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コンデジで大きさの測定

先日、コンデジにクローズアップレンズを取り付けたときに接写ができる仕組みを考えました。このとき、実験でも確めたのですが、その方法を簡単に書くと次のようになります。

1.クローズアップレンズを取り外した状態で、ズーム最大、オートフォーカスで遠くに置いてあるスケールを撮影します。この時、撮影距離も測定します。
2.この状態のままマニュアルフォーカスに切り替えます。さらに、クローズアップレンズを取り付けてスケールを撮影します。この時も撮影距離を測定します。
3.1で測った距離と倍率、2で測った距離と倍率を求めます。
4.距離を変えてもう一度1からやり直します。

この実験結果を使ってクローズアップレンズの仕組みを考えたのですが、この時の結果を使うと、コンデジでも大きさや距離が測れるのではと気が付きました。それで、今日、早速試してみました。コンデジの種類によってはExif情報で距離を出るものもあるようですが、私の使っているPanasonic DMC-FZ150では焦点距離しか表示されません。しかも、この焦点距離はズームで決まっているもので、先日測定したように撮影距離で焦点距離の変化する内焦式のレンズではまったく意味のない数字になっています。

今回の方法は、対象を撮影した後、マニュアルフォーカスに切り替え、その状態でクローズアップレンズを取り付けて、スケールを撮影し、後で倍率を計算します。ちょっと面倒くさいのですが、ズーム最大の条件では、クローズアップレンズをつけたときとつけないときの倍率の関係はすでに求められているので、その関係を使うと、つけないときの倍率は計算で求まるということになっています。さらに、この時の倍率は撮影距離とも関係しているので、この情報から撮影距離も求まります。



試しにやってみました。スケールを撮影してもよいのですが、予備的な実験だったので、こんな蝶を紙に印刷して、段ボール箱に貼り付けて撮影しました(蝶にはフリーのイラストを使っています)。翅の両端間の距離は26mm、52mm、109mmのものを印刷し、それぞれをI、II、IIIとしました。これを遠方から撮影した後(この写真は約2mくらい離れて写したものです)、マニュアルフォーカスに切り替え、クローズアップレンズを取り付けてスケールを撮影しました。



これがクローズアップレンズを取り付けて、焦点位置を変えないでスケールを撮影したものです。この写真から倍率を計算します。



先日測定した、クローズアップレンズを入れた場合と入れない場合の倍率の関係をプロットしたものがこの図です。これは撮影距離1.1mから7mまでの8点で撮ったデータですが、これらを2次曲線で近似しました。



これはクローズアップレンズをつけて測った時の倍率とつけなかった時の撮影距離との関係をプロットしたものです。こちらは4次曲線で近似しました。先ほど得られたクローズアップレンズを取り付けて求めた倍率mからこの両方の情報が得られます。



これはカメラで測定したものと実際の大きさを比べたものです。I、II、IIIはそれぞれ大きさの違う蝶を表しています。カメラで測定すると若干小さめに出たのですが、雰囲気はなかなかよさそうです。



今日は予備実験のつもりで、撮影距離は適当にして撮影したのですが、カメラの倍率から求めたものと比べてみると、やや大きめに出てしまいました。やはり距離を正確に測る必要がありますね。

今回の方法は、撮影のたびにクローズアップレンズをはめてスケールの撮影をしないといけないという面倒臭さはあるのですが、この面倒臭さを乗り越えると対象の大きさと距離の両方が分かるという利点があり、方法としてはなかなか面白いかなと思っています。変換の曲線とデータ点の密度から見ると、大きさについては遠くの対象になればなるほど不正確さが増していく感じですが、距離については逆に遠くでも意外に正確に求まるのかなと思っています。今度、距離を正確に測って検討してみたいと思っています。
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コンデジで接写

鳥の撮影をしている知人のカメラが壊れたときに、高倍率ズームのコンデジが便利だと勧めました。知人はその勧めに従って、ニコンのコンデジを買われたのですが、近くの虫などを撮るときにはもう一台いるというので、何かいい方法はないかと思って調べてみることにしました。確かに、高倍率ズームで接写をしようとすると、カタログにも載っているようにズームを広角側いっぱいに設定して撮ることができます。ただし、レンズから1cmくらいまで近寄らないと撮れないので、たいていの虫は逃げていってしまいます。また、レンズの陰になって光が当たりにくくなるのも欠点です。

そのような場合、以前調べたように、クローズアップレンズをつけるというのが手なのですが、コンデジの場合、どうも思ったようにならないので、もう一度調べてみることにしたのです。

