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カゲロウを調べる

先日、マンションの外壁に1匹のカゲロウが止まっていました。これまで、カゲロウの科や種の検索をしたことがなかったので、採集して調べてみました。素人なので、間違っているところも多いと思いますが、ご容赦下さい。



対象とするのは、こんなカゲロウです。カゲロウの仲間は複眼の大きな個体が♂なので、これは♂の方です。

カゲロウについては、御勢久右衛門氏が書かれた「日本産カゲロウ類」という連載記事が「海洋と生物」に出ています。

海洋と生物 1, 38 (1979); 2, 40 (1979); 3, 58 (1979); 4, 43 (1979); 5, 51 (1979); 6, 76 (1980); 7, 122 (1980); 8, 211 (1980); 9, 286 (1980); 10, 366 (1980); 11, 454 (1980); 12, 59 (1981)

ここに詳細な科と種の検索表も載っています。その他、同じ著者が「原色日本昆虫図鑑下巻」に科の検索表を載せていて、また、石綿進一氏が「原色昆虫大図鑑III」に科の検索表を載せています。

ここでは、種の検索表まで載っている「海洋と生物」の検索表を使ってみました。いつものように検索表を使って調べてみると、上の写真の個体はマダラカゲロウ科であることが分かりました。その特徴を、検索表に従って調べていきます。



前回と同じで、①などの記号は検索表の項目の番号です。それぞれの項目に対応する場所を次の写真の中でも記号で示してあります。









カゲロウの科を調べるには、もっぱら翅脈の特徴で、一部、脚の形状を使います。まず、①はFig. 1でMと書かれたM脈とCuA脈の根もとがほぼ平行であることを示しています。④はFig. 3に示すように、後肢の跗節が4節から成り立っていることを示しています。⑤はFig. 1に見られるSc脈がよく伸びていること、⑥はM脈が分岐していることを示しています。⑦も同様で、脈と脈の間に伸びる間脈や脈と脈を結ぶ横脈が発達していることを示しています。

⑧は後翅の脈に関してです。Fig.2でR4+5という脈がありますが、写真のように分岐していないことで、⑩に進みます。最後は、Fig.1のCuPとCuAが根もとで接近していることが特徴です。以上のような特徴を持つ種がマダラカゲロウ科になります。

次に種への検索です。同じく、「海洋と生物」の検索表を用いて調べると、シリナガマダラカゲロウという種に行き着きました。その時に使った検索表の項目です。



この場合の特徴はほとんどが♂の腹部先端の形状に関してです。





♂の腹部の先端はFig. 4のような構造をしています。把持子と呼ばれる♀をつかむ構造と交尾器です。この形によって種の同定をします。検索項目の(I)は把持子の先端節の大きさに関するものですが、Fig.4の個体はこの部分が小さな丸い形をしています。(V)は亜属Ephmerellaを見分ける項目で、特に刺は見当たりません。最後は、シリナガマダラカゲロウの特徴になります。交尾器が先端にいくに従って狭くなっていることと、Fig. 5に示すように前肢の脛節と腿節の長さがほぼ等しいことです。これらの特徴でシリナガマダラカゲロウだと分かりますが、検索表を使わなくても、♂の腹部先端を比較するだけで、だいたいの種類が分かるみたいです。



Fig. 6は、例によって、昔作った標本の♂の腹部先端の写真です。左はアカマダラカゲロウ、右はオオマダラカゲロウだと推定される個体です。共に、マダラカゲロウ科に属する種ですが、Fig.4とは明らかに形状の違うことが分かります。

カゲロウの検索を初めてしてみました。これまで、ガガンボ、キンバエ、オナシカワゲラ、コエグリトビケラなどの検索をしてみましたが、それらに比較するとかなり楽な感じがしました。カゲロウの種類数は日本にせいぜい140種程度と言われていますので、頑張ればかなりの種が同定できるかもしれません。

最後におまけで頭部の写真です。


意外にいかつい顔をしています。

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廊下のむし探検 アメンボ、カゲロウなど

廊下のむし探検 第233弾

もうすっかり春のような陽気になりました。そんな中で、昨日の「廊下のむし探検」ではいろいろと変わった虫に出会えました。



アメンボです。アメンボは水辺でよく見かけるのですが、マンションで見ることはほとんどありません。もちろん名前もよく知らなかったので、ちょっと調べてみました。大阪市立自然史博物館でアメンボの検索のページがありました。背中が少し赤みがかっていることや尻尾の部分の形状などから、どうやらコセアカアメンボらしいことが分かりました。あまり聞いたことがなかった名前だったのですが、山よりの池や水たまりに普通にいるそうです。



これはカゲロウですね。これも名前を調べてみようと思って、採集してきました。カゲロウについては御勢氏の概説が海洋と生物(1979)に載っています。詳細はまたの機会にしますが、行き着いた先はシリナガマダラカゲロウというマダラカゲロウ科のカゲロウでした。



変わった色の虫ですが、これはクモの仲間です。おそらくヤガタアリグモというハエトリグモ科のクモだと思います。昨年もときどき見ました。



廊下の窓ガラスの外側に変わった虫が止まっていました。裏側からしか見えなかったのですが、お腹の部分が青色に光っていて大変綺麗です。捕まえてみたら、ルリイロスカシクロバという蛾の仲間でした。



昨年、マンションの外壁にたくさん付いていたカメムシです。フタモンホシカメムシとクロホシカメムシという似た種類がありますが、昨年、採集してきて調べてみました。その結果、フタモンホシカメムシの方だったので、これもおそらくそうでしょう。今年もたくさん見られるかもしれません。



これはナミテントウかな。



ハチがいたのですが、なぜか頭を隠していたので、名前まではわかりませんでした。





今日は捕虫網と毒ビンを持っていき、ハマキガを採集してきました。展翅をして図鑑と見比べてみると、まさにピンちゃんのママさんの言われるように、2匹ともハイミダレモンハマキ♂のようでした〈ピンちゃんのママさん、どうも有難うございました)。

もう10年以上も前に、マンションの廊下にやってくる蛾を採集して標本を作ったことがありました。その時は、シャクガ科、ヤガ科、メイガ科、ツトガ科などは日本に生息する全種類の25-30%の割で標本が集まったのですが、ハマキガ科だけは小さい蛾が多いからか、8%ほどしか集まりませんでした。これを機会にもう少し集めてみようかな。



今シーズン初めてですが、アカバキリガです。



昨日も出したヒメカバナミシャクです。今日の方が綺麗に撮れました。



そして最後はフサヤガです。こんな角度から写真を撮ると、どれが頭やら腹やら分かりませんね。

廊下のむし探検 ウンカやらクモやら

廊下のむし探検 第232弾

マンションの廊下も毎日歩いていると、出てくるメンバーも固定してきます。そうすると、何か変わった虫はいないかなぁと必死に探すのですが、やはり何かはいるものです。昨日はこんな虫がいました。



ウンカの仲間です。ウンカも種類が多いので、おそらく名前までは分からないだろうなと思っていたのですが、ためしに、「学研生物図鑑 昆虫III」を調べてみると、何となくナワコガシラウンカに似ています。山地に産するとのことですが、ネットで調べると結構引っかかりました。また、近縁種がいて交尾器をということになるかもしれませんが・・・。





オナシカワゲラもいました。下の写真の個体は脚が黒いので、捕まえてきて顕微鏡で見てみるとびっくり。



頭の下の裏側に手のような形をした鰓(えら)の痕跡が左右2つずつ付いていました。おそらく、フサオナシカワゲラだと思うのですが、フサオナシの「フサ」というのは、こういうものなのかと初めて知りました。



こんなクモもいました。おそらくズグロオニグモではないかと思います。まだ小さいのですが、大きくなると気味悪くなるでしょうね。



この間もいたササグモです。



まだ小さいのですが、ザトウムシの仲間もいました。ザトウムシはクモ綱ザトウムシ目に属する「むし」です。



オオトビサシガメも時々見るようになりました。



そして、アメバチの仲間もいました。翅に途切れたような脈があるので、おそらくOphion属ですね。ちょうど標本で種の同定をしていたところだったので、ちょうどよいと思い、網を持って採集に行きました。強い風が吹いていたので、網が膨らむ方向にと思って前面から網を近づけていったら、触角に触れるか触れないかというときに、あっという間に横方向に逃げていきました。思ったよりずいぶん素早かったです。もう、残念で残念で!!

