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虫を調べる アミメカワゲラ科(続き)

先日から、毎年、3月中旬から4月初旬にかけて現れるカワゲラを調べています。前回、科の検索をしてアミメカワゲラ科であることが分かりました。たぶん、科は大丈夫だと思うのですが、その後の属の検索でずいぶん苦戦を強いられています。まだ、確定的なところは分からないのですが、とりあえずこれまでに調べたことをまとめてみたいと思います。



まず調べているのはこんなカワゲラです。毎年春に出てくるので気になる存在で、以前にも調べたことがあったのですが、その時は科もはっきりしなくて挫折してしまいました。今回は「原色川虫図鑑成虫編」に載っている絵解き検索表のお陰で、科はアミメカワゲラ科で大丈夫そうですが、その後の属の検索で苦戦しています。体長は後からも出てきますが、16.4mm。このくらいの大きさはたぶん、中型に分類されるのだと思います。



先ほどの図鑑に載っているアミメカワゲラ科の属への検索表のうち、可能性のあるものだけを抜き出したものです。初め、黒字を進み、コウノアミメカワゲラ属 Todamusだろうと思っていたのですが、その後、⑫の項目で引っかかってしまい、現在では赤字の方を進んでヒメカワゲラ属 Stavsolusかなと思っています。この辺を写真で説明していきます。とりあえず、⑨~⑫まで進みます。なお、検索の番号は科の検索表との通し番号になっています。



これは胸部腹面の写真です。科の検索でも出てきたのですが、胸部側面に指状の鰓の痕跡のある種がいて、それではないことを確かめます。特に鰓と思えるものは見当たりません。



次は基腹板に関するものです。たぶん、線で示した部分が基腹板だと思うのですが、前胸の基腹板が隆起するか平らかを見ます。初め横から見て特に隆起がないので、ここは素通りしたのですが、検索表をよく読むと、分かりにくい時には、「基腹板の正中線に沿ってピンセットを動かし、頂部の硬い感触で判断するとよい」と書かれているので、写真の個体はこの部分がやや硬化しているので、ひょっとしてこれを隆起があるとすべきか心配になってきました。もし、ここで隆起のあるという方を選ぶと、その後の検索で、最終的にはアミメカワゲラ族所属不明に到達します。これも一応、留保しておきたいと思います。ここではとりあえず、隆起はないとして次に進みます。



これは前胸背板の縁に沿った溝は四角形というのでよいのだと思います。



これは腹部背面の写真なのですが、突起などはないので、とくによいでしょう。



さて、問題の中胸腹面にあるY線です。ご覧のようにY字型の溝は明瞭に見えます。また、左右の上側には腹板孔と呼ばれる穴が開いています。検索の項目はY線の先端がこの孔の前縁側に達するか、後縁側に達するかということです。初め、この写真からY線は途中で途切れていてどちらにも接しないと考え、⑫aを選びました。そうすると、コウノアミメカワゲラ属に達します。ところで、図鑑にはここにも注釈が書かれています。「Y線の先端がわかりにくいときは、バックを黒にするか、虫体を斜めにするなどの工夫で見やすくなることもある」とのことです。この写真ではどうひいき目に見ても、Y線は前縁に向かっているとすべきかなと思い、たぶん、その先端は前縁に達しているだろうと考え、最終的には⑫bの方を選びました。ということで、二つの可能性があるので、両方とも検索の続きを見ていきます。



まずは黒字側です。先端はやや分岐が激しくなっていますが、網目というわけではないので、⑬はOKとしました。



最後は大きさと色なので特に問題なく、したがって、コウノアミメカワゲラ属になります。



もう一方の赤字側を進むと、まず、Y字型の淡色部はないかという項目になり、特にないので、次に進みます。



次は後翅の縦横比です。後縁がくちゃくちゃになってうまく測れなかったのですが、とりあえず測ってみると2.12倍になり、検索表に載っている範囲(1.8~2.3)には入りました。



