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栄養ドリンクの蛍光

なぜ、栄養ドリンクの蛍光を測定しようと思ったのか?それは・・・。この間からウスキツバメエダシャクの蛍光を測定していたのですが、ふと、オオミズアオの標本にUV-LEDを照射してみると、やたら強く蛍光を発しているのに気が付きました。



左は蛍光灯の光で撮影したもの、右は部屋を真っ暗にしてUV-LEDで照射して撮影したものです。翅が汚れているところが特に強く光っています。

ついでに、いろいろな蛾の標本もUV-LEDで照らしてみました。



シンジュサンは白い模様が紫色に光って見えます。ひょっとしたら紫外線を反射しているかもしれません。



ヒメヤママユも模様がくっきり見えるようになります。



キマダラコウモリという原始的な蛾は、翅の根元としっぽの先が光っています。

さて、オオミズアオの汚れは体液が染み出してしまったものですが、いろいろとネットを調べてみると、リボフラビンの蛍光の可能性があることが分かりました。リボフラビンは黄色い蛍光を発する物質で、食べ物から取り入れられるということです。ひょっとしたら、ウスキツバメエダシャクの蛍光も同じじゃないだろうか。特に、個体によって光り方がまちまちだったという点がちょっと気になります。

リボフラビンはビタミンB2といって、栄養ドリンクに含まれている黄色の素がそうです。



プラスチックセルに「チオビタドリンク」を入れて、UV-LEDで照らしたものが右の写真です。確かに、黄色く光っていますね。チオビタドリンクの蛍光を調べるために、いつものように手作り分光器と一眼レフカメラによって蛍光スペクトルを測定してみました。



これはチオビタドリンクを入れたプラスチックセルの横からLEDの光を当てて、蛍光のスペクトルを測定したものです。例によって、40Wの電球を使って感度補正をしてあります。UV-LED(375nm)を照射したものと、おまけでもらったBlue-LED(470nm)を使って測定したものですが、両方ともほぼ同じ蛍光スペクトルを示すことが分かりました。ピークは540nm付近です。このスペクトルはwikipediaに出ているものともまあまあ合っています。手作り分光器でも結構測定できるでしょう!

オオミズアオの汚れた部分の蛍光もUV-LEDを照射して測定してみました。



長波長側にある山の位置はだいたい一致しています。オオミズアオの場合はそのほかに480nm付近に小さな山が見えています。ぴったりは一致しなかったのですが、少なくとも長波長側の山はリボフラビンの可能性があります。ウスキツバメエダシャクについても同じようなふた山が見えたことがあります。このことから、ひょっとしたら、ウスキツバメエダシャクの蛍光の長波長側の成分はリボフラビンによるものかもしれません。

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ウスキツバメエダシャクの蛍光(つづき)

ウスキツバメエダシャクの蛍光について、もう少し実験をしてみました。今日は、翅の一部を切り取って、鱗粉を顕微鏡で見たことと、紫外の光源を変えて蛍光スペクトルを測定してみたことです。

翅の一部をスライドグラスの上でちょっとこすって鱗粉を落とし、実体顕微鏡で観察しました。





左側が透過照明で、右側はUV-LED照明によるものです。紫外光で照明すると、満天の星を見るようで大変綺麗でした。





上の写真のうち、ほぼ同じ領域を切り取ってみたのですが、よく光る鱗粉とほとんど光らない鱗粉が共存していることが分かります。光る鱗粉でも中心の軸辺りが特に光っています。もう少し拡大してみたいですね。

次は、ウスキツバメエダシャクの蛍光を、紫外の光源を変えながら手作り分光器で観察してみました。


上からブラックライト、UV-LED、それに一番下はUV-LEDにU-360のフィルターを入れたものです。U-360のフィルターを入れると、光源と蛍光との切れが良くなることが分かります。左すみにうっすら赤く見えているのは光源の波長の2倍のところに出てくる2次光で、実際の光ではありません。



これを例によって、スペクトルに直し、40Wの白熱電球とプランクの輻射公式を使って、補正したものが上の図です。まず気が付くのは3つの光源で、ほとんど同じ形の蛍光スペクトルが得られていることです。蛍光スペクトルは緑を中心にして、青から黄色にかけて広がっています。xで書いたところはカメラの感度が急激に変化するため、補正がうまくいっていないところです。また、ブラックライト(BL)の場合は水銀の輝線が2本見えています。

チョウの翅で、このように緑付近に蛍光を放つ色素にはいくつか知られています。例えば、有名な色素ではプテリンと呼ばれる色素です。この色素はチョウの翅から初めに得られたので、Lepidopterinと呼ばれていたのですが、最後のpterinだけが名前として残ったものです。1943年にPieris napi(エゾスジグロシロチョウ)を215,000匹(重さにして1.164kg)を集めて,、それから39.1gの色素を抽出したのは有名な話です。この色素は、今では、ロイコプテリンと呼ばれています。このほかにも、キサントプテリンなどいくつかのプテリンが知られています。これらはみな可視域に蛍光を発します。