後は蛾の仲間です。



キリガの仲間ではブナキリガがやたら多かったのですが、これはクロミミキリガではないかと思います。今シーズン初めてです。



これはモクメクチバ



そして、プライヤキリバ



シャクガの仲間では、モンキキナミシャクがこの日は30匹ほどいました。ギフウスキナミシャクも数匹くらい。それに、カバナミシャクはうじゃうじゃ。その中にすっきりしたカバナミシャクも混じっていました。ヒメカバナミシャクです。カバナミシャクの中では好きな方です。

廊下のむし探検 ツチイナゴ、マツトビゾウムシ、蛾など

廊下のむし探検 第231弾

春本番になって、「廊下のむし」も佳境に入ってきました。昔、蛾の飛来数の統計を取ったことがあったのですが、その時は、3-4月、6月、9月というのが数の多い月でした。

一昨日、マンションの廊下を歩いた結果です。相変わらず蛾は数が多いのですが、その他の虫から紹介します。



ツチイナゴで、成虫越冬するバッタです。「原色昆虫大図鑑III」によれば、9月頃羽化して、そのまま越冬し、成虫は翌年の7月頃まで見られるとのことです。以前、我が家のベランダの植木鉢で一冬過ごた個体がいました。バッタというと冬はいないイメージですが、体のどこに寒さを防ぐ仕組みがあるのでしょうね。



綺麗な模様のゾウムシですが、マツトビゾウムシといいます。昨年も3月に見ていました。「マツ」という名前なので、また、松の害虫だろうと思って検索しても、意外に引っかかりません。僅かに、「アカマツ幼木の新梢を食害するマツトビゾウムシ成虫」という森林防疫ニュースの記事が見つかった程度でした。



同じく「マツ」という名のつくマツキボシゾウムシです。こちらは松の害虫としてあちこちに載っていました。先日来見ています。



こういう黒っぽいトビケラはどちらかと言うと見過ごしてきたのですが、先日、科への検索を試みたので、少しは分かるようになりました。翅脈から判断すると先日と同じコエグリトビケラ科ではないかと思います。



これも以前検索を試みたヒメヘリカメムシ科のカメムシです。ブチヒメヘリカメムシだと思います。検索表に基づいて特徴を調べていくのは面倒くさいですが、真面目にやってみると何か役に立つような気がします。



これは検索をしなくても模様で分かるマダラガガンボですね。(追記:通りすがりさんから、マダラガガンボには近縁種がいて、♂交尾器でしか区別が付けられないとのコメントを頂きました。調べてみると、慶応義塾高校の鳥居氏が2012年に講演したときの要旨が見つかりました。今度、調べてみないといけませんね。私の標本箱には♀だけがいました。写真の個体も♀でしょうか)(追記2:「日本産水生昆虫」にもマダラガガンボに近縁種がいることが書かれていました



そして、これは検索をしてみたのですが、種までたどり着かなかったオナシカワゲラ科です。今度はもう少し文献を集めて再挑戦したいと思います。



スズキクサカゲロウで顔の模様でだいたい種が分かります。

蛾はいろいろといましたが、主なものだけ載せておきます。



まず、フユシャクからです。これはホソウスバフユシャクです。



チャオビフユエダシャクです。



そして、シロトゲエダシャクです。冬の間はフユシャク、フユシャクと騒がれますが、こんなに暖かくなっても、まだ3種も見られました。フユシャクもお忘れなく!



この日はこのモンキキナミシャクもあちこちで見られました。全部で20匹くらい。昔、一日に100匹を数えたこともありました。



シロテンエダシャクも3匹いました。



キリガ類はブナキリガ、ホソバキリガ、シロヘリキリガ、そして、このスモモキリガがいました。スモモキリガは少し減ってきたようです。



ホシボシトガリバ
とか、



ハイイロフユハマキなどの早春の蛾もまだ見られました。



最後のこのハマキガ。先日も見られましたが、どうしても名前が分かりません。採集すればよかったのですが。

アメバチの属への検索の試み

アメバチと呼ばれるべっこう飴のような色のハチがいます。写真を撮っていて、たぶん、アメバチだろうなということはすぐに分かるのですが、図鑑を見ても皆似ているので、それ以上のことはなかなか分かりませんでした。先日、アメバチを撮影したとき、ちょっと調べてみたくなり、今回、手元にあるアメバチの標本を使って属への検索を試みてみました。何分、ハチには全くの素人ですので、そのつもりで見て下さい。



アメバチというのはこんなハチです。ハチの中ではかなり大型で、長い触角を持ち、細長い胴体をきゅっと持ち上げた独特の格好をします。分類的には、ヒメバチ科アメバチ亜科に属します。ヒメバチは寄生蜂で、チョウ目、甲虫目、ハエ目などの幼虫に卵を産んで、孵化した幼虫はその宿主の幼虫を食べて育ちます。アメバチの仲間にも、リンゴドクガホシアメバチとか、マツキリガホシアメバチなど、宿主の名前が付いたものが多数います。

今回、調べてみたのは次の3個体です。いずれも、以前、手当たり次第に標本を作っていた時のものです。まさか、こんなところで役に立つとは思いませんでした。



aからcまでの3個体で、サイズを合わせて撮影していますので、cが特別大きなことが分かります(アメバチの体は曲がっているので、どうやって体長を測るのかは分かりませんが、曲がっていることを考えずにそのまま測ると、cの体長は30mmほどでした)。いずれも飴色ですが、bは少し黒っぽい色をしています。

アメバチなどのヒメバチについては非常に詳しいホームページがいくつかあります。

1)神奈川県立 生命の星・地球博物館 渡辺恭平氏のホームページ
2)北海道農業研究センター 小西和彦氏のホームページ
3)American Entomological Institute

今回の検索はほとんどこの3つホームページを参考にしました。ここで謹んでお礼申し上げます。

特に、1)の渡辺氏のホームページは分かりやすく解説してあり、また、詳細な検索表も作られていたので、今回はそれを利用させていただき、アメバチの属への検索をしてみました。検索をしてみると、上の3個体は偶然にも異なる属に属することが分かりました。

順番に見ていきましょう。まず、aの個体についてです。aについては、検索の結果、おそらく、Ophion属だということが分かりました。その時に用いた検索の項目を抜き出すと次のようになります。


(神奈川県立 生命の星・地球博物館 渡辺恭平氏ホームページより抜粋引用)

①などは検索項目の番号で、ダッシュが付いているのは、YESとNOという二つの選択肢のうちのNOを選んだ場合の内容です。内容を順番に見ていきます。



検索に必要な部分を拡大して写してみました。検索表に対応する構造は図に矢印で示してあります。②'の後頭隆起線は後頭と頭頂の境界にあたる部分で、Fig. 2cにあるような黒い線がその隆起線です。隆起線のある属とない属があって、この種はあることが分かります。④aはFig.2dのように途中で途切れた脈があることで、これは写真で撮っても目立つ特徴です。④bについては、Fig.2dのように翅の一部に毛の生えていない透明域が見られますが、面積は狭く、他の属ようにこの部分に色のついた節片がないことを言っています。

④cの大腮は大顎のことで、この部分の形状が属によってかなり異なります。ねじれているかどうかは後のFig.3bと比較すると少し分かるような気がします。④dは前脚脛節の棘の部分に一般にブラシ状の剛毛が生えているのですが、Fig.2eのように特に透明な膜があることを示しています。④eはFig.2fのような丸い膨らみのことを指しているのだと思います。

⑤'aはFig.2dに示す翅脈がほぼ直線的であることを言っています。⑤'bは調べるのを忘れてしまったのですが、以上のような特徴からOphion属だろうということが分かります。

次に、bとcの個体の属を検索すると、それぞれEnicospilus属とDicamptus属になりました。その時に用いた検索表の部分は次の通りです。


(神奈川県立 生命の星・地球博物館 渡辺恭平氏ホームページより抜粋引用)

