テレコンバージョンレンズの仕組み
望遠レンズの焦点距離を伸ばす方法として、テレコンバージョンレンズ(テレコンバーター。略して、テレコン)を取り付ける方法があります。これには2つのタイプがあって、一つはレンズとカメラ本体の間に入れるタイプ(リアコンバーター)、もう一つはレンズの前に取り付けるタイプ(フロントコンバーター)です。レンズの取り外しのできないコンデジが出現してから、レンズの前に取り付ける後者のタイプは急速に普及してきました。今回は、フロントコンバーターについて、その仕組を説明します。
上の写真の左側はレンズの前に取り付ける1.7倍のテレコン(Olympus TCON-17X)とコンデジ(Panasonic DMC FZ-150)で、右側はそれを取り付けたところです。
このテレコンはどんな仕組みになっているのか調べてみました。
フロントコンバーターは凸レンズと凹レンズの組み合わせでできています。例えば、上の図のレンズL1とL2の組み合わせがそれに当たります。このとき、2つのレンズの焦点位置を一致するようにすると、平行光線が凸レンズL1に入射すると、その焦点位置P1に収束するように曲がりますが、凹レンズL2があるために再び平行光線になって出力します。つまり、テレコンは平行光線をビーム径を変えて再び平行光線として出力するレンズ系なのです。テレコンを通して見ると景色がそのまま見えますが、その大きさが少し大きくなっています。つまり、テレコンはそれ自身では焦点を結ばない光学系なのです。
テレコンを通って平行光線になった光は、カメラレンズLに入り、撮像素子I上の点P2に焦点を結ぶことになります。この時、例えば、図の一番上の光線に着目して、P2とAを結ぶ線と、CとDを通る入射光線をそれぞれ延長して、その延長線が交わる点Bを考えます。この延長線でできた光学系は、レンズL1、L2、Lを考えずに、仮想的な凸レンズL'を考えた場合と、カメラレンズLと撮像素子Iの間の光線を考える限り、全く同じ光路を通ることになります。つまり、仮想的な凸レンズを考えることで、テレコンの役目を説明できるのです。
この仮想的な凸レンズの焦点距離はどのくらいになるのかは、レンズの公式と上の図から求められます。詳細は「廊下のむし探検付録」の「テレコンバージョンレンズの仕組み」に載せましたが、その結果は次のようになります。
ここで、fはカメラレンズの焦点距離で、f'は仮想的な凸レンズの焦点距離です。また、f1とf2はテレコンの凸レンズと凹レンズの焦点距離です。H=f1/f2はテレコンの倍率を表し、この式から、テレコンを取り付けることにより、焦点距離がH倍になっていることが分かります。
しかし、この焦点距離が伸びるという考え方は、被写体が無限大の距離にあるときにだけ使える考え方です。実際の撮影では、別の考え方が必要になります。その場合の光学系を次に載せます。
この図は、Sで表した被写体(光源)をテレコンを用いて撮影している例です。この場合の光路を書くためには、まず、L1レンズでSの実像をRに作ることを考えます。図では、実線は実際に光が通る光路を表し、破線は補助線を表します。すべての光路を描くと図が複雑になってしまうので、実線については必要な部分だけを抜き出して描いてあります(付録参照)。
光源Sの先端から出た光線のうち、実像を考えるのに必要な光線は、軸に平行な光線と、凸レンズL1の中心を通る光線です。この2本の線によって、実像Rの位置を特定することができます。一方、軸に平行な光線は、凹レンズL2の作用で再び平行光線になり、カメラレンズLに入射し、焦点位置P2を通り、撮像素子上に焦点P3を結びます。
次に、実像Rの先端を通り、凹レンズL2の中心を通る光線を考えます。この光線もそのままカメラレンズLに入射する光線として考えることができます。したがって、カメラレンズLに入射する光線には、軸に平行な光線と凹レンズの中心を通る光線があることになり、それが最終的には撮像素子上に像を結ぶことになるのです。この光学系は、それぞれの線を入射側に延長したところに虚像Vがあるとして考え直すことができます。つまり、光源Sから出た光は、テレコンの作用により、虚像Vから出た光としてカメラレンズに入ることになります。カメラレンズの立場で言えば、光源の位置が無限大の距離にない場合には、光源の位置が見かけ上近くにあり、しかも、像の大きさは小さくなるわけで、その分、カメラレンズの位置を変えて焦点を合わせ直さなければならないことを意味します。