ウスキツバメエダシャクの蛍光物質は何かというのを確かめるには、数を捕まえて、クロマトグラフィーを使って調べていかないといけないので、ちょっとバリアがありますね。

ウスキツバメエダシャクの蛍光像

先日、ウスキツバメエダシャクという白い蛾が青色から緑色にかけて、蛍光を放っているという報告をしました。今日は実体顕微鏡を使って、もう少し詳しく調べてみました。



ウツキツバメエダシャクは身近でよく見る白い蛾ですが、この蛾が紫外線のもとでで蛍光を放ちます。翅を実体顕微鏡で拡大しながら見てみましょう。





左側はLED照明で撮影したもの、右はUV-LED(375nm)で照明したものです。通常の照明では薄茶色にしか見えない模様が、UV照明ではくっきりとした黒い筋で見えてきます。カメラには、紫外線が写らないNikon D90のボディを、実体顕微鏡のカメラポートに直接取り付けて撮影しました。従って、この模様の変化は、白い部分が紫外線を反射しているわけではなくて、薄茶色の部分が蛍光を出さず、白い部分が蛍光を出しているためなのです。さらに拡大してみましょう。





黒い筋がはっきりと見えてきました。それと同時に、赤い点と黒い筋の間の部分が薄汚れたように見える部分もあることが分かります。もっと拡大してみましょう。





薄汚れたように見える部分は蛍光をあまり出さない鱗粉がまだらに分布しているように見えます。

このように紫外線のもとで見ると、可視光線よりも、翅の模様はよりくっきりと見えることが分かりました。紫外線の下での模様は蛾にとって何か役に立っているのでしょうか。

ウスキツバメエダシャクの蛍光

この間から紫外写真やスペクトル測定をしてきました。ためしに、蛾の標本をUV-LEDで照らしてみると、ウスキツバメエダシャクだけがやけに強く蛍光を出していることが分かりました。今日はそれについて調べてみます。



右はウスキツバメエダシャク、左は比較のために置いたモンシロチョウです。ウスキツバメエダシャクの方はちょっと艶があり、わずかに黄味を帯びています。この標本を、電気を消してUV-LEDで照射して撮影してみました。



ウスキツバメエダシャクは鮮やかに光っています。それに対して、モンシロチョウはまったく光っていませんね。同じ仲間のコガタツバメエダシャクを調べてみると、ちょっと面白くて、光るものとあまり光らないものがありました。



蛍光灯のもとではこんな感じですが、紫外線を当てると



左側はよく光っていますが、右側は後翅の縁を除いてほとんど光りません。いくつかの標本で見ると、光り方がまだらになっているものもあります。顕微鏡で見ても、別に鱗粉がはがれているわけではないようです。

この蛍光を手作り分光器で測ってみました。今日は蛍光を測定するので、スリットは幅0.7mmと広めのものをアルミホイルで作り直しました。竹ひごに割れ目を入れ、そこに標本の針を刺して、分光器のスリットの前に置きました。UV-LEDは分光器の横に置いて、翅に斜めになるように照らしています。分光器の透過型回折格子フィルムにカメラ(Nikon D70とMicro Nikkor 55mm)を接近させて撮影してみました。



一番上は殺菌灯で、一番下は白熱電球です。スリットが広い分だけ、分解能も悪くなっています。真ん中はウスキツバメエダシャクの翅をUV-LEDで照らして測定したものです。紫色のUV-LEDの光のほかに、緑と青の領域でわずかに光っているのが見えます。

この画像をImageJを用いて、Gray valueに変換したものが次の図です。



真ん中のウスキツバメエダシャクでは、翅で直接反射(散乱)したUV-LED光のほかに、500nm付近をピークとする幅広い蛍光が出ていることが分かります。

白熱電球のスペクトルが変な形になっているのは、カメラの感度が波長で違っているためだと思うので、以前と同じようにプランクの輻射公式を用いて補正し、蛍光スペクトルも計算し直してみると、次の図のようになりました。



470nm(青)付近と520nm(緑)付近に2つの山が見えてきました。この蛍光スペクトルが合っているかどうかはまだ分かりませんが、青から緑にかけて蛍光を出していることだけは確かなようです。

いったい何が光っているのでしょう。「ウスキ・・・」の名前のもとになった黄色と関係があるのでしょうか。コガタツバメエダシャクでは個体によって違うのはどうしてでしょう。鱗粉の配列はどうなっているのでしょうか。いろいろと疑問が湧いてきますね。

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