まず、bの個体について見ていきましょう。必要な部分を写真で示すと次のようになります。



bの個体はaの個体とはだいぶ異なります。詳細は図を見ていただければ分かりますが、特徴的なのは④'bで、Fig.3dを見ると、翅には広い透明域があり、その部分には色のついた節片があることがよく分かります。また、④'eではFig.3eに示すように脚の棘にくし状の剛毛がはえていますが、膜は見られません。さらに、Fig. 3bに示す大腮は途中で急に狭くなっています。これは検索表の⑦'aの特徴を示しています。ということで、この個体はEnicospilus属ではないかと思われます。



最後の大型種cはbと似た特徴を持っていますが、Fig. 4bに示すように大腮の形が途中で細くなっていないのが特徴です。そこで、おそらく、Dicamptus属だろうという結論になりました。⑦bについては、何度読んでも意味が分からず、ここでは保留にしておきます。

ということで、この3個体はそれぞれ別の属に属することが分かりました。種まで辿り着いた個体もあるのですが、それはまた次の機会にします。いろいろと特徴を書きましたが、生態写真を撮っていて最も分かりやすい特徴は、翅脈と大腮でしょう。アメバチがいたら、少なくとも翅と顔を撮ると属が分かるかもしれません。

廊下のむし探検 シミ、甲虫、蛾など

廊下のむし探検 第230弾

昨日は、朝、少し寒かったのですが、日中は結構暖かい日でした。午前中にマンションの廊下を歩いてみましたが、虫はそこそこいました。

ちょっと変わったところではこんな虫がいました。



シミの仲間です。



体がかなり光るのでしょうね。フラッシュを焚いて撮影すると、写す方向でこんなに色が変化しました。よく似た仲間にヤマトシミとセイヨウシミがいることを初めて知りました。見分け方はWikipediaや図鑑などに書かれていました。これはヤマトシミの方かなと思うのですが、あまり自信はありません。



体長といっても口吻を入れない長さは3mmほどの小さいゾウムシです。翅に半円の黒い模様があるのが特徴で、ユアサハナゾウムシではないかと思います。昨年は5月に見ていました。



体長が6mmのこの甲虫、翅に白い毛が生えているとか、黒い模様があるとか、触角が変わっているなどの特徴があります。触角から○○キノコという仲間かなと思って図鑑を探したのですが、結局、よく分かりませんでした。甲虫はなかなか難しい。(追記:キスイモドキ科のツノブトホタルモドキかも)(追記2:日本甲虫学会が出している甲虫ニュースに、八田氏による「日本産キスイモドキ科概説」(1987)という記事が出ていました。それによると、ツノブトホタルモドキは個体数が少なく、標高の高い山地に産するとのことです。私のマンションはせいぜい100mほどの標高ですが・・・。なお、甲虫ニュースのバックナンバーは日本甲虫学会で公開しています。



ムラサキナガカメムシです。ちょっと綺麗に撮れたので、また、載せておきます。この日は2匹いました。



それに、シラホシカメムシです。



ビロードツリアブがまたいました。マンションに常駐しているのでしょうか。



やや大きなガガンボがいました。この間、ガガンボの同定をしたので、少しは分かるかなと思ったのですが、Sc脈が前縁に届いている感じで、R1脈が翅端に届いているのか、Rs脈に合流しているのかが微妙で、写真ではどの科なのかも分かりませんでした。まだまだ実戦に弱いですね。



このハエ目の虫もよく分かりませんでした。こういう虫がパッと分かるようになりたいと、ハエ目の検索をしていたのですが、まだまだ経験が足りません。



オナシカワゲラも先日の検索では、結局、種までは辿り着かず、今回は調べる気にもなれませんでした(ちょっと愚痴が多いですね)。



壁に止まっていたのですが、あれっ、これは何だろうと撮影した時には分かりませんでした。でも、調べてみるといつものソトシロオビナミシャクのようです。模様にだいぶ変化があるのですね。



やや大型の蛾です。ヒゲマダラエダシャクといいます。「廊下のむし探検」初登場です。これまで、3月終わりから4月初めにかけて採集していました。蛾を集めていたわりに蛾が怖いので、このくらいの大きさの蛾にはちょっと身体が引けてしまいます。



モンキキナミシャクは相変わらずたくさんいます。



今年はカバナミシャクを調べてみようと言っていたわりには、たくさんいると見て見ぬふりをし始めました。これはソトカバナミシャクかな。


廊下のむし探検 アメバチ、チャマダラキリガなど

廊下のむし探検 第229弾

昨日は真冬並みの天気でした。昼間でも気温が6、7度ほどしか上がらず、しかも、強い風が吹きまくっていました。それでも午前中は晴れていたので、ちょっと廊下を歩いてみました。



この日の最初は蜂です。廊下でうずくまって撮影していたら、若い方が近寄ってきて、「何をしているのですか?」と質問されました。「虫を撮っているのですよ」と答えたら、ちょっと興味ある様子で眺めておられました。いつもは不審者のような目で見られているので、一人でも理解者ができると嬉しいです。

さて、この蜂。いつもならアメバチの仲間で終わってしまうのですが、今回はもう少し詳しく調べてみました。一箇所、途中で途切れたような変わった翅脈をしています。昔、手当たりしだいに標本を作っていたとき、やはりこれと同じ翅脈の蜂を標本にしていました。これらを手がかりに調べてみました。

以前にも紹介しましたが、幸い、ヒメバチについては、神奈川県立生命の星・地球科学館の方の充実したホームページがあります。そこに、アメバチ亜科の属への検索表もありました。この検索表でおおよそ調べてみると、このような脈を持った種はOphion属らしいことが分かりました。ここまで書いてきて、昨年3月30日のブログにも同じようなことを書いていたことを思い出しました。

さらに、同じホームページで種のリストを見ると、Ophion属には全部で10種が掲載されています。さらに、北大農業研究センターの小西氏のホームページには種のリスト、分布、及び、北大所蔵ヒメバチ科タイプ標本が載せられていました。また、ちょっと古いのですが、T. Uchida, J. Fac. Agr. (北海道帝国大学農学部紀要) 21, 177 (1928)(ダウンロード可能)には日本産のヒメバチについて詳細に書かれていて、この中で、Ophion属の検索表もありました〈ドイツ語ですが)。こんな情報を手がかりに、調べていくと、どうやらモンキアメバチではないかという結論に至りました。

残念ながら、標本写真がないので確かめようがないなと思っていたら、台湾の農業試験所のホームページにdigital collectionというのがあり、ヒメバチ科627種1060個体の標本写真が載っていました。この中にモンキアメバチもありました。これと比較すると、今回の個体の翅脈も体側の模様もよく似ています。まだ、いい加減な検討ですが、今度、標本を使ってもう少し詳しく調べてみたいと思っています。(追記:台湾の農業試験所の標本写真を見ていたら、Ophion flavopictus(和名なし)もよく似ています。これは、日本全国に分布し、内田(1940)により、モンキアメバチ Ophion obscuratusのシノニムとされたことがあるくらいだからきっと似ているのでしょう。残念ながら、それ以上の情報がみつかりません)(追記2:モンキアメバチ、オオアメバチ、Ophion flavopictus(和名なし)などのOphion属の種の検索表が見つかりました(K.-B. Kim et al., Kor. J. Syst. Zool. 25, 1 (2009) Open access journal)。これでなんとかなるかもしれません)



後は、この間から見かけるカワゲラです。今度、めげずにもう一度調べてみたいと思っています。



それから、これもこの間からいるマツキボシゾウムシです。模様が違うので、この間の個体とは別のようです。なぜ、今年はこんなに見るのでしょう。



蛾ではこんな個体が止まっていました。翅頂近くの台形の模様からチャマダラキリガだろうと思いますが、汚れたような白い模様があり、ちょっと変わった感じです。調べてみると、斑紋の変化が多いようです。越冬キリガです。