最後は腹部末端を背側から写したものです。jここがまた悩んだところです。まず、こんな形状のものは♂です。腹部背板に番号を付けたのですが、「第10背板は正中線上で割れ」というところでまた引っかかってしまいました。この写真では正中線上は凹んでいてよく分かりません。たぶん、中央で割れているのだろうと判断したのですが、次の「丸みを帯びた突起」がどれかはっきりしません。一応、可能性のありそうなところに印をつけたのですが、写真を横からも撮るべきでした。この項目は後翅の縦横比と並列になっているので、たぶん、大丈夫だとは思うのですが、それにしてもよく分かりません。標本は展翅をして乾燥してしまったので、また、次に採集した個体で調べてみたいと思っています。



ついでに腹面からの写真も載せておきます。図鑑にはヒメカワゲラ属の第7と第8腹板に小葉があるという絵が載っているのですが、白っぽく見える部分がそうなのか、よくは分かりません。

ということで、分からないことだらけなのですが、今のところ、Y線が前縁に達していると解釈すると、まず、ヒメカワゲラ属は確かだろうと思っています。ただ、コウノアミメカワゲラ属とアミメカワゲラ族所属不明の可能性も残しておきます。図鑑によると、日本産ヒメカワゲラ属 Stavsolusには4種記録されているのですが、そのうち2種は正体不明だとのことです。また、「日本産水生昆虫第二版」によると、2016年にOhgane and Uchidaの論文が出たのですが、多数のミスがあって修正が必要とのことで、まだ混とんとしているようです。残念ながら、この論文は手に入りませんでした。
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虫を調べる アミメカワゲラ科

今頃になるとマンションの廊下にカワゲラが沢山出てきます。これまで、何度か調べようと試みたのですが、なかなかうまくいかなくて、私にとってカワゲラは「虫の空白区」になっていました。今年は何とかそれをクリアしようと思って調べてみました。



調べたのはこのカワゲラで、3月20日にマンションの廊下で見つけた中型のカワゲラです。頭部から前胸背板にかけての正中に黄色の縦帯が入っている、私にとっては馴染みのカワゲラです。毎年、3月中旬から4月初旬にかけて見ています。今年こそ何とか属ぐらいは調べたいなと思っています。

まずは科の検索からです。検索には「原色川虫図鑑成虫編」に載っている絵解き検索表を用いました。検索をしてみると、アミメカワゲラ科 Perlodidaeになったので、その検索過程を写真で見ていきたいと思います。



アミメカワゲラ科であることを確かめるにはこの8項目を確かめればよいのです。ほぼ、検索順に見ていきたいと思います。



まずは単眼の有無です。白矢印で示したように3個の単眼があります。これで①と⑥はOKになります。



次は跗節についてです。写真の通り、第3節が圧倒的に長いので、②も④もOKです。



この写真は腹部末端を後から腹側よりで写したものです。この単純な形から初め♀だと思っていたのですが、実は、これは♂の方みたいです。この写真からは一部だけ見えている尾が多節であることを見ます。



次は翅に関するものです。実は、検索表には後翅について出てくるのですが、ついでだから翅脈に名称をつけてみました。翅脈について書かれた論文がないかと探していたら、次の論文を見つけました。

O. Béthoux, "Wing Venation Pattern of Plecoptera (Insecta: Neoptera)", Illiesia 1, 52 (2005).(ここからダウンロードできます)

比較的に新しい論文で、昔のTillyardやNeedhamの名付け方と若干異なるのですが、まあ妥当な名付け方をしているように思えるので、新しい方を採用して名前を付けてみました。ScPは近縁の目ではScAがあるのですが、これにはないのでScPだけが残っているということみたいです。なぜ、Aではなく、AAなのかは最近の論文の名称に準じてそう名付けているようで理由は分かりません。



後翅は薄くて、殺虫管に入れておいたらくちゃくちゃになってしまいました。懸命に伸ばして途中までスライドガラスで押さえて写真を撮りました。それで、翅の基部がよく見えません。AA1脈より後縁側が臀部になるのですが、少なくともかなり広いことだけは分かります。AA1で折り返して前縁を越えるかどうかはよく分かりません。