この場合の虚像できる場所もレンズの公式と相似の関係から求めることができます。詳細は、やはり、付録に載せますが、その結果は
となります。ここで、aは光源とテレコンとの距離、a'は虚像とテレコンとの距離です。
実際にこの関係式が成り立っているかどうかは簡単な実験で確かめることができます。距離が分かったところに被写体を置き、テレコンを取り付けてピントを合わせます。次に、フォーカスをマニュアルにして、ピントの合った場所にフォーカスを固定します。この状態でテレコンを外して、ピントがどこに合っているか調べればよいのです。テレコン(Olympus TCON-17X)とコンデジ(Panasonic DMC FZ-150)の組み合わせで実験した例を次にお見せします。
横軸に被写体とテレコン間の距離を取り、縦軸にテレコンを外したときにピントの合っている位置とテレコンが置いてあった場所との間の距離を取ります。実線は上の式で計算したものです。この計算では、H=1.7として、また、テレコンの凸ー凹レンズ間の距離を60mmと見積もり、それから、f2=60/(1.7-1)=85(mm)、f1=1.7*f2=145(mm)として計算したものです。距離が長い部分が少し計算値とずれますが、全体としてよく合っています。このことから、テレコンを取り付けたカメラは、テレコンによってできた虚像にピントを合わせようとしていることが分かります。
それでは、テレコンを入れると、何がH倍になるのでしょう。これも詳細は付録に載せますが、この場合は焦点距離ではなくて倍率の方になります。虚像を作ることで、像の大きさは1/H倍になりますが、近い場所にある虚像を撮影することで、像の大きさはH^2倍になります。この2つを合わせると、最終的な像倍率はH倍になるのです。つまり、テレコンは焦点距離を伸ばすのではなくて、遠くにある被写体の代わりに近くにその虚像を作り、結果として倍率を上げる役割を果たしていることになります。
上の写真の左側はレンズの前に取り付ける1.7倍のテレコン(Olympus TCON-17X)とコンデジ(Panasonic DMC FZ-150)で、右側はそれを取り付けたところです。
このテレコンはどんな仕組みになっているのか調べてみました。
フロントコンバーターは凸レンズと凹レンズの組み合わせでできています。例えば、上の図のレンズL1とL2の組み合わせがそれに当たります。このとき、2つのレンズの焦点位置を一致するようにすると、平行光線が凸レンズL1に入射すると、その焦点位置P1に収束するように曲がりますが、凹レンズL2があるために再び平行光線になって出力します。つまり、テレコンは平行光線をビーム径を変えて再び平行光線として出力するレンズ系なのです。テレコンを通して見ると景色がそのまま見えますが、その大きさが少し大きくなっています。つまり、テレコンはそれ自身では焦点を結ばない光学系なのです。
テレコンを通って平行光線になった光は、カメラレンズLに入り、撮像素子I上の点P2に焦点を結ぶことになります。この時、例えば、図の一番上の光線に着目して、P2とAを結ぶ線と、CとDを通る入射光線をそれぞれ延長して、その延長線が交わる点Bを考えます。この延長線でできた光学系は、レンズL1、L2、Lを考えずに、仮想的な凸レンズL'を考えた場合と、カメラレンズLと撮像素子Iの間の光線を考える限り、全く同じ光路を通ることになります。つまり、仮想的な凸レンズを考えることで、テレコンの役目を説明できるのです。
この仮想的な凸レンズの焦点距離はどのくらいになるのかは、レンズの公式と上の図から求められます。詳細は「廊下のむし探検付録」の「テレコンバージョンレンズの仕組み」に載せましたが、その結果は次のようになります。