この間からいるマユミトガリバかなと思って撮影したのですが、よく見ると白い点があるので、ホシボシトガリバのようです。やはり早春に発生する蛾です。

この日はいつもいるスモモキリガ、ホソバキリガ、ブナキリガ、アトジロエダシャク、モンキキナミシャク、ホソバトガリエダシャク、カバナミシャク類、マエアカスカシノメイガはすべてパスして、その他の種だけを撮りました。



といっても、この間たくさん見たシロヘリキリガとか、





カバキリガとかですけど。



フユシャクは記録だと思って、すべて撮影してみることにしました。この日はホソウスバフユシャク1匹だけでした。いよいよ冬尺シーズンも終わりですね。

カワゲラの科の検索の試み(オナシカワゲラ科)

先日、マンションの廊下に小さなカワゲラが止まっていました。おそらくオナシカワゲラだろうと思うのですが、勉強のために、カワゲラ目の科の検索表を用いて調べてみました。何度も言いますが、全くの素人なので、そのつもりで見て下さい。



調べてみたのはこんな虫です。カワゲラ目成虫の科の検索表は、「日本産水生昆虫」、「原色日本昆虫図鑑(下)」などに載っていました。それで、まず、「日本産水生昆虫」を使って調べてみました。結果は予想通りオナシカワゲラ科になったのですが、そのときに使った検索の項目は次の通りです。



番号は検索表の項目番号です。この条件をすべて満足するとオナシカワゲラ科になります。そこで、1つずつ調べていきます。











まず、①の腹部第10節は第9節に・・・という部分はFig.2の左の写真を見て下さい。これは、腹の先端を背側から見たところですが、第9節が張り出していて、第10節がかなり隠れてしまっています。しかし、まだ、かなりの部分が外に現れていることを示しています。単眼があることはFig.3を見ると分かります。また、Fig. 1に示すように翅があります。

②については、Fig.4を見ると分かりますが、跗節第2節だけが短くて、第1と第3節はほぼ同長です。これで、同時に、⑥の条件もクリアです。②の口器についてはFig.5がそれに対応しますが、強く節片化というところがよく分かりませんでした。

⑦の尾については、Fig.2の写真で示しています。写真からは1節かどうかよく分かりませんが、おそらく1節なのでしょう。最後の⑧は翅脈に関するもので、オナシカワゲラ科の特徴ともいうべきX字型の翅脈がFig.1に示すようにあります。そこで、無事にオナシカワゲラ科に到達しました。

「原色日本昆虫図鑑(下)」の検索表ではもう少し簡単です。



基本的には同じで、尾の節の数、脚の跗節、X字状の脈が決め手であることが分かります。

HANDBOOKS FOR THE IDENTIFICATION OF BRITISH INSECTS vol.1 part6(ダウンロード可能)という本では、さらに簡単になり、



となります。要は、尾が短くて、跗節第2節が短くて、X字状の脈があればオナシカワゲラ科であることが分かります。

そこから先は、Fig.2の腹の先端の構造を見ていくことになります。ここからはよく分かりませんが、肛側板が小さな内葉と大きな外葉に分かれるのがオナシカワゲラ属で、これが内葉、中葉、外葉に3つに分かれ、複雑な形状を取るのがそのほかの属です。

Fig.2右で肛側板と書いてある部分が大きな外葉だとすると、この種はオナシカワゲラ属かもしれません。種の同定には交尾器を比較しなければならないので、交尾器の図を集めなければなりません。淡水ベントス研究所というページにはカワゲラ目の種のリストがありますが、それによれば、オナシカワゲラ属には32種が記録されています。ネットや図鑑からそのうち18種までは情報を集めることができたのですが、この中には残念ながら似たような種は見つかりませんでした。(追記2017/04/16:淡水ベントス研究所のHPが移転していたのでリンクを変更しました

その代わり、昔、作ったカワゲラ標本の種が分かりました。



体長は1cmほどの小さな個体ですが、この写真のようにX字型の脈はよく見えています。



これは背側から見た腹部の先端ですが、尾の先端に黒くて鋭いカギ状の爪のようなものが見えています。この特徴から、トゲオナシカワゲラ・グループであることが分かります。また、その爪の形から、おそらく、オナシカワゲラ Nemoura fulvaだろうということが分かりました。

カワゲラ目の科の検索を行った感想としては、ともかく情報が少ないことです。検索表に書いてある用語を示す図が見つからなかったり、交尾器の図がなかなか集まらなかったりと、ともかく大変でした。

廊下のむし探検 ヤマトクサカゲロウほか

廊下のむし探検 第228弾

4月が近づいてきて急に虫の数が増えてきました。冬の間は、見つけた虫はすべて撮影していたのですが、とても追いつかなくなりました。今日見た蛾は全部で51匹。これからは今年初見の虫を中心に載せることにします。

まずは、蛾以外の虫から。



クサカゲロウは緑色だと思っていたら、こんな色のクサカゲロウもいました。珍しいので、いつものチャック付きビニール袋に入れておいたら、潰れてしまっていました。でも、顔の模様は見ることができて、千葉大のページの写真と比較するとヤマトクサカゲロウみたいです。ネットで調べると、こんな色になるのは越冬型だそうです。そういえば、ホソミオツネントンボも越冬型は薄茶色でしたね。



カワゲラもいました。先日、1匹採集してきて同定してみたのですが、アミメカワゲラ科までは辿り着いたのですが、「日本産水生昆虫」にはぴったりと来るものがなくて、種の同定までは至りませんでした。今回は採集はしなかったのですが、先日の個体と比べると翅脈が少し異なるようです。触角を真っ直ぐ前に伸ばして、面白い格好で止まりますね。



大きそうに見えますが、実は、体長は数ミリの小さなカメムシです。Y字型の模様が目立ちますが、ムラサキナガカメムシです。「日本原色カメムシ図鑑第1巻」ではナガカメムシ科と名前がつくのは、ナガカメムシ科とメダカナガカメムシ科の2科だけだったのすが、第3巻ではえらいことになっていて9科もあります。しかも、ナガカメムシ上科には11科。このムラサキナガカメムシはマダラナガカメムシ科に入れられていました。



白い点が小さいからシラホシカメムシだといつも思っていたのですが、「日本原色カメムシ図鑑第3巻」には検索表が載っていました。それによると、「革質部の先端は、小楯板の先端を明らかに超える」という点でムラサキシラホシカメムシ、マルシラホシカメムシと見分けるようです。革質部は両側にある翅の固い部分、小楯板は中央の三角形の部分を指します。この写真では翅の革質部の方がやや長いので、おそらくシラホシカメムシで合っているでしょう。

次は蛾です。





「廊下のむし探検」初登場です。でも、実はよく見る蛾で、シロヘリキリガといいます。いかにもシロヘリと名前を付けたくなるような模様をしています。この日は全部で3匹いました。



プライヤキリバです。「大図鑑」や「標準図鑑」に書かれているこの蛾の記述は大変面白いので、いつも引用させていただいています。でも、自分自身では見たことがありません。図鑑によると、プライヤキリバは6月頃羽化し、まもなく石灰洞、廃坑洞、トンネルなどで越夏休眠して、そのまま同じ洞窟で秋冬も過ごし、翌春洞外に出るとのことです。洞窟では時には集団で越夏休眠するようです。分布の制限には食草よりも、温度湿度環境が整った洞窟の有無が優先されるという変わった蛾です。





アカモンナミシャクです。翅の縁に赤い紋があるのでこんな名前が付いたのでしょう。緑色の蛾は綺麗なので、好きです。昨年は3月20日が初見でした。

以上が今年初の蛾です。その他気のついた蛾は・・・



亜外縁線が滑らかに外縁に沿っているので、おそらくブナキリガだと思うのですが、腎状紋や環状紋が小さく、全体にピンク色の鱗粉で覆われているので、ちょっと変わった感じがしました。この日は同じような蛾が2匹いました。



この間登場したカバキリガがまたいました。



模様が綺麗なので、つい写してしまいます。ウスベニスジナミシャクです。この日は3匹もいました。



そして、最後はマユミトガリバです。早春の蛾で、先日が初見です。

この他にもいろいろといました。多いものでは、ハスオビエダシャク、ホソバキリガが5匹、ブナキリガ、モンキキナミシャク、アトジロエダシャクが3匹などでした。カバナミシャクも全部で8匹いました。これからがいよいよ大変ですね。