これは体長を測るために撮った写真です。こんな風に体が曲がっているので、それに沿って測ってみると16.4mmになりました。検索項目⑦はどうでもよい項目ですね。



これは前胸と中胸を腹面から撮ったものです。側面に糸状鰓の痕跡はなさそうです。下にY字型の模様が見えますが、これが属の検索には出てきて、苦労したところです。



確認のために胸部側面も見てみました。やはり鰓の痕跡はなさそうです。ということで、アミメカワゲラ科までは確かそうです。

実はこの後の属の検索でだいぶ苦労しました。初め、コウノアミメカワゲラ属未記載種という結論に達したのですが、その後、検討した結果、ヒメカワゲラ属(アミメカワゲラモドキ属)ではないかと思っています。この属には正体不明の種も含まれ、検討が必要だとのことで、種までは達していません。属の検索については次回に回します。

雑談)この間からいろいろと失敗ばかりしています。まずは、そらさんに作ってもらった、画像をダウンロードするVBAのプログラムがブログを投稿するときにリサイズしたものをダウンロードするのだと思い込んでいました。それで、元のサイズの画像ファイルをダウンロードするプログラムを苦労しながら作ってみたのですが、実は元のサイズの画像ファイルがダウンロードされていたので、こんなプログラムはまったく必要ありませんでした。でも、練習にはなったかな。

次は、昨日フィギュアスケートを家族と見ていたら、広告にロシア語のものがあるというので、Windowsの言語にロシア語をダウンロードして検索で調べてみたら、風邪薬の名前だと分かりました。夜、パソコンの電源を切って、今朝つけてみてびっくり。あちこちがロシア語になっていて読めません。言語設定のところを開いてもロシア語だらけ。言語からロシア語を削除しても変わりません。これはウィルスかもしれないと思ってひやひやしたのですが、深度合成の計算に使っている古いデスクトップで調べてみると、言語設定の最初においた言語が「Windowsの表示言語」になると書かれていたので、再起動してやって日本語が復活しました。それにしても焦りました。

チビカサハラハムシ?

この間から、カサハラハムシ類の同定で悩んでいます。以前、3つの文献に載っている検索表を使って、チビカサハラハムシか、カサハラハムシのどちらかだろうというところまではたどり着いたのですが、この2つの外部形態的な区別が結局のところ、触角第2節と第3節の長さの比と体長くらいでしかできないことが分かりました(こちらこちらをご覧ください)。つまり、触角第2節の方が第3節より明瞭に長く、体長が2.2mm~3.0mmだとチビカサハラ、第3節の方が明瞭に長くて体長が3.0mm~4.0mmだとカサハラという具合です。ただし、体長は文献によって多少異なり、また、「明瞭に」というのがくせものです。

それで、何匹か採集して、触角の節の長さと体長を測ってみました。



最初は前回調べたこの個体です。





体長は2.5mm、触角第3節は第2節の0.86倍だから、これはまずチビカサハラハムシだとしてよさそうです。



次はこの個体です。





この個体はかなり問題です。体長は確かに小さいのですが、第2節に対する第3節の長さの比は1.1になっています。



次はこの個体です。





これも触角は微妙ですが、体長が小さいのでまずチビカサハラかなぁ。



最後はこの個体です。





この個体の体長はやや大きめ、触角の節は右と左で多少違っていました。片方はチビカサハラ的、もう片方は中間的。だから、やはりチビカサハラかなぁ。

4匹も調べたのですが、どれもチビカサハラとしてよいのか、それとも下から3番目の個体はカサハラとすべきなのか、さっぱり分かりません。何となく、体長だけから見ると、すべてチビカサハラにしてもよさそうな気がするのですが、その場合は触角の長さは第2節の方が明瞭に長いではなく、この程度のばらつきがあると考えなければならないことになります。それとも、測り方に問題があるのかなぁ。とにかくはっきりしなくて弱っています。早く、体長がもう少し大きく、明確にカサハラだと分かる個体を捕まえてみたいです。

雑談1)「Yahoo!ブログ サービス終了」問題になお悩んでいます。今のところ、Yahoo!が示した4つのブログか、Yahoo!からの移行ツールがすでに用意されているFC2ブログのいずれかに移行しようと思っています。ただ、今までのようにブログに全幅の信頼をおいてこれをデータベースの基礎にしようとする気はまったくなくなってしまいました。それで、例えば、顕微鏡写真を使った「虫を調べる」シリーズだけは、ホームページに置いた方が例えブログがなくなっても、リンクだけはそのまま残るのでよいのかなと思ったりしています。もっとも、ホームページ自体もいつなくなるか分かりませんが・・・。電子メディアは便利ですが、所詮こんなに脆いものなのですね。

