。これまで、カゲロウの科や種の検索をしたことがなかったので、採集して調べてみました。素人なので、間違っているところも多いと思いますが、ご容赦下さい。
対象とするのは、こんなカゲロウです。カゲロウの仲間は複眼の大きな個体が♂なので、これは♂の方です。
カゲロウについては、御勢久右衛門氏が書かれた「日本産カゲロウ類」という連載記事が「海洋と生物」に出ています。
海洋と生物 1, 38 (1979); 2, 40 (1979); 3, 58 (1979); 4, 43 (1979); 5, 51 (1979); 6, 76 (1980); 7, 122 (1980); 8, 211 (1980); 9, 286 (1980); 10, 366 (1980); 11, 454 (1980); 12, 59 (1981)
ここに詳細な科と種の検索表も載っています。その他、同じ著者が「原色日本昆虫図鑑下巻」に科の検索表を載せていて、また、石綿進一氏が「原色昆虫大図鑑III」に科の検索表を載せています。
ここでは、種の検索表まで載っている「海洋と生物」の検索表を使ってみました。いつものように検索表を使って調べてみると、上の写真の個体はマダラカゲロウ科であることが分かりました。その特徴を、検索表に従って調べていきます。
前回と同じで、①などの記号は検索表の項目の番号です。それぞれの項目に対応する場所を次の写真の中でも記号で示してあります。
カゲロウの科を調べるには、もっぱら翅脈の特徴で、一部、脚の形状を使います。まず、①はFig. 1でMと書かれたM脈とCuA脈の根もとがほぼ平行であることを示しています。④はFig. 3に示すように、後肢の跗節が4節から成り立っていることを示しています。⑤はFig. 1に見られるSc脈がよく伸びていること、⑥はM脈が分岐していることを示しています。⑦も同様で、脈と脈の間に伸びる間脈や脈と脈を結ぶ横脈が発達していることを示しています。
⑧は後翅の脈に関してです。Fig.2でR4+5という脈がありますが、写真のように分岐していないことで、⑩に進みます。最後は、Fig.1のCuPとCuAが根もとで接近していることが特徴です。以上のような特徴を持つ種がマダラカゲロウ科になります。
次に種への検索です。同じく、「海洋と生物」の検索表を用いて調べると、シリナガマダラカゲロウという種に行き着きました。その時に使った検索表の項目です。
この場合の特徴はほとんどが♂の腹部先端の形状に関してです。
♂の腹部の先端はFig. 4のような構造をしています。把持子と呼ばれる♀をつかむ構造と交尾器です。この形によって種の同定をします。検索項目の(I)は把持子の先端節の大きさに関するものですが、Fig.4の個体はこの部分が小さな丸い形をしています。(V)は亜属Ephmerellaを見分ける項目で、特に刺は見当たりません。最後は、シリナガマダラカゲロウの特徴になります。交尾器が先端にいくに従って狭くなっていることと、Fig. 5に示すように前肢の脛節と腿節の長さがほぼ等しいことです。これらの特徴でシリナガマダラカゲロウだと分かりますが、検索表を使わなくても、♂の腹部先端を比較するだけで、だいたいの種類が分かるみたいです。
Fig. 6は、例によって、昔作った標本の♂の腹部先端の写真です。左はアカマダラカゲロウ、右はオオマダラカゲロウだと推定される個体です。共に、マダラカゲロウ科に属する種ですが、Fig.4とは明らかに形状の違うことが分かります。
カゲロウの検索を初めてしてみました。これまで、ガガンボ、キンバエ、オナシカワゲラ、コエグリトビケラなどの検索をしてみましたが、それらに比較するとかなり楽な感じがしました。カゲロウの種類数は日本にせいぜい140種程度と言われていますので、頑張ればかなりの種が同定できるかもしれません。
最後におまけで頭部の写真です。
意外にいかつい顔をしています。
対象とするのは、こんなカゲロウです。カゲロウの仲間は複眼の大きな個体が♂なので、これは♂の方です。
カゲロウについては、御勢久右衛門氏が書かれた「日本産カゲロウ類」という連載記事が「海洋と生物」に出ています。
海洋と生物 1, 38 (1979); 2, 40 (1979); 3, 58 (1979); 4, 43 (1979); 5, 51 (1979); 6, 76 (1980); 7, 122 (1980); 8, 211 (1980); 9, 286 (1980); 10, 366 (1980); 11, 454 (1980); 12, 59 (1981)
ここに詳細な科と種の検索表も載っています。その他、同じ著者が「原色日本昆虫図鑑下巻」に科の検索表を載せていて、また、石綿進一氏が「原色昆虫大図鑑III」に科の検索表を載せています。
ここでは、種の検索表まで載っている「海洋と生物」の検索表を使ってみました。いつものように検索表を使って調べてみると、上の写真の個体はマダラカゲロウ科であることが分かりました。その特徴を、検索表に従って調べていきます。
前回と同じで、①などの記号は検索表の項目の番号です。それぞれの項目に対応する場所を次の写真の中でも記号で示してあります。
カゲロウの科を調べるには、もっぱら翅脈の特徴で、一部、脚の形状を使います。まず、①はFig. 1でMと書かれたM脈とCuA脈の根もとがほぼ平行であることを示しています。④はFig. 3に示すように、後肢の跗節が4節から成り立っていることを示しています。⑤はFig. 1に見られるSc脈がよく伸びていること、⑥はM脈が分岐していることを示しています。⑦も同様で、脈と脈の間に伸びる間脈や脈と脈を結ぶ横脈が発達していることを示しています。
⑧は後翅の脈に関してです。Fig.2でR4+5という脈がありますが、写真のように分岐していないことで、⑩に進みます。最後は、Fig.1のCuPとCuAが根もとで接近していることが特徴です。以上のような特徴を持つ種がマダラカゲロウ科になります。
次に種への検索です。同じく、「海洋と生物」の検索表を用いて調べると、シリナガマダラカゲロウという種に行き着きました。その時に使った検索表の項目です。
この場合の特徴はほとんどが♂の腹部先端の形状に関してです。
♂の腹部の先端はFig. 4のような構造をしています。把持子と呼ばれる♀をつかむ構造と交尾器です。この形によって種の同定をします。検索項目の(I)は把持子の先端節の大きさに関するものですが、Fig.4の個体はこの部分が小さな丸い形をしています。(V)は亜属Ephmerellaを見分ける項目で、特に刺は見当たりません。最後は、シリナガマダラカゲロウの特徴になります。交尾器が先端にいくに従って狭くなっていることと、Fig. 5に示すように前肢の脛節と腿節の長さがほぼ等しいことです。これらの特徴でシリナガマダラカゲロウだと分かりますが、検索表を使わなくても、♂の腹部先端を比較するだけで、だいたいの種類が分かるみたいです。
Fig. 6は、例によって、昔作った標本の♂の腹部先端の写真です。左はアカマダラカゲロウ、右はオオマダラカゲロウだと推定される個体です。共に、マダラカゲロウ科に属する種ですが、Fig.4とは明らかに形状の違うことが分かります。
カゲロウの検索を初めてしてみました。これまで、ガガンボ、キンバエ、オナシカワゲラ、コエグリトビケラなどの検索をしてみましたが、それらに比較するとかなり楽な感じがしました。カゲロウの種類数は日本にせいぜい140種程度と言われていますので、頑張ればかなりの種が同定できるかもしれません。
最後におまけで頭部の写真です。
意外にいかつい顔をしています。
スポンサーサイト