廊下のむし探検 蛾の巻

廊下のむし探検 第227弾

朝は蛾以外のむしを報告したので、残りの蛾について報告します。実は、カバナミシャクがよく分からなくて、困っていました。

まずは今年初見の蛾からです。



これはキリガの仲間でカバキリガです。春に出てきます。今年初めてみました。



これはトガリバガ科のマユミトガリバです。やはり早春の蛾です。



綺麗な蛾です。シャクガ科のウスベニスジナミシャクといいます。やはり早春の蛾です。



同じくシャクガ科のモンキキナミシャクで、早春の蛾です。



いつでも見られるマエアカスカシノメイガですが、今シーズンは初めてだと思います。昨日だけで今年初見の蛾をこれだけ見ました。

この他、いつものスモモキリガ、ホソバキリガ、ギフウスキナミシャクのほか、



アトジロエダシャク



それに、フユシャクではチャオビフユエダシャクが2匹、



それに、ホソウスバフユシャクが4匹もいました。今年は本当にホソウスバが多い感じです。

さて、問題のカバナミシャクですが・・・。



内横帯が強く屈曲しているので、ナカオビカバナミシャクかその仲間だろうと思います。



内横帯はあまり強くは屈曲していませんが、他の特徴は似ている感じです。



これも内横帯はやや強く曲がっていますが、全体の感じがちょっと違います。モンウスカバナミシャクかなと思うのですが、ほとんど根拠はありません。





このカバナミシャクはだいぶ感じが違います。おそらくソトカバナミシャクだと思います。この日は3匹いました。と言った具合に、カバナミシャクはいつも名前調べに困ってしまいます。昨年は見て見ぬふりをしていたのですが、今年は少し同定をしてみようかなとも思っています。

廊下のむし探検 蛾以外の虫たち

廊下のむし探検 第226弾

もう春になったのでしょうね。昨日は実にたくさんの虫がいました。おまけに午前と午後では違うだろうかと思って歩いてみたので、余計に虫の数が増えました。午前10時頃と午後3時頃に歩いてみたのですが、午後に歩いてみても蛾はほとんど午前と同じ所に止まっていて、ちょっと減っただけでした。その代わり、甲虫やカメムシが増えていました。

あまりにたくさんの虫が出たため、虫の名前調べが追いつかなくなり、特に蛾はカバナミシャクがたくさんいて、お手上げ状態になってきたので後に回して、まず蛾以外の虫について紹介します。



まず名前調べの苦手な甲虫からです。最初はハネカクシの仲間です。図鑑を見てもどれも似ていて、どこをみてよいのか分からず、いつもお手上げです。ハネカクシという名前ですが、よく見ると翅が少し見えています。



次は、エンマコガネというところまではいつも辿り着くのですが、そこから先がどうにも進めません。今回もエンマコガネの仲間ということにしておきます。



全体の形からマルガタゴミムシかなと思うのですが、やはりそこから先が進めません。やはりちゃんと採集してきて、調べてみないといけないのでしょうね。ただ、今はオナシカワゲラやハエが消毒用アルコールに浸けられて、出番を待っている状態なので、とてもこれ以上はできませんね。



この間いたマツキボシゾウムシもいました。ひょっとしたらこの間と同じ個体かもしれません。甲虫では、このほか、ナナホシテントウが何匹かいました。



これはシロヘリナガカメムシだと思います。この日は2匹見ました。



この間調べたヒメヘリカメムシの仲間もいました。これは後脚腿節の内側が黒いので、ブチヒメヘリカメムシの方でしょう。カメムシでは、この他、クサギカメムシ、アオモンツノカメムシが2-3匹ずついました。






この間見たビロードツリアブがまたいました。ひょっとするとこの間と同じ個体かもしれません。普段は飛び回ってなかなか止まってくれないのですが、この日はじっとしていたので、いつもと違う角度からパチリ。



こんなカワゲラもいました。先日、オナシカワゲラを調べたので、ついでにと思って採集してきました。羽化に失敗したのか、前翅がちょっとねじれています。「日本産水生昆虫」にある成虫の検索表を用いて、調べてみました。節第1節の長さ、口器の形、幼虫の時の鰓の痕跡、翅脈などを調べて、アミメカワゲラ科までは辿り着いたのですが、そこからが進めません。もう少し調べてみます。とりあえず、アルコール漬けに。



これはササグモでしょうね。



これはヤミイロカニグモかな。



この間のアカタテハがまだいました。この日は窓際で止まっています。アカタテハの足は確か4本だったなと思って写してみました。確かに4本みたいです。ネットを調べると、実は、4本は中脚と後脚で、前脚は別にあって、歩行には役立たないが、感覚器官として役立っていると書いてありました。



どれが前脚なのかなと思ってもう一度写しに行きました。①は下唇鬚だと思うので、②がそうなのでしょうか。せっかく長い期間越冬してきたのに、今捕まえるのは気の毒な感じがしたので、今度捕まえた時にでも調べてみたいと思います。

廊下のむし探検 ビロードツリアブ、アカタテハなど

廊下のむし探検 第225弾

3月も半ばになってしまいました。マンションの廊下には先日来たくさんの蛾が見られるようになりました。いつもは午前中に歩いているのですが、昨日は午後3時頃に歩いてみました。朝とはだいぶメンバーが代わっているようです。



まずは、ビロードツリアブです。3月終わり頃から4月にかけて見られる春の昆虫です。野外ではよく見るものの、廊下では珍しいなと思って調べてみると、実は昨年も3月16日に見ていました。ほんの1日違いです。寒いのかじっとしているので、ちょっとアップで撮ってみました。



こんなチョウもいました。防火扉の隙間に半分入ってじっとしています。撮影しているときは、アカタテハかヒメアカタテハかよく分からなかったのですが、家に帰ってから裏側の模様を図鑑と比較してみると、アカタテハの方でした。どこかで越冬していたのでしょうね。



体長数ミリの小さいゾウムシです。色がはっきりしていて拡大すると結構綺麗です。これはすぐに分かるだろうなと思って、「原色日本甲虫図鑑(IV)」を3度も見直したのですが、見当たりません。外来種かなと思って、「ゾウムシ 外来種」で検索してみたのですが、やはり見つかりません。ほとんど諦めていたのですが、図鑑に載っているキボシヒメゾウムシ辺りと色は違うのですが、何となく模様が似ているなと思って、画像検索してみると見つかりました。マツキボシゾウムシのようです。ちゃんと図鑑に載っているのに、気が付きませんでした。

「マツ」という名前が付くので、やはり松の害虫のようです。調べてみると、アカマツ、クロマツなどの幹の樹皮の下に幼虫が潜るようです。普通は丸太や枯れ木につくが、衰弱した木にもついて枯らしてしまうそうです。私のマンションにはマツという名前の虫がやけにたくさんやってきます。マツキボシゾウムシのほか、マツヘリカメムシ、マツノキクイムシ、マツキリガ・・・。これらは皆、松の害虫のようです。我が家の周辺の松は大丈夫でしょうか。







ハエ目の昆虫もいろいろといました。今回は採集してきたので、今度、科の検索をしてみたいと思っています。最後の種は特徴的な翅脈なのでタマバエ科かな。(追記2016/02/10:上から二番目はヤチバエ科ブチマルヒゲヤチバエ、一番下はニセケバエ科)(追記2018/02/14:一番上のハエはトゲハネバエ科かなと思われます。詳しくはこちらを見てください



オナシカワゲラの仲間も2匹いました。これも採集してきて、実体顕微鏡でじっくりと観察してみました。種を同定する時、カワゲラの♂は腹部の先端を背側と腹側から観察し、♀は腹側から交尾器を観察します。乾燥してしまうと縮んでしまいほとんど分からなくなるので、採集してすぐ観察してみました。これは♂の方でオナシカワゲラ属かなと思われる程度で、文献が揃わないので、なかなか種までは行き着きません。消毒用アルコールを買ってきて、とりあえず漬けておきました。