雑談2)それに関連して、Yahoo!ブログをリネームしてダウンロードするEXCELのVBA(Visual Basic for Application)を用いたプログラムをそらさんに作っていただきました。画像ファイルだけをダウンロードするルーチンではちょっと不具合が出てきたのですが、またしてもそらさんに直していただきました。本当にありがとうございました。自分でも少しはプログラミングを理解したいと思って勉強を始めたのですが、内容を理解するにはまだほど遠い感じです。EXCEL自体はよく使っていたのですが、VBAはまったく知らなかったので、知らないことが多くて、勉強していてなかなか面白いですけど・・・。

虫を調べる チビカサハラハムシ?(続き)

昨日の続きで、チビカサハラハムシらしい個体を検索した結果です。



対象としたのは2月20日にマンションの廊下で見つけたこの甲虫です。昨日は以下の二つの文献に載っている検索表で検索した結果、チビカサハラハムシになったのですが、今日はその続きでさらに別の文献に載っている検索表で調べてみました。

[2] S. Kimoto, "The Chrysomelidae of Japan and the Ryukyu Islands. IV", J. Fac. Agri., Kyushu Univ. 13, 235 (1964). (ここからダウンロードできます)

今日、調べたのは次の論文に載っている検索表です。

[3] M. Isono, "A Revision of the Genus Demotina (Coleoptera, Chrysomelidae) from Japan, the Ryukyus, Taiwan and Korea, I", Jpn. J. Ent. 58, 375 (1990). (ここからダウンロードできます)
[4] M. Isono, "A Revision of the Genus Demotina (Coleoptera, Chrysomelidae) from Japan, the Ryukyus, Taiwan and Korea, II", Jpn. J. Ent. 58, 541 (1990). (ここからダウンロードできます)



チビカサハラハムシ decorataとカサハラハムシ modestaに至る経路を書いてみると以上のようになります。この両者を区別するところは④で、結局、触角第2節と第3節の長さの比較で決まります。ただし、文章が間違っていて、短い→長い、長い→短いに直さないといけないのですが・・・。結局、ほかの文献と同じでしたが、一応、この検索表に沿って調べていきます。



まず、オオアラゲ種群を区別するところは今回は前胸腹板の幅と長さの関係でした。この個体で実際に測ってみると、長さ:幅=1:1.05となり、長さと幅はほぼ等しいことが分かりました。



次はマダラアラゲ種群を見分ける項目で、この個体では肢の脛節には何の模様もありません。従って、カサハラ種群であることが分かります。



これはこれまで何度も出している写真ですが、腹部末端の歯車状の構造の有無についてです。今回は一応無しという判断にしています。



で、最後は、結局、触角第2節が第3節より長いので、チビカサハラハムシ decorataであることが分かります。3つの検索表を比べてみたのですが、チビカサハラハムシかどうかは触角の節の長さで測るしかないようです。

ついでに撮った写真を載せておきます。



頭部の拡大です。こんな顔をしていました。



後腿節の腹側にある歯状突起です(黒矢印)。



写真が鮮明でないのですが、脚の爪です。こういう風に2裂している状態を"bifid"というのでしたね。

虫を調べる チビカサハラハムシ?

この間、雑談で書いたカサハラハムシ属の種の検索をしてみました。



対象としたのは2月20日にマンションの廊下で見つけたこの個体です。カサハラハムシについては亜科、属の検索は以前詳しく書いたので、ここでは省略し、残りの種の検索をやってみます。カサハラハムシ類はカサハラハムシ属 Demotinaに属しています。「日本列島の甲虫全種目録 (2018年)」によると、カサハラハムシ属はサルハムシ亜科Bromiini族に入り、日本産は全部で14種。そのうち、本州産は9種分布することになっています。今坂正一氏の「最新ハムシ事情図説6 カサハラハムシ属紹介1」、「最新ハムシ事情図説7 カサハラハムシ属紹介2」によると、これらはオオアラゲ種群、マダラアラゲ種群、カサハラ種群に分けられ、さらに、カサハラ種群はフタモンアラゲ種亜群とカサハラ種亜群に分けられることになっています。甲虫全種目録に載っている本州産9種をそれらの種群に分けると次のようになります。