実験は次のような配置で行いました。



家の中で実験をしたので、こんながたがたした配置になっていました。カメラにはPanasonic DMC-FZ150を用いました。クローズアップレンズにはKenko AC Close-up No. 5 (f=200mm)を使いました。床に巻き尺を張り付け、倍率測定用のスケールを載せたダンボール箱を二つ用意しました。一つはスケールを段ボール箱に貼り付けて遠方に置きました(B)。もう一つはクローズアップレンズをつけた場合に用い、段ボール箱の上に小さなスケールを張り付け、ブックエンドにスケールを張り付けたものを動かして焦点を合わせました(A)。

実験は次の手順で行いました。

1.クローズアップレンズを外し、近くに置いたブックエンドを外し、遠方のスケールに合うようにオートフォーカスで焦点を合わして撮影します。この時、スケールの位置を記録します。距離はカメラのイメージセンサーからの距離にしておきます。
2.そのままの状態でマニュアルフォーカスに切り替え、クローズアップレンズを取り付けます。スケールのついたブックエンドを置いて、手で動かして焦点の合う位置に置き撮影します。この時、スケールの位置を記録します。
3.遠くに置いたスケール付きの段ボールの位置を変えて、1を繰り返します。

まず、クローズアップレンズのないときのデータを整理しました。撮影した写真から撮影倍率を計算します。こうして求めた倍率Mと、スケールとイメージセンサ―間の距離Lを使って次の式を用いて焦点距離とレンズの位置を求めます。



これは何枚かのレンズでできた複合レンズを一つの単レンズとみなしたときの、焦点距離とレンズの位置を表す式で、求め方については以前書きました。この式を用いて、撮影距離を変えて測定したデータをグラフにしてみると次のようになります。



撮影距離(イメージセンサーとスケールの間の距離)が短くになるにつれて焦点距離もレンズの位置も共に短くなっています。これは以前に測定した内焦式レンズの特徴でした。でも、実は、これが意外に思った点です。というのは、通常、近くのものを撮るにはレンズを前に繰り出さないといけないので、イメージセンサーとレンズの距離がだんだん離れると思っていたからです。このカメラの場合は、逆に、レンズの位置がイメージセンサーに近づき、その分、焦点距離が短くなっていることが分かりました。



つまり、絵で描くとこんな感じになっているのです。このデータを用いて、クローズアップレンズを入れた場合も考えてみます。



クローズアップレンズの仕組みについても以前書いたことがあります。まとめると、この図のようになります。クローズアップレンズで被写体の虚像を作り、その虚像をカメラレンズでイメージセンサー上に実像を作るというものです。虚像を作るためには、被写体の位置はクローズアップレンズの焦点距離以内におかないといけません。この様子もカメラ上で書いてみると、以下のようになります。



実際に、先ほどの測定から得られた倍率をグラフにしてみると次のようになります。



これはズーム最大で測定した例なのですが、クローズアップレンズをつけないと、せいぜい0.07倍だった倍率は200mmのクローズアップレンズをつけることで最大0.51倍まで上げることができました。この時面白いのは、焦点位置はできるだけ遠方になるようにした方が倍率があがることです。

実際に何倍の倍率なるのかを推測するには、意外に難しい計算をしなければいけません。



まず、このような2レンズ系での結像の問題を考えます。この問題は光線行列を使うと簡単に解くことができます。まず、光源P(中心線からx離れた場所にあり、正接tの方向に光が出るとしています)から出た光は、aだけ離れたところに置いたレンズf2で方向を曲げられ、dだけ進み、今度はf1レンズで曲げられて、bだけ離れたQ点に到着するとします。この時、Q点は中心線からx'だけ離れ、正接t'の方向に光はさらに進むとします。これを行列で表すと次のような式になります。



光がQ点で像を結ぶためには、P点での光の出る方向によらずに、同じ点に到達するという条件を入れなければなりません。また、像の倍率はその時のxとx'の大きさの比から求まります。つまり、



これらの式から、倍率Mとクローズアップレンズと被写体間の距離aを求めることができます。右の式を計算するには、クローズアップレンズを入れずに測ったデータを使用します。つまり、先ほど求めたbとf1です。また、クローズアップレンズの位置は固定されているので、dはbが分かると求まります。さらに、f2には200mmを代入します。




そうして求めたのがこの図です。図の黄緑色の点線が計算値です。極めてよく合っています。たぶん、考え方はだいたい良いのではと思いました。



これは被写体とクローズアップレンズ間の距離の実測値と計算値です。いずれもクローズアップレンズの焦点距離200mm以内には入っているのですが、値は少しずれています。計算式は何度か見直したので、イメージセンサーの位置がはっきりしなかったのが原因かもと思っていますが、よく分かりません。いずれにしても、傾向はよく合っているので、それほど大きな問題ではないのではと思っています。