これはおそらくミスジハエトリです。綺麗な模様です。やはりじっとしていました。今頃の季節、カメラを近づけても、ハエ以外のものはたいがいじっとしています。

蛾はいつもの常連たちです。



フユシャクはこのシロフフユエダシャク1匹だけでした。





ヒロバトガリエダシャクホソバトガリエダシャクです。



キリガはこのブナキリガだけでした。蛾は夜、明かりを求めてやってくるのですが、どうやらお昼ごろにはにどこかに行ってしまうようです。



最後のハマキガ。白い点のように見えるのが、実際に白い模様なのか、鱗粉が立っていて、フラッシュの光で光っているのかが分かりません。図鑑や手元の標本と比べてみたのですが、名前が分かりませんでした。採集してくればよかったのですが・・・。

廊下のむし探検 春の虫がいっぱい

廊下のむし探検 第224弾

昨日は強い雨が降っていました。吹き降りで廊下もびちゃびちゃです。こんな日は「廊下のむし探検」をお休みしようと思っていたら、「廊下に虫がいっぱいいるよ」という声がどこからともなく聞こえてきました。勇んで行ってみると、その声の通り、蛾がいっぱいいました。大体はいつもの蛾だったのですが、中には今年初めての蛾もいました。

まず、その新入りから。



ハスオビエダシャクです。昨年は3月9日が初見だったので、だいたい同じ時期に見ていますね。



あまりパッとしない蛾ですが、シロテンエダシャクです。これも昨年は3月9日が初見でした。この日は2匹いました。



これはヨスジノコメキリガで、越冬組です。昨年は3月21日に見ていました。

後はいつもの連中です。まずフユシャクから。



あれほどたくさんいたシロフフユエダシャクがまったく見えなくなり、今はこのシロトゲエダシャクが主流になっています。この日は2匹いました。



いつものクロテンフユシャクです。



ホソウスバフユシャクです。翅脈上で濃い短い線が何本もあるのですぐに分かります。ホソウスバはこれまでちょっとしか見られませんでした。最近は毎回のように見られます。この日も2匹。1シーズンにこんなにたくさん見たのは初めてです。今シーズンはクロスジフユエダシャクといい、シロフフユエダシャクといい、大発生している感じですね。今年は鳥が少ないという話をよく聞きますが、それと関係しているのでしょうか。



多いといえばオカモトトゲエダシャクも多いですね。この日も3匹見ました。



これは前回も登場したホソバトガリエダシャクです。



キリガ類はこのブナキリガのほか、



スモモキリガ



ホソバキリガ



キバラモクメキリガ



それに、マツキリガがいました。マツキリガは地下駐車場にいたので、前回と同じ個体かもしれません。模様がよく見えたので、もう一度写しました。





それから、小さな甲虫と小型のクモがいました。ちょっと調べただけだと名前が分かりませんでした。もっと頑張って調べたら名前が分かったかもしれませんが、昨日からオナシカワゲラを調べていて、それで頭がいっぱいで調べる元気が出ませんでした。どなたかご存知の方はお教え下さい。(追記:上の写真は、通りすがりさんから、マグソコガネ亜科の一種だと教えていただきました

廊下のむし探検 最後のフユシャクか

廊下のむし探検 第223弾

3月も中旬になり、早春の蛾が続々登場してきました。そんな中、まだフユシャクを何種類か見ることができました。





私のマンションではもっとも遅く発生するフユシャクで、シロトゲエダシャクといいます。昔、調べた時には、3月中旬から4月上旬にかけて、シーズン平均4匹程度見ていました。この日は2匹見ることができました。こんなに暖かくなってフユシャクというのも何か違和感がありますね。





その他にも、クロテンフユシャクが2匹、ホソウスバフユシャクとシロフフユエダシャクが各1匹いました。シロフフユエダシャクは一時期の大量発生と比較するとずいぶん数が減ってきました。






その他の早春の蛾です。ヒロバトガリエダシャク〈上)とホソバトガリエダシャク(下)です。



ギフウスキナミシャクもこの日は2匹見ました。



私の苦手なカバナミシャクもいました。よく似た模様の蛾にウスカバナミシャク、ナカオビカバナミシャク、モンウスカバナミシャクなどがあるのですが、正直言って区別が分かりません。ウスカバやモンウスカバではないような気がして、いつも、ナカオビカバナミシャクかなぁと思ってしまうのですが・・・。



地下駐車場にはオカモトトゲエダシャクがいました。車が止まっているので、後ろからしか写せなかったのですが、後ろから写すと何が何だか分かりませんね。



キリガの仲間ではマツキリガがいました。大変派手な蛾です。マツという名前が付いているので、おそらく松の害虫だろうと思って検索してみたのですが、確かに害虫ではあるもののそれほど注目されてはいないようです。



これはホソバキリガかなと思って写したのですが、ブナキリガの方かな。

その他の昆虫です。



複眼が大きくて、翅が濁っているので、マダラカゲロウの仲間の♂の亜成虫のようです。名前までは分かりません。今度、カゲロウの検索もやってみたいですね。



これはオナシカワゲラの仲間です。名前を調べてみようと思って採集してきたのですが、検索表に書いてある用語の意味が分からなくて、なかなか思うようには進みません。まだまだ修行が足りないようです。河川環境データベースにある生物種目録によれば、オナシカワゲラ科には64種も登録されていました。なかなか大変な作業になりそうです。

トビケラの検索(コエグリトビケラ科)

先日、マンションの廊下の壁に黒っぽい小さなトビケラが止まっていました。ちょっと前にトビケラの科の検索を行ったことがあったので、今回もやってみようと思って採集してきました。



止まっていたのはこんなトビケラです。翅の長さが1cm足らずの小さなトビケラです。いつもだったら、絶対に見過ごすところなのですが、今回はちょっと調べてみようと思って採集したのです。



採集してから実体顕微鏡で観察し、その後、展翅したら、翌日には立派な標本になっていました。そこで、もう一度、展翅を外して実体顕微鏡で詳しく調べ直してみました。

「原色昆虫大図鑑III」に載っているトビケラの科の検索表を使って調べていくと、最終的にコエグリトビケラ科♀にたどり着きました。その時使った検索表の項目は次の通りです。



これを写真で確かめていきます。








追記:Fig.5を改変しました

番号は検索表の項目の番号です。まず、項目2の単眼については、Fig.2を見ていただくと分かるように、単眼があります。従って、ここはYESになります。次に項目3については、Fig.3を見ていただくと、小顎肢には全部で5節あるので、ここはNO、次の項目6もNOになります。

次の項目8は分かりにくいのですが、Fig.5の脈が先端で分岐するかどうかについての項目です。どの部分をいうのかよく分からなかったので、文献を調べてみると、"The Insects and Arachnids of Canada" Vol. 7という本(download可能、ただし、フランス語)の中で、Fig. 286にApatania属(コエグリトビケラ属)の翅脈の図が出ていて、Fig. 5に載せたようなIからVまで番号が振られていました。おそらく、これのことだろうと思って見てみると、前翅、後翅ともにIV叉がないので、この項目はNOということになります(実は、項目8については最初無視して、後から付け加えました)。

項目9と11は小顎肢の節の長さに関するものです。項目9はFig.3でも見えるように、第5節は第4節とほぼ同長なのでNO。項目11は写真では分かりにくいのですが、第1節は第2節より明らかに短いので、ここはYESになります。

項目12は翅脈に関するものです。Fig.5を見ると、後翅のM脈は末端で3つに分かれています。従って、NOということになります。項目13はFig.4のように、前脚脛節の距は1本だけなので、YESです。最後に、項目14は前翅長に関するものなので、測ってみると約9mmでYESとなり、コエグリトビケラ科の♀にたどり着きました。(追記:翅脈の名称を電子ジャーナルの文献 S. Chuluunbat et al. Mongolian J. Biol. Sci. 8-1 (2010)Apatania mongolicaの図に従って書き換えました。M脈の名前の付け方が間違っていました。文章もそれに従って変更しました

「日本産水生昆虫」によると、コエグリトビケラ科は近年エグリトビケラ科の亜科から独立した科で、日本にはイズミコエグリトビケラ属、コエグリトビケラ属、イワコエグリトビケラ属、クロバネトビケラ属の4属が知られているそうです。それぞれの属に属する種については「トビケラ専科」というホームページに詳しく載せられています。