マダラアラゲ種群 マダラアラゲ、コブアラゲ
フタモンアラゲ種亜群 フタモンアラゲ
カラハラ種亜群 チビカサハラ、ヤクカサハラ、カサハラ、アラゲ、ヒメアラゲ
Hyperaxis属からの移行? クロオビカサハラ

最後のクロオビカサハラは今坂氏のサイトではHyperaxis属になっていたのですが、全種目録ではHyperaxis属は備考欄に書かれ、Demotina属になっていました。クロオビカサハラを含め、いずれも今坂氏のサイトに載っている絵解き検索表で検索することができます。それで、それを試してみました。



検索してみると、チビカサハラか、カサハラかというところに落ち着いたので、その部分だけを抜粋して書いてあります。これを写真で確かめていきたいと思います。



体長は口と腹部末端を直線で測った時は2.5mm、前胸背板と上翅の境で一度折り曲げて測った時が2.8mmでした。若干違っていたので、その両方を示しています。まず、これは♀だと思われるのですが、翅縁に平行な隆起条は見られません。肢にもマダラアラゲ種群に見られるような黒い縞模様はありません。それで、①と②は共にOKとしました。ついでに、クロオビカサハラは前・後腿節が中腿節に比して肥大化し、腿節にある歯状突起(後で写真でお見せします)も巨大化するのですが、そのような兆候は見られません。それで、クロオビカサハラは除きました。



腹面の末端付近を写したものです。これについては雑談にすでに書きましたが、側縁に多少凸凹したところが見られるのですが、たぶん、のこぎり状の構造は「ない」とすべきだというのが今回の解釈です。前回はこれを「あり」としてフタモンアラゲ種亜群に入り、本州に生息しない種にたどり着いてしまいました。



最後は触角です。こうやって測ってみると、どうやら触角第2節の方が第3節より長そうです。触角の節の区切りをどこにするのかいつも迷うのですが、多少変えても結果には変化が出ませんでした。ということで、この個体はチビカサハラハムシ decorataということになります。

触角の節の長さだけで決めるのは何となく不安だったので、仮に④aが違っていて、④bの方が正しいと判断した場合に行き着く先も調べておきました。



これは中跗節と後跗節をほぼ同一倍率で撮影したものです。跗節第1節、第2節が中脚の方が特に大きいといういことはありません。



これは上翅側片の拡大です。鱗毛は1列だけ生えています。



小盾板はほぼ三角形状で、基部が特に広がるという傾向は見られませんでした。また、先端は舌状です。ということで、触角第2節と第3節の長さの測り方が間違っていたとした場合にはカサハラハムシ modestaとなることが分かります。

チビカサハラとカサハラは触角の節の長さ以外には区別がつけられないのだろうかと思って、別の論文をあたってみることにしました。

S. Kimoto, "The Chrysomelidae of Japan and the Ryukyu Islands. IV", J. Fac. Agri., Kyushu Univ. 13, 235 (1964). (ここからダウンロードできます)

この論文に載っているDemotina属の種の検索表で必要な部分のみを抜粋したものは次の通りです。



うまい具合に③はこの両者の比較になっていました。しかし、内容を読んでも明確な違いは触角の節の長さと体長ぐらいしかありません。一応、この検索表でも、チビカサハラハムシ decorataへ進む過程を写真で確かめてみました。



これは翅端部の拡大ですが、翅端部は白矢印で示したようにほぼ直角で先端がやや丸くなっています。いずれにしても後方には突出していないようです。ただし、今坂氏によると、この特徴は♂では顕著であるが、♀では不明瞭だとのことでした。



若干写真が斜めになっているのですが、上翅の幅と長さの比を求めてみました。長さ:幅=4.2:3でほぼ記述通りでした。また、白矢印で示したように鱗毛が集まってできた白い斑紋があります。その後に書いてある黒い斑紋がどれのことを指すのかよく分かりません。



②はOK。③の触角の色はどうかなと思ったのですが、体長はいずれにしてもOKです。



最後は結局、触角の節の長さでした。やはりチビカサハラハムシとするのでよさそうな感じです。ついでに、もう一つの論文 Isono(1990)でも検索してみたのですが、その結果は次回に回します。
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