倍率を求める簡単な式ができるとよいなと思ったのですが、一般的な場合についてはまだできていません。ただ、焦点位置を無限遠方にしたときに最大倍率になるので、このことからそのときの倍率は求めることができます。焦点位置を無限にすると、f1=bとなるので、上の式を用いると、M=f1/f2になります。f1は仕様に載っているズームの最大の焦点距離の値を入れればよく、f2はクローズアップレンズの焦点距離です。このカメラの場合、焦点距離の最大値は108mmなので、M=108/200=0.54となり、7mの距離で測った倍率0.51とまあよく合っている感じです。また、ズームを小さくすれば、当然、レンズの焦点距離は短くなるので倍率も小さくなり、適当な画角での撮影ができることになります。

被写界深度を測る

接写で虫の撮影をしていると、虫の背にピントを合わせると脚がピンボケになるし、脚に合わせると頭や背がぼけてしまって困ることがあります。ピントが合う範囲を表すのに「被写界深度」という量を用います。これまで何度か測定をしたり()、幾何光学を使ってその原理ここからpdfがダウンロードできます)を考えたりしてきました。今更、やり直しをする必要もないのですが、また、やってみたくなったので、今度はカメラを使って実験してみました。



実験はこんな簡単なものです。カメラの前に斜め45度に置いた紙を置いています。これにピントを合わせて、後は絞りを変えて撮影するだけです。カメラはNIKON D7100、レンズはAF-S Micro NIKKOR 85mmを用いました。



紙は写真用光沢紙を用いて、これにPower Pointを用いて縦に細い線を密に書いて印刷するだけです。実際には、線の細さに0.25ptを選び、A4に描かれた図ををL判に縮小印刷しました。



顕微鏡で撮るとこんな感じです。下にはステンレススケールを置いています。測ってみると、線の間隔は0.432mm、線の太さは0.0938mmでした。こんな模様が斜めに置かれているので、ピントの合う場所ははっきり写るのですが、合っていないところはぼけてしまいます。画像上でピントの合っている範囲を測ると、45度に置かれているので、それがそのまま被写界深度になります。



これが実際に絞りを変えて撮影したものです。ただし、撮影倍率は1倍で固定しています。F5.0では中心付近しかピントが合っていませんが、F22にすると全体の半分以上がピントが合っています。このように絞りを絞るとピントが合う範囲が広がるのですが、実際には光量が減ってくるのと、回折広がりが起きてくるためにどこかで妥協をしないといけません。

こんな画像をImageJというフリーソフトで明るさ分布をグラフにしてみたのが次の図です。



F5.0とF22.0の例を載せていますが、黒い線のあるところは明るさでいうと暗くなるので、こんな下向きのグラフになります。凹みがちょうど半分になるところの幅を測って、それを「見かけの被写界深度」としました。「見かけ」と書いた理由は後で説明します。この例だと、F5.0だと408px、F22.0だと1965pxとなっています。pxはピクセルのことで、撮像素子の1素子の大きさを表します。つまり、F5からF22に絞りを絞ると、5倍ほど焦点の合う範囲が広がることを意味します。



いろいろな絞り(Fナンバー)で撮影して、「見かけの被写界深度」を求めたのがこのグラフです。このグラフでは縦軸は1px=0.00392mmの関係を使って長さに直しています(この関係は、カメラの仕様に載っている撮像素子の大きさ23.5mmが6000pxに相当するところから求めました)。さて、このグラフからはF10でも、被写界深度は3mmほどあり、小さな虫を撮影するときには十分な被写界深度を持っている気がしますが、この「見かけの被写界深度」とはいったい何を意味しているのか考えてみました。



以前考察した結果によると、幾何光学では接写の条件で被写界深度は上の式で表されます。倍率やF-numberはカメラ側で合わせればよいのですが、許容錯乱円とは何でしょう。これについても以前書いたのですが、簡単に説明すると、どのくらいまでをぼけていないとするかという限界の大きさを示しています。



許容錯乱円の求め方にはいろいろあるのですが、ここでは、この絵のように、撮像素子の対角距離の1/1500をもって許容錯乱円とするという定義を採用しました。NIKON D7100では撮像素子の大きさは23.5x15.6mm^2なので、対角線の長さは28.2mm。したがって、許容錯乱円の大きさは0.0188mmとなります。これが上の式のcの値になります。