コエグリトビケラ科の属への検索は「日本産水生昆虫」に出ていました。これもたどっていくと、結局、コエグリトビケラ属に辿り着くのですが、その時使った検索の項目は次の2項目です。






項目1の「後翅の中室は閉じる」についてはだいぶ迷いました。翅脈の名称が分からなくて、中室の位置もよく分からなかったからです。先に紹介した"The Insects and Arachnids of Canada" Vol. 7のFig. 286はApatania zonellaというコエグリトビケラ属の種の翅脈が載っていました。さらに、ネットで調べていると、Chuluunbatの論文にApatania mongolicaの翅脈とその名称が載っていました。これらの図を参考に中室の位置をFig. 5のようにmと書くと、確かに中室は開いています。また、展翅前に撮影した中胸小盾板(Fig.6)を見ると、瘤状隆起は明らかに2つです。これらの結果から、項目1をNOにしました。(追記:翅脈の名称を電子ジャーナルの文献 S. Chuluunbat et al. Mongolian J. Biol. Sci. 8-1 (2010)Apatania mongolicaの図に従って書き換えました。M脈の名前の付け方が間違っていました。文章もそれに従って変更しました)(追記:Fig. 5に加えたnygmaという点は、Encyclopedia of Entomology 2nd ed. p. 2655-2658によると、トビケラ目、シリアゲムシ目、ハチ目などで見られる構造で、機能的にはよく分かっていないのですが、発生段階で翅脈が分岐するときに必要とされる構造かもしれないとのことです)(追記:Fig.5の後翅の矢印の部分はApatania zonellaの翅脈では離れているので、翅脈が交差していると考えるよりも、2つの翅脈が接していると見た方が良いようです

項目3の前翅のSc脈はFig.5に示すように、c-r横脈のところで止まっています(矢印の部分)。従って、YESとなり、コエグリトビケラ属にたどり着きました。実際、Apatania zonellaApatania mongolicaの翅脈と比べてみるとよく似ているので、間違いなさそうです。

ここから、種への検索は手立てがなかったのですが、「トビケラ専科」によるとヒラタコエグリトビケラApatania aberransが最も普通にいる種ということなので、文献を調べてみました。ビワコエグリトビケラの記載論文(H. Nishimoto, Jpn. J. Ent. 62, 775 (1994))の中に、ヒラタコエグリトビケラ♀の交尾器の図(Fig. 5)が出ていました。



その図と写真(Fig. 7)とを比較すると、非常によく似ているので、おそらくヒラタコエグリトビケラで間違いないと思うのですが、どの程度似ていればよいのか分からないので、今回はヒラタコエグリトビケラ近傍の種というのが結論になります。

いつも見過ごしているトビケラですが、種まで分かってたいへん楽しくなりました。これからもどんどん調べてみたいなと思います。

廊下のむし探検 フユシャクもう1種

廊下のむし探検 第222弾

今年はフユシャクが多い感じがします。今シーズン13種目のフユシャクが出てきました。



チャオビフユエダシャクです。昨年は1日違いの3月10日だったので、ちょうど今頃出てくるのですね。10年以上前に8年間観察した結果では、2月中旬から3月下旬にかけて発生し、最盛期は3月上旬から中旬でした。このときはシーズン平均4.1匹を観察していたので、まずまずよく見る方です。





ホソウスバフユシャク
は多い気がします。今シーズンはこれで4匹目。過去のデータでは3月上旬から下旬にかけて発生し、シーズン平均で1.8匹でした。



シロフフユエダシャク
はこの日も3匹いました。過去のデータではシーズン平均7.9匹、多い年で23匹も見た年もありました。この時は毎日廊下を歩いて調べたのですが、今年は2、3日に1回の割で、すでに36匹を見ています。廊下にくる数から判断して、今年は大発生しているのではないでしょうか。



このごつい感じの蛾も早春の蛾です。シャクガ科のアトジロエダシャクです。後翅が白いのでこんな名前が付けられています。



いつもの常連のスモモキリガ。この日は2匹いました。



ホソバキリガはこの日は3匹。



今年の新人はこの蛾です。といっても模様がはっきりしなくて、名前がよく分かりません。翅にまだら模様があるので、初め、越冬組のクロチャマダラキリガかなと思って調べていたのですが、翅形がどうも違います。結局、春キリガのクロテンキリガかなというところに落ち着いたのですが、はっきりしません。春キリガは旧ヨトウガ亜科に入って、複眼に毛が生えているのですぐに分かります。残念ながら採集はしてこなかったので・・・。(追記:山猫さんから、「クロテンキリガです」とのコメントをいただきました

その他の虫です。



ツヤアオカメムシです。



最後はトビケラです。トビケラは先日、科までの検索をしたので、今回は採集して調べてみました。結果はコエグリトビケラ科のヒラタコエグリトビケラあたりの♀というところまで辿り着いたのですが、それについてはまた今度書きます。

廊下のむし探検 常連さんばかり

廊下のむし探検 第221弾

昨日、今日と寒い日が続いています。こんな日は何もいないだろうなと思いながらも、マンションの廊下を歩いてみました。いることはいたのですが、常連さんばかりでした。



翅にある2つの黒い点が目印です。ヤガ科のスモモキリガです。この間から出ています。



こちらはホソバキリガです。これもこの間から出ています。



フユシャクもぽつぽつ出ていました。これはシロフフユエダシャクです。この日は3匹いました。マンションの廊下に来る数から見ると、今年は大発生しているのではないかと思われます。



こちらはホソウスバフユシャクです。これも今シーズン2匹目です。



この小さな蛾はフユハマキかなと思って撮影しました。図鑑を見てみると、たぶん、ウスグロフユハマキかなと思うのですが、少し模様が違うところが気になります。(追記:通りすがりさんから、ハイイロフユハマキのバリエーションではないかというコメントをいただきました。図鑑をよく読むと、ウスグロは10-11月発生、ハイイロは2-3月発生と書いてあるので、今頃の時期に見られるのはハイイロの方みたいです



アオモンツノカメムシです。マンションの外壁に止まってじっとしていました。



その他、ナナホシテントウもいました。これで全部でした。

ミラーレス一眼で顕微鏡写真

これまで実体顕微鏡や生物顕微鏡写真は、NIKONの一眼レフD90を取り付けて撮影していました。最近、ミラーレス一眼が売りだされ、コンパクトで使いやすいというので試してみたくなりました。



この写真のようなデジスコ用の構成にしてみました。本体はNikon 1 V1です。中古でボディだけ購入しました。売り出し時に比べると、驚くほど安く手に入ります。これにデジスコ用に売りだされているNikon DSA-N1を購入し、これも、デジスコ用にと以前購入していたWIDE DSという接眼レンズに取り付けました。



取り付けるとこんな感じになります。残念ながら、これだけではどこにも焦点が合わないのでカメラにはなりません。



実体顕微鏡に取り付けると、こんな感じになりました。焦点が合う位置にカメラを置こうと、手元にあるいろいろなものを間に入れてみました。実体顕微鏡はオリンパス製のSZX7です。このカメラポートに以前紹介したNikon Fマウントアダプターを取り付け、さらに、中国製の接写リング「近摂接圏」を入れて、それに、上の組み合わせを差し込むとほぼ焦点が合いました。生物顕微鏡の方は「近摂接圏」を間に入れるだけで焦点が合いました。

カメラは差し込んだだけで固定はしていないのですが、リモコンを使ったエレクトロニックシャッターを使うと振動がないので、このままでも十分使えそうです。ピント合わせは基本的にマニュアルフォーカスですが、画像が拡大できるので、ファインダーを見ながらでも十分うまく合わせることができました。また、撮影モードもマニュアルの他、絞り優先(A)モードも選べるので、明るさの調節をしなくてよいだけ楽に撮影できます。



いつもの通り、対物ミクロを用いて分解能を調べてみました。実体顕微鏡のズームの最大倍率5.6xで撮影した画面が上の通りです(トリミングはしていません)。中央の目盛の部分を左上に拡大していますが、10ミクロン間隔の目盛がはっきり見えます。

