今日は朝から雪模様、仕方なく、家でグズグズしていたのですが、先日、「廊下のむし探検」第203弾でハエ目の写真を撮ったのを思い出し、その科を調べてみようと思い立ちました。とりあえず、翅脈が見えていそうな次の2種についてです。
ハエ目の同定は初めてなので、いろいろと分からない所だらけなのですが、この写真から行き着けるところまでいってみようと思いました。ハエ目の検索表は、「原色日本昆虫大図鑑III」に載っていますが、もう少し簡単そうな田中和夫氏の屋内害虫22、95 (2000)に載っている「屋内害虫の同定法(2)双翅目の科の検索表」を使ってみました。また、写真で見える範囲ということで、翅、触角、頭、胸についてだけ追いかけていくことにしました。
まず、左の方の虫ですが、検索表を追いかけていくと
ガガンボダマシ科にたどり着きました。そのポイントとなる特徴は次の通りです。
①触角鞭節は長短あるが、6節またはそれ以上あり、各節は大体同型、可動で融合しない。
②体は蚊のように細長いものが多い。
③中胸盾板にはV字型の溝がある。
④臀脈A1とA2は強太で翅縁に達する。
⑤前縁脈Cは翅の全周を縁取る。
⑥肢は著しく細長い。
⑦中胸盾板のV字溝は中央で消失する。
⑧単眼がある。
⑨臀脈A2はA1の長さの半分以下で先端で急に後方に曲がっている。
その特徴を写真に書き入れると次のようになります。
翅脈はかなり煩雑ですが、ちょうど、ガガンボダマシの翅脈が「原色日本昆虫大図鑑III」に載っていたので、それを参考にして、記号を書き入れてみました。[...]の中は古い名前だそうで、田中氏の論文ではこの古い名前が使われていました。
ポイントとなるのは、①触角の節が一様に並んでいること、これでハエとガガンボなどを分けることができます。次に、③V字型の溝と④CuPとA1という二つのはっきりした脈があること、及び、⑤Cの前縁脈が翅の全周を回っていることです。この最後の性質は、翅の全周に縁取りがあるようなもので、ガガンボ類かどうかを見分ける簡単な特徴になるようです。最後に、⑨A1脈が強く曲がっていることからガガンボダマシ科に辿り着きました。
ガガンボダマシ科は九大の
昆虫目録データベースでは14種が記録されていますが、属でいうとTrichocera属とParacladura属が載っていました。このうちParacladura属については、Alexander(1930)の論文に翅脈が載っていて、今回の種とはdと書いてある中室付近の脈相が少し違うようです。一方、Trichocera属は「原色日本昆虫大図鑑III」に載っていて、今回の種とほとんど同じ脈をしています。そこで、Trichocera属〈ガガンボダマシ属)だろうと思っています。
もう一種については、翅脈は簡単なのですが、意外に難しい種類です。紆余曲折しながら最終的には、
キノコバエ科に辿り着いたのですが、そのポイントは次の通りです。
①触角鞭節は長短あるが、6節またはそれ以上あり、各節は大体同型、可動で融合しない。
②体は蚊のように細長いものが多い。
⑩中胸盾板にはV字型の溝はない。
⑪臀脈A2はないか、又は短くて翅縁に達しない。
⑫単眼はない。
⑬翅室dはない。
⑭翅室bmは横脈で閉じられず翅縁に達するか、あるいは中脈Mを欠き翅室brと合一する。
⑮前縁脈Cは通常、少なくとも翅端付近まで伸びる。
⑯翅の前縁近くの翅脈と、後方の翅脈との間に、強度と色について極端な差はない。?
⑰複眼は左右離れている。
⑱中脈Mの柄部は短く通常分枝部より遥かに短い。
⑲小型~中型の細長い種。
①と②は上と同じで、今回は⑩V字型の溝がないので、別の道に進みました。さらに、前縁脈Cが翅の全周でなく、⑮の矢印で示すように途中で止まっています。これでガガンボの仲間でないことも分かります。後は、図に番号を記したようなところを見て回ったのですが、写真の解像度が悪くて、⑫単眼があるかどうか分からないこと、⑯に書かれた内容があまり合っていないところが気になるのですが、田中氏の論文に書かれたキノコバエ科の翅脈とはかなり似ています。また、
Diptera.infoというページに書かれたものともそっくりです(翅脈の名前はこのページに書いてある名前を採用しました)。それで、おそらくキノコバエ科でよいのではないかと思っています。キノコバエ科は九大のデータベースには150種もあるので、とりあえず、ここまでです。
ということで、ガガンボダマシ科ガガンボダマシ属とキノコバエ科というところまで分かったことになります。でも、ハエ目の検索はかなり難しいですね。朝から始めて、今までかかってしまいました。でも、今度、写真を撮る時は、翅脈が見えるように撮ることと、胸と頭の単眼、肢がよく分かるように撮ることが重要だということが分かりました。