ところで実際に測ったものは何でしょう。写真用紙には0.0938mmの線が引かれています。これが斜め45度に置かれているので、カメラから見ると幅は0.0938/√2=0.0663(mm)ということになります。ピントが合っているときは左の図のようにこの線がそのまま写りますが、ピントが合っていないと線がぼやけてきます。「見かけの被写界深度」を求めたときはちょうど高さが半分になるところを採用したので、右の図のようにぼけて幅が広がって高さが半分になったところを基準にしたことになります。その時の幅はおよそ元の線幅の2倍程度になったときでしょう。つまり、0.0663x2mmくらいということになります。したがって、この実験でぼやけたと判断するのは、大きさが0.0663mm程度になったときということになります。つまり、この方法では線の幅によってぼやけていると判断する値が変わってしまうのです。実際の実験では、実験データに合うように引いた斜めの線の傾きからこのぼやけたと判断する値を求めることができます。この実験の場合は、ぼやけの大きさは0.0807mmということになり、これがcの値になります。予想の0.0663mmという値とは少し違いますが、だいたい一致しています。

ところで、被写界深度はcの値に比例しているので、撮像素子の対角の1/1500で定義される許容錯乱円にするには、0.0807mm→0.0188mmに直すだけで変換できます。つまり、縦軸を0.0807/0.0188=4.29で割ればよいのです。そうして得られた図が次のグラフです。



これが本当の意味での被写界深度になります。このグラフだとF10では被写界深度は0.6mm程度となるので、小さな虫でも結構撮影に苦労するはずです。ただ、この許容錯乱円というのはどこまでのぼやけは我慢できるかという多分に主観的な面があるので、単なる目安と思った方がよいと思います。

今回はかなり幅のある線の列を使って被写界深度を測る方法について考えてみました。結局、線の列間隔は話には登場しなかったので、特に関係ないことになります。ただ、線があまりに疎らだと画像上でピントの合っている範囲を測りにくくなるので、適当な間隔が必要です。この方法を使って、今度は実体顕微鏡や生物顕微鏡の被写界深度も測ってみたいと思います。実は、実体顕微鏡の測定はもう終わっているのですが、今度まとめて出すことにします。

テレコンで接写

レンズの焦点距離を伸ばす方法として、テレコンバージョンレンズ(テレコンバーター;略して、テレコン)を入れる方法があります。これには二つのタイプがあって、一つはレンズとカメラ本体の間に入れるタイプ(リアコンバーター)、もう一つはレンズの前に取り付けるタイプ(フロントコンバーター)です。以前、フロントコンバーターについて書いたことがありました。最近、リアコンバーターが手に入ったので、今度はこれの原理について考えてみました。一番知りたかったのは、焦点距離を伸ばすだけなのに、どうして接写倍率が上がるのかというところでした。そこで、まず、実験をしてみました。



こんな風にマクロレンズとカメラ本体の間に2倍のテレコンバーターを入れてみました。これで撮影すると確かに倍率が上がります。それで、まずはレンズの焦点距離を測ってみることにしました。このような組み合わせレンズの場合、実際に光で焦点を結ばなくても焦点距離を測ることができます。それは被写体とカメラのイメージセンサーまでの距離と撮影倍率を測る方法です。詳細は今回まとめたpdfをご覧ください(こちらからpdfが直接ダウンロードできます。また、こちらのサイトでこれまでにカメラに関して調べたことが見られます)。実際の実験はスケールを撮影して、スケールとイメージセンサーまでの距離を測ります。イメージセンサーの位置は上のカメラの上面にΦというマークのある場所です。そこに重りのついた糸をテープで張り付け、重りの先の位置からスケールまでの距離を巻き尺で測ります。距離を変えながら撮影し、後で、画面上で撮影倍率を計算します。

そうして得られたのが次のグラフです。



青丸は比較対照のためにテレコンバーターなしで実験したものです。焦点距離が60mmのレンズを使ったのですが、撮影倍率に変わりなくほぼ60mmの値になっています。赤丸がテレコンバーターを入れたものです。このテレコンバーターは焦点距離を2倍にするというものですが、これは無限遠を撮影したときに限られています。近くを撮影すると焦点距離はどんどん短くなり、最終的にはもとの焦点距離に近くなっています。ただし、撮影倍率は2倍になっています。この辺りの仕組みを考えてみました。詳細は上に載せたpdfにまとめたので、そちらを見てください。



無限遠を撮った場合と接写の場合の光学系を図で表してみました。テレコンバーターのうちリアコンバーターの作用は基本的に凹レンズを入れることなので、主レンズを凸レンズ、テレコンバーターを凹レンズで表しています。無限遠では焦点距離が2倍に伸びている様子が分かります。接写の場合は実像が大きくなっている様子が分かると思います。