ここで、fはカメラレンズの焦点距離で、f'は仮想的な凸レンズの焦点距離です。また、f1とf2はテレコンの凸レンズと凹レンズの焦点距離です。H=f1/f2はテレコンの倍率を表し、この式から、テレコンを取り付けることにより、焦点距離がH倍になっていることが分かります。
しかし、この焦点距離が伸びるという考え方は、被写体が無限大の距離にあるときにだけ使える考え方です。実際の撮影では、別の考え方が必要になります。その場合の光学系を次に載せます。
この図は、Sで表した被写体(光源)をテレコンを用いて撮影している例です。この場合の光路を書くためには、まず、L1レンズでSの実像をRに作ることを考えます。図では、実線は実際に光が通る光路を表し、破線は補助線を表します。すべての光路を描くと図が複雑になってしまうので、実線については必要な部分だけを抜き出して描いてあります(付録参照)。
光源Sの先端から出た光線のうち、実像を考えるのに必要な光線は、軸に平行な光線と、凸レンズL1の中心を通る光線です。この2本の線によって、実像Rの位置を特定することができます。一方、軸に平行な光線は、凹レンズL2の作用で再び平行光線になり、カメラレンズLに入射し、焦点位置P2を通り、撮像素子上に焦点P3を結びます。
次に、実像Rの先端を通り、凹レンズL2の中心を通る光線を考えます。この光線もそのままカメラレンズLに入射する光線として考えることができます。したがって、カメラレンズLに入射する光線には、軸に平行な光線と凹レンズの中心を通る光線があることになり、それが最終的には撮像素子上に像を結ぶことになるのです。この光学系は、それぞれの線を入射側に延長したところに虚像Vがあるとして考え直すことができます。つまり、光源Sから出た光は、テレコンの作用により、虚像Vから出た光としてカメラレンズに入ることになります。カメラレンズの立場で言えば、光源の位置が無限大の距離にない場合には、光源の位置が見かけ上近くにあり、しかも、像の大きさは小さくなるわけで、その分、カメラレンズの位置を変えて焦点を合わせ直さなければならないことを意味します。
この場合の虚像できる場所もレンズの公式と相似の関係から求めることができます。詳細は、やはり、付録に載せますが、その結果は
となります。ここで、aは光源とテレコンとの距離、a'は虚像とテレコンとの距離です。
実際にこの関係式が成り立っているかどうかは簡単な実験で確かめることができます。距離が分かったところに被写体を置き、テレコンを取り付けてピントを合わせます。次に、フォーカスをマニュアルにして、ピントの合った場所にフォーカスを固定します。この状態でテレコンを外して、ピントがどこに合っているか調べればよいのです。テレコン(Olympus TCON-17X)とコンデジ(Panasonic DMC FZ-150)の組み合わせで実験した例を次にお見せします。
横軸に被写体とテレコン間の距離を取り、縦軸にテレコンを外したときにピントの合っている位置とテレコンが置いてあった場所との間の距離を取ります。実線は上の式で計算したものです。この計算では、H=1.7として、また、テレコンの凸ー凹レンズ間の距離を60mmと見積もり、それから、f2=60/(1.7-1)=85(mm)、f1=1.7*f2=145(mm)として計算したものです。距離が長い部分が少し計算値とずれますが、全体としてよく合っています。このことから、テレコンを取り付けたカメラは、テレコンによってできた虚像にピントを合わせようとしていることが分かります。
それでは、テレコンを入れると、何がH倍になるのでしょう。これも詳細は付録に載せますが、この場合は焦点距離ではなくて倍率の方になります。虚像を作ることで、像の大きさは1/H倍になりますが、近い場所にある虚像を撮影することで、像の大きさはH^2倍になります。この2つを合わせると、最終的な像倍率はH倍になるのです。つまり、テレコンは焦点距離を伸ばすのではなくて、遠くにある被写体の代わりに近くにその虚像を作り、結果として倍率を上げる役割を果たしていることになります。
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