Nikon 1 V1の撮像素子の大きさは13.2 x 8.8 mm^2で、これが3872 x 2592 pixel^2に当たるので、素子一つの大きさは13200/3872=3.4ミクロン/pixelであることが分かります。画像から目盛間隔の10ミクロンが16.7ピクセルに相当することが分かるので、これから、接写倍率を計算してみると16.7*3.4/10=5.68倍になります。ズーム倍率とほぼ同じなので、上の接眼レンズとDSA-N1の組み合わせは約1倍の撮影倍率に相当することが分かります。また、目盛間隔から目盛線幅を見積もってみると、2.8ミクロンになっていました。



対物ミクロを生物顕微鏡の40xの対物レンズで撮影したものが上の写真です(トリミングはしていません)。これから、接写倍率と目盛線の幅を出してみると、42.2倍、1.25ミクロンになりました。

実体顕微鏡でズーム倍率を変化させ、また、生物顕微鏡で対物レンズを変えながら測定した結果をグラフにまとめてみました。



横軸は10ミクロン目盛間隔をピクセル単位で書いたもので、ピクセルを実際の長さに変えると接写倍率にもなります。縦軸は目盛線の見かけの幅をピクセル単位で書いたものです。倍率が上がれば、目盛線の見かけの幅も比例して広がっていくので、この比例関係から目盛線の実幅がほぼ1.25ミクロンであることが分かります。

逆に、倍率が下がると目盛線の見かけの幅は比例せず、途中で一定値に落ち着くので、この値からカメラ(接眼レンズとDSA-N1の組み合わせを含めた)の空間分解能はほぼ4ピクセルであることが分かります。つまり、分解できる最小の大きさが4ピクセルということになります。この値から、生物顕微鏡で40xでは、(検出器としてのカメラの分解能として)原理的に4*3.4/42.2=0.32ミクロンまで分解できることになりますが、実際には回折効果があるので、そんなに細かいところまでは見えないでしょう。一方、実体顕微鏡のズーム最大(5.6x)では、4*3.4/5.68=2.7ミクロンが分解能の限界になります。

生物顕微鏡の10xの対物レンズを用いて、キモグリバエという体長約2mmのハエを深度合成を用いて写してみました。



顕微鏡の焦点位置を少しずつ変えながら、全部で41枚の写真を撮り、combineZPというフリーソフトで合成したものです。これだけ見ると何が何だか分かりませんが、同じ領域を実体顕微鏡で撮影したものが次の写真です。



この写真と比較すると、かなり細かいところまで写っている感じですが、全体に少し平坦な感じになっています。照明をリング照明にしたせいかもしれません。もう少し工夫が必要みたいですね。


廊下のむし探検 早春の蛾の続き

廊下のむし探検 第220弾

今日は冬に逆戻りのような寒さでした。でも、先日の春のような陽気で羽化してしまった蛾たちには、もうどうしようもないのでしょうね。今日も春の蛾が何匹も見られました。





この間から出始めたオカモトトゲエダシャクです。今日は3匹いました。いつ見ても変わった止まり方をしています。この蛾が飛び立つ瞬間を見てみたい感じです。でも、いつもじっと止まったままでいます。





春キリガはスモモキリガホソバキリガの2匹だけでした。他にも越冬組のキノカワガとフサヤガがいたのですが、先日と同じ個体かもしれないので、今日は省略です。



シャクガの仲間ではこのギフウスキナミシャクが出ていました。これも春に発生する蛾です。この名前が「岐阜」に由来するとすると、ギフチョウと同じく、名和昆虫博物館の名和靖氏に由来するのでしょうか。



これも早春の蛾で、カバナミシャクです。おそらく、マエナミカバナミシャクではないかと思います。私はこの手の蛾が出てくるとちょっと憂鬱になります。似た種があまりにも多いからです。昨年は廊下に止まっていても、見て見ないふりをしていました。今年はちょっと頑張ってみようかなと思っています。



フユシャクも相変わらず多いです。このシロフフユエダシャクは全部で8匹いました。



今日はそれに加え、シモフリトゲエダシャクもいました。冬の文字がついていませんが、これもフユシャクの仲間です。



カメムシではアオモンツノカメムシがいました。


廊下のむし探検 早春の蛾、続々々

廊下のむし探検 第219弾

昨日は2月最終日。まだまだ、冬真っ盛りのはずなのですが、日中の気温は15度を越え、4月の陽気だったそうです。その影響か、私の住むマンションでも早春の蛾が続々と登場しました。長い間、マンションの廊下の蛾を見てきたのですが、こんなに早くからたくさんの蛾で出てきたという記憶はありません。



まず、春キリガからご紹介します。これはブナキリガです。二つの大きな丸は外側から、腎状紋、環状紋と呼んでいますが、これが大きくて、外側を走る白い筋(亜外縁線)が、ほぼ真っ直ぐなのが特徴です。



こちらはホソバキリガです。二つの紋が小さく、亜外縁線が後縁付近で大きく曲がっています。





こちらはスモモキリガです。二枚目の写真は見た感じがだいぶ違いますが、線や点線の位置などを調べるとスモモキリガに似ていました。いずれも腎状紋の下半分が黒くなっています。基本的には上の写真のように、亜外縁線に沿って二つの黒い点があるのが特徴ですが、はっきりしない場合には茶色の点として残っています。

越冬組も次々と顔を出しました。



前日もいたカシワキボシキリガです。



木切れにそっくりなキバラモクメキリガ



そのキバラモクメキリガにそっくりな仲間もいました。昨年末にも見られた蛾です。標準図鑑によると、ヒロバモクメキリガとハネナガモクメキリガという2種がいて、外見上はそっくりなので、交尾器で調べる必要があるとのことです。♂交尾器は外部からでも調べることができると図鑑には書いてあったので、採集してきて、実体顕微鏡で観察してみました。



この写真は後ろからの覗いてみたところです。黒い部分が交尾器の一部です(照明が白く輪のようになっているのはリング照明を用いたからです)。交尾器の立体的な構造がよく分かりませんが、これがバルバと呼ばれる把握器の先端にあるククルスと呼ばれる部分だとすると、それが二股に分かれるのがハネナガ、分かれないのがヒロバだそうです。写真では先端は尖っていますが、二股ではないので、ヒロバモクメキリガの方かなと思うのですが、自信はありません。



この奇妙な止まり方の蛾も越冬組でヤガ科フサヤガ亜科のフサヤガです。この日は2匹いました。



木の幹に止まると保護色でまったく分からなくなるのですが、こんな白い壁に止まるとよく目立ちます。お馴染みのキノカワガで、やはり越冬組です。以前はヤガ科に入れられていたのですが、標準図鑑ではコブガ科キノカワガ亜科に入っています。



これは小型の蛾でマエシロモンキノカワガといいます。同じキノカワガという名前が付けられていますが、こちらはコブガ科リンガ亜科です。この蛾は早春組です。



前日にもいたクロモンキリバエダシャクで早春組です。前日と同じ個体かなと思って模様を比べてみたのですが、少し違うので別の個体のようです。



フユシャクの方はこのシロフフユエダシャクだけでした。ただ、この日は8匹も見られました。何やら大発生している様子です。



小さいハマキガです。前日いたハイイロフユハマキと感じは似ていますが、色合い濃くて白い帯のあるところが違っています。採集してきて調べてみたのですが、ウスグロフユハマキ♀の方だと思います。(追記:ウスグロフユハマキは10-11月に発生、ハイイロフユハマキは2-3月に発生するので、今頃出るのはハイイロフユハマキのようです

この日はカメムシも出ていました。



マツヘリカメムシです。関東付近から分布が広がっていった外来種で、関西では初めてではないだろうかと思って昨年の10月25日にブログに書いた種です。それからもう3匹目。すっかりこちらに定着してしまったのかもしれません。



最後はオオトビサシガメです。

蛾やこういう大型のカメムシがいると、小さい虫の観察がついおろそかになってしまいますが、よく見るともっといろいろな虫が出ているのかもしれません。
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