あーでもない、こーでもないと悩みながら、やっと、テレコンバーターの仕組みが分かりました。シミュレーションの結果もほぼ合っているので、まず、大丈夫ではないかなと思っています。このKenko製Pro300 2x DGXというテレコンバーターは300mmの望遠を基準に作られているということで、50mm以上であることが使用の条件になっています。実際に調べてみると、AF-S Micro Nikkor 85mmでは自動焦点が合いませんでした。また、AF-S Nikkor 70-300mmでは300mm側で自動焦点が合いませんでした。どうやら、AF-Sレンズではいろいろ制約があるみたいです。

追記2017/04/21:直観的に分かりやすいように、上の実験データを用いて、見かけの凸レンズがどの場所にあるのかを図示してみました。今、実験ではLとMのデータが分かっているので、これからbを求め、実際のカメラに当てはめてみました。





上側がテレコンバーターなしの場合、下側が入れた場合です。実測値を用いているので、予想とは若干ずれているところもあるのですが、雰囲気は分かります。レンズの上に描いた黄色の長楕円形の図形がテレコンバーターを含めた複合レンズを単一の凸レンズだと考えたときの位置を表します。左側の図形が遠くを撮影した場合、右側が最近接を撮影した場合です。実際には、最近接の場合はレンズが繰り出すのでこの写真とはちょっと異なりますが・・・。テレコンバーターを入れた場合はレンズの位置がテレコンバーターの厚さ分ほど前に来ていることが分かります。これは、遠方を撮影するときにはテレコンバーターを入れたことにより焦点距離が長くなったということを意味しています。一方、最近接を撮る場合には焦点距離は長くならない代わりにレンズが前に来たために接写倍率が上がったということを意味しています。ちょうどエクステンションリングを入れたのと同じような効果になるわけです。ついでにpdfファイルの方にもこのことを書き足しました

内焦式レンズの焦点距離を測る

この間から、AF-S Micro Nikkor 85mmというマクロレンズを「廊下のむし探検」に使っています。あまり意識したことはなかったのですが、このレンズは焦点を合わせるのに内焦式という方法を用いているそうです。普通のレンズは近いものに焦点を合わせようとすると、レンズが前に繰り出してくるのですが、このレンズはまったく長さが変わりません。

カメラのレンズは何枚かのレンズが組み合わされているのですが、内焦式というのはこのうち内側のレンズの位置を動かすことで焦点を合わせる方式です。こうすることでレンズを大きく動かさなくてよいので、高速に焦点が合わせることができ、ズームレンズや望遠レンズによく用いられているようです。焦点は簡単に合わせることができるのですが、その代償として、撮影する距離によって焦点距離が変化してしまうと書かれていました。それで、実際に焦点距離を測ってみることにしました。



実験は簡単で、スケールを置いて、ピントを合わせてそれをカメラで撮るだけです。このとき、スケールとカメラのイメージセンサーの位置までの距離を測ります。次に、写ったスケールの像から倍率を計算します。この2つの情報から焦点距離が求められます。その原理は次の通りです。



まず、レンズで実像を結ぶことを考えます。このとき、レンズの公式が成り立ちます。その関係式をまとめて書くと次のようになります。



Mは倍率です。一番上の倍率の式からbを消去し、さらにaについて解いてやります。一方、焦点距離はレンズの公式から求められます。2列目の式からbを消去し、さらに、上で求めたaを代入すると最終的に4列目の式になり、焦点距離fはスケールまでの距離Lと倍率Mだけで表されます。後は、スケールの距離を変えて、まずLを測り、次に写した写真からMを求めればいいだけです。



そうやって求めたのがこのグラフです。横軸は倍率です。縦軸は上の関係式で求めた焦点距離です。グラフの赤丸が測定点です。また、破線は焦点距離の公称値85mmを表しています。倍率が小さい、つまり、遠くを撮るときは焦点距離85mmでほぼ撮れるのですが、倍率が高い、つまり、近くを撮ろうとすると焦点距離は徐々に短くなってきます。このレンズを用いたときの最短撮影距離は285mmになったのですが、その時の焦点距離は71.2mm、倍率は1.06倍でした。

追記2017/03/29:横軸をカメラから撮影対象(この場合、スケール)までの距離にしたグラフも追加しておきます。なお、始点はカメライメージセンサーの位置《取説によると距離基準マークというようです。カメラの上面にΦを横にしたマークがついています》にしています。



撮影距離が50cm以下になると急激に焦点距離が減少してくるみたいです


焦点距離が大幅に変わるというわけではなかったのですが、こういうレンズの性質も頭にいれて置かなければいけませんね。
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